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家族で異世界生活  作者: しゅむ
30/215

30. 発注

前回のお話

引っ越しした後も忙しいですよね。

新しく買う物もあるし、落ち着くまでには時間が必要だと思います。マジで。

麻実は勤務条件が書かれた契約書に署名した翌日から医師として、市街区にある総合病院で勤務を始めていた。9時から17時、または日暮れまでという勤務形態だ。昼休憩有で休日もしっかり確保されていた。


朝の訓練を終えた優剛が病院まで送って、時間になれば迎えに行く。家でゴロゴロしている優剛に拒否権は無かった。しかし、この行為はある意味で正解だった。


病院で働いてから数日で、麻実の腕の良さに気が付いたハンターたちが、麻実を自分たちの仲間に引き込もうと動き出していた。

3級ハンターの推薦を掛けて優剛に挑戦して、足を貫かれたモーリアもそのつもりだった。出勤途中の麻実に接触しようとして、麻実と一緒に歩いている優剛に気が付いた。


「ユーゴさん、お久しぶりです。」

「モーリアさん、お久しぶりです。」

すっかり優剛に対する口調が丁寧になっているモーリア。優剛も初めて足を刃物で貫いた相手を忘れるほど非情ではない。


「その女性は知り合いですか?俺、彼女を仲間に誘いに来たんですよ。」

「僕の妻ですよ。ハンターなんてさせないですよ?」

ユーゴは少し睨むようにモーリアを見た。


「ユーゴさんの!?失礼しました。ユーゴさんの奥さんを誘うなんてとんでもないです。他の奴にも言っておきます。」

「ありがとうございます。他の方にもよろしく言っておいて下さい。」

「ハンターは大丈夫だと思いますけど、狙っている奴は多いですよ。」

優剛は嫌そうな顔になって、麻実に尋ねる。


「麻実、病院で何しているの・・・?」

「真面目に先生しているわよ。」

「凄腕の回復魔術を使う医者がいるって評判ですよ。俺の仲間も世話になりました。あっという間に傷が治ったって言っていました。」

優剛と麻実の会話にモーリアが麻実を褒め称えるようにして入ってきた。


「むぅ・・・。治療費は段階に応じて高くなるんだよね?」

「そうよ。病院の定めている段階に応じて、患者の希望を聞いてから希望の段階まで治療しているわ。余計な事はしていないわよ。」

応急処置から完治まで、どの段階まで治療するかで治療費が決まる。


「じゃあなんで評判になるんだ?早さ?」

「早さも凄いですけど、奥さん、傷を縫合する時に糸を使わないですよね?」

「あぁ・・・。そっちかー。でも仕方ないよね。針と糸なんか使えないし。」

「使おうと思えば使えるわよ。玉止め出来ない優剛と一緒にしないでくれる?」

麻実は優剛を睨みつける。


「え?ユーゴさん、玉止め出来ないんですか?」

意外、という驚いた顔でモーリアは優剛を見た。


「出来ないよ。何回やっても留めた玉が布から離れていくんだよ・・・。」

「ぷぷ。誰でも出来るわよ?」

「くぅ・・・。そんな事より護衛が欲しいね。」

「要らないわよ。私も結構強いし。」

麻実は左右の拳を素早く打ち出す。その速度にモーリアは口を開いたまま驚きで固まる。


麻実も毎朝の訓練は欠かさず参加している。その結果、かなりの戦闘力を有するようになっていた。


「強くて、回復魔術も凄いなんて、色んな奴が殺到しますよ!」

モーリアは興奮するように声をあげた。


「やっぱり護衛だよ。襲われたら麻実が全部倒して良いけど、護衛がやった事にしよう。」

「ふふ。楽しみね。」

「えぇ・・・。そんな好戦的だっけ?」

見えないパンチを打ち出す麻実をドン引きで見る優剛とモーリア。


「モーリアさん、情報ありがとうございました。」

優剛はポケットから銀貨を1枚出して、モーリアに手渡した。


「多いですよ!それにそんなつもりじゃなかったです。むしろユーゴさんには失礼しました。」

慌ててモーリアは受け取った銀貨を優剛に返す。優剛は「うーん」と唸ると右手を差し出した。


「握手は良いですよね。」

「もちろんです。」

優剛とモーリアはガッチリと握手をする。握手が終わって手を離すと、モーリアの手には銅貨が2枚残る。手を離す瞬間に異空間から銅貨を出してモーリアの手に残してきたのだ。


「え?」という困惑の表情で優剛を見る。優剛は何も持っていなかったはずなのに、握手が終わると、自分は銅貨を持っているのだ。いや、持たされているのだ。


「じゃあ、ありがとうございました。それで美味しい物かお酒でも飲んで下さい。」

手を見ながら固まるモーリアを放置して、病院に向かう優剛と麻実。


麻実を病院に送って、屋敷に戻ってきた優剛はトーリアに依頼する。

「トーリアさん、護衛です!麻実の護衛が必要です。なんとかなりません?」


「畏まりました。どのような護衛をご希望ですか?」

事情も聞かないで返答するトーリアに優剛は固まる。少しの間、沈黙していた優剛が口を開く。


「強ければ良いのでは・・・?」

「強いだけですと、使用人に対しては横柄な態度を取る者もいます。そのような人物はユーゴ様のご希望には沿わないかと思います。」


「使用人も僕の家族だと思っているからね。そんな人は嫌です。」

即答する優剛の言葉にトーリアは内心で大きく喜び、色んな人に自分の主を自慢したくなる。


「うーん。トーリアさんとトーナさん、それにアイサさんも僕が鍛えれば護衛出来る?」

「いいえ!商人ギルドやハンターズギルドで募集を出しましょう。手数料は発生しますが、こちらの希望を伝えれば、ある程度の選別はギルドでしてくれるかと思います。」

嫌な予感を覚えたトーリアは優剛の申し出を即答で断る。そして、ギルドでの募集に話の流れを持って行った。


「ではそれでお願いします。僕の希望は人柄重視で。強い方が良いですけど、弱くても形だけの護衛なので問題ないです。僕や麻実が倒した人を自分が倒したって言ってくれれば良いです。」

「畏まりました。私からもユーゴ様のご希望に沿うようにいくつか条件を追加して、ギルドに依頼しておきます。追加した条件はあとでご報告致します。」

「素晴らしいですね。お願いします。」

優剛がトーリアを褒めるとトーリアは微笑みを返す。


「先程、ダメリオンという方が荷物を持って屋敷に来ましたので、客間でお待ち頂いております。」

「おぉ!ダメさんもうスリッパ出来たのか。どの客間ですか?」

「鍛冶屋だと言っておりましたので、一番手前の客間です。」

「ありがとうございます。次からは広間に通しても良いですよー。」

優剛は言いながら小走りでダメリオンが待つ客間に向かって行った。「畏まりました」という返事が背後で聞こえてきたので、振り返らずに手をヒラヒラと振って応えた。


「ダメさーん、いらっしゃーい。」

優剛は客間の扉を開けながら、中で待つ人物を確認せずにダメリオンを歓迎する。


「この屋敷に1人で待たされるのは怖いっスよ。」

人手不足なのか鍛冶屋を軽視しているのか、優剛には判断出来なかったが、ダメリオンは客間に1人で紅茶を飲んでいた。


「ん?1人じゃないよ?ノブさんが見てるはずだよ。アイサさんにでも頼まれたんじゃないかな?」

「え?誰っスかノブさんって・・・。オレずっと1人でしたよ。」

優剛は非常にあやしい笑みを浮かべて、信長を呼び出す。


「ノブさん、この人は友達のダメリオン。なんでも作れる凄腕の職人さんだよ。」

「ほぉ。そんな風には見えんな。座りながらキョロキョロと怯えた様子で周囲を伺っていたぞ?」

信長も優剛のあやしい笑みは確認しているので、いつもより少し低い威圧するような声で優剛に応えた。


「うわわ。どこにいるっスか?」

怯えるダメリオンにニヤニヤが止まらない優剛。信長もノリノリでダメリオンに追撃する。


「ここだ。」

ビチャっとダメリオンの頬に水の手が触れた。


「なんなんスかぁぁ!!」

水の手を振り払って立ち上がると部屋の角で、足をガクガクと震わせて周囲を警戒する。


「ノブさん、もう止めよう。ちょっと可哀想だ。」

「むぅ。これから面白くなるのだぞ?」

優剛は笑いを堪えた声で、信長も楽しそうな声だ。


「せ・・・せつ・・・説明するっス。」

震えるダメリオンに優剛は信長を紹介しつつ説明をする。


「呪いの屋敷って噂じゃなくて、本当だったんじゃないっスか。」

「今は良いお爺ちゃんだよ。」

「イタズラ好きのっスけどね!」

ダメリオンは口を尖らせて反論した。


「はっはっは。すまなかったな。優剛のニヤけた顔を見たら・・・思わずな。」

「悔しいっスけど、その魔道具には興味があるっス。見せたい物ってそれっスか?」

「いや、見せたい物は違うよ。見せても良いんだけど、ノブさんはどう?」

「俺の意見は聞かんで良いぞ。優剛が信頼した人物には見せるが良い。」


優剛が屋敷に住むようになって、田中と呼んだら4人が返事をした事で、信長は4人を名前で呼ぶ事にしていた。


「あとで案内するね。まずは作ってくれた物を確認したいな。」

「了解っス。あとで絶対見せるっスよ?」

職人魂に火が付いたダメリオンは未知の魔道具に興味津々だ。プロ根性で気持ちを抑えると、順番に作った物をテーブルに並べていく。


「ノブさん、トーリアさんかアイサさんで近い方を呼んで下さい。」

あの織田信長を伝令に使う優剛。


「この街の創立者をそんな風に使って良いんスか・・・?」

小声でダメリオンが優剛に質問する。


「僕も最初はそう思っていたけど、一緒に住むようになったら、ただの気の良いお爺ちゃんだから。それにノブさんも楽しんでいるみたいだよ。」

「うむ。楽しいぞ。アイサを呼んだ。」

「ありがとうノブさん。」

「ふっ。これくらいの事で家臣に感謝するもんじゃないぞ。はっはっは。」

怒りながら喜ぶ器用な信長の言葉を軽く無視する優剛。


「この表札カッコイイね。金属で作ったの?」

「オレ鍛冶屋っスよ?金属なら色々余ってるっス。」

「余りもんで作ったにしては、上出来じゃん。」

長方形の形をした光り輝く金属板には依頼通り、各自の名前が横書きで彫られていた。


「これどうやって扉に付けるの?」

「そう思って、接着剤を持って来たっス。」

「ダメさん最高!一流の職人は違うねー。」

優剛がダメリオンを褒め称えて、ダメリオンが恥ずかしそうに自分の前髪を撫でる。そこに扉をノックする音が聞こえてきたので、優剛は中に入るように言った。


「ユーゴ様、お呼びでしょうか。」

「アイサさん、これをアイサさんの部屋の扉に付けるけど良い?」

優剛は表札をアイサに見せながら最終確認をするが、断られても付けるつもりだ。それだけカッコイイ仕上がりになっている。


アイサは優剛に近づいて、優剛が持っていた表札を震える手で受け取った。

表札にある自分の名前を手で撫でると、ギュッと胸に抱いた。


「あり・がとう・・・ござい・・・ます。」

目に涙を溜めて感謝を述べるアイサに、喜んでもらえて安心する優剛。


「大丈夫そうだね。この接着剤で付ければ良いの?」

「良いっスよ。オレがやるっス。」

「あざっす!スリッパ見てから案内するね。あっ。ご飯食べていく?」

「え?良いんスか?」

「アイサさんが駄目って言ったら駄目だよ。」

優剛は笑いながらアイサの意見が自分よりも上だと言った。アイサやダメリオンの常識からしたら不自然な事である。


「問題ありません。食べていかれますか?」

「よろしくお願いするっス。」

「畏まりました。私は準備に戻ってよろしいでしょうか。」

「はい。確認ありがとうございました。他の人には確認しないけど良いよね?」

「このような立派な表札を断る者はおりません。」

一礼して部屋を出て行くアイサ。


「ユーゴさん、変っスよ?あの人って使用人っスよね?あの人の表札なんスか?」

「そうだよ。僕にとってはこれが常識だから良いんだよ。この屋敷の主は僕だからね。」


「主は麻実であろう?くっくっく。」

信長がからかうように会話に入ってきた。


「あぁ・・・うん。僕は4番目くらいの主だよ。」

「それ主じゃないっスよ・・・。」

ダメリオンがツッコミを入れるが、優剛は家庭内の最底辺にいる。どこにでもいる普通のお父さんだ。


「スリッパ出して!」

優剛は落ち込んだ気持ちを奮い立たせるように、ダメリオンに要求した。


「はい、はい。試作品も全部持って来たっスよ。」

次々とテーブルに並べていくダメリオン。並べ終わったら1つ1つ丁寧に、どんな素材を使ったのか説明を始める。


優剛は外側がシンプルな革製の作りで、中は柔らかい短い細い毛で作られたスリッパが気に入った。

「僕はこれかな。他のも良いけど、これが良いや。追加発注があると思うから、その時はまたよろしくお願いします。」

「了解っス。待ってるっス。ちなみにユーゴさんが選んだのは結構安いスリッパっス。」

タオル生地に柔らかい毛のスリッパ。全体が毛皮で作られたスリッパ。どうやって作ったかわからない謎の柔らかいスリッパ。数々の試作品の中で優剛が選んだスリッパはシンプルで安い物だった。


「別に安くても良いじゃん。重要なのは履き心地だよ。じゃあ表札を付けに行こう。」

「もう履くんスね。」

「当たり前じゃん。家の中でもずっと靴を履いていて疲れないの?」

「考えた事ないっスね・・・。」

スリッパを嬉しそうに履いて部屋を出る優剛を見て、ダメリオンも試行錯誤して作った甲斐があると表情を崩して優剛の後ろに付いていく。


部屋の前に来て、再びダメリオンが口を開く。

「なんで鍵が付いているっスか?」

「個人の部屋だからだよ。」

「ユーゴさんの屋敷っスよね?」

「でも個人の部屋だよ?鍵つけるでしょ。自信無いからアイサさん呼ぶね。」

この部屋が本当にアイサの部屋なのか、自信が無くなった優剛はキッチンにいるアイサを呼びに行った。その場には優剛の常識が理解出来ずに、唸っているダメリオンが残された。


アイサの誘導で部屋の扉に表札を取り付けた。アイサは扉に付いた表札をうっとりする瞳で見つめていた。


「次は魔道具だよね。こっちー。」

「待ってたっス!」


広間に入って絨毯を捲るとダメリオンから待ったが入る。

「その絨毯を見せて欲しいっス。」

切れ込みも無いのに簡単に優剛は捲り上げたが、これも地下室を隠す立派な魔道具だ。


絨毯を穴が空きそうなほど見つめるダメリオン。時折、何やら呟いているが、優剛はその下にある扉も開けたら、ダメリオンの分析が始まるのかと思うと、少し呆れた表情でダメリオンが満足するのを待った。


やっとの思いで地下室に入ると、ダメリオンは奇妙な声をあげて魔石に駆け寄った。

「ぅぉっひょーぅ。凄いっス!この柱も凄いっス!いや!この部屋自体が凄いっス!」


優剛は階段に腰かけてダメリオンが満足するのを待った。さらに照明を要求されたので、火球を何個か出して地下室全体を明るくした。

昼食時にはダメリオンを引きずるようにして地下室から出して、みんなで昼食を食べたが、ダメリオンは地下室の事で頭がいっぱいだった。


食べ終われば優剛を引きずるようにして地下室に戻って、しばらくブツブツと呟いていた。


ようやく満足したダメリオンを2階の倉庫に案内する優剛。


「ここにあるのが見せたかった物だよ。この中に入っている服の生地を使って僕の服を作って欲しいんだ。」

浴衣では激しく動くと着崩れてしまうので、優剛は激しく動けて汚れても良い服が欲しかった。


ダメリオンは魔道具である箪笥を舐め回すように観察した後に、信長の服を確認していく。

「この服?は、凄いっスね。特別な糸で作られた生地の布みたいっス。魔力で補強すると信じられないくらい丈夫になるっスよ。下手な革よりも丈夫っスよ。」


「えぇ?そうなの?ノブさん、なんか知ってます?」

「知らんぞ。俺にとっては、ただの服だったからな。」

「良さそうなのを選んで、それを元に服を作って下さいな。」

「ほぼ全部が同じ素材っスよ・・・。」

ダメリオンは服の素材に圧倒されていた。


「作るのは半袖のTシャツ。長ズボン。あとロングコートみたいなやつ。」

「この素材を使って良いなら喜んで依頼を受けるっス。長ズボン以外がわからないから絵とか描いて欲しいっス。」


素材選びは一時中断して、広間に戻る優剛とダメリオン。

Tシャツは優剛の現物を異空間から出して渡した。そして優剛はローブのようなコートの絵を描いた。

そして衝撃的な絵が完成する。下手過ぎて絵を見た使用人を含めた全員がドン引きしている。


「だから言ったじゃん!僕は絵心が無いんだって。」

「それにしても・・・。酷いっス。」

結局ダメリオンが優剛からイメージを聞いて服の絵を描いていく。


ダメリオンが描いた絵は膝まであるトレンチコートのような物でフード付きだ。前のボタンを全て留めても動きを阻害する事は無いだろう。

「ダメさん、絵上手っ!僕のイメージはこんな感じだよ。」

「貴族が着ている服に似ているっスね。」

「うん。ハンターたちを見た時にローブを着ている人もいたんだけど、ダボダボしていて狭いとこだとローブが引っ掛かると思ってね。前をボタンとかで留めるコートは貴族の人も着ているでしょ?ローブよりも身体にフィットしてて良いと思ったんだよ。」


「ローブは革鎧や金属鎧の上に着る物っスからね。鎧を着ないなら良いっスけど、ハンターだと目立つと思うっスよ。」

「ハンター活動はしないから良いんだよ。」


「なるほど、了解っス。こういうのは革で作ったら良いんスけど、あの服が使えるなら大して変わらないっスね。貴重な魔獣の革を、ユーゴさんが手に入れたら作り直すとして、細かいところは任せるっス。」

「そこは短剣と同じで、100%信頼しています。」

優剛の言葉に照れるようにダメリオンは前髪を撫でる。


「Tシャツとズボンの数はどうするっスか?」

「ズボンは1つ。Tシャツは・・・。麻実の分が欲しいなぁ。」

優剛は丈夫な素材という事で麻実の防具になれば良いと考えた。


「オレはマミさんのサイズ知らないっスよ・・・。」

2人で「うーん」と唸ると、トーリアが1枚の紙をダメリオンに提示する。


「こちらがマミ様のサイズになります。」

「おぉ!トーリアさん素晴らしい!マミのTシャツは何枚が良いですかね?」

麻実の身体のサイズはミロマリアとお買い物した際に採寸した物だ。冬の間、2人は何度も一緒に買い物に出掛けていた。既にマミは服を大量に所持していた。


「生地に限りがあるという事なので、5枚で如何でしょうか?」

「僕のは1枚で良いよ。」

「ユーゴ様の分はせめて2枚でお願い致します。」


「Tシャツ7にズボンが1。それにロングコートっスね。素材の生地を確認して良いっスか?」


優剛は再び2階の倉庫にダメリオンを案内する。

「好きなだけ見て下さい。」


ダメリオンは生地が足りる分の服を箪笥から出す。

「まだまだ、作れそうっスね。」

「とりあえずさっき言った数で良いよ。最後に靴も作って欲しい。」


ダメリオンはコートと同じように市場に出回っていないデザインを警戒して口を開く。

「・・・どんなっスか?」

「アキレス腱が隠れるくらいのショートブーツ?みたいなやつ。」

「あぁ。それならわかるっス。コートの色と合うように作っておくっス。」

「天才職人にお任せ致します。」

「任せるっスよ!足のサイズを正確に測るから見せるっス。」

ダメリオンは胸を張って全てを請け負い、優剛の足のサイズを測る。スリッパを作る際は目測だったので、ちゃんとした靴を作るのであれば正確なサイズが必要になるからだ。


ランドの拘りで短剣を作る際に優剛の手の長さや足の長さなどの採寸を済ませてあった。


「・・・足も細いっスね。」

「くっ・・・。」

優剛はダメリオンも小さいと反撃しようとしたが、ダメリオンの足は大きく太いのが目に入り、何も言う事が出来なくなった。


「服は僕が鍛冶屋まで運ぼうか?」

「大丈夫っス。この布は奇妙なほどに軽いっス。」

「了解。おいくらですかね?」

優剛の足の採寸を取り終えたダメリオンは腕を組んで唸った。


「うーん。服は加工費だけなんで、そんなに取るつもりは無いっス。靴は手に入る革次第なので、納品時でも良いっスか?」

「相場がわからないから金貨1枚を渡しておきます。足りなかった追加で払うね。多かったらランドさんと飲み食いしてね。」

「金貨1枚もあれば良い革で靴が作れそうっス。ふふっ。1人で飲むっスよ~。」

ダメリオンは微笑した。


金貨を受け取ったダメリオンは信長の和服をスリッパなどが入っていた大きめの袋に入れて、優剛の屋敷を出ていった。優剛も敷地の門まで行って、「お願いしま~す」と手を振って見送った。

ダメリオンは「普通、職人にここまでしないっス」と苦笑しながらも、嬉しそうにランドの鍛冶屋に帰って行った。

さんじゅーー!ただそれだけです。調子に乗ってすみません。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

皆様の読んでいた時間が少しでも良い時間であったなら幸いです。


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次回もよろしくお願い致します。

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