36. 夜は始まったばかり
前回のお話
ウチ来る?
行く行くー♪
優剛は食事が終わるとボラの誘導で尻尾を削っている岩がある場所に案内されていた。
『この辺りの岩で尻尾を削るんだ。しっかり削らんと切れ味が鈍るからな。』
ボラは自慢するように尻尾の先端部分を優剛の目の前でゆらゆら揺らして見せつける。
「尻尾近い。メッチャ切れるから怖いよ。この辺の岩か。なるほどねぇー。」
(んー。かなり魔力が詰まっている岩もあるね。)
優剛はダメリオンのオリハルコンを見た経験から、じっくりと岩の魔力を探るようにして見ている。
「ちょっとこの辺を掘っても良いですか?」
その中でも特に魔力が濃い岩肌を指差して確認した。
『ほぉー。目の付け所は良いが、その辺りの岩だとハルには少し硬すぎるぞ。』
(なるほど。成長と共に尻尾の硬度も上がるのか。)
目敏く尻尾の分析も心のノートに刻む。
「表面をザラザラに加工して使えば良いんですよ。」
優剛はヤスリをイメージして伝えるが、人間の道具を説明してもボラには伝わらない。
『よくわからんが、使えなかったらまた来い。』
(何がなんでもダメさんにヤスリにして貰おう。出来ないとか言ったら、ここまで連れて来よう。)
優剛は拉致してでも連れて来るという不穏な決意を固める。
優剛が岩肌の前まで来るとハッとした顔に変わる。岩を掘る為の道具が無い。
(掘るって何で・・・?)
岩の前で固まる優剛にボラが語りかける。
『その硬い部分が欲しいのか?』
「そうです。この辺の岩を切り取って持って帰ろうかと思うんですが、何で切ろうかと思って・・・。」
すると急に真剣な目付きに変わったボラが岩を眺め始める。そして尻尾で岩に傷を付けていく。
『うーむ。かなり大きいな・・・。』
尻尾で傷を付けたのは硬さの確認の為だ。硬い岩とそうではない岩の境界線が描かれている。
『俺の尻尾でもこの硬い岩を切り取る事は難しい。この線に沿って切り取る事は出来るんだが、大きすぎだな。時間を掛ければ硬い岩を切り取る事は出来るが、1日、2日の事じゃないからなぁ・・・。』
「うーん。大きいままでも持って行く事は出来ますけど、大きすぎても邪魔になりますよね。」
2人は岩の前で「うん、うん」唸っていると、一緒に来ていたハルが尋ねてくる。
『ユーゴが岩の欠片で叩いたら取れるんじゃないの?』
『おぉ!やっぱりうちの娘は天才だな。ユーゴもそう思うだろ?』
優剛は「そうですね」と無表情で返答してから、近くに落ちている魔力を内包している岩の欠片を拾った。
「これで叩くの?」
『私たちが尻尾に魔力を通して切れ味を良くするのと同じ事がユーゴに出来ないわけ無い。』
「ボラでも切れないんでしょ?」
『あの凶悪な魔力で覆ったら可能だと思うがな。』
優剛は手頃なサイズの岩を持ちながらボラに確認するが、返事は愛する娘と同じような回答だ。
優剛は再び全力で魔装して、岩の欠片も魔力で覆っていく。
『よくこの状態のユーゴに向かって行ったもんだ。あん時はどうかしてたぜ。』
『ユーゴの凄さはそこじゃない。持っている岩も私たちが尻尾に魔力を込めるのと同じくらい自然に魔力を纏わせている事。』
父娘が楽しそう?に会話しているので、内容にツッコミたい気持ちは大いにあるが無視をする。
優剛は岩の欠片を硬い岩に叩きつける。優剛の持っていた岩の欠片は破損してしまったが、硬い岩を少し掘る事が出来た。繰り返して叩いていくと、ドンドン持っている岩の欠片は小さくなっていく。
岩の欠片が小さくなると捨てて、ちょうど良い岩の欠片を探しては叩きつけてを繰り返しす。ようやく掌サイズの尖った硬い岩の欠片を取り出す事が出来た。
「はぁー。しんど。」
優剛はようやく手に入った硬い岩の欠片を手にしながら愚痴る。そして、硬い尖った岩の欠片を魔力で覆って、硬い岩に叩きつけた。
「おぉ!これなら掘れそうだ。」
今までとは比べ物にならない程に効率的に硬い岩が掘れるのだ。
その後も優剛はガツガツと叩いて、様々な大きさの硬い岩を何個も異空間に収納していく
突然、ボロっと取れたバスケットボールほどの岩以外は、どれも大きめの野球ボールほどだ。
その様子を驚愕の表情で見つめる父娘ドラゴン。
『あの岩で殴られたら俺の尻尾も切れるんじゃないか・・・?』
『切れてもまた生えてくるから大丈夫。』
『ハル・・・。試さんからな。』
ボラは泣きそうな顔でハルを見るが、ハルはガッカリしたような表情でボラを見ていた。
濃い魔力を内包した岩を満足いくまで集めた優剛は、そろそろ街に戻る事を告げる。今から全力で空を飛べば、日暮れ間際には街に到着するからだ。
ゼンとボラは優剛が空を飛べる事は戦った時にわかっていたが、改めて優剛が空を飛んでいるのを見ると非常に驚いていた。
ペロペロと顔を舐め合って、お互いに顔を擦りつけ合っている犬家族。いや、狼家族。
尻尾でガシガシと肉体言語で通じ合うドラゴン家族。
別れの挨拶は様々だが、優剛は黙ってそれを見守り続けた。
『ユーゴ、息子を頼んだ。』
『よろしくお願いします。』
「はい。大切にお預かりします。」
『娘をた・・・頼むぞ・・・。』
『ユーゴさん、よろしくお願いしますね。あんた!泣くんじゃないよ!みっともない!』
「はい。家族同然に接するつもりです。」
『ふぐぅ!ハル・・・。』
「ハル、レイ。僕に掴まって。」
『おぅ!』
『ん。』
レイは優剛の背中に乗っかり、優剛はレイを左腕で支える。
ハルは優剛の右腕の付け根付近に尻尾を巻き付けて前足で手首付近を掴む。そのまま優剛は右腕をお腹付近に持って来てハルを抱いた。
「2人は大切にお預かりします。喧嘩してここに帰って来ることもあるかもしれませんが、その時は話を聞いてあげて下さい。」
『レイ!たまには帰って来いよ!』
『ハルゥ!やっぱり・・・。がふっ』
ボラの首に妻の尻尾が巻き付き言葉が続かない。
母たちは優しい目付きで子供の旅立ちを見つめている。その目には薄っすらと涙が浮かんでいるように見える。
優剛は笑顔で飛び上がると左手を振ってから、街の方角に飛び去って行く。
その速度は異常な速度で、恐怖したハルとレイの叫び声が辺りに響いていた。
『ハルが叫んでた・・・。俺・・・今から山を下りてハルを迎えに行ってくる。』
『馬鹿言ってんじゃないよ!』
再びギリギリとボラの首には尻尾がきつく巻き付いていく。
『娘を持つとこんな風になるのか・・・?』
娘を持った事がないゼンはそんな光景を呆れるような表情で見ていた。
「そろそろ降りようか。」
優剛は木の門の手前にある森の中に静かに降りていく。日が沈む直前の暗い森の地面に降りた瞬間に、素早く優剛から離れたハルとレイは地面を噛みしめるように地に足を付けた。
『ユーゴ、おかしいんじゃないか!?』
『本当よ!何なのよ。あの速度は!』
「ごめん、ごめん。早く帰りたいから急いだんだ。」
優剛は全く悪びれる様子も無く謝罪する。
『ここからは飛ばないんだよな?』
「うん。あんまり空を飛ぶなって言われていてね。色々非常識だって怒られるんだよ。」
優剛は俯いて回答する。
「ハルとレイも僕と一緒に人間の常識を覚えていこうよ・・・。」
『やっぱりユーゴは非常識だったのかよ・・・。』
『私は人間に興味があるわ。みんながユーゴみたいだったら、世界は人間で溢れているはずだからね。』
優剛たちは走りながらも会話を続けた。その走る速度は彼らからしたら遅いものだ。
「僕の考えだと、そんなに強い人はいないかな。ハルやレイなら秒殺だと思うよ。」
『人間は弱いから、ある程度は無視して良いって父ちゃんが言ってたぞ。』
『私も似たような事を父さんが言っていたわ。』
「街の中では簡単に人間を殺さないでね。街から追い出されちゃうと家も食事も貧相になるから。」
『人間を殺すと美味い飯が食えないのか!?』
『それは大変。』
「う・・・うん。だから街で人間を殺しちゃ駄目だよ。」
真剣な表情で頷く2人には、何か違う感じで伝わっているのは明白だ。しかし、優剛は訂正するのも、例外がある事も説明が複雑なので伝えなかった。
(街で生活しながら徐々に覚えれば良いか。)
優剛はそんな風に気楽に構えていた。
「止まれ!」
「何者だ!?」
木の門まで来た優剛たちに大きな声と武器を向ける2人の門番が、素早く優剛たちに駆け寄ってきた。
彼らが叫んで警戒するのも無理はない。優剛たちの走る速度が馬より速いのだ。そんな人間が2匹の獣を連れて猛スピードで門に向かって走ってくれば、警戒もするし、武器も向けるだろう。しかも今は日暮れ直前で辺りは暗くなり始めている。
「3級ハンターの優剛です。」
優剛はゆっくりと歩み寄って、黒いカードに魔力を通して門番に見せる。
「失礼しました。その2匹は貴方の猟犬ですか?」
優剛の後ろに控えているハルとレイが暗くてよく見えない門番は、どちらも犬だと判断した。そして犬と言われてレイの耳がピクピク動いていた。
「そうですけど、犬では無く魔獣です。」
「そうですか。ハンターが狩りの為に魔獣を飼うのはよく聞きます。しかし、首輪をしていないようなので、危険が無いか確認させて下さい。」
「もちろん良いですけど、どうやって確認するんですか?」
「街に入る門ではもう少し確認するかと思いますが、ここでは貴方の命令を聞く事が出来るか否かだけで結構です。」
首輪などをしていないハルとレイを警戒するのも無理はないかと考えた優剛は、大人しく何かを命令しようと思ったが、何をさせれば門番が納得するのかわからなかった。
「何を命令したら良いですか?」
「ふむ。では、座らせてから伏せをさせて下さい。」
「ハル、レイ。」
優剛が名前を呼んだだけで、ハルとレイは座ってから伏せをした。言葉を理解出来るハルとレイも話を聞いていたので、街に入る為に必要な事だと理解していた。
「なっ・・・。」
「彼らは言葉がわかります。僕たちの会話を聞いていたので、命令する必要も無いんですよね。」
「は?言葉を・・・理解ですか?」
「はい。珍しいですか?」
「あ・・・あぁ。理解する魔獣は多いが、主の命令しか聞かない魔獣が多いからな。この子たちみたいな魔獣は珍しいと思うぞ・・・。」
「っという事で通って良いですか?」
「うむ。出来ればハンターズギルドなどで購入出来る魔獣用の首輪か何かを着けてくれ。そうすれば、このように止められる事も無いだろう。」
「了解しました。」
そして優剛は東にある木の門を抜けると、街に入る為の南門を目指して走り出す。
『なぁ、俺たちなんか着けるのか?』
「うーん。安全な魔獣ですよ。っていう証明みたいな物を身に着けてくれって頼まれたね。」
『カッコイイのが良いな!』
『ふーん。人間の世界は面倒ね。』
「・・・僕も面倒だと思うよ。」
優剛は苦笑しながら答えた。
南門でもギャーギャーと門番や衛兵たちに質問攻めにされて、数々の命令や簡単な試験をハルとレイにやらせた。その結果ハルとレイの頭の良さに脅威を感じ取った門番は、優剛たちをハンターズギルドまで連行した。ハンターである者が使役する魔獣が安全であるとハンターズギルドが認める事は必須との事だ。
『人間って大変だな・・・。』
『お腹空いてきたわ。』
「なんかごめん・・・。」
優剛は申し訳なさそうに謝罪する。
「何を喋っている!?」
「いえ、何でもないです・・・。」
なんでも理解するハルとレイを警戒している衛兵は優剛が喋る事にも敏感に反応する。
ようやく辿り着いたハンターズギルドで、ハルとレイが安全である事を証明する為のテストがあるとの事で、優剛は苦し紛れにギルドマスターのエモーを呼ぶように頼んでみた。
その際に領主からの依頼を達成した事。調査では無く、原因を解決したとエモーに伝えるように受付にお願いした。受付の女性は怪訝な顔をしていたが、エモーに伝えるとの事で優剛たちは1階で待機していた。
『ユーゴ!あっちから美味しい匂いがするぞ!』
「うん。あっちは食事が食べられるところだからね。」
『行きましょう。』
ハルは優剛の言葉を聞いてすぐに歩み始め、レイはその後ろを慌てて追う。
優剛は受付の女性が帰って来るかもしれないと思ったが、ハルとレイの食事の方が大事だと判断して、大人しく彼らの後を追う事にした。
「何を食べたいの?」
『美味い物だ!』
優剛は「夕飯何が良い?」の問いに「なんでも良い」というテンプレ回答よりは良いかとテーブルに置いてあったメニューに目を通す。
優剛はメニューに書いてある料理名ではどんな料理か全くわからないので、店員を呼んで肉系の料理を適当に持って来て欲しい事を告げた。
料理を待っていると優剛たちを見つけたエモーが歩み寄ってきた。
「久しぶりだな。ユーゴ君。」
「おぉ!エモーさんが来てくれた。」
「君が呼んだんだろう。しかもあんな伝言を聞けば当たり前だ。俺の部屋で話を聞こう。」
「んー。この子たちの食事が終わってからでも良いですか?」
優剛のテーブルの下にいたレイと優剛の膝で丸くなっているハルに、視線と指で示しながら弁解した。
「ほぉ、魔獣・・・か・・・・・・・・・・・・・。」
(ん?エモーさん沈黙長いな。)
エモーはハルとレイに視線を固定したまま、微動だにしない。優剛はそんなエモーを不思議そうに見つめる。
「ユーゴ君、食事は俺の部屋に運ばせるから部屋に来てくれ。」
「はい。良いですよ。ハル、レイ、食事は別の部屋で食べるよ。」
「ユーゴが注文した料理は俺の部屋まで持って来てくれ。」
移動中に店員を呼んでしっかりと依頼をしたエモーは優剛たちを自分の部屋まで案内した。
「ここがギルドマスターの部屋ですかー。」
優剛は部屋に置かれている上質なソファーに座って、感心するように部屋の中を見回している。
「書類仕事が多くて嫌いになる部屋だぞ。そんな事よりだ・・・。」
優剛の対面に座ったエモーが真剣な表情で優剛に尋ねる。
「その・・・なんだ。その青白い銀色の魔獣は青銀狼で、黒いのはブラックテイルドラゴンではないか?」
「え?あぁ・・・そんな名前だったような気がします。実際は犬と猫みたいなものですよ。」
エモーが言った通りの種族名をハルとレイは優剛に伝えていたが、ハルとレイの行動が完全に犬猫だった事で、優剛は狼とドラゴンという事をすっかり忘れていた。
「なぜ一緒にいるんだ・・・?」
「飼うからですよ。」
優剛の言葉を最後に沈黙が部屋を襲う。そしてレイが突然立ち上がって扉の方を注視する。
コンコンというノックの後に「料理をお持ちしました」という声が聞こえてくる。
エモーの了解を得て料理を持った女性が部屋に入って、テーブルに料理を並べていく。
「残りはまたお持ちします」という言葉を残して退室していく。
『ユーゴ!食べて良いか!?』
「うん。良いよ。テーブルだと届かないでしょ。床に置くからちょっと待ってね。」
言いながら優剛は料理の皿を床に並べていく。エモーはそんな様子を驚いた表情で眺める。
ハルとレイが食べ始めるとエモーは重い溜息を吐いて優剛に尋ねる。
「ユーゴ君、この魔獣をどこで?それと、もしかして会話もしているのかい?」
「東の山ですよ。はい。魔術で会話していますね。」
「ふー。やはりか。レミニスター様の依頼を達成したと聞いたが、調査では無く、原因を取り除いたのだな?」
「はい。この子たちが原因でした。」
優剛の答えを聞いたエモーは立ち上がって、真剣な表情で優剛に告げた。
「ちょっと領主の屋敷に行こうか。詳しい報告はレミニスター様と一緒に聞こう。」
「え!今からですか?帰りたいんですけど・・・。」
「うん。これは街の一大事だから、一緒に来て貰うよ。」
エモーは良い笑顔で優剛の要求を断る。
「この子たちの食事が終わったら出発しますね・・・。」
優剛は困ったような表情で返答した。そしてエモーは何やら手紙を書き終えると、部屋に置いてあるベルを鳴らす。
ベルの音を聞いたのか女性がすぐに部屋を訪れた。
「レミニスター様に緊急の面会だ。先触れを出してくれ。大至急だ。」
「畏まりました。」
(おぉ!足速い女の人だなぁ・・・。)
手紙を受け取った女性が部屋から出て行くと、その気配は凄い早さで遠ざかっていく。
部屋に運び込まれてくる料理を次々と腹の中に納めていくハルとレイ。夢中で食べ終えると、満足したかのようにソファーと床でそれぞれ丸くなる。もちろんソファーで丸くなるのはハルだ。
「で・・・では出発しようか。」
そんなエモーの言葉で腰を浮かすと、部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。
エモーは短く「入れ」と返答して、先程の女性から領主が直接ギルドに来るという報告を聞かされる。
「何?レミニスター様が直接来るのか?」
「はい。一刻も早く報告を聞く必要があるとの事で、食事が終わるのを待てないそうです。」
既にハルとレイは食べ終わって寛いでいるが、エモーが書いた手紙には出発するタイミングも書いてあったのだろう。
「わかった。では俺たちはここで待つから、レミニスター様をこの部屋にお通ししろ。」
「畏まりました」と一礼して部屋を出て行く女性を優剛は不思議そうに見送る。
(なんだ?レミさんがここまで来る?僕は何をしたんだ?わからない・・・。)
「ユーゴ君。」
「はい!」
「いや、そこまで畏まらなくても良い。」
優剛は畏まっているのではない、ビビっているのだ。
「先に話しておくと、その2匹だが・・・。」
(飼っちゃ駄目とか言わないよね・・・。)
「超特級危険生物に分類されている非常に危険な魔獣だ。滅多に目撃される事は無いから、知っている者も少ないだろう。俺も資料で見ただけで、実際に見るのは初めてだ・・・。」
「いや、いや。ただの犬と猫ですよ・・・。ほら、見て下さいよ。」
優剛は犬と猫に類似した行動しかしていないハルとレイを交互に見ながら弁明する。
レイは満腹で満足したのか、丸くなってスピスピと鼻を鳴らしながら目を閉じている。
ハルもソファーの上で丸くなっている。時折、顔を前足で拭いて、舐める仕草は猫そのものだ。
「俺が見た資料と完全に一致している。限りなく白に近い青の毛色にピンと立ちあがった耳。細くスラっとした口元に、全体的にフワっとした毛と厚い胸毛。そして額には1本の角だ。」
「そういう犬・・・狼もいるんじゃないかと・・・。3つ目の狼もいるじゃないですか。」
優剛の言葉を無視してエモーは続ける。
「太めの猫のような体躯と艶消しの黒い鱗に、先端が刃のように鋭い長い尻尾。そして翼もある。こっちはドラゴン系で確定だろうが、これだけ小さいドラゴンは他にはいない。」
「・・・探せばどっかに居ると思いますよ。」
「この2匹を探して見つかるような土地なら人間が住める土地じゃないぞ。とにかく!レミニスター様が来たら詳細な報告を聞かせてくれ。」
「・・・はい。」
優剛は項垂れるようにして返答した。
窓の外はすっかり日も沈んで暗闇に満ちている。早く帰る為に高速で空を飛んできたが、帰れない優剛の夜は始まったばかりである。
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