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家族で異世界生活  作者: しゅむ
93/215

93. 優剛式訓練の体験

前回のお話

勝ったぞぉ!

パーリーピーポー。


 ラーズリアは自分の事のように優剛の魔術を語った。異空間魔術以外の魔術については特に秘密にしなくて良いと言われている。優剛も聞かれれば答えるので、何も秘密は無いと思っていたが、ラーズリアも魔術士の常識は知らなかった。


 ラグナイドから優剛の魔術の使い方は国宝級の秘密だと言われて、聞いていた3人に申し訳なさそうに告げた。

「内緒な。」


 当人である優剛は笑っているだけで、怒りもしないのだ。優剛の常識では魔法が飛び交う世界が常識な為、この世界の魔術には不満があった。もっとみんながバンバン魔術を使えれば良いのに、とも思っている。


 しかし、優剛式魔術を聞いても一切真似が出来ない。そもそも基礎的な魔力操作技術が足りていないのだ。その事がラグナイドは非常に悔しく、普段どんな訓練しているのか優剛に尋ねた。


 優剛は嬉々として魔力で手の平サイズの人形を作り始める。そして、少し大きな人形の周りに小さな人型の人形を集めて、反対方向には虫型の人形を多数作り上げる。

 麻実も見た事がある例のやつだが、クオリティーが遥かに向上している。


 これだけでも十分ラグナイドを絶句させるものだったが、優剛は笑顔で腕を横に振って口を開く。

「なぎ払えー。」


 大きめの人形の口から光線が吐き出される。光線は虫人形を盛大になぎ払う。ヴァルオーンは興奮して拍手までしている。しかし、すぐに優剛は口を開く。

「腐ってやがる。・・・早すぎたんだ。」

「なんだ・・・うおっ、腐ってたのか?」


 素直なヴァルオーンは優剛に尋ねるが、優剛は何も答える事は出来ない。本当に腐っていたかどうかは知らないからである。ただ単純にアニメ映画の好きなシーンを再現しているだけである。


「まだ見る?」

「いや・・・、十分だ。」

「ししょ・・・神様。」


 魔術を使うラグナイドとチャミレーンからしたら意味不明である。今のが全て魔術なのか?遠隔で何体もの人形を作って光線まで出した。光線が発射される前に全ての虫が気持ち悪く多数の足を動かして前進していた。光線に当たった虫はバラバラに吹き飛び、それぞれが違った形で破損されていて、さらに光線を出した人形はドロドロ溶けるように崩れた。


 当然、優剛は魔石を使っていない。優剛式魔術の特徴である、その辺にある物を利用して、魔術として再現しているのだ。火も水も科学知識を応用して種を作成してしまう。


「普段はこんな感じで遊んでるかな。」

「・・・遊び?今のは遊びなのか?」

「師匠・・・、僕は普段の訓練が知りたいです。」

「明日の朝やる?毎日やってる訓練は1時間だけだよ。」


 優剛の申し出にラーズリア以外が興味津々で応じる。

「ユーゴの訓練か!興味があるな。」

「1時間だけって言うのは不満だが良いだろう。」

「師匠!ありがとうございます。」


 ラーズリアはそれを聞いてすぐに口を開く。

「俺は寝るぞ。明日の訓練は早朝にこの場所でやろう。」


 その事に違和感を覚えたヴァルオーンがラーズリアに尋ねる。

「む?もう寝るのか?」

「ユーゴは”1時間だけ”と言っているが、ユーゴの訓練を舐めるなよ。俺は万全の体調が欲しいから寝るぞ。」


 軍議をした時よりも真剣なラーズリアの訴えに渋々同意した3人は、祝宴を抜け出して朝に備えた。優剛も特にやる事は無いので、用意して貰ったテントでハルと一緒に眠りについた。


 翌朝。ラーズリアが優剛のテントを訪れる。

「ユーゴ、起きてるか?」

「・・・ん。」


 もぞもぞ動く優剛にラーズリアが告げる。

「みんなテントの前で待ってるぞ。」

「・・・みんな早いね・・・。」

「ユーゴが遅いんだよ・・・。」


 参加者は別の場所に集合していたが、優剛だけが現れず、全員で優剛のテントまでやってきたのだ。優剛は這うようにテントから顔を出して、外の薄暗さに顔を顰める。

「師匠、おはようございます!」

「ユーゴ、おはようさん。」

「遅いぞ!いつまで寝てるつもりだ。」

(まだ暗いじゃん・・・。お前ら元気すぎだろ・・・。)


 優剛は大きく欠伸をして、目は半開きのまま尋ねる。

「おはようみんな。ご飯食べた?」

「終わってからだ。」

(早く始めて朝ご飯にしないと可哀想だ。)


 優剛はテントの前で座り込んで腰の革袋という名の異空間から10分の砂時計を取り出す。

「ん。始めるよ。この砂時計の砂が落ちるまで魔装ね。」


 優剛の宣言にラーズリア以外は笑顔を見せる。

「なんだ。楽勝だな。」

「もっとキツイと思ってたな。」

「師匠の魔装が見れる・・・。」


 残念ながら優剛の魔装は見られない。隠蔽の魔装は全力時の3割ほどの性能だが、全力で隠蔽しているから3割なのだ。優剛は常に全力の魔装を纏っているのと同じ魔力量を使用しているのだ。


 この訓練は魔装を纏った際の魔力の漏れや穴を無くし、無駄のない魔装を纏う為の訓練だ。


 しかし、優剛以外が戦闘時のような強度で魔装を纏えば、常に薄い魔装を纏っているラグナイドでも微量な魔力が漏れ出す。普段から魔装を纏っていないヴァルオーンとチャミレーンに、先ほどまでの余裕はない。必死の形相で優剛からの指摘を受け続けている。


「ヴァルさん、真面目にやってる?そことそことそこね。漏れすぎだよ。チャミも、そことそこね。ほら、そっちからも漏れたよ。」


 ラーズリアは目を閉じて魔装に集中している。経験者は違うのである。

「ラグさんは上手いよね。漏れる量も少ないし・・・あ、足首から漏れてるよ。」

「くっ・・・。」


 この訓練には見学者もそれぞれの部隊から少数が訪れている。エルフ、獣人、ラーズリアとチャミレーンの部下が数名である。


 始めの内は面白がって同じように魔装していたが、3分ほどで見学者たちは諦めた。魔装の魔力を漏らさないというのは、精神的にも非常にキツイ。さらに空いた箇所の修復には魔力を消耗するし、漏れ出た魔力の分は疲労もするのだ。


 何より優剛の指摘がエグイ。ほんの少しの漏れも穴も見逃さない。


「しゅーりょー。次は身体の何処でも良いから、こんな風に魔力で数字を作って。1から10までね。ほら、ほら、バテてる暇なんてないよ。」


 優剛は膝に手を付いている中腰のヴァルオーンとチャミレーンに早く始めるように促す。ラグナイドも疲れているが、2人ほどではない。優剛に言われた通りに魔力で数字を作り出す。


 ラーズリアは慣れた様子で数字を作り続けている。

 ラグナイドは自分が作った5の丸みの部分に不満そうな表情だ。2や3の時も丸みが角ばってしまい、優剛のように綺麗な丸みを帯びた数字を作る事が出来ない。


「ぐあぁぁぁ!!なんで3はこんなにグニャグニャしてるんだぁぁ!2もウザかったが、3はこの世から消したくなるな!!ぬぉぉおお、曲がれぇぇぇ!」

「師匠!3が憎いです!」


 優剛は2人の叫びを無視して終了を告げる。

「しゅーりょー。次は放出。魔力玉を作って浮かべる。10まで数えたら・・・あそこの木にぶつけようか。」


 ラグナイドはホッとした。この訓練は簡単である。魔力玉を作って少し遠くの木に当てれば終わりである。似たような訓練は経験があったのだ。


 早々に魔力玉を木にぶつけた時に、優剛から次の課題を告げられる。

「ぶつけたら次は1周して戻して。」


 ラグナイドはバッという音が聞こえてきそうなほどの勢いで優剛を見た。首を傾げる優剛も手本が必要か?という思いから、魔力玉を放って木の周りを何度か周回させてから魔力玉を手元に戻した。


 完璧に制御された魔力玉の動きにラグナイドは驚きで目が離せなかった。

「最初は1周で良いからね。」


 ラグナイドは苦戦する。曲がらない事に苦戦する。曲がったと思ったら、魔力玉が木の裏に回った際に消えてしまう。1周するだけなのが、これほど難しいとは思わなかった。

 しかも優剛は『最初は』と言っていた。まだまだこの訓練も入り口に立っているに過ぎない事を自覚する。


 ヴァルオーンは魔力玉をぶん投げるように飛ばして吠えている。その様子は陸上競技の投擲のようだ。

 しかし、どんなに全力で吠えながら魔力玉を投げても、ヴァルオーンの魔力玉は手が届くか届かないかの地点で儚く消失する。腕の振る早さとは対照的に、飛んでいく魔力玉の速さも極めて遅い。


「ヴァルさん、吠えても魔力は進まんよ・・・。」

「があぁぁぁぁあ!」

 ヴァルオーンの空しい咆哮は続いた。


「しゅーりょー。次は強化ね。」

 ヴァルオーンは小さく拳を握る。身体強化は得意である。ここまでは不甲斐ない結果に終わっているが、この訓練では優剛を驚かせてやろうと身体に魔力を込める。


 しかし、優剛の周りに浮かぶ無数の魔力玉を不思議そうに見つめる。

「強化は強化でも反射神経の強化がメインね。面倒だからわからなかったら聞いて。わかりやすく言えば、玉を避ければ良いだけの簡単な訓練だよ。」


 3人はここまでの訓練内容が厳しすぎたと思って、ここで休憩のような内容を混ぜる事で後半の訓練に備えるのかと考えた。優剛は『簡単な訓練』と言ったのだ。


 その甘い、甘すぎる考えは、すぐに木っ端微塵に砕け散った。


 鬼だ。鬼が居る。3人よりも見学者たちの目には畏怖が宿っている。優剛の周囲に浮かんでいた魔力玉が消える。ヴァルオーンは吠えながらも魔力玉を避けるような動きをしていた。

 ヴァルオーンがニヤっと笑って一息吐いた瞬間に、額に何かがぶつかって仰け反る。


「ほれ、ほれ。休憩なんかないよ。常に強化しながら備える。強化に集中しないと玉に当たるよ?・・・ん?ずっと打ち続けるなんて言ってないよ?維持するだけって時間も大事。ほら、強化弱めたら駄目。」


「しゅーりょー。」


 ボロボロだった。顔面に魔力玉を喰らっても痛くはない。しかし、3人はボロ雑巾のような状態で立っている。

 ラーズリアは経験者である。疲労はあるが、3人ほどボロボロの状態ではない。


 やっと終わった。座り込んだ優剛を見て、訓練の終わりを推察した。

「次は魔術ね。なんでも良いから魔術を使って。」


 困惑する3人を無視してラーズリアは飛ぶ斬撃の練習を始める。

 ラグナイドは素早く訓練の意図を読み取って火玉を作る。常時身に着けている魔石で火の魔術を使用する事は、戦闘中でも使えるように訓練している。しかし、優剛の手を見て火玉が消失する。


 優剛の手は炎に包まれている。そんなものを見れば魔力制御に意識が向く訳が無いのだ。優剛はなかなか魔術の訓練に集中しない3人を見て口を開く。

「ごめん、ごめん。魔術の元はこれを使って。」


 火の玉と水の玉が3人の目の前に浮かんだ状態で現れる。


 訓練に集中出来なかった理由は優剛の魔術に圧倒されたからだが、目の前に火と水が用意されれば、魔術に集中するしかない。もう優剛が何をしても驚きで思考が停止する事も少なくなってきた。


『ユーゴだから』の呪文を習得しつつあるのだ。


「しゅーりょー。」

 その言葉を聞いてヴァルオーンは大の字で倒れた。ここまで高度に様々な魔力を使い続けた事は無かった。疲労感で手足を大きく伸ばして目を閉じる。


 しかし、休憩ではない。既にラーズリアは笑顔で準備体操している。


「最後は鬼ごっこね。」


 その言葉を合図にラーズリアが優剛に飛び掛かった。目を丸くして驚くラグナイドとチャミレーン。

 突然、飛び掛かったラーズリアもそうだが、最小限の動きで避けた優剛の方が異常である。その後も最小限の動きでラーズリアを避け続ける優剛が口を開く。


「3人も来て良いよ。僕に触ったら終わりだよ。」


 鬼ごっこをする時は優剛の魔装が見えている。隠蔽や圧縮をしたままではラーズリアから逃げ切る事は出来ないのだ。

 ヴァルオーンはガバっと起き上がって必死の形相で追いかけるラーズリアと、余裕の表情で避け続ける優剛を見つめる。

 ラグナイドはラーズリアの邪魔をしないように気を付けて、優剛に触れようとするが、全く触れる気がしない。それはチャミレーンが加わっても変わらない。


 10秒ほどでヴァルオーンも理解する。そして、優剛を捕らえる。そう決意して、優剛に向かって駆け出すが、その手は空を掴み続ける。


 ヴァルオーンが優剛に触ろうと手を伸ばし続けるが、一向に優剛を触る事は出来ない。それは他の2人も同じである。それを見たラーズリアが素早く指示を出す。

「触ろうとするな!殴れ!蹴れ!体当たりしろ!」

(ちょ、ラーズ。物騒な指示するなよ!)


「ガッハッハ!遠慮は要らんという事だな!」

 ヴァルオーンは一瞬笑った後に目を細めて、徐々に魔装を強めている優剛に殴りかかる。

 右ストレートを優剛に放つが、首を横に倒して回避される。しかし、そのまま身体を回してラリアットのようにして優剛の側頭部を襲う。


 優剛は横に滑るようにしゃがみ込んで回避する。そこを狙っていたかのように、ヴァルオーンの蹴りが優剛に当たって大きく吹き飛んでいく。


「手応えは!?」

「チッ。何にもねぇ!」


 ラーズリアの短い問いにヴァルオーンは不満そうに告げた。ラーズリアも似たような経験がある。完璧なタイミングで優剛に一撃を与えたと思っても、優剛が素早く跳んだだけで、何の感触も残らないのだ。


(あっぶね。服はセーフなのかな?この雰囲気はセーフだよね・・・。)


 地面を滑るように着地した優剛は、ヴァルオーンに触られたコートの裾をバッと1度払う。鬼ごっこでは服に触ってもOKな場合が多い。しかし、4人は優剛に一撃を与える為に拳や蹴りを放っている。服に触れたくらいで満足するような者たちではなかった。


 5分も経てばラーズリアだけが、始まった時と同じ勢いを保って優剛を追いかけている。

「ほらー、休憩じゃないよー!魔力玉でぶつけても良いよー。」


 震える足を殴りつけながらヴァルオーンが再び優剛に向かう。

 ラグナイドは魔力玉を作って優剛に放つが、後ろに目でも付いているかのように全て回避される。むしろラーズリアやヴァルオーンに当たっている。

 チャミレーンは走りながら接近して魔力玉を放つという工夫をするが、優剛には全く通用しない。


「しゅーりょー。」


 ラーズリアは座り込んで息を整える。他の3人は倒れて動かない。

「これで1時間の訓練はおしまいでーす。」


 優剛は3人が落ち着いたタイミングで口を開く。

「本当なら1時間の訓練中は、ずっと最初の魔装を維持したままね。」


 ようやく身体を起こしていたヴァルオーンが再び倒れた。

 ラグナイドは口をパクパクさせるだけで言葉は出ない。

 チャミレーンは座ったまま目を輝かせて優剛を見ている。


 そんな3人を無視して優剛は説明を続ける。


「1から10まで10分で作れたら、残った時間はなんでも良いから作って遊んで良いよ。」

 優剛はスプーンやフォークなど様々な物を作って例を示す。


「これは魔術を使って何かを作る時にイメージ通りになる為かな。こんな感じで。」

 優剛の目の前に浮かんでいるのは、シャドーボクシングをする小さな土人形である。


「放出も同じね。1周させて戻せたら、個数を増やす。それも出来たら飛ばしながら形を変える。」

 土人形が消えた優剛の周囲ではスプーンやフォーク、数字などが形を変えながら無数に飛び交っている。


 どれほどの研鑽を積んだら優剛のように魔力を操れるのか見当もつかない。見当もつかないが目標は出来た。優剛の訓練を終えて、それぞれがそれぞれの新しい目標を心の中で掲げた。


 説明を終えた優剛の足元にハルがやってきた。

『朝ご飯。』

『御意。』


「ちょっとハルに朝ご飯あげてくるね。」

 短い魔力通信を終えた優剛は、ハルの後ろに付いてテントに戻っていく。


 4人は優剛たちが朝食を終えても、優剛のテント前で何かを話し合っていた。チャミレーンは話しながら凄い勢いで何かを書いている。


 再びテントから出て来た優剛は、集まって座り込んでいる4人に向かって声を掛ける。

「まだここに居たの?朝ご飯食べてないんでしょ?」

「ユーゴの訓練に初めて参加した3人はもう少し休憩だな。」


 優剛はテントの前で身体を大きく伸ばしてから口を開く。

「んーー。・・・ラーズ、帰るわ。」

「おぉ、そうか。・・・それは残念だな。」

「心配だった事も解決したし、戦争は嫌いだからね。帰るよ。」


 チャミレーンはフラフラ立ち上がって口を開く。

「師匠!師匠の教えは本当に広めて良いんですか?」

「隠してないし良いよ。チャミが隠したいなら隠しなよ。その辺は僕じゃわからんから好きにして良いよ。」


 チャミレーンは一瞬考える素振りをしてから敬礼して感謝を述べた。


 ラグナイドが座ったまま優剛を見上げて口を開く。

「エルフの国に来いよ。」

「はい、はい。脇差も借りちゃったし、返しに行くよ。」


 結局昨夜、ラグナイドは優剛に脇差を押し付ける事に成功していた。


 会話を聞いていたヴァルオーンが口を開く。

「ユーゴ!獣人の国にも来い!歓迎しよう!」

「あー、気が向いたらね。」


 優剛は4人を見渡してから口を開く。

「僕は逃げるけど、みんな死なないようにね。」

「ユーゴ、ここから飛んで帰って良いぞ。歩いてここを離れるのは、許可だなんだで煩いからな。」


 慌ててヴァルオーンが口を挟む。

「飛ぶとはなんだ!?まだ何かあるのか!?」

「んー、フィールドに来たらわかるよ。」


 そう言った優剛は魔装する。全力ではないが、非常に濃密で非常に綺麗な魔装である。

「じゃあね。」


 その言葉を最後に、ハルを背中に巻き付けた優剛の姿が消えた。

 驚いたヴァルオーンが口を開く。

「消えたぞ!」

「上だよ。」


 ラーズリアは上空を眩しそうに見上げながら告げた。すぐに全員が遥か上空に居る優剛を探す。


 ヴァルオーンは優剛を見つけたのか、空を指差しながらラーズリアに尋ねる。

「あのゴミみたいな小さなやつか?」

「そうだな。」

「む?ユーゴが見えていたのか?」

「まさか。ユーゴが飛べるのは知っていたから、消えてすぐに上を探したんだよ。」


 チャミレーンが「あ」と呟いた時、優剛の姿は上空でも確認が出来なくなった。

 ラグナイドは上空を見つめたまま呟く。

「どんだけ速いねん・・・。空中やぞ・・・。」


 ラーズリアは呆ける者たちに向かって手を叩いて口を開く。

「さて、俺たちは進軍だ。飯食ってさっさと鎮圧して帰ろう!」


 こうして優剛の戦争は終わった。2泊3日という極めて短い期間の参加だったが、優剛の名は凄腕の回復魔術士としてその名が広まった。さらに優剛の全力の魔装を見た者と訓練の見学者たちは優剛を魔王と呼んで恐れた。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

皆様の読んでいた時間が少しでも良い時間であったなら幸いです。


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次回は1時間後の0時に更新予定です。

よろしくお願い致します。

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