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特殊ファイル 四人目

「さて、端末を確認するとしようか」


 柊はそう言って、席につき、学生証を取り出した。


「まずは、端末同士のメールのやり取りからね」


 御崎がそう言いながら、端末を操作する。


 どうやら基本的な動作は同じな様で、メールのやり取りも普通に、いつも通りに作動した。


「問題なしか。次は、カメラ機能‥‥これも問題なしか」


 そうやって次々と、ありきたりなアプリの操作を確認していき、そして。


「‥‥で、この特殊ってファイルなんだが‥‥どうする?」


 智久が意見を聞く。


「‥‥そうだね。事故とか起こして怪我とかしたくないし、外でやろうか」


 御崎の提案に、二人は首肯した。


 と言うわけで、現在は彼らのトリップされてきた屋敷の前の、開けた場所に出ている。


「えっと、アイテムボックスね‥‥使い方は、どうするんだろう」


 少女はそう言いながら、ファイル一覧をスクロールしていく。


「中にアイテムが入っているわけでもないしな‥‥」


 智久はそう言いながら端末を弄っていると、ふと、彼が声をあげた。


「あ、あった」


「え、どれどれ?」


 二人が彼の端末を覗く。


「手紙?」


 友人はそれをタップすると、現れた項目の中から具現化を選択する。


 すると、友人の目の前に、どこからともなく、一通の手紙が出現した。そこには、短くこう書かれていた。


九重ここのえ柊、九重御崎、十束とつか智久、隠岐おき伊予いよの計四名を、エルフの里へ招待する‥‥?」


「隠岐伊予って、誰?」


 そこには、三人の知らない名前が1つ、示されていた。


「いやいやいや、突っ込むところそこ?」


 智久が彼にそう突っ込むが、柊はそれを気にした風はなく、それをスルーする。


「なるほど、二段・・ベッドが二つあったのはそういう理由か‥‥」


 顎に指を添えて、彼はそう呟く。


「え?でも、私たちが気がついた頃には、彼女居なかったよ?」


 頭の上に疑問符を浮かべながら、御崎がそうコメントする。


「時間遅れで来たとか?」


「もしくは、転移してきた場所がずれたとか」


 うーん、と、考え込む三人であった。


「隠岐さん、どんな娘なんだろう‥‥」


 こうして、ろくに特殊ファイルの内容を確認せずに、三人は一度、くだんの屋敷へと帰っていくのであった。


「まずは、転移したタイミングから考えよう。御崎がこっちに来たのは、どのタイミングだった?」


 柊は椅子に座りながら、双子の妹に問う。


「私は‥‥柊をぶった直後かな。智久は?」


「‥‥物騒だな。喧嘩でもしてたのか?」


「い、え、いや、それは──」


 そっぽを向く彼女の様子を見て、智久は柊と目を合わせた。


「俺は丁度、屋上に足を踏み入れた瞬間だったな」


「スルーかよ!?」


 叫ぶ御崎のそれを無視して、二人の証言から、ふむと少し思考を巡らせる。


「御崎がここに来たとき、僕は一緒だった?」


「一緒‥‥じゃ、なかったわ。私はベッドで目が覚めたから。智久は?」


「俺も、最初に気がついたのはベッドの上だったな。ちょうど横を見たら柊が寝ていたのを確認したし、お前がここに来たのは、少なくとも俺がここに来る以前だったということがわかる」


「‥‥ということは、隠岐さんもベッドで気がついた可能性があるね‥‥彼女が移動さえしていなければ、まだあの場所にいるかもしれない」


 彼はそう言うと席を立ち、リビングを出て二階のベッドがあった部屋へと急いだ。


 後ろから二人が追いかけてくる。


「‥‥」


 部屋に入り、二段ベッドの二階を確認する。するとそこには、水に濡れて、全裸で布団の上に横たわる黒髪ロングの幼い女の子が居た。


「‥‥」


 おそらく、彼女が隠岐伊予だろう。だがしかし、なぜに全裸‥‥はたまた、濡れているのか。


「何?どうしたの?」


 固まる柊を見上げて、御崎が呼び掛ける。


「‥‥二人とも、少し部屋から出ていてくれ」


 ベッドの二階から顔を離した彼は、二人にそう告げる。


「え、どうして?」


 聞き返してくる御崎に、彼は無言で見つめる。


 すると、二人とも何か理由があるのかと考えたのか、わかったと一言だけ言って、その場を離れた。


 柊はそれを確認すると、再び隠岐伊予に視線を戻した。


(呼吸‥‥あり‥‥体温‥‥低下‥‥心拍数‥‥この身長にしては遅いな‥‥)


 以上のことから、彼はまず、その体についている水滴をハンカチで拭い、体温の低下を防ぐ。


 次に、端末を操作して、特殊ファイルをタップ。そこからアイテムボックスの最後の欄までスクロールさせる。


 すると、予想通りそこにはアイテムが設置されていた。


 なぜ、彼がそう予想したかというと、智久のアイテムボックスから手紙を発見したとき、それは欄の最下層に設定されていたからだ。そこから彼は、もしかしたらという推測をたてたのである。


 彼はそこに設置されていたアイテムをタップし、具現化を選択する。


 すると、彼の目の前に一着の和服が現れた。


(起こさないように、そっと‥‥)


 彼は慎重に彼女の状態を起こし、和服を着せる。


 なんとかそれを着せ終えると、腰の帯を、腹を圧迫しない程度にきつく締める。


「‥‥」


 ふぅ、と彼は一息つき、今度は濡れた布団をアイテムボックスに収納し、特殊ファイルから物質生成の項目を選択する。


 そして、同じ布団を生成して、彼女にかけた。


「‥‥んぅ」


「!?」


 目を開けた隠岐伊予に驚き、柊はびくりと肩を震わせた。


「‥‥誰?」


 彼女はそう言うと、まだ眠そうな目でぼんやりとこちらを見つめた。


 彼は瞬間的に予感した。あぁ、面倒なことになりそうだと。

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