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家族で異世界生活  作者: しゅむ
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08. 魔人

オーパーツありがとう。領主様ありがとう。

オマエ マジン ?

 ヒロの優剛は魔人か?の問いに優剛は魔人という単語に良い意味の印象を持っておらず、一瞬だけ呆けた表情の後に真剣な表情になり、いつでも動けるようにソファーの上で身構えた。


「魔人とは?」

 優剛は全身の強化を終えて、魔人の意味を訪ねた。もちろん聴覚も強化して真人の位置も探り始めていた。


「父上・・・。」

 優剛の表情から先程までの気楽な表情は抜けて、真剣な表情に変わった事でレミニスターは咎めるように父のヒロを睨んだ。


「なんだ、まだ話しておらんのか。早くせぃ。」

 レミニスターを気にする風でも無く、早く説明しろと急かすが、優剛から感じる得体の知れない違和感から背筋に冷たい物を感じる。


「ユーゴ、魔人はおとぎ話に出て来る主人公の事だ。悪い意味は無いから安心しろ。」

「申し訳ござらんが、拙者には判断する情報が足りないでござる。」

(居た。この匂いかな。二階に居るけど、本当に一人だけ見張りみたいに同じ部屋にいるな・・・。)


「レミ、この部屋にあの本は用意しているな?」

「はい。魔人の説明をする為に用意しています。トーリア、取ってくれ。」

「畏まりました。」


 優剛も真人が傍に居れば、魔人という単語だけで、ここまで警戒する事はなかっただろう。

(僕は魔人っていう単語に良い印象が無い。実は保護じゃなくて『捕らえた』とかだったら逃げないと・・・。)


「父上が責任を持って説明して下さいよ。」

「儂か?うーむ。面倒だのぉ。」

 ヒロは面倒臭そうにトーリアが持ってきた子供用の絵本を使って魔人についての説明を始めた。


 昔々あるところに非常に魔力の扱いに優れた人が居ました。彼は成人すると不思議な事に老いる事は無く、強力な魔力で小さな村を守りながら、非常に便利で高度な魔道具を数多く開発しました。

 そんな彼の事を人々は魔を極めし人間。『魔人』と呼びました。

 魔人は老いる事が無かったので、自分の子供たちの死を見るたびに、自分も死にたいと思うようになりました。しかし、魔力がある世界では無意識に魔力が使われてしまい、老いる事が出来ませんでした。

 魔人は非常に優しい性格で小さな村で静かに暮らす事を希望していたので、他の村や街から物や土地を奪う事や、遠くに住む魔獣たちを倒しに行くことはしませんでした。


 しかし、強力な力を手に入れたい青の国は魔人の村から数人を誘拐しました。そして青の国の為に世界を征服する力になるように魔人を脅しました。


 魔人は怒って、数人の子孫たちを連れて青の国に行くと、青の国内の建物や土地など全てを異世界に送ってしまいました。青の国があった土地は広い広い荒れ果てた土地だけが残りました。


 魔人も一緒に来ていた新しい世界で青の国の人たちが悪さをしないように、その世界の魔力を生み出す核に、傷をつける永続的な魔法陣を書いて、核が自己修復にしか魔力が使えないようにしました。

 その結果、その世界に魔力が満たされる事は無く、時折、微々たる魔力を感じる事が出来る程度で、今までの世界のように魔力を使う事は出来ず、魔道具も使えなくなりました。


 魔人は元の世界に戻る事は無く、青の国の人たちとは海を越えた別大陸の海沿いの土地に、一緒に来ていた数人の子孫と新しい村を作って、魔人はその村で子供や孫に見守られ、笑顔で眠りにつきました。


「っというおとぎ話で、子供が悪さをした時は魔力の無い世界に飛ばすぞ。と脅かすわけじゃな。ガッハッハ。」

(真人と同じ部屋にいる人・・・。真人を可愛いって何度も呟いているから害意は無い事がわかって安心出来るけど、別の意味でちょっと怖いな・・・。)


 おとぎ話と真人の部屋の状況がわかって身構える事が無くなった優剛からは、先程までの警戒感に満ちた表情と身構えた様子は消えていた。


「なるほど・・・。その世界が拙者たちの世界で、拙者は魔人の子孫であると?」

 その事に安堵したヒロとレミニスターはおとぎ話を補足するように魔人についての記録を話し始めた。


「ん~。少し違う。このおとぎ話は史実として古代の文献に多く書かれているが、魔人が死んだという直接的な表現をしている文献が無いのじゃ。」


「古代の文献からおとぎ話に捕捉するとだな・・・。魔人は黒髪で黒い瞳。細身で背は低く、身体を鍛えても儂らのように筋肉が付かなかったと記録されているのじゃ。」


(欧米人に比べたら平均身長が低い日本人は基本的に条件を満たしている気がする・・・。アジア圏で考えても黒髪黒目は多い気がする・・・。)


「そこで儂はユーゴの魔力の扱いを見て、魔人が戻って来たのではないか?とレミに報告したのじゃ。ユーゴが身体を鍛えても筋肉が儂らのように付かないのであれば確定じゃとな!」

 ヒロは自分の胸板を叩いて、力こぶを見せつけるように言ってきた。


「ぐっ。否定出来ない・・・。鍛えても筋肉は付きにくい。しかし、拙者はそのおとぎ話の魔人本人では無い。」


「何?ここまで条件が揃っているのだ。我々には正体を明かしてくれても良いと思いますが?」

 ヒロが魔人を敬うように言葉と背筋を正すが、優剛は否定の言葉を続ける。


「確かに条件的には一致にしている。しかし、拙者は子供の時の記憶がある。この世界ではない世界で育った記憶がある。」

「むぅ。では近い存在、もしくは子孫という事になるのかの?」

「それもわからない・・・。察するにそのおとぎ話は数千年前の話だと思う。拙者も育った世界の詳しい歴史は存ぜぬが、そういったおとぎ話は拙者たちの世界には無い。」


(浦島太郎とか異世界行って帰ってきた。とか?鬼とか妖怪も異世界の魔物とか?考えようによっては伝わっているとは言えるけど、魔人認定されたら嫌だから知らない事にしよ。)


「父上、魔人じゃなくても良いじゃないですか。父上とその部下の命を救ってくれたのだから。」

「まぁ・・・そうじゃな!好きなだけこの屋敷に居てくれて良いぞ。」

「否。感謝はするが、そういうわけにはいかない・・・。拙者も仕事を探して家族で暮らしたい。」

「仕事か・・・。うーむ。」


 レミニスターは考え込むように優剛の仕事について悩みだした。


「ユーゴは・・・言い難いが何が出来・・・いや。ユーゴが魔力を使いだしてどれくらいだ?」

「昨日の朝?昼前?くらいから・・・。」


「父上の報告が正しいならそれは驚異だぞ・・・。何をしたんだ・・・?」

「何をしたと聞かれても・・・。その報告の内容を聞いても?」


 ①身体能力の超強化

 ②常に魔力で身体を覆っている

 ③魔力を飛ばす。その際に形は自由に形成している。


「俺たちの常識では全て数時間で出来るようになるとは思えん。特にユーゴは今も身体を魔力で覆い続けているが、いずれ魔力が枯渇してしまうのが普通だ。」

「拙者は魔力については詳しく知らないので、なんとも言えない・・・。魔力が使えるようになった経緯を説明するので、推察してくれない?」


 優剛は起きてから魔力を使えるようになるまでと、使えるようになってからの状況を説明した。


「壮絶じゃな・・・。生き残れる可能性など無いぞ。無いからこそユーゴの魔人疑惑が深まるわい。ガッハッハ。」

「見ただけで対策と模倣が出来たのは驚愕だが・・・。うーん。少し整理させてくれ。」

 レミニスターは優剛から聞いた話を理解する為にぶつぶつ言いながら目を閉じた。


「しかし、ユーゴの目覚めには同情するぞ・・・。」

「ヒロ・・・。かたじけない・・・。」

 お互いが少し涙目である。


「ヒロ、魔力を使う為の前提条件はある?」

 悩んでいるレミニスターを放置して、優剛は魔力について詳しく聞き出そうとヒロに尋ねた。


「基本的には生まれる前に母の魔力に触れ続ける事で、体内にあると言われている魔力の容器に魔力が溜まりだす。ある程度、魔力が溜まると、容器自体が自分の身体にあった魔力に変換を始めて、さらに容器は魔力の生成を始める。」


「なるほど。吸収・変換・生成。3つの方法で魔力を溜めるけど、違和感なく使うには変換か生成が必要か。」


「そうじゃの。稀に魔力が溜まらずに生まれてくる赤子もおる。魔力の容器の蓋が閉じている。と表現しているが、その場合は外部から魔力の刺激を与えて蓋を開けてやる必要があるのじゃ。開け方は人それぞれ違うし、何もしないでも開く事があれば、何をしても開かない者もおる。」


「例外はあるが、基本的には生まれた時から使えるという事か。」


「しかし、ユーゴが起きた直後の様子は魔力不足による体調不良じゃな。」

「あー。やはりあの体調不良は魔力が枯渇した時の症状か。」

「魔力枯渇による倦怠感や頭痛。自分に合っていない魔力による吐き気と違和感。ユーゴの体調の経過は魔力に目覚めた者を無理やり目覚めさせた場合の経過と同じじゃな。」


(三人は変換まで終わってから目覚めたのか。やってくれたな真人・・・。)


「最初、麻実が魔力を視認出来なかったのは、何か原因がある?」

「そうじゃな。最初にマミだけが魔力を視認出来なかったのは、自然の魔力以外に触れ続けねば視認が難しいからじゃ、強大な魔力は陽炎などで疑似的に見える事もあるがの。」


 優剛はなるほど。と呟いてヒロがただの筋肉おじさんでは無かった事に驚きつつも感心した。そして、昼に見た魔法について尋ねようとした時にレミニスターが口を開いた。


「ユーゴは短時間で三人も魔力を使用可能にしている。良かったら俺の娘も同じように魔力を使えるように指導してくれないだろうか。」

 少し言い難そうにしながら頭を少し下げて頼んできた。


「何を言っている?拙者は魔力を知って二日目だ。そんな人間に教える事が出来る?」


「もう様々な手を尽くしたのだが、娘は魔力が使えん。出来なくてもユーゴを責める事はしない。だから頼まれてくれないか?」

「儂からも頼む!可愛い孫娘なんじゃ・・・。」


「うーん。やるだけやってみるから頭を上げて。」

 二人の恩人が頭を下げて頼み込んでくるのを断るわけにもいかず、優剛は了承する。

(日本の漫画やアニメでやっていた修行方法を全部やってダメなら諦めて貰おう。)


「ありがとう。では早速、娘と会ってくれ。トーリア、イコライズを呼んでくれ。」

「旦那様、お言葉ですが、そろそろ夕飯のお時間になります。夕飯の席でご紹介し、その後に見て頂ければ良いのではないでしょうか。」


「そうか。もうそんな時間か・・・。では食事にしよう。もちろんユーゴたちも一緒だ。」

 部屋に入ってから雑談を含めて一時間以上は話し込んでいたようで、食事の時間になっていた。


「俺は急ぎの書類を処理したら向かうから先に行ってくれ。」

「少し待って。麻実を終わらせる。」

 レミニスターは書類仕事に戻っていき、優剛は異世界言語の学習に集中している麻実に声をかける。


「麻実、ご飯くれるって言ってくれたから夕飯にしよう。丸印の方の手をどけて。」

「え。もうそんな時間?途中で止めたくないんだけど、ご飯くれるなら仕方ないか・・・。」

「いやいや。終わらせるよ。丸印の方の手だけどけて。」


 不思議そうに丸印から手を離すと、そこに優剛が手を置いて魔力を水晶に流し込んだ。

 キャッ!という驚きの声を上げてから五分ほどで終わったようで、麻実が水晶から手を離した。


「優剛ずるくない?なんでそんなに色々出来るのよ・・・。」

 麻実はジトっとした目をして優剛を睨んだ。


「えぇぇ・・・。麻実が途中まで終わらせていたから早く終わったんだよ・・・。由里、ご飯だよ。起きて。」

 優剛は困ったような表情をしながら麻実から視線を外して、寝てしまった由里を優しく起こした。


「ヒロ、真人も起こしたいから寝ている部屋に案内して欲しい。」

「お・・おぅ。構わんぞ。こっちじゃ。」

 水晶を呆けた表情で見つめていたヒロは話しかけられた事に驚きつつも了承した。


「麻実、しばらく何も話さない方が良いよ。古い言い回しで笑われるから。ウヒヒ。」

 優剛は麻実をからかうように、学んだ言語が古かった事を教える。笑った後に「あとでトーリアさんが教えてくれるって。」と付け足した。


「お父さん、どこ行くの?」

「真人が寝ている部屋に行ってからご飯だよ。」

「私トイレ行きたい。」


「ヒロ、トイレどこ?」

「おぉ。忘れておったの。こっちじゃ。」


 中世の技術力とは思えない清潔さのトイレだった。O型の便座には座るところにタオル生地で保護されて、座っても不快感は無い。

(形は同じで、汲み取り式?水で流すのか・・・。トイレットペーパーは少し固いかな。水がどこから来て、排泄物がどこに行くのかわからんけど、これも魔道具なのかな?)


 昨日から今朝にかけてのキャンプ生活とは真逆のトイレ事情に感動しながら、魔道具の可能性に心躍らされた優剛はトイレを終えて真人の部屋に辿り着いた。


 トーリアが扉を軽くノックすると、中から優剛と同じ歳くらいの女性が出てきた。

「マコト様はまだ眠っております。」


「部屋に居てくれてありがとう、起こす。」

 まだまだ現代語に違和感が残る優剛はなるべく柔らかい印象を与えられるようにレミニスターの口調を真似した。


「え。しかし、その・・・。気持ち良さそうにしておいでです。」

 起こす事に抵抗感を示す女性に優剛はご飯抜きが可哀想だと告げて真人を起こしてから、食事の部屋に移動を始めた。


「この家って広いよね・・・。」

「ボク色んなとこを見たよ!」

「お父さん、今日はどこで寝るの?」

「ほほぉ。良いなぁ。今日はこの家で寝るよ。っていうかしばらくここに住むよ。」

 優剛は屋敷の広さに驚きながら、器用に由里や真人と同時に会話をして、一行は食事の部屋の前に辿り着いた。


 ここでもトーリアのノックで部屋に入ると、既にレミニスターとその娘と思われる女の子が席に座っていた。


「遅かったな。長男は成人していてな。王都で仕事をしている。次男も王都の学校に通っている。二人のサポートに妻と三人は王都で暮らしているから、機会があれば紹介しよう。この子が娘のイコライズだ。イコライズ挨拶しなさい。」

「はい。お父様。私がイコライズです。皆様よろしくお願い致しますね。」


 茶色で肩に乗るか乗らないか位で切り揃えられた髪と、優しそうな目元は親譲りなのだろう。そして一礼する姿は非常に可愛らしかったが、優雅な所作によって実年齢よりも少し年上感が出ていた。

(由里と同じくらいの歳に見えるけど、動きや喋り方で随分上に見えるなぁ。)


「こちらこそよろしく。イコライズちゃん。」

「よろしくでありんす。」

「え?」

 麻実の言葉が古いからであろう、呆けた表情でイコライズは麻実を見つめてしまった。


「麻実の言葉が古いから困惑しているよ。ぷぷ。」

「え!そうなの?」

「ねぇーえ。お父さん、誰?なんて言っているの?」

「ごはんー!」

「飯じゃー!」


 騒々しくもイコライズとの初対面を終えたが、子供たちは言語がわからない為、それぞれの名前だけを紹介し始める。


 その時のイコライズは初めて自分よりも歳が下の子供と触れ合うようで、若干微笑ましかった。


「イ・・・イコライズよ。」

「イイコライズヨ?」

「良い子なの?」

「違うわよ!イコライズよ!」


 ん?と首を傾げる由里と真人にイコライズは困った顔をして「イコ」と言って自分を指差した。

 あれは見た事があるなぁと優剛がヒロを見れば、だらしなくニヤニヤしているヒロがイコライズと由里と真人のやり取りを見ていた。


「イコ?私は由里。ユリ。」

「マコトー」


 微笑ましい三人の自己紹介を眺めてから優剛は席に座ると、待っていたかのように料理が置かれていく。白米とお味噌汁。そしておかずのステーキとサラダである。

(なんか違くない!?)


 優剛は強烈な違和感を覚えつつも、美味しい食事に満足して、また聞きたい事が増えたなと異世界の食事事情についても知りたくなった。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

魔人の子孫かもしれない皆様の読んでいた時間が少しでも良い時間であったなら幸いです。


次回もよろしくお願い致します。

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