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エスペラント  作者: O氏
第1章
3/6

造られた世界

「地震か?」

誰かが言い出すが、それにしては揺れが短い大きい。それに大気を揺るがすような、例えるなら大きな爆発音に近い。



すると一番に空を見上げていたブルーノが立ち上がった。




「何だよ…何だよ、アレ…。」



その声に釣られて全員が窓に駆け寄って行く。



その光景を見たこの世界の全員が自分の住む世界を疑った。




「空に穴が空いてる…。」




カールがつぶやくその言葉が一番現状を把握するには適しているだろう。

青空の一部分がぽっこり穴が空き、その先は真っ暗になっていた。

まるでブラックホールが出来たかのようだ。



「どういう事だよ…。」



すると米粒ほどもない大きさの小さな2つの物体がその穴から抜け出してきた。



「何だあれ!」


「宇宙人か!?」


騒然とする街中、その2つの物体は徐々に大きく、そして形を露わにしていく。





「ストライザ…」






ブルーノの言葉が大きく鳴り響くサイレンの音にも消された。

校内は緊急避難命令が発令される。



2機の人型ストライザは形をハッキリと目視できる程度までに地面に近づくと器用に着陸をした。


「何ぼーっとしてるんだよ、逃げるんだよ!」

カールがブルーノの手を引っ張り、ようやくブルーノは周りの状況を見ることが出来た。

叫び渡る構内、まるで蜂の巣から出て来た蜂のように、一斉に散らばる。


急いで教室から出るカールは半分息を切らしながら学校から出る。

出口によっては人が将棋倒しのようになったり、悲惨な光景が伺えた。



と、その時だった。





遥か遠くに轟音が響き渡ったのは。

先ほどとは違う、爆発的な音。それに釣られて耳を刺す叫び声。


校庭に丁度出たブルーノとカールはその光景を見て戦慄が走る。



学校から程近い巨大なタワーから煙が上がり、今にも崩れ落ちそうになっていたからだ。

さらに追い打ちをかけるようにストライザが他の近隣の建物に向かって実弾のマシンガンを何発も発砲する。


光景に時差が生まれ、さらに音が響き渡る。



「逃げるぞ!こっちまで来てもおかしくない!!」


「逃げるったって何処へ!」


「わからねぇよ!あいつらがいない方にだ!」


ブルーノとカールは共にバイクに跨りエンジンをつける。


――プルル、プルル


その時、ブルーノのICリングが鳴った。この音は電話がかかってきた音を示している。




「誰だよ、こんなタイミングに。」

と、出るか悩んだが直感的に出ることを決めた。


指輪を体と垂直に前に構えると、指輪から空中にディスプレイが浮き上がる。


着信はじーさんからだった。


ただならぬ気配を感じ取った二人は顔を見合わせて着信に応答する。


ディスプレイには慌てた顔を浮かべたじーさんと、その自室が映し出されていた。


「おお!お前ら無事か!!」


「じーさんこそ。それでどうしたんだ?急に。」

カールは待ちきれずに急かす。


「とりあえず、お前らはバイクに乗れ!

地図をそっちに転送するからそこに向かいながら、わしの話を聞いてくれ!」


するとバイクに立体的な地図が浮かび上がった。

二人は互いに顔を見合わせ、全力でその場から逃げた。


「場所はZの21じゃ。急いでくれ。」


「Zって…。」

Z…。現在この世界には壁の方につれてトンネル状の通路が形成されている。それは下水道のようで…ブルーノとカールが行ったSTRのゲームが置いてある店がある場所のように薄暗い場所。

Aから順にNまで道路名があるが、Zだけは特別で政府の特別通路で普段は立ち入りが出来ない。

別に法律がある訳ではないのだが、一番壁が薄く外の世界に近いと言われていて、警備も厳重。それに良くない嘘が本当かもわからない噂が拍車をかけ、おまけに商業施設は無い為、近づく物はまずいない。

先述のクダラはそこへ行き、消息不明となった。


「いいんじゃ、とりあえず行ってくれ!時間がない!」


「わかった!」

二人は口を揃え返事をして、爆音を響かせバイクを発信させる。


バイクに空中の映像が映し出され、行くべき方向を指示する。


背後では人々の叫び声が定期的に鳴り響いた。


「説明してくれ、じーさん。」

既に冷静に戻ったブルーノ。


「わかった…。

わしがこの前から政府の動きをチェックしていたのは知っておるよな。それで今日やっと、その政府のサーバーにアクセスする事ができてのう…。それで様々な事を知ることができたんじゃ。

2機のストライザ、あれは外の世界から攻めて来たものでの…。」


「てことは、壁の外に人は生きてるのか!?」

と驚くカール。


「詳しくはわからんかったが、恐らくはそうじゃ。たぶん『外の世界』は、この安息の地であるココを狙って前から攻め込んで来てたらしいが、この壁のお陰で守られてきたのじゃろう。

でもこうして突破されてしまって…。」


「時期に全滅する…。」

とブルーノ。


「そうじゃ。」


「ええ!?何でだよ!こっちも応戦できねーのか!?」


「応戦したところで、この狭い壁の中じゃ。それに内乱が起こることは間違えないじゃろ…。

でも、その示した地点にこの襲撃から回避できる鍵があるらしい。」


「鍵?」


「それが移動用の戦艦なのか、脱出するための通路なのか、皆目検討がつかんでのう…。

少なくとも、壁の存在に頼り切っていた政府には、あのストライザに対抗する程の戦力は期待できんけどのう…。最後の望みと言ったところじゃの…。」


「それに全てを賭けろって言うのか…。」


一本道を壁に向かって進む。



ちょうどその時だ。



体の真から揺るがす地響きがしたかと思うと、目の前にストライザが一機立ちはだかった。



「お、おい…。」


二人は同時に息を飲んだ。


ギロッとこちらを向き、完全に目が合う。中の人は…どんな気持ちでここを攻め込んでいるのだろう。二人にはわからない。


「ブ、ブルーノ…お前は先に行け!」


「カール!何言ってるんだお前…。」


「なーに。このバイクなら逃げ切れる。それぐらいの性能は持ってる。」


「なら二人で…。」


「たまには俺にもカッコイイ思いさせてくれ!ほら!行け!!」

カールは怒鳴った。その声に優しさが含まれていて、ブルーノは余計心が苦しくなる。



「カール…。」


「また会おうな!ほら!行け!!」

一瞬見せた笑顔、向けられる銃口。


ブルーノはアクセルを思いっきり踏む。小回りのきくバイクに鬼のようなエンジン。

大型のストライザにはそれを止めることはできない。

ストライザの股をくぐって先を急ぐ。


後ろを振り返るとカールが元きた道を凄いスピードで折り返す。

その姿がどんどん小さくなって行く。


「くそ!俺は…!」

ブルーノは苦悩した。仲間を捨て、一人だけ助かろうとしている自分が嫌いになりかけていた。


その鍵が何なのかわからない。だが、今は進むしかない。

その鍵が今は最後の望みだから。


「ブルーノ、急ぐんだ!」

じーさんからの通信が入り、再び速度を上げる。

こんな速度なんて出したことがない。普通なら余裕で速度違反で捕まるところだが、誰も捕まえに来ないところを察するに、本当に緊急事態なのだろう。


すぎる景色がどんどん破壊されて行く。元々、ビルなどは高く設計されている為に、ストライザも適当にバルカンを連射すれば何かしらを破壊できる程であった。



「よし、通路に入るんじゃ!!」


目の前には既に薄暗い通路が待ち構えていた。

その通路の上にはZという文字がハッキリと刻まれている。


今までブルーノも一度も立ち入ったことない場所…。


考える間も無く突入すると、やはり薄暗い街頭があり、番号が1と刻印された大きな扉がある。


順番に手前から奥に行くごとに数字が上がる。

2…そして3…。


メーターが振り切りそうな程にスピードを上げるが、遅い、じれったいまでに遅い。


背後から聞こえていた音も次第にバイクのエンジン音に掻き消される程になっていく、それに連れ孤独や不安が見えない闇となって自分を包み込もうとするのが全身で直感で感じ取れる。


「そろそろじゃ!」

じーさんは必死に俺をサポートするが、画面越しに見える景色は凄く悲惨だ。

難を逃れているじーさんだが、いつその上から瓦礫が落ちてぺしゃんこになるかわからない。


ブルーノは自分が今何をしているのか、そして何が起こっているか分からなかった。


悪い夢なら覚めて欲しいと、この数分間に何度祈ったことだろう。


ただ、歴史が変わる瞬間に立ち会っていることだけはハッキリとわかる。


「Zの20…次だ!!」



あと一つ、それが長い。こんなに長く感じるとは思わなかった。



「21!!」

ブルーノはバイクを投げ捨てる勢いで飛び降りた。


21…。壁に大きく白い文字が記されている。

Z…始めて踏み入れるその通路は不気味で雰囲気に飲み込まれそうだ。



急いで扉に向かう。だが、ロックがかかっていて開くことができない。



「よし、ワシが今から言う番号を入力するんじゃ。」


「わかった!」


「385240617」

じーさんは読み間違えないようにゆっくり焦りながら読む。


それをブルーノが間違えないよう、震える手で押して行く。





――ピピッ。カシャン…




すると見事にロックが解除されて扉が開いた。




「これは…。」





眩い照明で刹那、視界を奪われる。

扉の先は鉄で覆われた空間。天井には幾つもの光。

広さは野球の球場ほどだろうか。




ブルーノがその見つめる先には…。





「ストライザ……。」





一機の純白…いや、銀色だろうか。洗練された人型のストライザが聳え立っていた。








これが……これが人類を救う鍵……。








ブルーノは気がつくと、その目の前のストライザに向かって歩き出していた。

まるでレッドカーペットを歩くように一本、直線を…。吸い寄せられるように。


それがブルーノには生きた獣、化け物のように感じた。





ストライザの足元まで歩み寄って見上げる。

恐ろしいまで綺麗な装甲。

見るものを吸い寄せる…。



「じーさん…これが…。」

ブルーノはそっとつぶやくが返事がない。


不信に思ったブルーノは画面を見ると砂嵐になっていた。

その瞬間ブルーノは目つきが変わる。


今、自分が置かれた立場、そしてやるべきこと。

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