表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新庄やまがたものがたり  作者: 新庄知慧
22/23

22 宇宙のはての離れ湯

22



・・・・


 「まあ、窓の外みれや、ここは、新庄銀河温泉の、ご自慢の離れ湯だべさ!」


  宮田さんが窓を開け、富樫さんが笑って、矢七さんがふざけた。


 窓のそとには、青い空、飛んでいる惑星たち、木星みたいのや、半分に欠けた赤い彗星、さきほど課長が包まれた、湯気みたいな白い雲、そしてその下に、青い海原、金色の砂浜・・・





「あの、海みたいなのが、みんな温泉だど!」と、矢七さん。


「すごいね、来た甲斐があったでねえの、絵村さん」富樫さん。


「あとで、ゆっくり浸かりにいくべね、夕方がいいかな」宮田さんがにっこり笑う。


 そうだ、やっぱりいい人たちだ。世界中の人が、みんな、山形の人たちみたいなら、世界は、もっと平和で、きちんとしたモラルがあり、ずっとずっと優しいものになったにちがいない、そう真剣に考えたことを課長は思い出した。


それから話がはずみ・・たとえば、「宮田さん、昔の作家の文章は鋭いといってたね、北杜夫の小説とか。宮田さん、就職できたら、毎日、文庫本づけの生活しようっていってましたよね、そんな生活、できましたか?・・・」とか聞いたりする話・・・をした。


しばらくの時間がすぎて、そしてまた、窓を開け、外を見た。


夕暮れが近づき、温泉の海は、オレンジ色に染まり、そらには、見覚えのある惑星が・・・。






「あれま、あれ、地球でねえか?」矢七さんが声をあげた。


 見ると、確かに地球が飛んできていた。


「ああ。あの星で、いろんなことがあったねえ」


 宮田さんが、しみじみと、いった・・・


と、とつぜん、課長は衝撃的に悟った。


課長は、みんなの顔をみた。みんなの顔には、わたしたちは、もう、死んでいる、と書いてあった。


 「みんな、どこから来てくれたのだろう・・・」課長は、尋ねるような、独白するような、  あいまいな感じで、いった。


「遠い向こうから・・・」


誰かが、そう、教えてくれた。


課長は、自分ばっかり、愚痴りまくったことを、心底、恥ずかしく思った。


課長は、やまがたの、真の友人たち、3人をもう一度見た。


この人たちには、課長なんかより、よっぽどつらい日々があったのだ。そして、いまやすでに、死んでしまっていたのだ。なのに、遠い、遠い、宇宙の果てより遠い向こうから、課長に会いに来てくれたのだ。


あなたたちがいてくれて、ほんとうによかった、だから私は、ここまで生きてこられたのだ。


そうだ、この友人を、友人の「思い出日記」を得たというだけで、おまえの人生は、幸せそのものじゃないか!!


 課長は号泣した。


 そうだ、幸せ、そのものだ!!


・・・はなちゃんの声がした。

「そろそろ行くぞ、帰っぞ。今度は、最北ニューグランドホテル、ニューヨーク館でも、いくか」


課長の心に、ニューヨークにたたずむ、温泉ホテルのイメージがひろがった。なんか悲しい、課長の心の絵だった。そのとおり、悲しいことがおきる。






時空がまた変転した。


課長は、「いやだ、ここにまだいたい」と思ったが、変転はとまらない。課長は時空の果ての天たかくへ、また、はなちゃんといっしょに、飛んでいった。


宮田さんたち3人が、砂浜にでて、また、走って、見送ってくれた。22年前の新庄駅で送ってくれたように。


そして、3人、みんなして、課長に呼びかけて、叫んだ。


「また来いよ!」



・・・つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ