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慌てすぎ

今時珍しいくらいに本屋で立ち読みしている女の子。

しかも制服を着たまま、荷物を床に置いて星岡茶寮の本。

「マニアか…」

思わず口から声がもれた。

その声が聞こえたのかくるりと彼女が顔を上げてこちらを見た。じっと見つめたかと思うと、興味がないと言わんばかりにまた本へと顔を向けた。

こちらは彼女の秀麗な美貌に驚き、本を読み続ける彼女を見つめ続けていた。

白く柔らかなそうな頬、烟るような長い睫毛に囲まれた切長な瞳。微かに笑いを堪えているのか、口角が上がり気味になりながらキュッと閉じた唇。

はっきり言って一目惚れだと思う。今までの経験で一目惚れとかはなかったし、ありえないことだと思っていた。何度か話す内にその人に惹かれることはよくあったが顔を見ただけで話をしたいとか、ずっと一緒にいたいとか思うことは初めてだった。

そんな自分の衝動に驚きながらも、彼女にどう声をかけたら良いのか悩む。

多分高校生だと思うけど、軽いナンパだと思われて無視された時点で全てが終わってしまう。彼女に無視されずに、相手をしてもらわないと。

頭の中でぐるぐると悩んでいると彼女は本を閉じて棚に入れていた。

焦る。

何も思いつかず慌てて声を掛けた。


「喉乾きませんか?」




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