この世に暇はない 人気の秘密
「時間に暇なんて、本当にあるんだろうか」
とある学校の屋上で、彼は一人、そう呟いた。
「そりゃ、あるだろ」
その隣で、彼の友人がそう答える。
「例えば?」
「学校の休み時間とかさ。ほら、今みたいな昼食休憩の時間とかも、それに当てはまるんじゃないのか?」
友人の台詞に、彼は空を見上げながら、一考する。
遠く青い空には、少しの雲と、鳥のさえずりだけがそれを占めていた。
「‥‥でもそれって、次の授業を受けるために必要なエネルギーを回復させる時間、そう考えられないかな」
視線を遠くに投げながら、ポツポツと言の葉を並べる彼。
しばらくの沈黙のあと、ようやく友人はそれにコメントした。
「──いや、それを言ったらおしまいだろ」
今日も平和な、無駄な日常が過ぎていく。そう、二人は思っていたのだが──。
「あ、こんなところにいた」
そう言って屋上に上がってきたのは、制服姿の一人の少女だった。
少女は、その手に持った焼きそばパンの封を開けると、彼のとなりに腰かける。
「よくそれが残ってたな」
友人が珍しそうな目で、その焼きそばパンを見る。
「発注ミスって、いつもより多く入っちゃったんだって。いつもは人気ですぐに売り切れてたけど、今回はなんとかギリギリ入手に成功したよー!」
そう言って、至極幸せそうにそれを頬張る少女。
「それでもギリギリだったんだ‥‥」
「それほど、これが美味だったってことよ!」
少女は自慢気にそう答えると、瞬く間にそれを完食してしまった。
「ふぅ。満足満足」
そんな少女の様子を見て、彼はふととある疑問を口に出す。
「人気の高いものに共通するものって、なんなんだろう?」
「そりゃ、難しい問題だな‥‥」
ふむ、と友人は顎に指を当てて考える。
すると不意に、少女が閃いたかのようにこう言った。
「あ!もしかして、人気なのって、みんなに優しいからなんじゃないかな?」
「と、いうと?」
友人が興味深げにそう返す。
「だってさ、人気なものって、ほとんど便利なものが多いじゃん?多分そういうことだよ!」
「なるほど、それも一理あるな」
納得したように頷く友人であったが、それに対して、彼はこう返した。
「‥‥便利な食べ物って、それってつまり健康食品みたいな感じかな?」
「それ、焼きそばパンに合わねぇだろ‥‥」
そんな彼らを、青い空と春の暖かい日差しが、何事もなく照らすのであった。
こうして今日も、やはり彼と友人たちの日常は、緩やかに流れていくのであった。