理不尽な腹痛 神隠しのある日常
「はぁ」
昼休み。彼は一人、ため息をついた。
「どうしたの?」
少女が、そんな彼を心配した風に話しかけてくる。
「どうして腹痛は、体育の時に限って襲ってくるのか」
彼はそう、青い顔をして、額に手を押し当てた。
「あー、確かに。私もたまにあるんだよね~そういうの。ほんと、どうしてだろ?」
彼女は彼の横に座るなり、焼きそばパンの入った袋を開いた。
「今日もそれ?」
「へへん。最近運が良くてね!」
少女はそう言うと、自慢気にそれを頬張った。
「なるほど。僕の運の悪さの原因がわかったよ‥‥」
その様子を眺めながら、彼は少女の肩に手を置いた。
「‥‥何?」
「たぶん、君が僕の運を吸い取っているんだよ」
「──んな訳あるかぁあ!」
少女の拳が彼の頭を叩きつけ、鈍い痛みにみまわれる彼であった。
気がつくと、彼は知らない部屋のベッドに寝かされていた。
「あ、起きた」
彼が声のする方へと顔を向けると、そこには彼を殴った張本人である彼女が、ヘッドの上に腰かけていた。
「御崎、ここどこ?」
彼は少女に尋ねる。
「ん、異世界らしいよ?」
瞬間、思考が停止する彼を見て、近くにいた友人、智久が肩をすくめてため息をついた。
「‥‥どゆこと?」
「さあな。俺も気がついたらここにいた」
友人のその言葉に、彼は周囲を見回した。
大きな丸太を組み合わせて作られた、いたって簡易的な造りのログハウスだ。あるものと言えば、二段ベッドが二つ、クローゼットやタンスがそれぞれ四つづつと、かなり簡素である。
「‥‥御崎は、何か解らないか?」
智久が少女に聞くが、彼女も首をひそめるだけである。
「‥‥王道とは違う展開で異世界に来るなんて、予想外だな」
「‥‥てか、異世界に来る時点で全くの予想外だよ」
「まあな」
彼は智久の返事にため息をつきつつ、そのベッドから降りる。
「御崎、他に部屋なんてあった?」
「あったよ。客間が数室、キッチンつきのリビングが一室、トイレが各階に一つづつに風呂場が大きいものが一つ。外には結構大きめの倉もあったし。ログハウスっぽい内装なのはこの部屋だけだったよ」
一通りそう説明すると、窓の外へ視線を向けた。
「外は森が続いているし、人の気配もない。山の上にあるわけでもないらしいからな」
智久は伸びをすると、ばたりとベッドの上に倒れた。
そこで、彼は疑問に思ったことを二人に告げた。
「それだけで、どうしてここが異世界って?」
「そりゃ、あんな一瞬で空間が入れ替わったんだよ?神隠しくらいしか思い付かないじゃない」
もっともな意見を述べる御崎である。
(一瞬で、か‥‥)
そのときにはもう、彼の頭はパンク寸前だった。
どうやらこの三人には、平穏で緩やかな学園生活を送ることが難しくなってきたようであった。