46. ぶたさん
前回のお話
飛行屋さんをやろう。
優剛の飛行屋は口コミで広がって、連日長蛇の列を作っていた。
カラン♪カラーン♪というベルの音が鳴るとフガッジュが声を張り上げる。
「残り1分でーす!」
アイサが屋敷の庭に入った門の傍で次に飛ぶ集団の中に、初めて飛ぶお客の数を確認している。
「初めての方はいらっしゃいますかー?」
空を飛ぶ感覚や恐怖に慣れる為に2、3分も一緒に飛べばすぐに要領を掴める。
10分間サポートする必要は無いので、サポートが終わればすぐにアイサは待機場所に戻って再び次の回の人たちに同じ質問を繰り返すのだ。
アイサの呼びかけに何人かの手が上がり、サポートが必要かの確認が行われる。
体験済みの友人と一緒に飛ぶ者もいれば、アイサのサポートを希望する者もいる
そんなやり取りをしている内に、門を抜けたすぐの場所で次の回を待ち望んでいた人たちが空に飛び上がっていく。それと同時に優剛によって強制的に門の前に着地させられた人たちが、笑顔で庭から出て行く。
そんな様子を優剛は微笑みながら巨大なパラソルで作られた日陰の中で、椅子に座って眺めている。しっかりとテーブルも用意されていて、その上には冷やされた紅茶が置いてある。
そして優剛は紅茶を少し飲むと呟く。
「あぁ・・・。紅茶が美味い。平和だ・・・。」
「全然平和じゃないですよ!今頃シオンが今日の最終グループを決めて、父さんが並ぼうするお客さんに謝っている頃ですよ。」
10分で落ち切る砂時計をひっくり返しながらフガッジュが優剛を咎めた。
執事見習いのシオンは営業開始と同時に列を作って並んでいるお客さんに人数の確認をしながら、常に最終グループの後方に待機している。そして12時に終われるように最終グループも決定しているのだ。
麻実を病院に送って帰って来たタカは、そのままシオンと合流して最終グループの後ろに並ぼうとする人たちに営業終了を告げる役割だ。
「それに門の向こうを見て下さいよ。凄い事になってますからね!」
そして門の前で支払いをしようとする人たちを捌いているのはテスとトーリアだ。
訪れるグループの人数。さらに子供料金なのか、大人料金なのかを素早く判断して料金を受け取る。基本は子供料金なのだが、子供に見えない大人が混じっていたり、子供だと言い張る大人などにも対処もしていた。
ここが最激戦地である。
「俺は子供だって言ってんだろうが!」
「子供は自分を子供だとは言いません。強がって大人だと言うものです。貴方はどう見ても大人です。むしろ5人全員が大人じゃないですか。10,000ジェイです。」
料金を誤魔化そうとする大人の集団をテスが睨みつけて咎める。
「いーち。にー。さーん。よーん。ねぇ、1枚10ジェイの小青銅貨が10枚あれば、おれたちみんな飛べるんだよな?」
「はい。10枚あれば100ジェイになりますから、皆様は飛ぶ事が出来ますよ。」
「やったぜ!よーん。ごー。ろーく。なーな。はーち。きゅー。・・・え?あれ?」
「ご安心下さい。4を2度数えたので10枚ございますよ。」
「バッカ。数え間違えるなよ!おれまで焦っただろうが。」
子供たちだけで来ている集団をトーリアが優しく誘導する。
次に来たのはお婆ちゃんと孫2人だ。
「おや、おや。トーリアさん。今日も盛況ですね。」
「おかげ様で忙しくさせて頂いております。」
「私も孫と一緒に空を飛ぶのが楽しみでね。今日も孫たちと一緒に来たのよ。」
「本日も誠にありがとうございます。是非、楽しんで行って下さい。」
誤魔化そうとした大人たちから10,000ジェイを受け取ったテスの次の相手は、仕立ての良さそうな服を身に纏った商人風の男だ。
「私は行商人をしておりましてね。ユーゴ様との面会を希望しているのですが、よろしいですかな。」
「ユーゴ様は面会を希望しておりません。空を飛ばないのであればお引き取り下さい。」
「折角、並んだのですから、そんな事を言わずに・・・。この通りですから。」
商人は懐から銅貨を数枚出すとテスに握り込ませる。
「これは追加分でしょうか?」
「いいえ。貴女の取り分でございます。ユーゴ様との面会は可能でしょうか。」
「不可能です。お引き取り下さい。」
テスは乱暴に銅貨を商人に付き返す。商人は驚いた表情になるが、10,000ジェイだけ支払って庭に入る。
「ユーゴ様・・・。なんで母さんばっかり変な人の応対をしているんだろう・・・。」
「・・・運じゃないかな。」
門の向こうで繰り広げられる戦いを平和な場所から眺める優剛とフガッジュであった。
庭に入ってすぐに待機場所が設置されているので、待機者たちはそこで集まって、空を飛んでいる者たちを見上げながら自分たちの順番を待つ。
この隙に優剛に近づこうと思えば近づけるし、順番が来ても空を飛ばないで優剛に近づく事も可能だ。
これまで何人もこの方法で優剛に接近を試みるが、一言二言喋っただけで優剛によって強制的に塀の外に放り出されるのだ。ご丁寧に騎士団の訓練場の門の前にだ。
訓練場の門番をしている騎士たちも最初は困惑していたが、最近はそんな風に飛ばされてくる人たちを楽しみにしている。
「おっ。1人飛んで来るぞ。」
「商人っぽいな。ユーゴさんに何を言ったんだろうな。」
お尻から着地した商人の口からは文句が出て来る。
「ぐぎゃ!なんなんだあの男は!?それに受付の獣人もだ!」
「へぇー。ユーゴさんがお前さんに何かしたのか?あんたはユーゴさんに何を依頼しようとしたのか話してくれないか?」
「なんだお前ら・・は・・・え?」
「俺たちはこの街の騎士だが、お前さんは何処の誰だ?この辺じゃ見ない顔だよな?」
「行商人じゃないか?おい。それより次が来たぞ。たぶんこいつの護衛じゃないか?」
騎士たちから座ったままズリズリと距離を取る商人の頭上からは、彼の護衛らしき男の2人が落下してくる。
「うあぁぁぁぁぁ!」
「ぎぃやぁぁぁああ!」
商人を吹き飛ばした際に護衛の2人が優剛に襲い掛かろうとしたのだが、すぐに遥か上空まで上げられた彼らは、商人が落ちた付近に自由落下をしていたのだ。
「ひぃ!」
商人が上を見上げて落下してくる護衛に気が付き短い悲鳴を漏らす。そして、地面に衝突する2人を想像してギュッと目を閉じた。
地面がすぐそこまで来た自由落下中の2人もバタバタと手足を振りながらも、諦めたようにギュッと目を閉じた。
ドサッ!っという遥か上空から落ちた割には小さな衝撃音に疑問を持った商人は、恐る恐る目を開けると、半ば放心状態の護衛が地面に倒れていた。
「これ何回見ても心臓に悪いよな。」
「見てるだけなのにな・・・。おい!ほら!サッサと立ち上がって帰れよ。もうユーゴさんに変な事を持ち掛けるなよ。」
真っ直ぐに落下してきた護衛は地面が近づくにつれて僅かに軌道を斜めにして、衝撃を和らげるように地面スレスレを平行に飛んでから、1mほど滑らかに上昇するとそこから今度は本当に落下するのだ。
偶に優剛は失敗して地面に擦りつける事もあるが、大きな怪我人が発生した事は無い。
「あ・・・ぁ・・・。」
「お前たち!早く立ち上がるんだ!帰るぞ!」
生まれたての小鹿のように足をガクガク震わせて立ち上がろうとする護衛に、商人が怒鳴り散らしていた。
カラン♪カラーン♪
「残り1分でーす!」
フガッジュが今日の最終飛行をしている集団に残り時間を叫ぶ。殆ど聞いている人はいないのだが、これは必要な事である。主に優剛に知らせる意味で・・・。
優剛はベルの音を聞いて素早くテーブルの砂時計に視線を移す。砂が落ち切れば優剛は門の近くに設置した着陸場所に次々とお客たちを降ろしていく。
降ろされた人たちは名残惜しそうに空を見つめる者もいるが、大半の者が笑顔で門から出て行く。優剛に向かって頭を下げる者や手を振る者いる。そんな人たちには優剛も微笑んで手を振り返す。
午後を告げる鐘が鳴り響いて最後のお客が庭から出ていくのを、全員で庭から見送った後に優剛が口を開く。
「はーい。みんなお疲れ様。今日もありがとね。」
みんなで「お疲れ様です」と言い合ってから、屋敷に向かって歩き始めた時にフガッジュが優剛と話をする。
「マミ様は午後も営業を希望していましたけど、午前だけで正解でしたね・・・。」
「午後は遊・・・。魔力を回復しないとね!」
「旦那は全然平気そうだけど、受付のテスは消耗が激しいな・・・。しかし、トーリアさんも平気そうなのはなんでだ・・・?」
優剛とタカ、フガッジュが無言で見つめる先には、グッタリとしたテスが屋敷に向かって歩いている。耳も尻尾も垂れていて元気がない。
その横では背筋を立てて優雅に歩くトーリアがいた。
そんなトーリアを見つめるシオンの目には尊敬があった。
昼食を食べ終わって各々が仕事に戻っていく。
テスは今日の売上金を帳簿に付ける。
護衛組は買い物と屋敷の門に向かう2組に分かれる。
広間にはいつも通りゴロゴロしている優剛が残された。
(パラソルはすぐに作ってくれたけど、草履はやっぱり大変なんだろうな・・・。オリハルコンの道具は作り終わったって言ってたから、ヤスリはもうすぐだろうなぁ。)
大きな屋敷の主人には見えない優剛の様子を、調理場から覗いていたケンピナが不思議そうに呟く。
「ありえない・・・。あんな凄い人が使用人も付けないで、1人でゴロゴロしているなんて・・・。」
『良いんですー。皆さんは僕に構わずお仕事をお願いしますぅ。』
「きゃっ!き・・・聞こえてるの・・・。」
優剛はケンピナの呟きを偶々、聴覚強化していて聞こえたので、魔力で返答したのだ。ただゴロゴロしている訳では無い。魔術の訓練中なのだ。わかってくれとは言わないが・・・。
ケンピナは少し怖くなったが、『ユーゴだから』の合言葉で忘れる事にした。
優剛は屋敷の玄関の方に視線を向けると、仰向けのまま口を開いた。
「ノブさん、誰か来たの?」
「あぁ。豚みたい奴が来たぞ。今はトーリアが対応しているな。」
「豚みたいな知り合いはいないけどなぁ・・・。1番近いのはランドさんだけど、あの人は筋肉ダルマだしなぁ・・・。トーリアは困ってる?」
「少しな。」
「んじゃ、応接室で待ってるって伝えてあげて。」
「良かろう。」という声を聞いた優剛は気怠そうに立ち上がって応接室に向かう。応接室は広間からも出入りが出来るので、廊下でバッタリ遭遇する事も無いのだ。
優剛が応接室で待っていると、すぐに扉をノックする音が聞こえて来た。
優剛は「入れ」と短く返答する。完全に外向けの優剛である。
そしてトーリアが扉を開けてわざとらしく優剛を褒める。
「ユーゴ様、既にこちらでお待ち頂いていたとは流石でございます。」
『ノブさんに豚が来たって聞いたぁ。』
「客が来たんだろ?」
トーリアは直接魔力で語りかけられた言葉に思わず表情を崩す。さらに声を発した優剛のギャップに堪え切れずに1秒ほど下を向いてしまう。
顔を上げたトーリアは真面目な顔に戻っており、そのまま口を開く。
「ポークリフ様でございます。お約束はありませんが、どうしてもと言われまして・・・。」
「構わない。通せ。」
「畏まりました。ポークリフ様、お待たせしました。どうぞお入り下さい。」
「ふん。黙って会わせれば良いんだ。使用人風情が生意気な。」
横に大きくデップリとした仕立ての良い服を着た男性が、トーリアに文句を言いながら応接室に入って来た。その背後には護衛と思われる男を2人引き連れている。
(おぉ!豚じゃ!豚が服を着ておるぞ!って言うかポークって英語で豚じゃん・・・。この人はもう豚で良いんじゃない?)
別に約束が無い面会でも優剛は気にしないのだが、トーリアに文句を言う豚に良い感情は持っていなかった。その為、内心では盛大に毒を吐いている。
「ぶふぅー。貴様がユーゴか?」
豚は優剛を上から下まで細い目で確認しながら、ソファーを盛大に沈み込ませてドッカリと腰を下ろした。
「はい。私が優剛です。」
「俺の事は知っているだろ。貴様は人を飛ばせるらしいな。」
(あんたみたいな豚は知らんですよ・・・。)
優剛は内心では辛口で返答するが、しっかりと応対する。
「はい。人でも物でも飛ばせますよ。」
「よし、よし。想像以上の回答だ。俺に見せてみろ。」
優剛は紅茶を淹れようとしたトーリアを手で止めて、テーブルを宙に浮かしてみせる。
それを見た豚は醜い笑みと声で優剛を称える。
「ぐふふ。素晴らしいぞ。報告は本当だったようだな。ぐふふ。」
優剛は気持ち悪い豚を放置してテーブルを床に戻した。テーブルが戻った事でトーリアがそれぞれの前に紅茶を置いていく。
豚は紅茶に気が付いて口に含むと「ほぉ」と感心するような声をあげる。
(美味しいだろう!うちのトーリアは凄いんだぞ!)
豚の様子を眺めていた優剛の、子供のような自慢が表に出る事は無い。
「よし、よし。では貴様は明日からうちに来い。部屋も特別に家族と同じ部屋を用意してやろう。文句はあるまい。それと犬だ。貴様は犬を飼っているだろう。あれは俺に寄越せ。綺麗な銀色の毛並みをしたあの犬だ。」
「今の暮らしに満足しているので行きませんよ。犬も渡しません。彼は私の家族ですから。」
優剛は豚が言う謎の要請を断った。
断られると思っていなかった豚が顔を赤くして優剛に再度要求する。
「貴様は何を言っているのだ!?俺に仕えるという名誉がわからんのか?家族も一緒に俺が面倒を見てやると言っているのだぞ!」
「うーん。お引き取り下さい。」
話が通じないと判断した優剛は立ち上がって扉に手を向けた。
「き・・き・・貴様!俺は領主代行補佐官だぞ!領主代行だぞ!領主だぞ!レミニスター様に代わって領地の運営をする貴族であるぞ!」
(真っ赤な顔して領主とか言っちゃってるよ。代行の補佐官って何よ。・・・レミさん大丈夫かな。こんな部下を抱えてて・・・。)
優剛は領主のレミニスターを心配するような表情のまま豚を眺めた。
そんな視線が気に入らないのか豚が喚き散らす。
「貴様!たかが平民が俺の要請を断るなど言語道断だぞ!」
「お断りします。」
優剛の毅然とした物言いに豚が口を開く
「くそっ!穏便に済ませてやろうと思っていたが、プランBだ!」
(プラン豚ですかね?ブゥーブゥー。)
「おい!こいつを痛めつけろ!俺に泣いて詫びるまで止めるな!」
豚は一緒に部屋に入って来た護衛と思われる2人に向かって叫ぶように命令した。
2人は豚が座るソファーの後ろで優剛に憐れむような視線を向けていたが、豚の命令を受けて無表情になる。そしてそれぞれが左右に分かれて優剛に向かって近づいていく。
「おぉ?僕はこれでも2級ハンターなんで、お勧めしないですよ。」
「そんな事は調べが付いているわ!だからこうして俺の護衛隊で最も優秀な2人を連れて来たのだ。こいつらも2級のハンターだ!もう謝っても許さんからな!」
「うげ・・・。マジっすか?止めません?」
優剛は少し小声で驚きを口にしてから、懇願するように近づいて来る2人に告げた。
「ふざけるな!やれ!」
「・・・すまんな。」
怒りで喚く豚とは対照的に申し訳なさそうに優剛に接近する内の1人が呟いた。
(ありゃ・・・。どうしよう・・・。)
優剛は2人の魔装を観察して脅威は無いと判断したが、自分がやるか、信長に任せるかで葛藤していた。
悩む優剛を怖気づいたと判断した男は優剛を捕らえるべく、一気に間合いを詰めて来た。
日本基準でも細身の優剛は異世界基準にすると、身長が小さい上に、か細いもやしっ子である。初見で強いと判断するのは困難である。しかも、魔装も纏わず無防備に見えるのだ。
しかし、優剛の魔装は皮膚の下で常時展開されていて、常に鉄壁の鎧を纏っている状態と同じである。
優剛は懐に入って来た男のボディブローを右手で防いで、左手で顎に向かって掌底を放つ。
男は驚きの表情で顔を反らしてギリギリ回避する。そして素早く後ろに跳んで優剛と距離を取った。
それを見ていたもう1人の男も警戒感を引き上げたのか、真剣な表情へと変わった。
(ありゃ?避けられた。・・・加減が難しいなぁ。)
紅の道に絡まれた時の力加減で放った掌底が、ギリギリ避けられた事で優剛は次の手を思考する。
そんな時間を与えない為か今度は2人が同時に優剛を攻める。
優剛は慌てる事無く、右の脇を閉じて軽く擦った。
直後、2級ハンターの2人は、力なく前のめりに倒れていく。優剛はそっと後ろに1歩引いて、優剛に向かって倒れて来る2人を避ける。
(電撃バチバチー♪これ隠密性が高くて便利だな・・・。)
倒れた2人は呻き声を上げながら全身をピクピクと痙攣させるように、身体を動かそうとするが、一時的に麻痺した筋肉が回復するには少し時間が必要だ。
「ぐ・・・。な・・・なにを・・・。」
「ま・・魔道具・・・か?」
「うーん。敵には教えないでしょ。」
優剛は倒れた2人の男が呟く言葉に返答すると、豚に向かって歩みを進める。
「プラン豚は失敗しましたが、プランBeefとかありますか?」
「な・・・。き・・貴様!俺に歯向かってただで済むと思っているのか!?」
優剛は豚とBeefを日本語と英語で言っているので、異世界人の豚が理解出来なくて当然である。理解出来ていれば逆上して優剛に掴みかかっていたかもしれない。
「ただで済むかどうかはわからないですけど、今日は帰りましょうか。ね。」
優剛の優しい口調に豚は何を勘違いしたのか、護衛を失ったのも忘れて叫び始める。
「くっ!貴様でも貴族の俺に手を出すのは怖いのであろう!その戦闘力の方も評価対象にしてやる!明日、家族と一緒に俺の屋敷に来い!これが最後の通告だ!」
「お断りします。お引き取り下さい。」
優剛は豚の勧誘を食い気味に再度断る。
「ふんっ!良いだろう。絶対に後悔する事になるぞ。」
豚は悪役の決め台詞を吐いて扉に向かって歩みを進める。そして振り返ると倒れている2人に向かって声を張り上げる。
「おい!いつまで倒れているんだ!帰るぞ!」
しかし、男たちは呻き声を上げるだけで、立ち上がる事が出来ない。
「・・・貴様ら!家族がどうなっても良いのか!?」
優剛は豚の台詞を聞いて初めて真剣な表情に変わる。
「この2人が動けないのはお分かりになるでしょう?こちらで休ませるので、1人でお帰り下さい。それとも貴方も一緒に休んでいかれますか?」
「クソ!役立たずが!」
豚は吐き捨てるように言い放つと、1人で屋敷を出て行く。
「ちょっと2人とは一緒にお話がしたいですね。いや、いや。ゆっくりしていきましょう。」
微笑んで倒れている2人を見下ろす優剛に恐怖を感じた2人は、気圧されるように同意するしかなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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次回もよろしくお願い致します。




