61. 肩パンチ
前回のお話
無礼者!
余の友人になるが良い。
優剛は王様であるバスターナンに案内されて、話し合いの場となる部屋に招かれた。
部屋の中には給仕をする使用人の女性が1人居るだけだ。
そんな部屋の中に優剛とバスターナン。ラーズリアと麻実、それにバスターナンの護衛の男が入っていく。
部屋に入ったタイミングで、バスターナンが口を開く。
「この部屋は俺のプライベート空間だ。俺が俺で居られるのはこの部屋くらいだな。」
部屋の扉が閉まった直後にラーズリアがバスターナンに近寄った。そして、肩パンチを1発お見舞いする。よろけるバスターナンを放置して近くの椅子に座り込む。
驚いた優剛が口を開く。
「ラーズ・・・。マジで王様に肩パンチするんだ・・・。どんな関係?」
「学園時代のクラスメイトだ。肩パンチは当たり前だ。こいつが俺の楽しい模擬戦の邪魔をしたのだからな。」
「げっ。ユーゴと模擬戦してたのか?ラーズを楽しませる相手なんて居ないと思っていたぞ。」
バスターナンの口調は先ほどまでの威厳が感じられる口調では無かった。
「違う。ユーゴの息子とその護衛だ。」
「ハッハッハ。優秀な護衛が居るのだな。息子は何歳だ?おっと、2人とも座ってくれ。」
バスターナンは笑いながら椅子に腰かける。その後ろに護衛の男が立つ。
優剛と麻実も空いている椅子に腰かける。そして、女性の給仕はそれぞれの前に紅茶を置いていった。
「6歳です。」
「おぉ!俺の娘と同じ歳じゃないか!学園には行くのか?」
「うーん。本人の意思に任せるので、まだわかりません。娘は来年から行く予定です。」
「おぉ!うちの3男も来年から通うぞ!良いぞ!良いぞ!ユーゴの子供たちと同学年に子供たちが居る俺は幸運だな!」
「おい、おい。ちょっと前まで、ティセ狙いだったろうが。」
嬉しそうに興奮するバスターナンをラーズリアが咎めるように告げた。
「あれは強すぎる。それにティセは自分より強い者しか認めんだろう?俺の息子じゃ・・・。」
「あぁ・・・。言い難いがユーゴの娘はティセより強いぞ。」
和気藹々と話し合うバスターナンとラーズリアだったが、この一言でバスターナンが固まる。
「ティセより強い子供って居るのか?」
「6歳の息子もティセより強いぞ・・・。」
バスターナンは優剛を見つめて口を開く。
「ユーゴ・・・。お前が戦わなくても我が国を滅ぼせそうだな・・・。」
「止めて・・・。滅ぼさないから・・・。」
バスターナンは「ふぅー」っと息を吐き出して口を開く。
「先程もユーゴには言ったが、ユーゴの事はかなり調べ上げた。ラーズやレミからも話は聞いたが、ユーゴからは話が聞けず、使者は門前払いだ。」
「あぁ・・・。すいません。たぶん午前中に来たんだと思います。午前中は飛行屋の営業中でして、面会はしていないんですよ。」
「あぁ。その事は後日わかった。王の使者という肩書で無茶をしたのだろう。しかし、調べれば調べるほど、ユーゴの脅威がわかるだけだ。青銀狼にブラックテイルドラゴンを使役。本人は単独で狂魔地帯の奥深くから無傷の生還。青銀狼を抑えるだけでもどれだけの犠牲が必要かわかるか?」
バスターナンは両手を上げて降参のポーズを取る。
「しかしだ!ユーゴに危害を加えなければ無害という情報もある。そこで今回、俺は何がなんでも優剛と友人、友人が無理でも近い関係になっておく必要があったのだ。」
「王様も大変ですね・・・。」
優剛は同情するように告げた。
「ユーゴの暗殺計画も挙がったが、ラーズに止められた。」
「ユーゴが怒ったら国が滅ぶからな。」
「こわっ!暗殺とか怖いわ!」
バスターナンが笑顔で優剛に告げる。
「もう暗殺は無いから安心しろ。俺とユーゴは友達だからな。なっ!子供たちも交えて仲よくしよう!」
(グイグイ来るな・・・。)
「まぁ、良いですけど。後ろの護衛の人は震えてますけど、大丈夫ですか?」
「気にするな。どうせ無礼だ、なんだと勝手に怒っているだけだ。」
「そうだな。若いのに柔軟な発想が出来ん可哀想な奴なんだよ。」
バスターナンとラーズリアにボロクソに言われた護衛は優剛を睨みつける。
そんな護衛にバスターナンが振り向かずに告げる。
「レオネル、発言を許す。」
「無礼者がぁ!陛下と友人などと本気にするなよ!」
「僕が怒ったら国が滅ぶみたいですよ。」
「はっ!貴様に出来る訳が・・・。」
嘲笑うレオネルの言葉をラーズリアが遮る。
「ユーゴなら出来るぞ。さっきお前もユーゴに手も足も出なかっただろう。」
「俺は魔導騎士候補ですが、ラーズリアさんや他の2人が力を合わせれば可能ですよ。」
「無理だ。お前はユーゴの魔装を見た事が無いからそんな事が言えるんだ。」
「ほほぉ。それは興味があるなぁ。」
「バスタ・・・。俺でも恐怖を感じるアレを見るのは、正直お勧めしないぞ。」
「俺は信じないですよ!魔導騎士3人で勝てない相手が、この世にいる訳ないじゃないですか!」
「ユーゴ、魔装を俺に見せてくれ。」
優剛は良いの?という視線をラーズリアに向けたが、ラーズリアは首を縦に振った。
優剛は溜息を吐いて立ち上がり魔装する。その纏うまでの早さは、一流の戦士が魔装する早さと変わらない。
この事から優剛が無理せずに魔装を使用している事が伝わる。しかし、纏う魔力の濃さは異常だ。
優剛の魔力の濃さが影響して身体の周囲は陽炎のようになって景色が歪む。そして、とてつもない魔力の気配が優剛から発せられている。
この場で驚いていないのは優剛の隣で優雅に紅茶を飲んでいる麻実だけだ。
そんな優剛を見つめていたバスターナンが口を開く。
「・・・これは、凄いな。害意が無いとわかっていてこの圧力か。」
「やはり強くなっている・・・。ユーゴ・・・、模擬戦・・・。」
「しないからね。」
レオネルは「う。あ。」という短い言葉が口から出るだけで身動きが出来ない。
そんなレオネルに気が付いたラーズリアが彼に向けて告げる。
「レオネル!ユーゴが陛下の命を狙っているぞ!」
優剛もラーズリアの意図を読み取って口元を歪める。そして、異空間から短剣を取り出して構える。
「レオネル!陛下を守るんだ!早くしろ!」
しかし、ラーズリアの叫びを聞いても、レオネルは身体を震わせるだけで動く事が出来ない。
優剛は空を飛んでゆっくりとバスターナンに近づいて、奇妙な声を出しながらバスターナンの胸に短剣を突き刺した。
「ちぇすとぉぉぉぉ!」
優剛の短剣はバスターナンの胸に埋まり、ラーズリアを含めてバスターナンとレオネルが目を見開いて、胸に沈み込んでいる短剣を唖然と見つめる。
我に戻ったラーズリアが立ち上がって叫ぶ。
「おい!ユーゴ!やり過ぎだ!」
「ん?これ玩具だよ?」
優剛はラーズリアに見えるように短剣を掲げて、刃の部分をカシャカシャと何度か柄の中に押し込んだ。
100円均一などでも売っているアレだ。単純に面白そうという理由でダメリオンと製作したジョークアイテムだ。
優剛は魔装を解除してから、再び空を飛んで先程の椅子に腰かける。その途中でラーズリアに向かってジョークアイテムを放り投げた。
「はは。面白い物を持っているのだな。」
カシャカシャと刃を柄に押し込んで遊ぶラーズリア。
「ハッハッハ。刺された時は焦ったが、全く痛みは無かったな。ラーズ、俺にも貸してくれ。」
バスターナンもラーズリアから渡された短剣を使って遊ぶ。そして、身動きが出来なかったレオネルに向かって突き刺す。
「余を守れなかった護衛はこうしてくれるわぁ。ハッハッハ。」
「・・・申し訳・・・ございません。」
「む?気にするな。ユーゴは別格だ。あんなのがゴロゴロ居たら、とっくに国は滅んでおるよ。」
バスターナンは短剣が気に入ったのか、自分の腹にも突き刺して遊び始める。
その際は「ぐぅ」という短い悲鳴も付ける役者っぷりだ。
「それ、欲しいならあげますよ。」
「何!?良いのか?皆の前で自分の腹に刺し込んだら楽しそうだな。ふふふ。」
既にいたずらする相手を決めたかのようなバスターナンは非常に良い笑顔だ。
「口にトマトジュースとか赤い飲み物を含んで、吐き出しながらやるともっと面白いですよ。」
「ハッハッハ!採用だ。ワインでも行けそうだな。」
バスターナンはブツブツと呟いて構想を練り上げていく。しかし、ハッとした表情をして優剛に視線を戻す。
「ユーゴ、これは何処から取り出した?俺は突然お前の手の中に短剣が出たように見えたぞ?」
「異空間魔術ですよ。これ、食べます?」
優剛は屋台で買い溜めしている肉の串焼きを何本か取り出してみせる。
スウっと伸びた麻実とラーズリアの手に向かって、串焼きやがフワフワと飛んで行く。
「なんと・・・。魔法袋の魔術を自分で再現しているのか?」
「レミさんが言うには秘密だから秘密ですよ。」
優剛は口に人差し指を当てるが、本人は殆ど隠す気が無いのだ。
その後も簡単な雑談を交えて、麻実の話に変わる。
「そちらはユーゴの妻、マミで間違いないか?」
「左様でございます。国王陛下。ユーゴの妻で麻実と申します。」
麻実は綺麗な動作で立ち上がって一礼した。
その様子を驚いたように見つめたバスターナンが口を開く。
「なぁ、ユーゴたちは異世界人だろう?マミは貴族と言われても信じてしまうぞ。」
「お褒めに預かり光栄でございます。」
「ユーゴは出来ないのか?」
「ぐぅ・・・。ちょっと待って下さい・・・。」
「いや・・・。無理しないで良いぞ・・・。」
「ありがたいです。」
あっさり引き下がる優剛は笑顔だ。魔術を使ってトーリアから教えて貰った礼儀作法を、記憶から引っ張り出せば可能だが、面倒だと思ってしまったので、やらなくて良いのであればやる選択肢は無いのだ。
「夫が大変失礼で申し訳ございません。」
「良いのだ。ユーゴは友人だからな。口調もラーズと話しているような口調で良いのだぞ?」
「それはありがたいですけど、周りの人がうるさいですよね。」
優剛の疑問に答えたのはラーズリアだ。
「うるさい奴が多いから、この部屋かバスタと2人の時に限る。という注釈は付くぞ。」
「すまんな・・・。他の者に示しが付かんとか、威厳が、とかうるさいんだよ。あと数年すれば俺も抑えつける事は出来ると思うんだがな・・・。」
ラーズリアに申し訳なそうに告げたバスターナンが再び麻実に視線を向ける。
「マミはフィールドでは聖女と呼ばれているな。」
「僭越ながら。」
ここまでの麻実の口調を聞いて優剛は思わず口から漏れてしまう。
「麻実・・・。誰・・・?ぐっ。」
麻実から無言の肩パンチが優剛に炸裂した。レオネルがビクっとしただけで、バスターナンとラーズリアはなんとか平静を保っていた。
「・・・回復魔術が得意なのだそうだな。」
「滅相もございません。」
優剛は笑いを堪える為に、不自然では無い程度に肩パンチされた箇所を摩る。
「良ければ俺の父上を診てくれないか?」
「王命であれば喜んで。」
「ぶっ。」
優剛が笑いを堪えられなくなって、吹き出したと同時に再び肩パンチされた優剛は、衝撃で椅子から転がり落ちた。
「優剛、先代の国王陛下を診に行くわよ。」
「御意。」
優剛は倒れたまま返答した。
立ち上がった麻実を見て、慌てて立ち上がるバスターナンとラーズリア。
「す・・・すまんな。案内しよう。こっちだ。」
「ありがとうございます。診察の前にどの様な症状か教えて頂けますでしょうか。」
部屋を出て廊下を歩きながらだが、バスターナンは簡単な説明を始める。
「3年ほど前に頭が痛いと言って倒れたのだ。外傷は無かったが、すぐに頭を回復魔術で治療した。しかし、それからは右半身が少し不自由になってしまい、その状態では政務にも差し支えるという事で、俺・・・。余が即位したのだ。」
「ありがとうございます。おそらくですが、フィールドでも似たような症例を治療した経験があります。時間は必要ですが、右半身も動くようになるかと思います。」
「何!?どんな魔術士でも回復はしなかったのだぞ?」
「根本的な治療が抜けているからです。おそらく頭の中に血の塊が残っています。それが右半身を動かす際に邪魔になっているのでしょう。」
バスターナンは眉根を寄せて麻実の話を聞いている。
「そこまで推察した魔術士は何人か居たぞ。しかし、あやしい儀式や魔道具を使うだけで改善はしなかった。それをマミは取り除く事が出来ると・・・?」
「可能です。しかし、除去してすぐに動かせる訳ではありません。」
「何故だ?」
「例えば・・・。何年もしていない踊りを今すぐに踊れと言われたら可能でしょうか。」
「ふむ・・・。思い出す時間と練習が必要だな。」
「それと同じでございます。右半身を動かすにも思い出す時間と練習が必要なのです。」
バスターナンが麻実の説明で納得したところで先代が休んでいる部屋に到着した。
バスターナンは部屋の扉をノックすると、中から短く低い声で「入れ」と返っていた。
(ふーん。言語障害は無さそうだね。)
優剛が余計な事を考えながらラーズリアの後ろについて入室する。頼れるラーズシールドは今のところ健在だ。
中には大きなベッドで身体を起こして読書する線の細い白髪の男性が居た。しかし、身なりは整えられており、髪も髭も白いが整っている。
「バスタか。おぉ、ラーズリア。久しいな。」
「お久しぶりです。」
ラーズリアは丁寧な動作で一礼する。
(おぉ!ラーズが貴族っぽい。)
「うむ。後ろの2人は何者だ?」
「父上、男の方が俺の友人でユーゴです。女の方がユーゴの妻でマミです。彼女は回復魔術士でございます。」
先代は溜息を吐いて息子であるバスターナンに告げる。
「お前の友人が増えた事は嬉しいが、儂の回復は諦めろ。儂がいつ死んでも良いようにお前に王位を譲ったのだ。」
「彼女は巷で聖女と呼ばれております。今度こそ必ず・・・。」
先代は麻実を嘲笑う。
「ハッハッハ。聖女か。また胡散臭い肩書の者を連れて来たものだ。」
「お初にお目に掛かります。優剛の妻で麻実と申します。」
「優剛です。」
麻実の素晴らしい一礼と比べるのは酷な話だが、優剛も腰を曲げて頭を下げた。
「ふむ。友人の妻が回復魔術を使えるから、ダメ元で治療する。そんなところか?」
「そん・・・。」
「そうでございます。良ければ魔力の使用と、頭に手を触れる許可を頂けないでしょうか。」
麻実はバスターナンの否定しようとする言葉を遮って、診察の為の準備を始める。
「まぁ、良いだろう。これまで何人も治療出来なかったのだ。あと何人か増えようと誤差だしな。」
「ありがとうございます。では、失礼致します。」
麻実は右手に視る魔力を練って、先代の頭に触れる。そして、すぐに口を開く。
「やはり血の塊が頭の中に残っています。取り除いてリハビリすれば動くようになるかと思います。」
しかし、先代の表情は暗いままだ。
「バスタから儂の症状を聞いたのか。今までも怪しい治療はしてきたが、改善した事は無いな。今回はリハビリという儀式でもするのか?」
「リハビリは血の塊を取り出した後にするトレーニングみたいなものです。」
「では、どのように血の塊を頭から取り出すのだ?」
「はい。頭を切ってそこから取り出します。」
「ほぉ」と感心するような先代と驚きで固まるバスターナン。
「マミ、待つんだ。頭を切るのか?それは絶対に必要なのか?」
「はい。血の塊を取り出す穴が必要です。」
「いや、しかし・・・。それは・・・。他に方法は無いのか?」
治療方法を聞いて狼狽えるバスターナン。
「私はこの方法でしか、頭の中から血の塊を取り出す事が出来ません。」
麻実はチラっと優剛を見る。
(いや・・・。血の塊を細かく分解して、血管の中に入れる。さらに血管の中を移動させて、膀胱に侵入。尿として排出も出来るけど?やらないよね。そうだよね。)
「儂の頭を切ると申すか。」
「はい。」
麻実は毅然とした態度で即答する。
「面白い。儂の頭を切って何も改善が見られなければ死罪もあるぞ?それでも切るのか?」
「お言葉ですが、すぐに改善はしません。右半身が動き方を思い出すのと、筋力を回復する為に時間が必要です。」
「それがリハビリか。信用出来んな。」
「そうであれば治療はしません。貴方様の症例は動けるようになるまで、時間が必要な症例です。私も命が掛かるのであれば、無理に治療はしません。」
先代と麻実は睨み合うかのようにその後もしばらく治療方針を語り合う。
まさに修羅場。
先代とは言え元国王である。その眼光は鋭く、身体が細くなっても威厳が備わっている。そんな先代と真っ向から睨み合う麻実を尊敬するかのような眼差してバスターナンは見ていた。
そんな激論が繰り広げられている部屋の中で優剛がラーズリアに告げる。
「あのお爺ちゃんって頭を切るのが怖いの?怖いなら僕が痛覚を遮断してあげたら良いかな?」
「おい、ユーゴ・・・。声が少し大きい・・・ぞ。」
ラーズリアの忠告も空しく、優剛の声は先代に届いた。いや、優剛が故意に届けたのだ。
先代はプルプルと左手を震わせて優剛を睨みつける。
「貴様・・・。儂が怖がっているだと?」
「麻実も説明してたけど、頭を切るって言ってもこれくらいですよ?」
優剛は親指と人差し指を寄せて1㎝ほどの空間を作る。
「お爺ちゃん、勇気出して。怖くないよ。」
完全に不敬である。優剛は知り合いのお爺ちゃんを励ますかのようだ。
「貴様・・・。儂が治ったら真っ先に貴様の頭を叩きに行くからな!」
「頭を切るのを怖がっている爺ちゃんには無理ですよ。」
優剛の挑発に乗るお爺ちゃ・・・。先代の国王は麻実に叫ぶように告げる。
「マミと言ったか!さっさと頭を切れ!儂が怖がっているわけでは無いと、奴に証明してやるわ!」
「爺ちゃん、痛くないようにしようか?」
「要らんわ!貴様は黙っとれ!」
麻実は振り返って優剛に近づいて口を開く。
「短剣貸して。」
「うん。良い・・・ぐふ。」
魔鉱石で出来た太めの短剣を麻実に手渡した直後に、麻実の下から突き上げる右拳が優剛の腹に突き刺さる。
腹パンされた優剛はそのまま左膝を床に付いて、右手も同じく床に。そして左手は腹を抑える。顔は下げて視線は床だ
そんな優剛に向かって麻実は上から見下ろして口を開く。
「その姿勢が先代と対話する際の姿勢よ。」
「・・・御意。」
「貴様・・・。敬う相手が違って無いか・・・?」
麻実は右手に短剣を持ち替えて、左手に魔力を練って優剛を見つける先代に告げる。
「それでは始めます。」
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