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家族で異世界生活  作者: しゅむ
95/215

95. 謝罪

前回のお話

・・・無い・・・だと・・・?


 優剛が騒がしい謁見の間を出ると、中の様子がわからず不思議そうな顔をした案内の女性が待っていた。

「あれ?終わったんですか?」

「はい。外まで案内して頂けますか?」

「こちらです。」


 騒がしい謁見の間の扉をチラっとだけ見て、女性は頭の切り替えを終えて、優剛を外まで案内した。

「ありがとうございました。」


 優剛は女性に感謝を述べてから、跳ね橋を渡って城門を抜けていく。

(あぁ・・・ここで消えたら目立つかな・・・?目の錯覚とか思ってくれないかな?)


 時刻は夕方。王城の周囲は単騎も多いが、多くの馬車が走っている。徒歩の優剛は珍しく、その服装も相まって非常に目立っている。


 結局、すれ違う人は優剛をジッと見るので、この場で飛び上がるのは諦めてラーズリア邸に戻る事を決断した。


 そんな優剛の後ろを馬が駆け足で近づいてきて、優剛に近づくにつれて速度を落としていく。そして、騎乗している者が、横に並んだ優剛の顔を確認するように覗き込んできた。

「ユーゴ様!」

「はい?」


 思わず返事をしてしまった優剛に騎乗していた者は下馬して、笑顔で手紙を差し出してくる。

「国王陛下のお手紙を預かりました使者でございます!」

(なんだよ。また呼び出し?面倒だな・・・。)

「ありがとうございます。」


 優剛は手紙を読まずに、懐に放り込んで再び歩き出した。読まなければ『知らん』で押し通せると考えたのだ。しかし、優剛の前を遮るように先ほどの使者が再び跪く。

「読んで頂きたい!」

「今ですか?」

「はい!ユーゴ様の返事を聞いてから帰るように厳命されております。」


 優剛が手紙を読んで何か言うまで帰れない使者に同情した優剛は、すぐに懐から手紙を取り出して読み始める。封の切り方は雑であった。

(あぁー。うーん。回りくどいんだよね。僕は貴族じゃないだから聞きたい事だけを書いて欲しいなぁ。)


 手紙を読み終えた優剛は口を開く。

「長い。僕は貴族じゃないから手紙は短くして。あとバスタは生えるよ。」

「ありがとうございます!」


 使者は優剛から返事を聞くと、すぐに馬に乗って駆け出した。優剛の返事をバスターナンに届ける為に。

 かつてないほど厳しい表情で命令した主の元に走った。


 すぐに報告が聞けたバスターナンは安堵した。仕組みはわからないが、髪の毛は生える。優剛が生えると言ったのだ。エキズミと違って髪の毛が生えるのは確定事項である。


 優剛はエキズミの毛根を殺した。あえて僅かに髪の毛を残す鬼畜っぷりだが、禿げた場所は二度と生えないように毛根の組織を殲滅した。しかし、バスターナンの毛根は壊していない。髪の毛を抜いただけである。痛覚を遮断して丁寧にブチっと抜いただけである。


 エキズミは5日間、何処に行っても震えたままで会話も出来なかった。ようやく落ち着いたと思って、優剛に関する話題を出すと、再び震える状況に戻ってしまった。

 エキズミの周囲では自然に優剛の話題は出なくなっていった。


 その後、何か月経っても状況は変わらない。

 最近では優剛の噂を聞いた変わり者が優剛の真似をして着物を着始めている。エキズミは外出先でそんな変わり者を見るだけで震えあがってしまう。


 エキズミの様子を見た他の貴族や家臣たちは、優剛に報復する事を考えられなかった。自分たちも同じ目に合うかもしれない。アレに挑むくらいなら、国王の暗殺を企てた方がマシである。


 優剛が謁見してから数週間後、再び優剛にバスターナンから手紙が届いた。内容は『会いたい』という恋文のような短い手紙。


 優剛は読み終わった後に床に投げつける。

「ラブレターか!」

「ユーゴ様!国王様からの手紙になんて事を!」


 慌ててトーリアが手紙を拾って丁寧に折り畳む。

 バスターナンは優剛に手紙が長いと言われたから短くしたのに、長かった時より手紙の扱いが悪くなった。しかし、短い故に優剛は手紙を全部読めたのだ。今までの手紙の時とは違うのだ。


「ちょっとバスタに会いに行くね。」

「はい。お気をつけて。」


 トーリアも今更何も言わない。フィールドから王都まで行って帰るなら2週間の旅になる。しかし、優剛にとっては少し遠くの友達の家感覚である。


 バスターナンは執務室で書類仕事に追われている。様々な申請書や嘆願書に目を通して署名する。傍には護衛のレオネルも居る。


 そんな部屋の中に突然あやしい侵入者が扉から入って来る。

 レオネルは素早くバスターナンを自分の背後に隠す。部屋の中に居た文官たちも椅子から立ち上がって警戒状態である。

「何者だ!?」

「優剛です。」

「はぁ?」

「ぶっ!」


 呆気にとられるレオネルの背後から、顔だけを出して優剛を確認したバスターナンは吹き出してしまった。ツッコミ所が多すぎるのである。優剛が来るのは早すぎる。日程的にはフィールドの優剛に手紙が届いた直後くらいである。そして思い出されるあの夜の襲撃面会。


『ユーゴだから・・・。』


 バスターナンは無理矢理自分を納得させて仕事を中断する。文官たちには指示を出して、レオネルにも指示を出す。そして、優剛と共に自分のプライベート空間にゆっくり向かう。

 急ぎたい気持ちはあるが、ゆっくりしか歩けない。髪が揺れると後頭部の禿が見えるから。


「ユーゴ!すまん!」


 部屋に入ったバスターナンは優剛に頭を下げて謝罪していた。威厳たっぷりだった部屋の外とは違い、部屋の中では震える子犬のようだ。


「いや・・・、別に怒ってないんだけど・・・。むしろ突然来てごめん・・・。それと禿げがデカ過ぎたね・・・。マジでごめん。」


 バスターナンが頭を下げれば髪が動く。その隙間から優剛が作った禿げが存在感を主張していた。


 一国の王と平民が頭を下げ合ってペコペコ謝罪を繰り返す。この部屋にはまだ2人以外の人間は居ない。

 謝罪合戦が落ち着いて2人は椅子に座った。同じタイミングで侍女も部屋に入ってきて、それぞれに紅茶を淹れていく。


 バスターナンは紅茶を一口飲んでから口を開く。

「謁見の際はすまなかったな。褒美を渡すところまでは事前に決まっていたのだ。しかし、あの日は奴らの陰謀と戦の後片付けで俺の配下が出払っていてな。民を盾にされて結果的にあのような形になってしまい本当にすまなかった。」


「僕は良いんだけど、公の場でバスタにタメ口を使ったけど大丈夫だった?」

「ハッハッハ!むしろ最高のタイミングだったぞ。あの1件以来、俺の勢力が力を増している。国王と魔王が友人だってな。ハッハッハ!」


 バスターナンは優剛に感謝するように告げた。優剛は苦笑しつつも口を開く。

「それなら良かったよ。」

「うむ。俺に敵対する勢力も虫の息だ。たった数週間でこの成果は信じられんよ。」

「おぉ!じゃあ先代に仕えてた残りカスの駆逐が終わるんだね。」


 バスターナンは苦笑しながら口を開く。

「くっくっく。言い方は悪いが、その通りだな。もちろん父に仕えていた優秀な人材には協力を頼んでいるぞ。」


「そっか、そっか。良かったね。それで手紙で会いたいってあったけど、用件って何?」

「やはり手紙を読んだのか。・・・早すぎじゃないか?」


 優剛は両手を広げて羽を模倣して告げる。

「飛べるしね。」

「それでも早すぎるのだがまぁ良い。」


 バスターナンは椅子に深く腰かけ直して、大きく息を吐き出してから告げる。

「1つは直接謝罪がしたかった。俺はフィールドまで行けないからな・・・。もう1つは・・・。」


 コンコン。という軽い音が部屋の扉を叩いた。そして、扉を開けて入って来たのはレオネルである。護衛が護衛対象から離れるのは不自然だが、優剛の傍は世界一安全である。

「遅くなって申し訳ありません。」

「いや、良いタイミングだ。」


 レオネルはバスターナンに手紙のようなものを手渡して、バスターナンの背後に立つ。

「先日、エルフの国からユーゴ宛に手紙が届いた。中を見るのはエルフに申し訳ないので見てないが、俺宛の手紙にも内容が書いてあったぞ。」


 優剛は思い当たる事が無いのか思案顔でバスターナンの言葉を待つ。


「戦での回復魔術に対しての感謝とユーゴの所在地についてだったな。」

「え?」


 優剛はラグナイドに自分の家が何処にあるか伝えていない。ラーズリアに尋ねればフィールドにある事まではわかるが、その先はラーズリアでもわからない。


 しかし、フィールドの大魔術士優剛まで届けて欲しい。こんな宛先の依頼でもしっかり優剛の屋敷まで手紙は届く。大魔術士だろうが、魔王だろうが、神だろうがしっかり届く。


 その為、優剛の屋敷には毎日のように手紙が届く。その全てにトーリアが目を通して、必要な手紙にはトーリアが返事を書く。優剛は手紙を読まないのだ。


 メールの返信もしないで麻実に怒られる男だ。手紙を書く訳が無いのである。


 優剛に届くエルフからの手紙。内容もエルフの国にはいつ来るのか?という引きこもりの優剛の事を全く理解していない内容である。

 エルフに関する知識も無いので、本当にエルフの国の英雄ラグナイドなのか真偽を確かめる事が出来ない。優剛に確認しても無視して良いよと言われる。


 その結果、優剛の屋敷にはラグナイドの手紙が複数届いている。『ユーゴ!いつ来るんや!?』という手紙である。


「まぁ、読んでみてくれ。」

 テーブルを滑るように優剛の元に来た手紙の封を乱暴に開ける。乱暴だが、ゴミは出さない。ゴミが散らかったらゴロゴロする時に気になるからだ。


(うーん。まだ戦が終わってそんなに経ってない気がするんだけど・・・。)


 手紙の内容は怒りだった。いつ来る?という怒りと、返事を返せという怒り。優剛は『行く』とは言ったが、すぐに行くとは言っていない。しかし、ラグナイドは早く優剛に会いたいのか、人間の国の王まで使って優剛に来るように催促しているのだ。


 エルフの国の英雄は権力もあるのだ。


 優剛が手紙を懐にしまって溜息を吐き出す。そんな優剛を見てバスターナンが口を開く。

「どんな内容だったのだ?差し支えが無ければ教えてくれ。」

「いつエルフの国に来るの?っていう子供みたいな手紙だよ。」


 バスターナンは優剛の答えを聞いて慌てて立ち上がる。

「その・・・なんだ・・・。エルフの国に行くのか?」

「うん。行くよ。ラグさんとは気が合ったからね。」


 バスターナンは力なく椅子に座って俯いてしまう。そんなバスターナンの後ろにいるレオネルが口を開く。

「ユーゴさん、エルフの国に移住するんですか?」

「しないですよ。遊びに来て欲しいって意味ですよ。僕の家はフィールドです。あそこから動く気はありません。」


 レオネルのファインプレーである。

 優剛が動く気が無いのは、優剛の屋敷に信長が居るからだ。

 魔道具になった信長を移動させるのはリスクがある。1度、地面と一緒に屋敷を異空間に放り込んで外に遊びに行く案も出たが、信長が消えるかもしれないという事で止めたのだ。

 時折、ダメリオンが信長の魔道具や服を研究しに遊びに来るが、未だに仕組みは解明出来ず、消えたら復活の目途は無い。


 優剛が自分たちの国から出て行かない事で、元気になったバスターナンは嬉々として語り始める。自分たちがどうやって勢力を伸ばしたか。どうやって煩い爺どもを黙らせてきたか。

 バスターナンは友人である魔王との会話を楽しんだ。


 秋も深まり気温も下がってきた。優剛は度重なるラグナイドの手紙を無視して、未だにエルフの国には行っていない。行っている間は由里にも会えないし、気分が乗らないからだ。


 優剛は自分の屋敷の庭で真人と模擬戦をしていた。いや、優剛に言わせれば戦いごっこだ。ヒーローごっこは止めている。


 真人は左右に持った2本の木剣で、斬撃と突きを巧みに組み合わせて優剛に斬りかかるが、短い2本の木の棒を持った優剛に全て防御されるか受け流される。

 真人の剣は回避すると飛ぶ斬撃に切り替わって、射程が伸びたり、曲がったりするのだ。


 優剛は丁寧な受け流しと防御を繰り返しつつ、真人が攻撃一辺倒にならないように反撃も混ぜる。


 その戦いは非常にレベルが高く、7歳とは思えない真人の動きと剣術は、偶に見ている優剛の護衛を担当している獣人たちを驚かせている。

「はぁー、坊ちゃん、また強くなってねぇか?」

「ユーゴ様はマコト君が何と戦う想定で鍛えてるんだろ・・・。」


 タカとフガッジュは門の外で後ろを振り返って模擬戦の様子を観察している。護衛という役職であるが、基本的に優剛たちの護衛は不要。しかし、抑止力という意味で護衛が居るのは大事である。


 ザザっと距離を取って優剛を睨む真人の魔力が高まっていく。

(怖っ・・・。)


 下からの突き上げに怯えるチャンピオンの心境で、優剛は真人の成長に恐怖している。真人にボコボコにされたら父の威厳が無くなるのではないか。元々ない威厳を守る為に、父は息子よりも強い存在でありたいと思っている。


 息子が成熟して、力ではない方法で年老いた父と語り合うその時まで。


 真人は距離を詰めて右の剣を振り上げ、左は突きの構えだ。素早く分析を終えた優剛は防御の構えで迎えるが、珍しく優剛が驚きの表情に変わる。

 真人の剣の横に魔力で形作られた剣が生まれて、合計4つの同時攻撃が優剛に襲い掛かる。


 優剛は大きく後ろに跳んで木剣を回避。しかし、斬撃をそのまま飛ばしたかのような魔力の剣と、予め出されていた魔力の剣の合計4つが優剛に向かって飛んでいく。

(応用力あるなぁ・・・。)


 剣を振り切った真人はすぐに優剛に向かって駆け出している。既に真人の剣の横には追加の魔力の剣が浮いているのだ。

(これ魔力で真人の攻撃が相殺出来ないと詰むか・・・?)


 優剛は飛来してくる4つの魔力剣の軌道が変わっても良いように、短剣で防御出来る姿勢は維持しまま、あえてギリギリで回避する。

 僅かに軌道を変えた魔力の剣だが、優剛を傷つけるには至らず後ろに抜けていく。


(うーん。やっぱり数が増えたら曲がらないか。)


 優剛は先ほどと同じように、向かって来た真人の攻撃を後ろに跳んで回避する。

(気づくかな?気づくかな?)


 真人の次の攻撃にワクワクする優剛を待っていたのは、同じように飛ばした魔力の剣を追いかけるように優剛に接近する真人である。優剛は先ほどと同様に先行する魔力の剣を難なく回避して、真人の次の攻撃に備える。


(きたぁぁぁぁ!!)


 優剛が避けて後ろに飛んでいった魔力の剣が途中で止まって、優剛の背中を目掛けて飛んで来ている。優剛の前方からは真人が。背後からは魔力の剣が4本。合計8つの剣が優剛を挟撃の形で襲い掛かる。


 優剛は真人と背後の魔力の剣が自分に近づいたタイミングで横に素早くステップする。

 優剛の背中に向かって飛んでいた魔力の剣は、目標が横に移動しても曲がる事は無く、そのまま真人自身に襲い掛かる。


「うっわぁ!」


 真人は優剛の背中を狙ったつもりが、直前で自分の正面に現れた魔力の剣を慌てて迎撃する。


「ほーい。終了。」

 気軽な優剛の終了宣言である。

 優剛の持っている短い木の棒の先端は真人の喉に、横からツンと押し当てられている。真人が自分の攻撃を防御している隙を狙ったのだ。


「んーー!」

 真人は悔しそうに地団太を踏む。


「アイデアは良いんだけど、邪魔になったら消せば良いじゃん。」

「あっ。」

「接近戦で魔力を飛ばして武器にするなら、いつでもどんな状況でも消せるように練習しておく事と、自由に消せる分の魔力しか飛ばしちゃ駄目だよ。」

「はーい。」


 優剛は不貞腐れる真人の頭を撫でながら告げる。

「剣術も上達してると思うし、魔術の発想も良いよ。強くなったね。」

「へへ。」

(この真人に勝つラーズって凄いな・・・。)


 時折、優剛と一緒にラーズリア邸を訪れる真人は、ラーズリアと模擬戦を楽しんでいる。真人の魔力で強化された身体能力はラーズリアに劣るが、曲がって飛ぶ斬撃を備えているにも関わらず、ラーズリアは何度模擬戦をやっても真人に勝利する。

 近接戦闘での経験値が違うのだと言わんばかりに、子供の真人を翻弄して勝利する。


 優剛に褒められて嬉しそうな真人に優剛はそのまま告げる。

「たくさん食べて、たくさん遊んで、たくさん寝て、大きく強く成長して下さいな。」

「あい!」


 笑顔で見つめ合う親子にトーリアが告げる。

「ユーゴ様、ラグナイド様からお手紙です。」

「どうせいつ来るの?でしょ?」

「はい。」


 優剛は嫌そうにトーリアの持っている手紙を見つめる。そんな優剛を見ながら真人が口を開く。

「父さん、ラグナイドって誰?」


 もう舌足らずの呼び方ではない。しっかり『父さん』と発言する真人は成長期である。


 少し寂しい気持ちもありながらも優剛はしっかり回答する。

「エルフの国に居る友達だよ。」

「エルフ?」

「うん。関西弁を話す不思議な種族。」

「関西弁って日本語?」


 優剛は黙って「うんうん」頷く。真人はパアっと笑顔に変わって優剛に飛び付く。

「ぐへ。」


 優剛にしがみ付いた真人が、優剛の顔に頭突きするかのような距離で告げる。

「行きたい!エルフの国に行きたい!」


 異世界に来て日本語で話す機会は殆どない。たまに家族で話す時に漏れるくらいで基本的には異世界語だ。5歳で異世界にやってきた真人でも日本語が恋しいのだろう。


 日本語が使える。家族以外には通じない日本語が通じる人たちが居る。真人は優剛をギューッと抱き締めて再び口を開く。

「行きたーい!」

「わかった。行くから離して・・・離して下さい。」


 真人の「やったー!」という掛け声で手は離されるが、優剛に巻き付いた真人の足がさらにキツく優剛を締め付ける。

「ぐふぅ・・・、行く・・・行くから・・・。」


 呟くような優剛の声は真人の歓声でかき消される。優剛の異変に気付いたトーリアが格闘技の審判のような動きで、真人の背中や肩をトントン叩いてから抱き上げて優剛から引き剥がす。


 レフェリーストップで優剛の敗北である。

 苦しそうな優剛に近寄ろうとする真人の右腕を持ち上げて止めているトーリアは、勝者を宣言する審判のようだった。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

皆様の読んでいた時間が少しでも良い時間であったなら幸いです。


評価や感想もお待ちしております。ブックマーク登録も是非お願いします。


追記や修正はツイッターでお知らせしております。

https://twitter.com/shum3469


次回もよろしくお願い致します。

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