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最後の嘘

ひらりひらひらと舞う桜。

薄紅色の花びらが湿り気を帯びた地に落ちていくのを横に見ながら澄み渡る青空を見る。昨夜の雨が嘘のように雲一つない快晴である。

まばたきをするたびにまつ毛の先に涙が出る


「翔…もうすぐらしいけど…大丈夫か」


かけられた声にもう一度強く目を閉じ頷き、立ち上がる。

振りながら礼を言うと、声をかけていたのは一人ではなく、良く似た顔で同じ表情の二人がいた。

いつも喧嘩ばかりの二人なのに、やはり彼らは双子なんだと思うと少し笑みがこぼれる。

それに自分たちも辛すぎるはずなのに、人に気を使う優しさは彼女とよく似ている。

「似てる…兄妹」

微かに聞こえた翔の声に二人は頷きふたり同時に言う。

「ずっと一緒に育った家族だからな、あいつがお前に言っていた言葉があるけど、今言うから重く受け止めろよ」

真っ直ぐに目を合わせて言葉を待つ。

どのようなものでも、彼女の言葉だ。可能な限り叶えよう。早くと急かしそうになる気持ちを抑えてじっと言葉を待った。


「幸せです。いつもありがとう。私をあなたの人生の中で生かして。傍にいさせてね。一緒に走っていたら私は遅いけど連れて走ってくれたら私が最後に一番になるから、だから走って、駆け抜けて約束を守ってね。最後ではなく、必ず最初の約束を守って」


「どういう意味だ?最後でなく最初?翔、意味分かるのか」

「最後の約束は何だ?」

二人がそれぞれに云う。彼女の言葉を何度も反芻しながら少しだけうらめしく思う。自分が一番叶えたかった約束を叶えられないように言葉を残した彼女を。

「ああ、最初の約束だよ。最後の約束は二人永遠に共に果てる、だから…」

もう一度目を瞑り、彼女のことを思う。


最初から語ろう。


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