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エスペラント  作者: O氏
第1章
1/6

平穏な日常


CS62年。


人類は過去に幾多の困難を乗り越え、ようやく安定期を迎えた。

かつて、世界は大陸を大まかな区切りとして幾つもの国が存在していた。

それも第四次世界大戦により、一つの国として纏まりを見せる。


世界が一つになり、国という境目が無くなり、新たな一歩を踏み出した。




CS62年4月21日。


私立オカレーン高等学校。

長閑な街にある私立高校。


本日の4限の講義は歴史。



広々とした講義室に講師が1人、生徒がざっと見た感じで70人余りが勉学に励んでいた。


窓から差し込む外の斜陽で眠りの世界に連れて行かれた人もチラホラ見える。



「西暦2154年。えーっと…今から何年前だ?

…まあいい、西暦2154年。第四次世界大戦の勃発。

一度は人類はこの戦争により、滅亡しかけた。が、何とか再び息の根を吹き返し、人口も徐々に増加。また、これをきっかけに世界は数百もの国々は一つに纏められ、今の私たちのように一世界の誕生となった。

これはたぶん中等部でも習ってきたと思う。」

教師は分厚い本を片手に黒板のような電子版に文字を連ねて行く。

参考資料の写真も何もかも、ガラス一枚に次々と映し出されている。



「せんせーい。」

一人の女子学生が挙手をする。


「ん?なんだ、質問か?」


「国って何なんですか?」


「…ふむふむ…。

国か……。いい質問だ。

えー…国というのは、いわば同じ民族や言語、宗教、そういった人たちの集まりだな。」

教師も詳しくは知らないのか、白髪を片手で掻き答える。

それ以上説明しない、説明できない所を察するに知識の浅いところを突かれた模様だ。




「おい、ブルーノ。お前第四次世界大戦って信じるか?」

そう小声で隣に話しかけたのは茶髪に天然パーマ、いかにもやんちゃそうな雰囲気を醸し出しているカール・イージスだ。

その雰囲気通りに成績はいつも下から数番目、スポーツ神経は良く、バスケを趣味としている。ブルーノの親友だ。


「信じるも何も、そう習ったから俺はずっと信じて来たけど…。」

と黒い短髪の髪に、中肉中背。

そして一番の特徴である青い目の持ち主、ブルーノ・ミスラは答える。


「俺は大戦なんて信じないな…。きっと異世界人が攻めてきて、それでこの世界を滅ぼそうとしたんだぜ!」

と意気揚々に自論を持ちかける。

カールは大戦があった事をなかなか認めようとはしない。それは世界的に見れば圧倒的に少数派であるが、学者や専門家でさえ、中には大戦を否定する人さえいる。


「だけど、ストライザが存在していたことは事実だ。

大戦にしても、異世界人が攻めて来たにしても、ストライザが使われていた事だけは間違いない。」

と自信満々の表情を浮かべるブルーノ。


「お前は、ま〜〜たストライザの話か~?全くメカオタクは…。」

やれやれと言わんばかりの表情。ブルーノは口を開けばストライザ、ストライザとカールの耳にタコが出来るほどだ。


ちょうどその時、講義の終わりを告げるチャイムが鳴る。



教師の「今日はここまでにしよう」と言う、お決まりの発言で生徒たちは生き返ったかのように騒ぎ、下校する生徒は下校、引き続き講義がある生徒は講義へと向かう。


「くぅ~。今日の講義も終わった終わった~っと。」

カールは背伸びをして全身の疲れをヒシヒシと感じていた。


「カールは前半は寝てたくせに…。」


「まあ、そんなお堅いこと言うなって!」

と言うと、二、三度ブルーノの肩を叩く。


「ああ、そう言えばさ、ブルーノ。お前この後講義は無いよな?」


「ん、そうだけど。どこか行くのか?」

ブルーノは半分分かり切っている事だが質問する。


「ならさ、今日も あ そ こ、行こうぜ。」

カールの目は断る事を許していない。それを悟ってか、ブルーノは自身も満更でもないのか、快諾した。


そうと決まれば二人の行動は早かった。



学校の外へ出ると、いつもと変わらない太陽が一つ空に浮かぶだけの快晴だった。


世界が一つになってから、技術の革新はめまぐるしかった。

大戦があった当時の背景を詳しく知る者は数少ない、いや、いるのかすら分からないが、その当時の人が現代を見たら腰を抜かすほどに今の地球は進んでいるだろう。



「ほ~ら、何ぼさっとしてんの?早く行こうぜ!」

遠くえ呼ぶカールの声で我に戻ったブルーノはバイクに跨った。



バイク…と言っても大戦当時のバイクとは根本的に違う。

昔のバイクは二つの車輪を転がして走る事だった。



だが、現代のバイクは違う。

まず、車輪がない。ほとんどの乗り物に車輪という概念がない。

乗り物はホバー移動が主流になっている。ブレーキ、アクセル、全ての動作が人間の脳波を感知して動かすことができる。

今はまだ、その技術は車程度の乗り物にしか搭載されていないが、よくよくは大型機械も動かせるようになるのだとか。


ブルーノはバイクに備えつけられている小さな穴に左手の人差し指を突っ込んだ。

するとバイクは鋭いエンジン音を鳴らして起動する。

ブルーノやカール、この世界の全ての人が共通して持っている物がある。



それがICリングと呼ばれる物だ。



ICリングは左手の人差し指に装着するのが基本とされ、このリングにはこの世界の人の個人情報が入っている。携帯電話や財布としての機能はもちろん、様々な鍵やGPS機能にも用いられる。


先のバイクに人差し指を入れたのも、鍵の変わりを為している。


バイクを走らせ、カールと併走する。


道路は基本的に一方通行で、地面よりも数メートル高い位置にレールが敷かれている。

その上下を何本かの道路が交差していることにより、立体的な空間を使うことでスペースを無駄なく使っている。



「なぁ、ブルーノ・・・。」

突然カールが語りだす。この話しかけ方も、何かしら語り出す前兆なのだとブルーノは理解している。


「あの空に見えている丸いのって月なんだよな・・・」


「え、ああ。そうだけど?」


「いや、知ってるんだけど、あの月に人は入ったことはないのかな・・・。」


「確か大戦の時にはストライザで人が降り立ったって文献は見たことあるけど・・・。」


「あんなに近い星があるのに、何で移住しないのかな。」


「空気が無いからだよ。この地球は恵まれているから、空気がある。だから人間は生きていけるんだ。」


「そうだよなぁ…。」


ブルーノは至極当たり前の説明をしたのだが、カールは腑に落ちないといった表情を作った。


「っと、そろそろ目印が見えてきたぜ。」

カールは気を取り直して指をさした。

そこは大きな壁が聳え立っていた。



この地球、ブルーノが住んでいる世界は大きな壁によって回りを囲われている。その壁は天まで届くのではないのかというほど高く、その上は空しか見えない。

この壁は地球の安全地帯と呼ばれ、壁の外はいまだ、大戦の後の悲惨な光景が広がっている。戦後の毒ガスなどが多く残っており、人は絶対に立ち入れないとされている。


とは言うものの、ブルーノが住んでいる地区は壁際、もう反対側の壁は見えない程に遠い。ましてや、このバイクを1日かっ飛ばしても端から端へ辿り着けない程の広さだ。


この壁の先へ行こうとする物は処罰が与えられ、ほとんどの場合が終身刑、死刑になる。外の汚染された空気を持って帰り、そのまま壁の中での感染が危ぶまれるからだ。そうなってしまえば、この3億人が住む世界にバイオテロを生んでしまう。


二人は外の日の当たる道路から、まるでトンネルのような、下水道のような通路に入っていった。

この薄暗いトンネルは壁の近くを示す。


トンネルは幾多の別れ道があり、道路ごとにA14や、T5など番号が着いている。まるで蟻の巣のような場所だ。


トンネルに入り、3分ほどバイクを走らせると、ようやく目的地に着いた。


まるで地下鉄の中のお店のように、突如店舗が現れる。


その中でも特別賑やかな店舗の前にバイクを止めた。

若者で溢れかえるこのお店は所謂ゲームセンターだ。

大戦時代にもあったとされるゲームセンターだが、その頃は台に画面が埋め込まれる、といった古典的な方法だが、今もそういったレトロなゲームのファンも多く、改良を積み重ねて今の時代にも僅かだが置いてある。


入店すると、各種ゲームの織りなす雑音で耳を思わず塞ぎたくなるが、慣れてしまえばどうという事はない。むしろ居心地の良さまで感じてしまう。



「今日の相手は誰かなぁ~」だ何て、上機嫌に店内を見渡すカールだが、実際にプレイするのはブルーノだけだ。


お目当てのゲームを見つけると、二人は立ち寄るが、案の定、人の多さでごった返していた。



できる人だかりの隙間を縫うように最前列にいくと、黒く、大きい球体が10個ほど、設置されていた。


そしてその横に一つ、実況モニターが立体で映し出されている。

この球体の中でプレイしている人をリアルタイムで映しているのだ。


「どうだ?今日の相手は?」

カールが目を輝かせてブルーノに尋ねるが、ブルーノは真剣に画面に見入って聞きやしない。


「これだから、メカオタクは…」と、ちょっとムッとなるカールだが、心の底では期待値がどんどん上昇している事には変わりない。


数分もすると、その対戦は終わりを告げた。

球体が自動で開き、下は10代前半、上は40代であろう男女が出てくる。

文字通り老若男女問わないゲームである。

何か考え込みながら出て来る人、悔しそうにする人、今の対戦について熱く語る人、皆思い思いに余韻とクオリティに酔いしれる。


全員が球体から出たのを見はからって、数人が球体に向かって歩き出した。

それはブルーノも同じであった。


「お~い、頑張れよ~!」

と遠くで黄色い歓声を送るカールを尻目にブルーノは至って冷静でいた。それは彼なりの機械に対する真剣さを一番に感じる所かもしれない。


ブルーノが球体の前に立つと、自動で扉が開いた。

それはまるで何かを招き入れている様で未知の怖さである。


おもむろに中に入り込むと、中は薄暗い灯りしか点いておらず、そこに見えるのは、まるで車のシートのような座席だけだった。

慣れたように中に入り込み、一つ深呼吸を入れる。


前方、車で言うとハンドルの位置する場所には二つのバレーボールほどの球体が棒の先についていた。


そこの上に手を乗せると、低い機械音がウーンっと鳴り、徐々に空間が明るくなる。

ICリングを読み取った証拠だ。


辺りは外見で見た印象より小さく、360度真っ暗な液晶で埋められていた。


そうこうしている内に、目の前の液晶が光る。


『Now Loading…』

と黒い背景に青白い文字。


それも数秒立たないうちに切り替わる。


『新規プレイヤー、認識しました。


名前 ブルーノ様』

と出てくる。こうして名前がわかるのも、ICリングのお陰というわけだ。


『新規登録しますか?


→Yes No』

と良くある選択画面が出てきた。ブルーノは意識をNoに集中させる。するとNoにカーソルが合わさり、人差し指に少し力を入れると、そのまま次の画面に進んだ。この新規登録をしないのはブルーノのスタイルと言える。


『名前:No name

熟練度:ルーキー


この設定で戦闘を開始します』


『出撃する機体を選んでください』


機械の喋る音声の後にズラッと8個の選択肢が出る。


機体…そう人型をした人型の戦闘機だ。



このゲームは大戦をイメージして作られたゲーム…。


その当時、大戦の行方を左右したと言われるのが、このストライザと言われる人型の兵器だ。圧倒的な火力と占拠力、単独でもチームでも動ける機動力、何より、自分の思うがままに動かせる兵器として世界中に広く使われた。


人型…と一言に言っても多種多様である。

半戦車型もあれば、変形できる型、4足歩行などもあるが、広くストライザで知れ渡ったのは二足歩行のオーソドックスな人型だ。


いち早くストライザを手にした国が戦争を優位に進める事が出来たことは言うまでもない。


しかし、一般にストライザが普及すると、今度はパイロットの腕が重要視されるようになった。

当時はエース級パイロットの育成に勉学よりも実践や模擬戦を最優先でやらせたという話から、いかに戦況を左右していたかがわかる。


と、戦争の記録に残っている記述はここまでで、それ以上の事は書いておらず、結果的にどこの国が勝利した、なども挙げられていなかった。

専門家の意見としては、ほぼ全滅に終わったという。それが定説で、それ以上言及したところで今の平和な世の中の何の糧にもならない。むしろ特定をすればするほど肌の色や鼻の高さで差別が加速する事も容易に想像できる。


第一、それもかなり昔の話なのでストライザ自体が夢の話として語り継がれている。大体当時にそんな技術があったのかも疑問点だ。ブルーノはそんな中でも、ストライザに興味を示して独自でいろんな文献を調べたりしていた。


今、ブルーノの入っている球体はそんなストライザが忠実に再現されていると言われているゲームだ。実際のストライザも参考の資料によると、パイロットが中に乗り込み、シートに座り、手と足を使い操縦するという物だ。だが、当時は脳波を感知するなどと言う大それた物も無く、操作も複雑で、動かす以前で躓くパイロットも多かったという。


このゲームは当然、それほどまでに操作は難しくはなく、ある程度やりこめば簡単に操作できる使用に変更されている。


ブルーノはどの機体にするか悩んだ挙句、一番小型、かつ標準そうな機体を選択した。

カーソルを合わせると、説明欄に『武装はビーム砲、サーベル、誘導ミサイルと標準的で使いやすい。全長14Mの小柄さと機動力がポイント。』


ブルーノが一番選ぶのが遅かったらしく、他の対戦者は既に機体を選び終えていて待機状態だった。


暫くすると、チームの発表が行われた。

5対5のチーム戦で、時間は3分、その間に撃破されても何度でも再出撃できるが、一回撃破されるとチームにマイナス点が与えられる。機体によってその減点の点数の大きさは違うが基本的に強い機体ほど撃破された時の減点数は大きい。


ブルーノが配属されたチームは、階級がマスターが1人、マスターの階級の一つ下のチャレンジャー+が1人、さらにその下のルーキー+が2人の、ブルーノのルーキーが1人だ。


対する相手チームは、マスターの一つ上のスペシャリスト+が1人、マスターが3人、チャレンジャーが1人の圧倒的にブルーノが弱いチームに属してしまった。


おまけに、このゲームはやった分だけ、その機体をレベルアップできるシステムになっていて、単純に熟練度の違い以上に不利だ。


その頃球体の外では、「勝負にならない」や「新人さんいるみたいだけど可哀想だね…」と憐れみの声さえ聞こえたが、そんな中一人だけブルーノのチームが勝つ確信を持っていたカールがいた。


球体の中は一瞬暗暗闇に包まれるが、次の瞬間眩いほどの光に包まれる。


目が光に慣れた頃には画面は気持ちが良い程の青空に包まれていた。

その光景があまりにもリアルで、実際に自分もその場にいるような錯覚さえ起こさせる。

そして落ちる時の浮遊感も、ゲームとは思えないほどのクオリティだ。


…そう、今は空中から急降下しているのだ。右や左には仲間のストライザ達が共に降下している。


"よろしく!"


"前線に行ってきます"


仲間の顔が画面左下に出てくる。通信だ。


「よろしくお願いします。」

ブルーノも返事をする。


迫る地面。


雲を切り裂いて、なおも急降下を続ける。


地面の様子を見る。

おそらく戦場は街中だ。高層ビルが立ち並ぶ。ステージはその都度ランダムで時には森林、時には工場などプレイヤーを飽きさせない開発陣の努力が垣間見れる。


地面までおよそ1キロ。


ブルーノのは機体のバーニアを地面に向け徐々に降下速度を落として行き、無事着地をする。


いよいよ、ゲームの開始だ。

それぞれが着地をすると忙しなく動き出す、ゲームであっても任務だ。


ブルーノは一番後ろを追いかけるように走っていた。


それから20秒もしないうちに、先頭を切って走っていた仲間から通信が入った。


"敵だ。前方に3機。こちらに気がついていない模様。他の2機は見えない。後ろから挟み撃ちにされる可能性もある為慎重に行こう"


"了解"


そんな無難な通信が飛び交う。

無難こそ、一番延命に繋げる方法である事に違いない。


戦場に緊張感が走る。まるで本当の戦場で本当の命のやり取りを繰り広げている当事者。

微かな物の動き、音、全ての変化に全神経を注ぐ、本能が擽られる。


そんな中一人だけ全く無線を無視し、自分の世界に入っている者がいた。

もちろん、ブルーノだ。


ブルーノはバーニアを再び全開にし、チームを抜け出す。


"お、おい!!"


"戻れ!"

そんな声など聞こえやしない、聞く耳すら持たない。


けたたましい音を引き連れ、敵に急速接近する。

もちろん、格上の相手が気がつかないはずが無い。



敵は即座に振り向くと、銃口をこちらに向ける。


そして光ったと思うと、ビーム砲を一発、二発、打ち込んだ。


相対速度に表すと、そのビーム砲はブルーノから見たら物凄い速さだろう。


ブルーノはそれを避け……。


――ッドッーーン


2発目がブルーノのストライザの左足に当たる。


「……ッ!」

球体が激しく揺れる。


画面の右下にあるゲージが最初は100%だったのが、一気に34%まで降下。

これがこのストライザの体力と同じだ。

もちろん、ブルーノが選んだストライザは機体的にも強く無く、一発のダメージが致命的になる。


「もうワンテンポ早く避けないと…。」


機体が怯んでいる隙も、攻めてこない程お人好しな敵ではない。一瞬の気の緩みがチームの負けに直結する。敵は殺せる時に殺すのが原則だからだ。


敵もバーニアを使い、距離を詰めて、もう一発撃ってくる。


"避けろ!"


"え、援護するぞ!"


通信が荒れる。

今、敵も味方も、そして球体の外の観戦者も、視線はブルーノに注がれていた。

誰しも彼のストライザが大破するイメージを勝手に再生してしまっていた。


「もっと……早く!」


ブルーノはその迫る銃弾を、素早い身のこなしと、完璧とも言えるバーニアの使い方で、いとも簡単に避けてしまう。

そして素早く手に持っていたビーム砲を敵に一発撃つ。


鋭い速さのビーム砲は敵の左腕にヒットする。



ブルーノのストライザが被弾した時同様、低く大きな音が響き渡り、敵がよろめく。


と同時に煙が上がった。


もう一体の敵のストライザが撃って来るも、もはや、このストライザの特性を掴んでしまったブルーノには敵ではなかった。


二機を敵にして、降り注ぐような銃弾を、踊るように避けながら進み確実に敵の急所を射止める。


同時に敵のストライザは大破した。


球体の外では、この光景を見ていた野次馬は言葉を失った。

名もない新人が、二人の熟練者を相手にして倒してしまったのだから驚きだ。

カールだけはいつもの光景を見れて安心しきった様子だ。

ブルーノにはため息を付く暇もない。


目の前にはいかにも強そうなストライザが立ちはだかっていた。

ガチガチに武装を取り付け、きっとバーニアの出力もブルーノの乗っているストライザの二倍はあるだろう。

武装も切れ味が良さそうなサーベルが1つ、ライフルが1つ取り付けられ、遠近両方に卒がない。


"新人なのに、マスタークラスの敵2機相手にして楽々倒してしまうとは、たまたまじゃない…よな?"

敵のSTRから通信が入ってくる。

チーム以外の通信は拒否もできるが、ブルーノはいつも許可している。


「それは秘密で。」

この時初めてブルーノは笑った。


"最近噂にゃ聞いてたが、全く新規のデータで、それも敢えて弱い機体を選んで上の階級の奴をドンドン倒して行く…。不敗神話だってなぁ。

各地でその姿を見ると言われるが、今日ここでお目にかかれるとは俺も幸運だな。

そいつが撃破された所を見たことないって言うが……今日この目で見届けてやる!"



敵機の背中にあるバーニアが再び展開、物凄い熱風と共に地面を蹴ってブルーノに迫る。


"死ねぇ!"





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