一緒に下校
◆鳴神 翼◆
久々に弓と一緒に帰宅する。
つい今朝までそっけなかった妹が、突然べったりになる現象の名前を教えてくれ。
さっきから腕絡んできて歩きにくいったらありゃしない。
「弓?」
「なぁに? お兄ちゃん」
そのあどけない笑顔を今回は何とか守る事が出来た。
少し体中が痛いけど、全身バッキバキになる位の激痛が走っているけどそこはスルーしよう。
折角弓が昔のように話してくれるようになったんだ。
いったい何が原因で俺との距離を置き、そしてなぜ突然戻ったのか。
もしかしたらモエルギ―が絡んでいるのかもしれない。
そもそもモエルギ―って何なんだ?
「その、歩きにくくないか?」
「弓は大丈夫。お兄ちゃんは歩きにくいの?」
「そんな事無いよ」
えへっと笑顔を俺に向けてくる。
妹は大切な存在だ。家族であり、きっと俺自身の理解者でもある。
しかし、あの変な服装は弓の妄想なのか?
確かにビキニアーマーは萌える。
だが、はち切れんばかりの双山があり、ナイスバディーでなければ本当の萌えは無いだろう。
え? まな板ビキニアーマーでも萌えるって?
ミニ袴とか、見た事ないんですけど?
思わず生暖かい目で見てしまったよ。気が付かれてないよね?
「あのぉー? 私も居るんですけど?」
少し後ろについてくるシープラ。
こいつ、今回も戦闘に混ざってこなかったよな?
しかも、ニヤニヤしながら何か回収していたし。
よし、今夜は問い詰めよう。知っている事を全て吐き出させよう。
「よぉ、シープラさん」
「何でしょうか? 鳴神さん?」
その話し方、さっきと随分変わってますよね?
「その話し方、変じゃないか?」
ストレートに突っ込んでみる。
「そうですか? 日常はこのキャラで。戦闘シーンはあのキャラ設定なんですが?」
設定? どんな設定だ?
「じゃぁ、普段は俺の事を『鳴神さん』で、いざとなったら『主』と呼ぶのか?」
「そうです! その方が読者にとって分かりやすいと思いましてっ」
読者? 何の事を言っているんだ?
「ま、まぁ好きにすればいいよ。今夜、聞きたいことがある。弓も一緒にな」
「ま、まさか三人で交わるのですか! さ、さすがにそこまで行くのはまだ早いかと……」
「ちがうわぁ! どうしてそっち方面に行くんだよ! 普通に話をさせてくれ!」
ジト目で俺を見てくる弓の目が少し冷たく感じる。
「お、お兄ちゃんは三人がイイの?」
ち、違うよ! 俺は三人なんて……。
うん、自主規制しておこう。読者の為に。
「シープラの件もそうだし、あの『モエルギ―』とやらについて、もっと知っておかないと」
急に真面目な顔つきなるシープラ。
なんだ、普段からそういう顔つきで、言葉使いも丁寧だったらいいのに。
やればできるじゃないか。
「分かりました。ついに、話す時が来たようですね!」
そんな話をしているとそろそろ自宅に着く。
弓がお兄ちゃんと歩いて帰りたいって言ったから、自転車は学校に置きっぱなしだ。
明日の朝は早く家を出ないとな。
まったく、わがままなんだからっ!
「あれ? 玄関に誰かいるよ?」
時刻は夕方。あの格好はうちの高校の制服。
あ、凛じゃないか? 何してるんだ?
「凛ちゃん! 何してるの?」
弓が走って凛の元に行ってしまった。
あの二人は昔っから仲が良いよな。
「あ、弓ちゃん。お帰り、遅かったね」
「えっと、ちょっといろいろあってね」
凛は弓と俺を交互に視線を送り、最後に後ろにいるシープラに目線を向けた。
「弓ちゃん、翼君と話せるように?」
「しーっ! そ、その話はまた今度! 今日から弓はお兄ちゃんと仲良しなのっ!」
凛に腕組みをし、遠目から見たらまるで姉妹のようだ。
隣で二人を凝視してるシープラ。何を考えているのだろう。
「血のつながらない姉妹。百合萌え……。いいっ!
おい、よだれ出てるぞ?
つか、勝手に変な妄想するなよ。
「凛、こんな所でなにしてるんだ?」
今朝以来凛とは話をしていない。
学校で何か言われるかと思ったが、特に何も言われなかった。
「あの、今朝のお礼ちゃんと言えていなかったから……」
そっか、凛には先に行けって、ろくな説明もしていなかったな。
つか、説明しない方がいいんじゃないか?
「いや、大したことじゃないし。怪我してないか?」
「うん。おかげさまで。あのさ、少し話できないかな?」
「今か?」
「出来れば、早い方がいいかな……」
「とりあえず、茶でも出すよ」
「うん。ありがとう」
こうして、久々に話した幼馴染の御剣凛は数年ぶりに俺の部屋に来ることになった。




