守る義務
◆鳴神 弓◆
「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんを守るよ! そして、無事に帰って膝枕してもらうんだからぁ!」
私の中にお兄ちゃんのモエルギ―が流れ込んでくる。
そして、私の中で自分のモエルギ―と混ざっていくのが分かる。
こ、これって何だか恥ずかしくない?
「バ、バカな! そんな力どこに!」
「私達は兄妹! お前なんかには絶対に負けない! いくよ、お兄ちゃん!」
「あぁ、俺達の手で、奴を止めるんだ!」
「「『兄妹萌光速多重矢!』」」
光の矢がいくつも浮かび上がり、それは天に上ったのち、幾重にも重なる影と共に、奴を目がけ放たれていく。
「うごぁぁぁぁぁぁ! い、妹萌えは、不滅だぁぁぁぁぁ!」
爆音とすさまじい風が吹き荒れる。そして、立ち上がる煙の中で倒れている主将。
やったのかな? もう、私にもお兄ちゃんにも残っている力が、ない……。
お願い、これで終わりにして!
しかし、ゆっくりと立ち上がってくる主将。
その眼光は鋭く、まだ瞳が紅に染まっている。
「そ、そんな。あれだけの攻撃をくらって、まだ生きているの?」
シープラさんも驚いている。
お兄ちゃんは私の背中に体重をかけないと立っていられない状態だ。
私も、もう動けそうにない……。
ごめん、お兄ちゃん。
結局お兄ちゃんを守れなかった……。
「お、お兄ちゃん。私の事は良いからここから逃げて! 私が何とか――」
するとお兄ちゃんは私の頭をポンポンと叩いてくる。
「そんな顔すんなよ。こっから先は兄としての役目だって分かるだろ?」
お兄ちゃんはゆっくりと主将に向かって歩き始めた。
そんな、立っているのもやっとなのに!
「お前は、妹を泣かせた! 苦しめた! 俺の大切な妹を!」
お兄ちゃんの拳が何かに包まれている。
もしかしてモエルギ―? 拳だけにモエルギ―をまとっているの?
「主よ! 危険だ! まだ主には早すぎる!」
「関係あるか! 俺は弓を守る義務がある! この命なんか惜しくないんだよ!」
そして、お兄ちゃんは立ち上がった主将に向かって頬を思いっきり殴った。
再び倒れる主将。
「い、妹を守る力……。それが、百パーセント以上の力を出す、萌えの境地……」
「そんな事しるかよっ。俺はただ、妹を泣かせた奴をぶっ飛ばすだけだ!」
「っふ、妹は良いな。我も、妹がほし、かった……。い、もうと、萌えキュン……」
あ、倒れた。
もう、立ち上がらないよね?
次の瞬間、主将から変な黒い靄が浮かび上がり、次第に一ヶ所へまとまって何か石みたいなものになって、地面に落ちた。
何だろ? 何だか黒い宝石みたい。
「あぁぁぁ! 疲れた! 腰痛い! 早く帰ってラノベの続き読む!」
お兄ちゃんが叫んでいる。
シープラさんはさっきの落ちた石をニヤニヤしながら拾って、懐に入れた。
「あはっ、今回のは大きいわね。大当たりだわっ」
なんだかちょっとだけイラットする。
なんでだろう? でも、お兄ちゃんと沢山話せた。
ギュッとしてもらって、私的にはラッキーかな?
すると、世界がセピア色に変わってくる。
倒れた主将やお兄ちゃんは普段通りのカラーだ。
気が付くと、さっきまでの服装に、お兄ちゃんと出会った場所にいる。
どうやって戻ってきたんだろう?
「よし、こいつはこのままにして、帰ろう!」
無茶な話をしているお兄ちゃん。
「そうですね、このままでもいいですね!」
それに乗って来るシープラさん。
「し、死んでないよね? 生きてるよね?」
「大丈夫ですよっ。気絶しているだけ。数分もすれば元に戻るし、きっと意識を奪われてからの記憶もないので、そのままそっとしておきましょう」
「そうなの? 大丈夫ならそれでいいんだけど……」
「ほら、弓! その格好のままだと帰れないだろ? 学校まで付き合ってやるから、一緒に帰るぞ!」
「うんっ! 今日は一緒に帰ろう!」
また、仲良し兄弟になれた。
今朝までの関係が嘘のようだ! 私の心にずっと降っていた冷たい雨が止んだ。
今日から毎日快晴だよっ!
「ほら行くぞ!」
「待ってよお兄ちゃん! おいて行かないでっ!」
自然に手を繋いでその温もりを感じた。
お兄ちゃんの手、大きいしあったかいね。
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