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この世とあの世の生活

この世とあの世の生活〜第4話〜

作者: 福紙

ここは地獄の閻魔庁(えんまちょう)。閻魔大王が罪を犯した魂(亡者)を裁く裁判所のような所…の、本殿裏の事務所。裁きの時間以外は閻魔大王がいて、事務処理をする獄卒衆もいる。


「罪も凶悪になったものよ…親殺し、子殺し…今日で阿鼻(あび)地獄に2人送った」


阿鼻地獄とはもっとも重い罪を犯した亡者が堕ちる所。ただ、辿り着くまでに2000年かかり、それまでひたすら暗闇を落ちる。阿鼻地獄に着いたとしても、罪によって細かく分かれた“(しょ)”と言う所で更に罰を受ける。

閻魔大王は黒い(しゃく)で肩を叩く。


「現世の衣に慣れると…ここで着ている着物が重いものよ…あと冠も邪魔」


と閻魔大王は冠を外してため息をついた。と、こん助がタタタタと走ってきた。小脇に何か抱えている。


「閻魔様ー!これをご覧ください〜!」


「何だ、こん助。現世から帰ってきたのか?」


「はい!コンビニに行って来ました!」


「こんびに?何だ、それは?」


「まぁ、現世に着いたらお連れしますよ!それより、この本をご覧ください!」


とこん助が抱えていたのは本であった。閻魔大王は受け取り、表紙を見た。


「阿鼻叫喚!本当に出た!心霊スポット?すぽっととは何だ?」


「スポットとは場所の事ですよ!読んで見てください!」


とこん助はよくコンビニの本棚で見かける本を買ってきたのだった。閻魔大王はつまらなそうにペラペラとページをめくる。


「…大半は作り物だ。それを人間共は怖がり、錯覚して霊の仕業と言う…。たまに本物もあるが…肝試しと言ってそこにいる霊を刺激して祟られるのだ…面白おかしくするのは気に入らぬ…ぬ!?ぬぅ?!」


と閻魔大王はとあるページを見てハッと気づく。


「…この写真のは本物…それに、霊が出るって事は…牛頭(ごず)馬頭(めず)!!」


「「は、はい!!」」


低く通る声で閻魔大王は怒鳴った。獄卒衆の中でも一際大きい、頭が牛の牛頭、頭が馬の馬頭と言う鬼が姿勢良く立ち上がった。


「…地獄に魂を連れてくる役目はお前たちだったな…?」


「「はい!そうです!!」」


「何故、今ここにいる?」


と言う閻魔大王の問いかけに、牛頭はキビキビと答えた。


「はい!今日はもう名簿はなく…!」


「ならば貴様の名簿を見せよ」


「えっ?!」


「貴様の名簿をよこせと言っている!馬頭もだ!!」


「はいぃぃぃ!!」


と馬頭も慌てて名簿を取り出す。牛頭と馬頭は自分の“地獄送り名簿”を閻魔大王の前に提出し、巨体を丸めて立つ。閻魔大王は2人の名簿を開き、こん助が買ってきた本と照らし合わせる。

事務所には緊迫した空気が流れる。他の事務処理をする獄卒衆も物音を立てないように仕事をする。一通り見終わった閻魔大王はパタリと名簿と本を閉じ、そして黒い笏を机に叩きつけた。バンッと耳をつんざく音に牛頭と馬頭、その場にいた獄卒衆はビクリと肩を跳ね上げた。閻魔大王は真っ赤な瞳で睨みつけた。


「この本に映っている者や話に出てくる者…!“不明”と書かれている者ではないか!!あれ程、不明処理するなと言ったはずだ!!居場所もわかっているのに!!」


「ひええええー!!!も、申し訳ございません!!」


「閻魔大王様、申し訳ございませんんん!!」


牛頭と馬頭は大きな体を小さくするように土下座する。


「何故不明処理になったのか言ってみろ…!!」


「は、はい!!た、確か、名簿が天国の使者と被って、天国に連れて行くべきか地獄に連れて行くべきか…お互い悩んで…うやむやになったのと…」


と牛頭は馬頭を横目で見た。馬頭はべたりと床に顔をつけて、


「も、文字通り道草を食っていたら、気がついてみると、心霊スポットになって何かどれがどれだか収集つかなくなってしまいました!!あと、どうしても見つからない者がいるのです!!あと現世の草っておいしいです!!」


と叫んだ。しぃーんと静まり返る事務所。


閻魔庁に紫色の稲妻が轟音と地響きと共に落ちた。


「総員!手分けして連れて来い!名簿に書かれている者だ!嫌がっても地獄の留置所に連れ込め!極楽の使いの者と遭遇して困った場合はとりあえず、地獄へ送れ!但し人間には見られるな!」


こん助は耳を伏せて震えながら閻魔大王に言う。


「あ、あの…牛頭さんと馬頭さんが丸焦げに…牛頭さんに限ってはおいしそうな匂いが…」


「大丈夫だ!生きていると言うのは変だが、大丈夫だ!」


すると牛頭と馬頭がピクリと動いた。そして2人は鼻から炎をメラメラ出しながら、


「「こん助…!!覚えてろよ…!!」」


と毛を焦がしながらこん助を睨みつけた。閻魔大王は名簿を持ち、震えが止まらないこん助の首根っこを掴み、


「私たちも行くぞ!」


と閻魔大王は現世に向かった。ふと、閻魔大王は自分の地獄送り名簿を取り出し、開いて手をかざすと、地獄送りになる者の名前とその居場所浮かび上がる。だが一部の者の居場所の欄には不明と書かれていた。


「馬頭が言っていたな…どうしても見つからぬ者がいると」


「は、はい!その名簿に書かれている場所は居場所、極楽(天国)行きの者は載らないし、もし被っても、とりあえず地獄に送るのが決まりのはず…それに居場所が不明だなんてあり得ません!」


「うぬ…理に反しているな…。こん助」


「はい!」


「まず、こんびにとやらに連れてけ」


「…急がないんですか…」


と閻魔大王とこん助は現世に向かった。


4.5話に続く

ちょっと書くには長くなるので4.5話に続きます。物事をうやむやにしたり放置すると後から大変な事になりますよね!それは何でも言える事…必ず報・連・相!!

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