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家族で異世界生活  作者: しゅむ
41/215

41. 聖女様

前回のお話

護衛を雇ったぞー

コスプレ?いいえ。自前の耳と尻尾です。

 新しく4人の護衛が屋敷に同居する事になったので、夕飯時にそれぞれが麻実や子供たちに挨拶をした。


 部屋は4人とも1階を希望して、タカとテスは同室。2人の部屋を挟むようにシオンとフガッジュが1人部屋を割り当てられた。


 それぞれの希望を聞いた結果で各自に仕事が割り振られた。


 テスは経理担当兼護衛。

 行商人をしていた経験を活かして屋敷の収入や支出を記録してトーリアに提出。


 タカとフガッジュは護衛専門。

 ユリやマコトの外遊びに同行したり、使用人の買い物に付き合ったり、屋敷の門前に立つとの事だ。

 元々屋敷の警備は信長の担当だ。あくまで、門前に立つのはパフォーマンスと訪問者を屋敷まで案内する事だ。


 トーリアが信長を紹介した際はタカが電撃で痺れたそうだ。それで完全に上下関係が決まったとの事である。


 シオンは執事兼護衛という難しい仕事に挑戦するとの事だ。

 最終目標は優剛と共にどんな場所にも行くのが目標だそうだ。

 執事の仕事に魅力を感じて、トーリアの優雅な動きにも尊敬の念を持ったとの事だ。


 優剛に報告する際にトーリアは後継者を育てると張り切っていた。


 テスたちはトーリアとの打ち合わせが長引いた事で夕飯後に、宿に戻って荷物を持って来た。

 優剛も雇用直後に異空間魔術を見せる気は無いようで黙っていた。


 次の日の朝。

 いつものように朝食後、庭に出る前に優剛はテスたちに告げる。

「テスさ・・・。テスたちも朝食の後に1時間の訓練をするから参加してね。」


 昨日の夕食時に敬称を付けてテスたちを呼んでいた優剛は、それだけは止めてくれと懇願された。

 まだ「さん」付けで呼ぶ癖の付いていなかった優剛はこれを了承したが、まだまだ慣れてはいなかった。

 もちろん同じようにトーリアたちも要求してきたので、優剛は敬称無しでトーリアたちを呼ぶ努力を始めている。


「はい。1時間だけでは無く、空いた時間は全て訓練に費やします。」

「えーっと・・・。無理しないようにね・・・。」


 例外はあるが、獣人は戦闘力で上下関係が反映されやすい。優剛との力の差を見せつけられて、テスたちは優剛に絶対服従。優剛に向ける忠誠心は国王や神に忠誠を誓う勢いだ。


「よし!お前たち、私たちの訓練は厳しく行くぞ!」

「「「はい!」」」

(タカさんも元気に返事しているけど、一応タカさんが護衛たちのボスだよね・・・?)


 優剛は数秒タカを見つめてしまったが、気を取り直してテスの言葉に言及する。

「訓練内容は僕たちと同じでお願いします。最初は出来ないかもしれないですが、徐々に消化出来るようになって下さいね。」

「はい!どんな内容でも本日より全部消化致します!」


 気合十分の獣人たちを最後尾にハルとレイを含めた田中一家は庭に出る。


「はーい。最初は魔装です。始めてー。」

 そんな優剛の言葉で始まった朝の訓練は、初めて参加する者を絶望の淵に叩き落とした。


 テスたちは1時間ずっと優剛から魔装の穴を指摘され続けた。

 シオンとフガッジュは途中で力尽きて、優剛の指示で休憩を挟みながら魔装を続けた。

 タカとテスはガクガクと震える足を手で抑えつけるようにして、最後まで魔装を続けたが、最後まで魔力は漏れ続けていた。


 ハルとレイも田中一家の訓練を辛うじて消化したが、由里や真人の訓練内容が自分たちよりも厳しいものだったという自覚があった。

 ハルは人間よりも自分が劣っているという事で落ち込んでいる。

 レイは由里より弱い自分に由里を守る資格があるのかと落ち込んでいる。


 庭に倒れて休んでいる獣人たちを優剛はさらに追い詰める。

「本当は1時間ずっと魔装を維持しながら訓練するんだからね。最初だけじゃないから明日から頑張ってね。」


「がふっ」

 辛うじて意識を保っていたテスが気を失った。

 タカは信じられないものでも見るかのように優剛を見ていた。


 優剛は訓練で力尽きて倒れているタカたちを放置して、落ち込んでいるハルとレイに声をかける。


「どうだった?」

『他の人間は弱いって聞いた。だけど、ユリもマコトも私達より強いんじゃない?』

「うーん。由里と真人は別にして、そこで大の字になっている4人の事は見てた?」


 優剛の言葉を聞いてハルとレイは寝転がっている4人の獣人に視線を移してから答える。

『そんな余裕は無かった。』

『俺も。』


 優剛はハルとレイの答えを聞くと何を思いついた表情をしてから口を開いた。

「タカ」


 優剛に呼ばれたタカは必死の形相で、優剛の方を向きながら震える足を手で抑えてフラフラと立ち上がろうとした。そして優剛は立ち上がる途中のタカに向かって魔力玉を放った。

 タカは避ける動作もせずに、優剛を見つめたまま魔力玉を顔に受けて再度倒れた。


「タカ、ありがとう。」

「がふ」

 倒れたタカに向かって優剛が感謝を述べると、何がトドメになったかわからないが、タカは意識を失った。


 元々立ち上がれないのに立ち上がったのが悪いのか。

 魔力玉に当たって辛うじて灯っていた意識という名の火が消えたのか。

 何もしていないのに感謝された事で心に傷を負って限界を迎えたのか。

 おそらく全部であろうが、タカが意識を失った理由を語る事は無かった。


『もしかして・・・。今の魔力玉が見えていない?』

「ハル、正解。」

 ハルとレイから見れば先ほど優剛が放った魔力玉は遅く、避けるのに苦労する速さではなかった。

 しかし、タカは優剛が放った魔力玉が見えていないかのように、顔面に魔力玉を喰らって地面に倒れたのだ。


「タカは獣人だけど人間の基準で言えば強い方だと思うよ。僕も人間の強さの基準はわからないんだけどね。」

『ユーゴの家族じゃなくて、あっちの4人を基準にしたら良いのね。』

 優剛はハルの話を「うんうん」と首を縦に振って肯定する。


『ユーゴォ、俺・・・ユリを守れないかも・・・。』

 レイは尻尾を限界まで垂らして優剛を見上げる。優剛もレイを励ますように声をかける。


「初日でここまで出来れば凄いと思うよ。由里や真人だって最初は苦労していたからね。すぐに追いつけるよ。」

『・・・本当か?』


「今まで自分たちの特徴を伸ばすだけの訓練だったでしょ?ハルなら尻尾に魔力を纏って、身体能力を強化する。レイは電撃を生み出して、身体能力を強化する。」

 ハルとレイは黙って優剛の話に耳を傾ける。


「特徴を伸ばす訓練は悪い事じゃないけど、それ以外の部分を伸ばす訓練も特徴を伸ばす良い切っ掛けになると思うよ。」

『確かに数字を作るのも魔力を飛ばすのも、電撃を放出する時と似た感覚だったぞ。』

「まぁ、これからも朝の1時間は参加してね。大丈夫だよ。すぐに由里や真人と同じくらいにはなれるよ。」


『うん。マコトには負けない。何よりユリを守れる強い狼になるんだ。』

 レイの垂れていた尻尾と耳が立ち上がる。それを見た優剛は安心するように微笑んだ。


 そこに病院に行く準備を終えた麻実が優剛に声をかける。

「優剛、そろそろ行くわよ。」

「はーい。」


『どこに行くんだ?』

 レイが尋ねてきたので、優剛が答える。


「麻実は人間の怪我や病気を治療する仕事をしているから、その人たちが集まる病院っていう場所に行くんだよ。」

『え?独りで行けば良いじゃないか。ユーゴが一緒に行く必要あるのか?』


 そんなレイの言葉に優剛は少し慌てて回答する。昨日からレイは魔力を全身から放っているので、レイの意思はレイの近くにいれば理解が出来るのだ。


「麻実が変な人に襲われないように僕が一緒に行くんだよ。人間の街は少し危ないからね。」

『うーん。麻実は強いぞ?独りで行けるだろう?』

(おいぃぃぃ!麻実がお前を睨んでいるだろうが!気づけよ!)


 優剛の送り迎えを密かに楽しみにしている麻実は、独りで行けと連呼するレイを睨みつけていた。

 ハルはレイに向ける麻実の視線に気が付いているが、内心でニヤニヤしながら完全に知らない振りをしている。


「麻実が一緒に行こう。って言うから行くんだよ。深く考えないで良いよ。」

『お・・・。おぅ。』

 優剛はレイの顔を手で挟んで顔を寄せると、最後の言葉を小さな声でレイに伝えた。少し気圧されるようにレイは同意した。


「麻実、お待たせ。」

「うん。良いの。」

「ん?戻るの?」

「うん。ちょっとね。」

 優剛は再び屋敷に戻る麻実の後ろを付いていく。


 屋敷でアイサを捕まえた麻実はアイサに1つの指示を出す。

「今日のレイのお昼ご飯は少なめにしてね。昨日の夜と今日の朝食が少し多いかなって思ったの。レイは野生の時みたいに限界まで食べるみたいだから太っても困るしお願いね。」

(レイィィィ!麻実が怒っているぞぉぉぉぉ!)


「畏まりました。食べ過ぎは良くないですもんね。」

 素直なアイサに麻実が頷いて同意すると、優剛と一緒に病院に向かうのであった。


 病院の近くでは既に多くの人が病院の診療開始時間を待っていた。

「前回来た時は少し外で待っている程度だったけど、今日は凄い人だね。」

「うん。昨日も同じくらいだったかな。急に患者が増えたのよ。」


 そんな会話をしていると麻実に気づいた患者たちが麻実に声をかけてくる。

「マミ様ー。」「聖女様ー。」「うおぉぉ!聖女様ー。」「キャー!こっち見たわー!」

 麻実を呼ぶ声と歓声で麻実を迎える患者たち。中には麻実に向かって拝んでいる人たちもいる。


「え?麻実って聖女なの?拝んでる人も居るし・・・。」

「最近多いのよね。ふふ。私、聖女よ。」

(聖女ねぇ・・・。聖母の方が相応しい気がするけどなぁ。ゆくゆくはババ様だな。)


「何?」

「ん?心配になってきたからちょっとゴリンさんと話してみようかな。」

 優剛の内心を的確に読むかのように麻実は鋭い目つきで何を考えているのかを尋ねた。それを内心ではパニック寸前の優剛が表情には出さずに、適当な事を言って返答する。


「心配ってなんの?」

「これだけ人気だとハンターだけじゃなくて貴族からも勧誘されるでしょ。」

 この心配は本当の事なので、素早く回答が出来た。優剛は実に運が良い。


「あぁ。それなら平気よ。」

「え?なんで?」

 優剛は歓声を上げる患者に向かって手を振る麻実と会話しながら、自然に病院内まで入っていく。


「私も気になってゴリンさんに聞いた事があるのよ。それでね、この病院は領地が管理している病院だから、私の雇用主ってレミさんなのよ。」

「マジか・・・。」

「レミさんから人材を強引に引き抜く貴族がいたら、レミさんが直接その貴族に文句を言ったり、圧力をかけたりする事も出来るんですって。」


「レミさん凄いね。でもレミさんより権力のある貴族だったら?」

「優剛はレミさんの事を全然知らないのね。」

 麻実は少し胸を張って優剛に説明する。


「ここフィールド領はムーフリット王国でも食料を担う大事な領地の1つで、狂魔地帯が近い事でハンター活動も活発。貴重な素材の供給源としても大事な領地なのよ。そんな領地の領主であるレミさんは王に次ぐ権力があると言われているわ。」


(ムーフリット王国だっけ・・・。トーリアさんから聞いたような気がするけど、忘れてたな。確か人間の国とエルフの国。ドワーフの国と獣人の国の4つがこの大陸にあるって話だったな。うん。思い出してきた。それぞれの国は別種族を差別したりはしないけど、暮らしやすいとは言えないって話だった気がするな。)


 優剛は内心を隠すように声を上げる。

「ほぇぇー。レミさんって凄いんだね。」

「まぁ、私も最近知ったんだけどね。」

「やっぱり外で色んな人と話すと違うね。」

 優剛は麻実が病院を通じて色々な人たちと会話しているのが、よく理解出来た。


「ホント、優剛の常識の無さに引くわ。」

「止めてよ・・・。結構気にしてるんだから・・・。」

 麻実は優剛をからかうように言うと、優剛は少し項垂れた。


「まぁ、そんな訳だから軽い勧誘はあるけど、強引な勧誘をする貴族はいないのよ。」

「軽いのはあるんだ。」

「そうね。これだけ出すから専属にとか、こんな待遇で~とか、診察に来る使用人が主の名前を言って提示してくるわ。でも私の目的は症例数だからね。全部お断りよ。今は色々と研究してて燃えているのよ。」

 麻実は胸の前で両手の拳を握りこんで、モチベーションの高さを優剛に示す。


「はは。無理しないように。僕は帰るね。」

「はーい。また、お迎えよろしくね。」


 病院の関係者用の出入り口から外に出た優剛は、帰り道で病院の正面を再び見る事になる。

 優剛は列を作って並ぶ患者の多さに再び驚いた。


(急患とかどうするんだろ・・・。まぁ全員を麻実が診る訳じゃないか。)


「お仕事頑張って下さい」と病人に向かって小声で呟き、その場を立ち去る無職ニートの優剛であった。

(あっ。暇だしダメさんとこに遊びに行こう。)


 そして暇つぶしでランドの店にやってきた優剛だが、店のドアが閉まっていて鍵もかけてある為、中に入る事が出来なかった。


(むぅ。店からなんかを叩く音も聞こえるから居留守か・・・。開けちゃおう。)

 優剛は鍵穴に魔力を流し込んで行く。そして鍵の細かい凸凹に合わせて魔力を操作して、魔力と地面を同期させる。

 鍵穴の中では鍵の形に合わせて、優剛の魔力で作られた土が完成していた。そして、それをゆっくり回すと、「ガチャ」っという音がした。


(ふへへ。ちょろいぜ。)

 悪い笑顔を浮かべた優剛はランドの店に入店、いや侵入する。


「ダメさーん。いるぅ?」

「ダメオ!鍵は掛けろって言っただろうが!」

「掛けたっスよ!ユーゴさんが勝手に開けたんスよ!」

 奥で何やら言い争う声が聞こえてくるが、しばらくするとダメリオンが小走りで店の奥から出てきた。


「ハロー。ダメさん。」

「ユーゴさん何しに来たんスか?」

 疲れた表情のダメリオンは優剛の挨拶を無視して睨みつけるように優剛を見上げた。そして、少し遅れてランドも店の奥から出てきた。


「暇つぶしかな。なんで鍵が掛かっていたの?あっ。入った時にまた鍵は掛けたよ。」

「なんで開けられるんスか。鍵は魔力を乱すように作った特製っスよ?」

「そんなのあるの?まぁ・・・。楽勝でした。」

 優剛はサムズアップしてダメリオンに告げた。


「自信無くなるっス・・・。」


「よぉ。ユーゴ。」

「ちわっス。ランドさん。」

 ランドの気軽な挨拶に優剛はチンピラのような挨拶で返す。


「んで?暇つぶしか?」

「ちゃんと依頼は持って来ましたよ。」

「それを早く言って欲しいっス・・・。」

 ダメリオンが睨むのを止めて、口を尖らせて優剛を見上げる。


「表札が3つ欲しいんだ。」

「了解っス。刻む名前をここに書いて欲しいっス。」

 優剛はタカ、テス。フガッジュ。シオンの名前を書いていく。


「納期はいつでも良いよー。」

「いや、すぐ出来るっス。今うちは鉄くずで溢れているっス。」

「何やってんの・・・。」

「親方、説明しといて欲しいっス。俺は表札を作ってくるっス。」

 ランドは「おぅ」と短く返事をすると、ダメリオンは奥に小走りで向かった。そして、申し訳なさそうな表情に変わったランドが口を開く。


「ユーゴ、すまん。」

「オリハルコン盗まれました?また取ってくるから気にしないで良いですよ。」

「ちげぇよ。オリハルコンはあるよ。気軽に取って来るとか言うんじゃねぇよ。」

 ランドの表情は変わらないが、しっかり優剛にツッコミを入れる。


「俺が謝っているのは加工にはかなりの時間が必要になるってのと、オリハルコンはオリハルコンじゃねぇと加工が出来ねぇって事だ。熱しても冷やしてもなんにも起きやしねぇ。うちにある道具でぶっ叩いたら道具が壊れるしよう。」

「あぁ・・・。それで鉄くずが沢山あるんですね。」

「うっせぇ!」


「時間が掛かるのは問題ないですよ。そもそも急いで無いですからね。オリハルコンを加工する為の道具を作るのにオリハルコンが足りない?」

「ちげぇよ!短剣を作る以上に俺たちの道具作りでオリハルコンを使っちまうんだよ・・・。」

 そんなランドの言葉を優剛は不思議そうに首を傾げて口を開く。


「別に良いじゃないですか。ダメさんの道具とそれぞれで作って下さいよ。」

「本当に良いのか?あれだけのオリハルコンだ。売れば孫の代まで遊んで暮らしてもまだまだ余るぞ。」

「ふふ。作った道具でうちの孫の代まで作成や修繕をお願いしますね。」

「けっ!おめぇの専属はダメオじゃねぇか!」

「僕以外はランドさんを選ぶかもしれないじゃないですかー。」

 嬉しさから顔を綻ばせるランドに優剛は自分以外の子供たちの専属は知らんと告げる。


「ちっ。・・・最高の1本を作るから待っててくれ。」

「はい。お待ちしております。」

「ダメオにも伝えて来るからちょっと待ってろ。」


 ランドはそう言って奥に消えた。


 しばらくするとダメリオンが叫びながら駆け足で戻ってきた。

「ぬぉぉぉ。ユーゴさーん!」

「うおぉぉ。ダメさーん。」


 ノリで叫び返す優剛を無視してダメリオンは何か言おうとするが、言葉が出ない。


「ユーゴさん、あの・・・。」

「ん?表札はオリハルコンじゃなくて良いからね。」

「違うっス!俺が言いたいのは・・・。」

 再び沈黙するダメリオン。


「ランドさんに負けない道具を作って、最高の短剣も作ってよね。」

 優剛は黙って言葉を探すダメリオンに告げた。


「ぬぅおぉぉ!最高の1本を作るっス!」

「期待しているよ。」

 優剛は吹っ切れたように燃えるダメリオンに優しく微笑んだ。


「すぐに表札を仕上げるんで待ってて下さいッス。」

 ダメリオンはそう言い残して再び奥に向かって走り出した。


「あぁー!先に始めるなんてズルいっスよ!」

「うっせぇ!てめぇは表札でも作ってろや!」


「ぬぉぉぉ」という叫び声が奥から聞こえてしばらくして、表札と接着剤を持ってダメリオンが戻ってきた。

 優剛に表札を渡すとすぐに奥に引き返したダメリオンは奥から優剛に向かって叫んだ。


「鍵は掛けて帰って下さいっス!」

(鍵は持ってないんだけど・・・。)

 優剛は苦笑して心の中でダメリオンにツッコミを入れる。


 ダメリオンの姿は見えないが、店の奥から感謝を叫ぶ声が聞こえてきた。

「ユーゴさん!ありがとうございます!」

(~~っス、じゃない言葉も使えるんじゃん。)


「なんかあったら教えてねー。」

 姿は見えないが奥に居るであろうダメリオンに向かって優剛は叫ぶと、店の外に出た後に、入った時と同じ要領で鍵を掛けて屋敷に帰る


 屋台で買い食いはしないが、いつか食べると言い訳しながら、様々な食料を屋台で購入して、異空間に放り込みながら帰宅した。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

皆様の読んでいた時間が少しでも良い時間であったなら幸いです。


評価や感想もお待ちしております。ブックマーク登録も是非お願いします。

次回もよろしくお願い致します。

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