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家族で異世界生活  作者: しゅむ
90/215

90. 信者

前回のお話

ここに凄腕の回復魔術士が居るって聞いた

弟子にして下さい!


 特別第3支援回復部隊の天幕には神の使いが居る。どんな怪我も数秒で治してしまう神の使いが居る。そんな噂を聞いた他の後方支援部隊や治療待ちをしていた者たちが、一斉に特別第3支援回復部隊の天幕に押し掛ける。


 通常であれば天幕の中も外も大混乱である。しかし、特別第3支援回復部隊の天幕には神が居る。その神は言った。

「もう面倒だから入って来たら、真っ直ぐ反対側の出口に向かうようにして下さい。歩けない人は背負っても良いし、寝かせたままでも良いんで、よろしくお願いします。」


 神の言葉に特別第3支援回復部隊の隊員たちは従った。入り口から出口まで隊員を配置して誘導する。重傷者は隊員が引き継いで出口まで運ぶ。


 涙ながらに助けてくれと懇願する者から、虫の息の怪我人を木の棒と布で作った簡易担架で出口まで運ぶ。慌てて追いかけて来る者を無視して出口まで運ぶ。神の言葉に従うのが彼らの使命である。


 当然、追いかけて来た者は怒っている。しかし、特別第3支援回復部隊の隊員たちは慌てない。自分たちも経験した事のある怒りだからだ。彼らは短い言葉で告げる。

「もう治療は終わってる。確認して下さい。」


 それだけ言って再び入り口に向かって駆け出す。次の怪我人が待っているのだ。


 大きな魔力と騒がしさにラグナイドが、特別第3支援回復部隊の天幕に現れた。

 天幕の外から見ても異常である。天幕を覆うほどの大きな魔力で満たされている。あれだけ大きな魔力は、維持するだけでも相当な消耗を強いられることになる。


 ラグナイドは外にいる第3支援回復部隊の隊員に中の様子が確認したいと願い出る。

「少しで良いから中の様子を見せてくれないか?」

「申し訳ございません。同様の申し出が多数あるのですが、怪我人を優先しております。ユーゴ様に無駄な魔力を使わせる訳には参りません。」

「ユーゴ?ユーゴが中に居るのか?いや、この魔力はユーゴの魔力か?」


 そうです。神の魔力です。隊員が口を開きかけた時に、大きな獣人が後ろから声をかけてきた。

「おい、この魔力がユーゴの魔力とは本当か?」

「ひっ。あ・・・そうです。」


「中に入るぞ。」

「あ・・・困ります。怪我人だけです。」


 ヴァルオーンは腰にしがみ付く隊員を引きずりながら天幕に入ってく。その後ろを何食わぬ顔でラグナイドも追従する。


 天幕の中に入った2人は絶句する。入り口で固まってしまった2人は後ろの怪我人から荒っぽい声で咎められる。

「おい!そんなとこで止まらんでくれ!」

「あ・・・あぁ。すまんな。」


 そう言いながら天幕の中をキョロキョロ見渡しながら歩く。すぐに端っこで椅子に座っている優剛を発見してそちらに向かう。

 優剛の後ろでは何やら必死にメモを取っている人間が居る。しかし、2人の興味は巨大な魔力である。


 優剛は近づいて来たラグナイドとヴァルオーンに気づいて右手を挙げる。

「さっきぶりでーす。」

「おい、説明してくれ。」


 気軽な優剛の挨拶を無視してヴァルオーンが本題に入る。それを聞いた優剛は嫌そうな顔で口を開く。

「えー。また説明するの面倒だな・・・。」

「なぁ、この通りや、頼むでホンマに。」


 ラグナイドの日本語での説得は優剛に効果抜群だ。例えそれが関西弁であっても優剛は懐かしさで嬉しくなってしまう。

「うーん。チャミ、お願い。」

「はい!ご説明します!」


 チャミレーンは何枚もあるメモの紙から何かを探して説明を始める。

「入り口から2mほどにあるのが、スキャンの魔力です。そして・・・。」

「待て待て、スキャンってなんだ?」


 すぐにヴァルオーンから質問が入る。ラグナイドも同じ疑問を持っているようで、うんうん首を縦に振る。


 その質問にチャミレーンは微笑んで口開く。

「良い質問です。スキャンとは身体の外傷や内部の損傷を診る魔力です。か・・・師匠は診る魔力と言っていましたが、スキャンとも言っていました。スキャンして怪我人の怪我を特定。怪我の種類、場所、有効な治療方法。すべてを入り口から2mほどの距離で師匠はご判断します。神様です。」


 チャミレーンは自分の事のように胸を張って説明する。優剛は優秀な説明役が出来た事で、面倒な説明を何度もしなくて良い事を喜んでいた。しかし、チャミレーンは時折、優剛を神様と呼んで優剛を困らせていた。


「ラグナ・・・、聞いた事あるか?魔術は専門だろ?」

「長老が似たような事が出来ると聞いた事がある。だけど聞いた話じゃ、手で触れ続ける必要があるって話だったぞ。それだけやってようやく手で触れていた部分の状態がわかるってだけだ。」


 獣人のヴァルオーンは魔術に疎い。魔力を外に放出して運用するのはエルフが長けている。そういった思いからヴァルオーンはラグナイドに確認したが、それでも聞けた話は目の前の状況が異質であるという事が再確認出来ただけだ。


「続けてよろしいですか?」

 チャミレーンの問いかけに2人は黙って頷いた。


「スキャンが終わった所から出口までは回復魔術を行使する為の魔力で満たされています。治療方法もご説明しましょうか?」

 ヴァルオーンは入り口から出口までの距離を何度も確認して首を左右に振っている。

 エルフの基準でも入り口から出口までの距離を魔力で満たすのは難しい。しかし、短時間であればやってやれない事は無いが、なんの機能も有していない半透明な煙の魔力で満たすくらいだ。


 先に我に返ったラグナイドだけがチャミレーンに向かって首を縦に振る。

「治療の過程は基本的には同じです。怪我人の血液を元に極細の糸を作って、傷を繋げてから自己治癒力を強化します。繋げてから治療する事で、何もしないよりも早く綺麗に治療する事が可能です。」


「それは骨折や内臓の損傷でも同じか?」


 ラグナイドの質問にチャミレーンは微笑みで浮かべて口を開く。

「その通りです。師匠の素晴らしさはそこなんです。今までの回復魔術では自己治癒力を強化する事しか出来なかった。まぁ、骨折なんかは繋いでから治していましたが、骨がバラバラになるほどの怪我は元に戻す事が出来ませんでした。変な形で繋がってしまうからです。」


 ラグナイドは思い当たる事があるのか、何度か頷いている。

「内臓の損傷も同じです。私たちが内臓の治療をすれば、失敗する事もあった。師匠は癒着と言っていました。正しくない場所とくっついてしまい、内臓が本来の役割を果たせない状態になってしまうと。だから師匠は内臓を縫合してから治療します。そうする事で癒着は発生しません!さらに身体の内部で出血した血液は魔力でまとめて、外傷から体外に排出します。体内に残った血液は痣の原因だそうです。師匠!師匠は神です!」


「うん。チャミ、落ち着こう。僕は人間だよ。」

 優剛は後ろのチャミレーンを見ない。ラグナイドとヴァルオーンが来る前から、信仰心のような熱い気持ちをぶつけてくるチャミレーンに少し恐怖しているのだ。偉そうに見える事もあるが、単純にビビっているのだ。


「待て!ユーゴはそれを遠隔でやっているのか?」

 ヴァルオーンも首を左右に振りながらも話を聞いていたようだ。体外から放出した魔力の扱いは困難。世界の常識であり、魔術士たちの永遠の課題である。身体能力を強化する事に特化しているヴァルオーンでも常識として知っている。だからこそ確認してしまう。


「その通りです。師匠は・・・、師匠はそれらを全て、体外に放出した魔力で行使しているのです。あぁ・・・師匠!貴方が神だったのですね!」

「いや・・・、神じゃないよ。人間だからね。どう見ても人間だよ。光ってないし。」


 しばらくの沈黙の後にラグナイドが口を開く。

「ユーゴ、魔力は尽きないのか?」

「うん。あぁ・・・でも疲れたね。早く寝たいわ。」


 ラグナイドでもこの規模の魔力を体外に出したら数分で倒れる。魔力を体外に出すだけで数分である。優剛のように様々な機能を付与し、細かく制御までは出来ない。

 疲労感を想像するだけで吐きそうになるが、優剛の様子はそんな事を感じさせない軽い雰囲気である。


 優剛の周りでは奇妙な沈黙が続いている。

(あれ?どうしたんだろ。3人とも黙っちゃったな・・・。)


 チャミレーンは優剛に教えて貰った事を復習している。わからない事を質問すれば優剛はなんでも答えてくれた。

 魔術の構成は隠す。例え弟子にも秘蔵の魔術は教えない。弟子もそれはわかっている。わかっているから、観察して師匠から盗む。そうやって弟子は師匠を越えて旅立って行く。


 チャミレーンも当初は優剛が教えてくれる事は無いと思っていた。後ろで見ているだけのつもりだった。しかし、優剛の魔術を見て圧倒されてしまい、思わず疑問を呟いてしまった。

 その疑問に優剛は丁寧に答えてくれた。その後もダメ元で質問すると、優剛は全てに答えた。

 画期的な回復魔術の秘密を余す事無くチャミレーンは記録した。そして、必ず優剛のような回復魔術を行使できる魔術士になる事を心に固く誓った。


 ラグナイドは優剛に圧倒されていた。優剛の膨大な魔力量と圧倒的な魔力制御に。

 エルフの国で生まれ育って、その中でも自分は上位に居ると自負している。魔力量と魔力制御には自信がある。このまま成長を続ければ確実に長老たちを凌ぐ魔術士になれるという確信があった。

 しかし、目の前の人間を見ていると、まだまだ自分は魔術士の入り口にすら辿り着いていないのではないかと錯覚してしまう。長老たちでさえ優剛と比べたら・・・いや、比べる事すら出来ない。

 ただ呆然と優剛の行使する回復魔術を見る事しか出来ない。


 ヴァルオーンはラーズリアが言っていた事を脳内で反芻している。

『ユーゴは想像以上』そんな軽いものではなかった。目の前の膨大な魔力を全て戦闘に使ったらどうなるのか。

 手を握った時は痛がる素振りを見せない優剛に興味を持った。肩に手を回して持ち上げた時は抵抗感すら無かった。しかし、それでもラーズリアの友人である。自分と同じように戦う事が大好きなラーズリアと友人であれば、優剛もかなりの使い手だと想像出来た。


 しかし、今は想像出来ない。優剛はこの膨大な魔力を完璧に制御している。余裕もある。

 勝てない。ヴァルオーンの背中は冷や汗で濡れた。これまでそんな恐怖を感じた事は無かった。どんな相手でも勝てないと思った事は無い。この生物には勝てないと獣人の本能が告げる。

 優剛は化け物だ。


 沈黙を打ち消すかのような叫び声が天幕の入り口から聞こえてきた。

「お願いします!治療して下さい!」

「・・・もう・・・死んでます。」

「お願いします!お願いします!・・・弟・・・なんです。」


 優剛は重々しく立ち上がって入り口に向かって歩き出す。

 チャミレーンは当然のように後ろに付いて歩く。

 ラグナイドとヴァルオーンはその場に縫い留められたかのように足が動かない。呆然と出口に歩くだけで回復していく怪我人を見ている。


 優剛は天幕の外で寝かされている弟の手を握る兄に声を掛ける。

「息をしなくなってからどれくらいですか?」

「う・・・うぅ・・・。ここに到着する前はまだ・・・。」

(2、3分かな?はぁー、今日はいつ寝れるんだろ・・・。)


 優剛は無作法に魔力を寝かされた弟にぶつける。

(失血死なのかな・・・。よくわかんないや。)


 診断の直後に治療も終わらせる。優剛は寝かされている男性を背負って中に入る。さすがに死んだ人間を生き返らせる事は出来ない。しかし、条件が揃えば蘇生は可能である。


 優剛の診断は失血死。既に外傷は治療しているが、失った血液は戻ってこない。さらに5分以上、脳に酸素の供給が止まれば、蘇生の確率は加速度的に低下していく。


 優剛は背負うと同時に身体の中に残っている血液と魔力を同期して、不足している血液を補い、すぐに魔力で心臓マッサージと人工呼吸も開始する。

 優剛に背負われている男性は真っ白な顔をしていたが、今は血色のある健康的な色を取り戻している。

「先生・・・、弟は・・・弟は助かるんですか・・・?」

「・・・五分五分ですね。やれる事は全部やりました。あとは戻って来い。って必死に声を掛けるしかないですね。」


 優剛は天幕の片隅に男性を寝かせて様子を見続ける。5分間、心臓マッサージと人工呼吸を続けても、自発呼吸が戻らなければ諦めるしかないと思っていた。


 兄は寝ている弟に向かって必死に声をかける。その声に応えるかのように、心臓が再び動き始める。

(お?蘇生した?)



 優剛は心臓マッサージと魔力による人工呼吸を止めて様子を見る。


 それに気づかない兄は未だに声を掛け続ける。その声掛けが弟の黒歴史に及ぶかという時に、弟の目がカッと開かれる。

「兄貴・・・、その話は無しだ。」

「うおおぉぉぉぉぉ!」


 弟は何事も無かったかのように抱き付く兄を振りほどいて身体を起こす。座ったままだが、腕を回して身体の色々な箇所を触って確かめる。

「あんたが治療してくれたのか?」

「そうですね。」


 男性は優剛を見上げながら尋ねたが、振りほどかれて地面に寝転んでいた兄が、弟の頭を軽く叩く。

「馬鹿野郎!お前・・・、死んでたんだぞ!この人が、このお方がお前を生き返らせたんだ!」

「は?嘘だろ?」

「いや、まだ死んでますよ。あー、ちょっと違いますね。すぐ死ぬ?かな。」


 優剛を見上げる兄の目は絶望に染まっている。弟は優剛の言葉に疑いがあるようで、胡散臭い奴を見る目で優剛を見ている。

「今、君の身体の血液は僕の魔力だ。この意味がわかりますか?」


 弟は優剛の言葉に絶句した。兄も優剛の足にしがみ付いてくる。

「お願いします!解除しないで下さい!」

「嘘だろ?そんな事って出来るのか?」


 チャミレーンは先ほどから必死に何かをメモっている。後ろで何かを凄まじい勢いで書いている気配はするが、優剛は決して振り向かない。怖いからである。


 優剛は弟に微笑みを向けながら口を開く。

「今からあなたの身体が血を作る機能を強化します。だけど、栄養が足りないから、きっとこの戦にはもう参加出来ない。まぁ、無理すれば参加出来るけど、お勧めはしないですよ。」


 男性は自分の引き締まった身体が急に痩せて、細くなるのを感じる。身体には力が入らず、喉はカラカラに乾いて声が掠れる。

「くっ・・・、何を・・・し・・・た。」

「先生!弟に何をしたんだ!?」

「もう大丈夫ですよ。あとは沢山食べて、飲んで、ゆっくり休んで下さい。生き返れたのは運が良かったと思います。お大事にして下さい。」


 優剛は言うだけ言って先ほどまで座っていた椅子を目指して歩みを進めていた。兄は優剛の言葉を噛みしめるように反芻してから、力なく横たわっている弟に説明を始める。

「お前が意識を失ってからの事を話す。」


「はぁー、どっこいしょ。」

 おっさん魂が戻ってきた優剛が椅子に座る。そして、チャミレーンが口を開く。


「師匠、なぜ蘇生したんですか?彼は確実に死んでいました。」

「「はぁ?」」


 チャミレーンの質問にラグナイドとヴァルオーンの開いた口が塞がらない。優剛は2人を無視して説明を始める。

「人間が動いているのは脳が動いているからで、脳に酸素が供給されているから心臓とか、各種臓器が動いてるのね。脳に酸素を届けるのは血液が運んでいて、血が足りなくなると、脳に届ける酸素が足りなくなる。脳が活動を停止すれば、各種臓器も停止。人は死ぬ。これが簡単な血の出し過ぎで死ぬ例ね。もっと色々な事が起きてると思うけど、僕は知らないから、この先は自分で調べるか研究して。」


 チャミレーンは凄まじい勢いで何をメモっている。優剛は何をメモっているかは聞かない。手を止めたタイミングで再び口を開く。

「さっきの人は血が外に出過ぎて死んだの。ただし、脳は酸素が無くてもすぐには死なない。大体5分くらいは生きてる。すぐ死ぬ人も居るし、そうじゃ無い人も居る。これは個人差もあると思うけど、5分以内に酸素を脳に送れば、各種臓器が動き出す可能性があるって事ね。」


 再びメモるチャミレーン。そして、メモ書きを振り返って呟く。

「なるほど・・・だから五分五分・・・。」

(え・・・。僕の言葉も全部メモってるの?やだ・・・、怖い・・・。)


 優剛がチャミレーンに抱く恐怖心が増したところでヴァルオーンが慌てた声をあげる。

「待てユーゴ!それはユーゴの秘伝。魔術の根幹であろう!?ここには少なくない者たちが、話を聞いているぞ!」

「あとでチャミがみんなに説明するし、問題は無いよ。」

「はい。師匠の言葉は一言一句、漏らしてません。神の言葉ですから。」

(やっぱりじゃん・・・。)


 ラグナイドは恐る恐る尋ねる。

「それはうちの兵たちにも聞かせてやりたいのだが・・・。」

「チャミが良いなら良いよ。」

「もちろんです。出来る出来ないは置いておいて、神の教えは僕が広く伝えていきます。」

「神じゃないからね。人間だよ。わかってる?」


 優剛はジト目をチャミレーンに向けるが、優剛に見られて何か感動している様子である。優剛は諦めて続きを話す事にした。

「えーっと、彼の死んだ原因までは話したから治療方法だね。まずは怪我の治療。これは一瞬で終わる。」

「終わらんよ?」

「終わらんぞ?」

「さすが神。」


 1人変なのが混じっているが優剛は気にしない。

「次に彼の体内に残っていた血液を元にして魔力で血を作る。この時に赤血球っていう不思議物質を多めに作ると事ね。これが酸素を運んでいるから重要ね。わかんなければ自分の身体をスキャンしてね。」

「出来んよ?」

「出来んぞ?」

「あぁぁ・・・神!」


 優剛は説明を続ける。

「血を作ったら心臓を魔力で握って離すを繰り返す。これは魔力を使わなくても出来るよ。この辺を押せば効果は薄いけど、心臓は似たような動きになる。これをする事で、心臓が無理矢理動かされて、血液が身体を巡る。同時進行で肺に空気を送り込む。直接、口づけして空気を送り込むのが良いんじゃないかな。もちろん送ったら離して空気を吐き出させる。これを繰り返す事を人工呼吸って言うのね。」


 チャミレーンが右手をビシっと高く上げる。

「師匠!師匠は口づけしてませんでした。」

「魔力で直接空気を流し込んでしまえば良い。男に口づけなんかしたくない。みんなそうでしょ?」


 初めて優剛と3人の意見が一致する。全員が大きく首を縦に振ったのだ。


「死んでしまった人の身体に空気を入れながら、心臓を押して血液を流す。この2つを繰り返す事で、蘇生する可能性がある。可能性があるってだけで、確実に蘇生する訳じゃないし、活動を停止してから5分以上経過したらかなり難しくなる。あとは運だね。」


 再びチャミレーンの手がビシっと上がる。

「師匠!彼が痩せた原因を教えて下さい。」

「血を作ったからだよ。血は骨の中で作られている。それの製造力を強化してあげれば血液は作られる。魔力を栄養に作らせた血液が、魔力を解除した時に消える可能性があったから、体内の栄養をそのまま使って血を作らせた。当然、栄養は足りてないから細くなったって事。これは要実験だね。」

(麻実に聞いたら知ってそうだな・・・。)


「他に質問あるかな?」


 優剛の問いかけにラグナイドの手が挙がる。

「ユーゴはそれを何処で学んだ?」

「学校だよ。」

「出身の国は?」

「日本。」


 優剛の回答にラグナイドとヴァルオーンの声が重なる。

「「知らん。」」

「異世界人だってラーズから聞いてたじゃん。」


 ラグナイドとヴァルオーンの考えは同じである。異世界人の教養レベルはトンでもない。優剛は研究者でも無ければ、学者でもないとラーズリアは言っていた。一般人でこの知識量である。


 異世界人を見つけたら絶対に手厚く保護しよう。2人は固く決意した。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

皆様の読んでいた時間が少しでも良い時間であったなら幸いです。


評価や感想もお待ちしております。ブックマーク登録も是非お願いします。


追記や修正はツイッターでお知らせしております。

https://twitter.com/shum3469


次回もよろしくお願い致します。

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