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家族で異世界生活  作者: しゅむ
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18. 濃密な1日の終わり

前回のお話

挑戦者は返り討ちで観戦していたハンターはガクブル。

レミニスターとヒロは優剛から魔術の話を聞いてぐったり。

「お屋敷に到着致しました。」

 止まった馬車の外からトーリアの声が聞こえてきた。それが聞こえたのか、ぶつぶつ呟いていた2人もゆっくりと馬車から降りていく。


「2人とも疲れているなら、馬車で待っていて良いよ?」

「疲れたのはユーゴのせいだ・・・。」

「うむ。しかし、儂はノブナガ様に報告しなければならんから、一緒に行くぞ。」

 水が気体、液体、固体という話と再現した魔術を見ただけで、頭が痛い思いをしていたのに、追い打ちをかけるように、優剛は冷気を作り出したのだから、2人は理解するのに必死であった。


 一行は馬車を降りて門を抜けて広い庭を見渡しながら、石畳で出来た屋敷の玄関に通じる道を歩んでいく。石畳の両端は間接照明のように淡く光って、石畳の道を照らしていた。


「俺も屋敷に入るのは初めてだ。ノブナガ様のお屋敷か。粗相の無いように気を付けないとな。」

 再起動を終えたレミニスターが屋敷の内部に興味を示し、資料でしか確認出来なかった過去の英雄を想う。


「僕らの世界では短気で怖いって資料が残っているけど、400歳以上の爺ちゃんだからね。かなり性格も優しく柔らかになっていると思うよ。」

「戦の世は油断出来んのだよ。優しくしていたら寝首を取られるぞ。」

 突然聞こえてきた声に驚いて足を止めて、キョロキョロと周りを見渡すレミニスター。

 優剛はそんな声に一早く返答した。

「信長さん聞いていたの?」

「早く屋敷に入れ。遠くて聞き取りづらいわ。」


 優剛が屋敷の扉に手を伸ばすと「ガチャ」っと鍵が開いたような音が扉から聞こえてきた。

 屋敷に入りながら優剛は日本語で「ただいまー」と言うと、信長は非常に楽しそうな笑い声と共に「はっはっは。おかえり」と返してくれた。


「ん?ユーゴ、今のはなんじゃ?」

「自分の家に帰って来た時にする日本語の挨拶だよ。帰ってきた人が『ただいま』、家にいる人が『おかえり』って言って返すんだよ。」

「ほほー。ニホンゴであったか。ノブナガ様が喜んでいるのが伝わってきたから何かと思ったぞ。」


「お前たちは使用人か?外に居ないで入るが良い。」

 そんな信長の申し出にレミニスターは玄関の前で膝を付いて、視線を地面に向けて挨拶を始めた。

「ノブナガ様、初めまして。私が現在の領主でレミニスター・フィールドでございます。」

「おぉ。俺が織田信長だ。そんな挨拶は止めろ。俺はもう死んでいるんだ。気軽に接しろ。はっはっは。」

 そして、信長は使用人を含めて全員を1階の広間に行くように言った。


 全員が部屋に入ると、部屋には信長の声が響いた。

「それで、お前たちは何しに来たんだ?」

「はい!ユーゴのハンター登録が完了しましたので、そのご報告でございます。ユーゴ、ハンター証を出さんか。」


「ハンター証?別に出さんで良いぞ。俺の時代の物とは変わっているだろうし、見てもわからん。お前の言葉だけで十分だ。報告に感謝する。」

「ははっ!勿体なきお言葉。」


「信長さん、このトーリアさんを僕の執事として屋敷に出入りする許可を下さい。屋敷の準備を彼に任せるつもりです。」

「おぉ!田中の使用人か?そやつが来たら扉の鍵を開けてやろう。」


「僕が領主の屋敷に住んでいる間は世話をしてくれているだけで、領主様に仕えている執事ですよ。」

「ほぉ。まぁ良いだろう。田中たちが住めるように準備してやってくれ。」

「はい。畏まりました。ノブナガ様、宜しくお願い致します。」

 トーリアは声が聞こえてくる方角がわからず、キョロキョロした後に、そのまま一礼した。


「はーい。じゃあもう行くね。」

「なんだ?もう行くのか?」

 信長の少し寂しそうな声が部屋に響いた。


「用件は済んだからね。もう日も暮れたし、また来ますよ。って言うか僕の家なんでしょ?」

「はっはっは。そうだな。田中が住むのを楽しみにしているぞ。」


 滞在時間は数分という短い時間であったが、一行は屋敷を出て馬車で帰っていた。

 屋敷を出る際に優剛が「いってきまーす」と言って、信長が「はっはっは。いってきーしゃい」というやり取りが日本語で行われていた。


 馬車での帰り道では復活したレミニスターとヒロから再び優剛へ質問が始まっていた。

「ユーゴは先程、いくつか仮説があると言っていたな?他には何がある?」

「おぉ!言っておったな。他の魔術はなんじゃ?」


「んー。電気って知っていますか?」

「デンキ?知らんな・・・。」

「毛糸とか分厚い糸で編んだ服を擦ると、バチバチなるのは知っていますか?」

「おぉ!あのバチ!と来るやつだな。それなら知っているぞ。」

「そうです。そうです。あれは静電気って言うんですけど、あれが電気です。あれの凄く大きいのが雷だと思って下さい。」


 本日何度目であろうか。2人は驚愕の表情で優剛の話に耳を傾けていた。同席している執事も含めれば3人だ。


「あー。先に言っておくぞ。ユーゴは雷を魔術で作るのか?」

 レミニスターは恐る恐る先回りして、優剛に問いかけた。自らの口で言う事で衝撃を緩和しようとしているのだ。


「雷を作るとなると魔力が大量に必要になると思うので、作りませんよ。」

「作ろうと思えば作れるのか・・・。すまん。話を続けてくれ。」


「僕が魔術で作るのはビックリして身体の動きを止める程度の電気です。」

「ほほぉ。それは興味があるのぉ。あのバチっと言うのは儂もビックリするからのぉ。どうやって魔術の元を用意するのだ?」

「服と服を擦るんだよ。」


 優剛は手を袖の中に入れて、ゴシゴシと擦り合わせた。所謂、萌え袖の状態だ。

 通常であればそこまで静電気は発生しないが、少しでも静電気が発生すれば、それを元にして魔力で増やせるので、優剛にとっては簡単に電気を発生させる事が出来た。

 やがて優剛の手からはバチバチと音を立てた光の線が発生していた。

(おぉ。上手く出来た。なんかカッコイイな・・・。)


「この光が電気です。」

 優剛は心の中で自画自賛して、光と共に音が鳴るその手を2人に見せた。


「これがデンキなのか?触っても大丈夫なのか?」

 そう言って手を伸ばしてきたレミニスターに、優剛は慌てて手を引っ込めた。

「うぉ!触ると痛いと思うんで、触らない方が良いですよ。」


「うーん。凄いとは思うが、何が凄いのかよくわからんのぉ。」

 電気に馴染みがないヒロには凄い事はわかるのだが、イメージが出来ないようだった。


「えぇー。僕は結構感動しているんだけどなー。僕の世界では電気=魔力みたいなものだったから、日常生活では必須のエネルギーだったんだよ。魔力が無くなったら生活に困るでしょ?」

「大混乱じゃろう。」


「こっちの世界では魔力があるおかげで、電気の技術が進んでないと思うんだよね。」

(あれ?これでスマホの充電が出来ないかな?)

 優剛たちのスマホは3日目には充電切れで、ただのオブジェクトとなっていたが、充電が出来れば鮮明な写真や録画などの便利機能は異世界には無いものになる。


「まぁ、電気の威力はその内ね。悪い奴がいたら使ってみますよ。フヒヒ。」

「さっき使えば良かったではないか。」

「威力がわからないから、殺しちゃうかもしれないじゃん!いきなり人を殺したら、僕はこの街の人たちからどんな目で見られるのよ・・・。」

「ならば後日、捕らえた犯罪者にでも使ってみるか。」

(レミさん意外と恐ろしい事をさらっと言うな・・・。)

 優剛がレミニスターの発言に引いていると、ヒロが口を開いた。


「それで終わりか?まだあるじゃろ?」

 ワクワクを抑えきれない表情で次を催促する。


「最後はみんなの憧れだね。誰もが1度は夢を見たと思うよ。」

 ほほーという声と共に2人の期待の眼差しが優剛に注がれる。


「魔術で空を飛ぶ。」

 馬車の中ではあるが、優剛は小さく手を挙げて人差し指で空を指差した。

 しかし、レミニスターとヒロからは驚きの声は出なかった。


「空を飛ぶ魔道具ならあるぞ。」

「え?もうあるの?逆に見たいんだけど・・・。」

 優剛は格好付けた反動で、少し恥ずかしそうにしながら、空飛ぶ魔道具が見たいと言った。


「うーん。海に行けば見れるが、海は遠いからな・・・。」

「海?なんで海?海に・・・水に浮かべるのは船じゃないの?」

「ん?何を言っているんだ?海と言えば空飛ぶ船だぞ?」

「はぁ!?なんで飛ぶの?」

 会話が噛み合わない2人。優剛の常識では水の上に浮かべて移動するのが船である。しかし、レミニスターの常識では海の上を飛ぶのが船である。


「風の魔術で空を飛ぶのが船だ。海に浮かんでいれば、海の魔物に襲われてすぐに沈んでしまうぞ。」

「あぁ。なるほど。水の上にいたら海で生きている狂暴な何かに攻撃されるって事ですね。それの届かない場所、空を飛ぶんですね。でも陸を飛ばないのは何故ですか?」

 優剛は陸を飛ぶ船を見た事がなかった。


「陸で飛んでも良いが、魔物に襲われるぞ?陸には飛べる魔物も多いからな。ユーゴの世界の船がどういう物か知らんが、俺たちの世界の船は風を帆に受けて進むんだ。」

「僕の世界は少し技術が進んでいて、別の動力もありますけど、同じ作りの船もあります。」

 2人はお互いの常識を擦り合わせていく。


「船を小さくする研究は進められているが、縮小化は成功していない。大きな目立つ船で陸を飛んで魔物に襲われたら、船は破壊されるだろう。盗賊に火矢を撃ち込まれたら、壊れて墜落だろうな。」

「なるほど・・・。陸で船を飛ばすのは危険が多いですね。それで襲われる危険の少ない海で使うわけですね。」

(今の話で海が怖くなったな・・・。それに街の外は危険か。魔物がいたら拠点も作れないし、小さな町も出来ない。情報や物の流通も制限されるから技術革新も少ない。異世界怖いなー。)


「ユーゴはどうやって飛ぶんだ?」

「何を使って飛ぶのかは研究中ですね。風が無難な気もするんですけど、風で身体を浮かせるのは大変ですし、風圧が強くて気持ち良くないんですよ。飛べるようになったら報告しますね。」

「うむ。頼む。くれぐれも報告前に屋敷の外を飛ばないでくれ。」

 既に優剛が飛ぶ事は決定事項かのように、レミニスターは飛ぶ前に報告しろと念を押してきた。


 そんな事を話している内に馬車は領主の屋敷に到着。

 夕飯を待っていた子供たちに文句を言われながら食事となった。


「それで優剛はハンターになったの?」

「うん。なったよ。これが免許ね。」

 食事が終わって麻実からの質問に優剛は異空間から取り出したハンター証を免許だと言って取り出した。

「うわー。ブラックカードじゃん。お金持ちね。」

「いや・・・違うと思うよ・・・。」


「やっぱりランク分けってあった?最初は見習いから?」

「3級ハンターだよ。等級なしから始まって次が5級だね。最後が1級だって。」

「へぇー。推薦登録って聞いていたけど中途半端なとこからね。」

「えぇー。3級ハンターって結構凄いみたいだよ。」

「ふーん。これ返すね。それで?ハンターって何?」

 優剛は受け取ったブラックカードを異空間に収納した。しかし、異空間への出し入れを初めて目撃したヒロは優剛がカードを異空間に入れたところで、驚きから回復して声をあげた。


「おい!ユーゴ、今のはなんだ!?儂は聞いていないぞ!」

「ハンターは・・・。え?今のって何?え?・・・ちょっヒロ、近いよ。」

 優剛に駆け寄ってきたヒロはユーゴに密着するような距離感で、初めてみる優剛の魔術を聞いていないと主張を始めた。


「皆、悪いが部屋を出てくれ。父上に説明する。」

 レミニスターは部屋に居る使用人たちに部屋を出るように頼んだ。使用人たちもわかっている者が多いので、「畏まりました」と次々に部屋の外に出ていく。


「父上、ユーゴのそれは異空間魔術だ。魔法袋と似たような物らしい。先日、ユーゴに魔法袋を見せたら、似たような物を作ってしまったんだ。」

「なぜ儂だけ知らんのだ・・・。」

「父上が居なかった昼食後の事だった。この魔術を悪用したい奴は山ほど居ると思って、俺が目撃者全員に口止めしたのだ。それで父上にも報告が行かなかったのだろう。」


「うーむ。なるほど。その判断は正しいな。それでどんな魔術なんじゃ?」

 経緯に納得したヒロはどんな魔術なのか、優剛に説明を求めた。優剛も特に隠してはいないので、どんな魔術なのか説明をした。


「魔法袋の作成方法か・・・。しかし、魔法袋を作ろうとして、さらに便利な物を作るとは、驚きを通り越して呆れるわい。」

「父上、俺も同じ気持ちです。そういえば掌サイズから容量は増えたのか?」


「順調に増えていますよ。今はそのテーブルくらいで高さはヒロの身長より少し高いくらいですね」

 優剛は先程まで食事していた7人が座って食事をしても十分な広さを持つ、大きなテーブルを指差して説明した。10人が食事をしても余裕であろう。


「順調ではない・・・。異常な早さと言うんだ。」

 優剛の異空間がわずかの間に大きく広がっているので、呆れるようにレミニスターが呟いた。


「毎晩寝る前にグッタリするまで魔力を入れていますから。」

 胸を張る優剛。この行為が優剛の魔力量を増やす効率的な訓練になっている事に、本人はまだ気づいていなかった。


「すぐに屋敷が入るほどの異空間になりそうじゃな・・・。これは確かに他言出来んわ。」

 そうしてヒロとレミニスターは2人で話し合いを始めてしまった。解放された優剛は麻実にハンターについての説明を始めた。


「っというわけ。ね?3級ハンターって凄いでしょ?まぁ、ハンター業はしないと思うけどね。」

「良いじゃない。ユーゴがハンターに向いているって言うのはトーナさんとアイサさんに聞いているわよ。ハンターの仕事で沢山稼いできなさいよ!」

「えぇ・・・。危ない仕事は嫌だよ。あっ。そうだ。医療魔術は出来たよ。麻実は興味があったよね?」

 ハンターの仕事が怖い優剛は上手く麻実の興味がある医療魔術に話を変える。


「良いわね。教えて。」

「やっぱり視る魔力は必要だった。あとは変化の魔術を地道に練習すれば、かなり高度な医療が実現出来るよ。

「うーん。変化は練習するとして、視る魔力ねぇ・・・。なんで優剛は簡単に出来るようになったのよ。」

「順番に試したら?視覚だけ、触覚だけとか1つに絞って魔力玉を作ってみたら良いんじゃない?それで徐々に機能を増やしていく感じでさ。」


 麻実が悶々と悩みながら視る魔力の練習を始めて静かになると、優剛は濃密だった1日の終わりを子供たちの会話を眺めながらのんびりと満喫した。

(1日中こんな感じなら良いのになぁ)


最後まで読んで頂きありがとうございました。

皆様の読んでいた時間が少しでも良い時間であったなら幸いです。


評価や感想もお待ちしております。ブックマーク登録も是非お願いします。

次回もよろしくお願い致します。

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