軍事同盟
今回は軍事同盟についてです。
ただし、ここで解説するのは代表的なものを例にした概念であり、個々の詳細については扱いません。
軍事同盟とは、2つ以上の国家が自国の掲げる目的達成の為に軍事的な義務を伴った条約に基づいて結ぶ提携です。そして、ここで言うところの軍事的な義務には敵対勢力との戦闘や基地施設の利用といった直接的なものだけでなく、兵器売買を含む経済活動も間接的な軍事支援になるなら該当します。
また、自国とは直接交戦していない勢力に対しても同盟国と交戦状態になっていれば参戦できる集団安全保障体制の構築にも関わっています。
もっとも、この軍事同盟は常に対等な立場で結ばれるとは限らず、大国同士の争いの中で自分達の勢力拡大を目的に他国を取り込もうとして結んだり、何らかの利権や大義名分を得る為に締結したりする場合もあります。しかし、対等な立場になれば所属する同盟の掲げる安全保障に対しても相応の責任を負うようになる事を忘れてはいけません。
①日米安全保障条約
日本が締結する唯一の軍事同盟です。これまで様々な形で取り上げられ、その解釈を巡っては何度も議論の対象になってきました。それの影響なのか、日本の安全保障体制への貢献・冷戦時代の社会主義に対する防波堤・日本の軍国化に対する抑止力などの多くの見解が時代と共に追加される形で紹介されています。
②北大西洋条約
東西冷戦下で社会主義陣営に対する集団安全保障体制を構築する為、イギリスやフランスがアメリカを取り込む形で締結した条約です。もっとも、それよりも有名な出来事は同条約に基づいてNATO(北大西洋条約機構)が組織された事でしょう。そして、現在では旧社会主義陣営の国々まで加盟する一大組織になっています。ちなみに、本部はベルギーの首都ブリュッセルにあります。
③ワルシャワ条約
東西冷戦下、分断状態にあった西ドイツの主権回復(再軍備)と共にNATOに加盟した事に脅威を覚えたソビエト社会主義共和国連邦(ソビエト連邦)が中心となり、同じ社会主義陣営の東ヨーロッパ諸国を巻き込む形で締結した条約です。しかし、東西冷戦の終結によって1991年にソビエト連邦の崩壊を待たずに解散しました。
④集団安全保障条約
少し紛らわしい名称ですが、これはロシアを中心に旧ソビエト連邦を構成していた共和国が締結した条約です。そして、後に集団安全保障条約機構を組織して通常の軍事的な脅威だけでなく、テロや麻薬対策などでも協力する事が加盟国の義務として盛り込まれています。
⑤上海協力機構
中国とロシアが中心となった組織で経済や文化面での協力体制を掲げていますが、テロ対策や国境警備の枠を超えた合同軍事演習を行うなど軍事同盟としての性質も色濃く出ています。ちなみに、本部はキルギスの首都ビシュケクです。
⑥アフリカ連合(AU:African Union)
前身のアフリカ統一機構が内戦やクーデターの頻発に対して有効な手を打てず、機能不全に陥っていた事から政治・経済・安全保障など広範な分野での協力体制の構築を目的とした強い権限を持つ組織となりました。ゆえに、加盟国内で発生したクーデターや過激派組織の跳梁に対してはAU派遣軍を編成して軍事介入を行っています。ちなみに、本部はエチオピアの首都アディスアベバです。
⑦米韓相互防衛条約
朝鮮戦争の反省から締結されたアメリカと韓国の軍事同盟に関する条約です。在韓米軍の駐留を認めるなど日米安全保障条約に近いものがありますが、作戦統制権(指揮権)は米韓連合司令部(アメリカの発言力が強い)に委ねるといった特徴を持っています。東西冷戦の終結後に平時の作戦統制権が韓国に移され、将来的には戦時の作戦統制権も韓国側に移譲される予定でしたが、そちらは延期となって今も戦時の作戦統制権は米韓連合司令部にあります。