今後の方針 チーム分け
「──ということなんだけど‥‥」
柊は外に待機させていた二人を部屋に呼び戻すと、隠岐伊予に状況を説明した。
「‥‥つまり隠岐は柊さんと御崎さんと智久さんの三人同様、エルフに拉致られたということですか‥‥」
思いの外すんなりと状況を飲み込んだ彼女に、三人は感心した風に伊予を見つめる。
「‥‥な、なんですか?」
「いや‥‥案外冷静沈着としているもんだからさ。驚いたんだよ」
智久が言いながら息を吐く。
「‥‥そうですか。まぁ、これも慣れなんで」
(慣れてるって、どういうこと?)
柊たちはその言葉に疑問符を思い浮かべたが、何か事情があるのだろうと口にはしなかった。
「‥‥さて、これからどうする?」
友人が三人にそう呼び掛けた。
「どうするも何も、エルフに会いに行く以外、選択肢はないでしょう?」
すると、その問いかけに伊予が即答した。
「いや、でも会いに行くって言われても、どこにいるかわかんないじゃん?」
「大丈夫です。相手の方からやって来ますから」
御崎がそう反論するが、伊予はそれをバッサリと切って返答した。
「誰か一人は、家に残る必要があるよね。すれ違ったら嫌だし」
彼はそう言って話を進めた。
「(それは得策ではないのですが‥‥安心させるためにも、ここは一つ──)それなら問題ありません。その特殊ファイルから物質生成を選択して、家事用ホムンクルスを造り出せばいいのです」
伊予はそう言うと、彼の学生証端末を取り上げて、ファイルを開いた。
「そんな機能があったのか、これ‥‥」
その台詞に、智久が感心の声をあげる。
「で、でも人を作るなんて、人道に反しないかな?」
「貴女は処女ですか?」
「なっ!?」
御崎の意見に、伊予がそう返した。
「あ、あのねぇ伊予ちゃん?そういうことは言っちゃいけないの。わかる?」
「いいえ、理解しがたいですね。それよりも話を進めるので邪魔しないでいただけます?」
彼女の言葉に、御崎はぐぬぬと唸る。
「とにかく。造るのは人ではなくホムンクルスです。人道には反しません。ということで柊さん、お願いします」
淡々とそう言って、伊予は彼に端末を返す。
「智久、私この子嫌い」
「奇遇ですね、隠岐も貴女が嫌いです」
言い合う二人の間で、友人は困った表情を浮かべた。
助けを求めるように彼はこちらを見るが、柊は興味がないといった風に端末を淡々と操作し始める。
「なあ、柊~‥‥」
「面倒事を擦り付けないでくれるかな、智久」
「そんな殺生なこと言うなよ~」
そんな友人に、彼は窃笑するも、淡々と作業を進める。
「‥‥隠岐はこれから柊さんと行動するので、御崎さんは智久さんと行動するようにしてください」
「‥‥どういうことだ?」
突然の提案に、智久が聞き返した。
「男女で一組になった方が、女子二人だけより断然生存率は高いですし、隠岐も御崎さんとは一緒に居たくないので」
──それに、団体で行動するより、少ない人数の方が身動きもとりやすい。もしもの時には、一番危なっかしそうな柊さんを護れるのも、隠岐だけですし。
「それ、明らかに後者が本音だろ」
友人がそう言うと、伊予は少し微笑んで肯定した。
「です。隠岐は智久さんより柊さんの方がタイプなので、そういう采配をくだしました」
「なっ!?んだと‥‥」
衝撃の本音を聞かされて、智久は落ち込んだ。
彼はそんな友人を慰めながら、一人確信した。どうやらこの先、面倒事が多そうだなと。