国際人道法と交戦規程
今回は国際人道法とROE(Rules of Engagement:交戦規程)についてです。
ただし、その内容とかを書き並べるのでは無く、これらの存在について考えるきっかけとなりそうな部分のみを簡単に解説します。
まずは、国際人道法についてです。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、かつては戦時国際法とも呼ばれていたものです。国際連合憲章(国連憲章)によって法律の上では戦争が無くなった(逆に言えば、事実上の戦争状態は存在する)ので、新たに生まれた概念(言葉)だとも言われています。
ちなみに、これは全ての軍事組織に対して適用される法律として宣戦布告が無いまま軍事衝突が起きたり、戦争状態にないと当事国が主張したりしても武力紛争の認定さえ行われれば適用対象となります。
その内容については戦争の期間・当事国の義務・当事者の禁止事項などに関わるもので、詳しくはハーグ陸戦条約やジュネーブ条約という形で明文化されています。
もっとも、物的証拠の確保や戦場を第三者機関が常に監視するのは非現実的なので、どうしても見過ごされる戦争犯罪というものは出てきます。また、権力や影響力の大きい国家が絡むと戦争犯罪を隠蔽される可能性すらあるでしょう。
さらに、現在のように過激派勢力を相手にした紛争ともなれば、少なくとも過激派勢力側に国際的なルールを守るという意識は皆無に等しいのが実状です。
次はROE(交戦規程)です。しかし、具体的な内容については機密に当たるため不明です。当然、これも世界情勢の変化や組織によって異なるものになります。
ただ、どういった事が書かれているかは明確で、正規軍を始めとする治安機関が状況に応じて取れる行動を詳細に定めたものです。いわば、そういった組織にとっての対処マニュアルだと考えれば理解しやすいかもしれません。
これがあれば現場の判断で素早く行動ができ、いちいち自身の行動に法的な問題が無いかを気にしなくても済むというメリットがあります。ただし、それはROEの内容が実状に合っていた場合のみで、厳しすぎても緩すぎても駄目なのです。
もっとも、傾向としては法律を司る側(政治家)は政治的な立場から極力武器の使用を控えようとしますし、現場(軍人)は任務遂行を優先して最も効果的な武器を使おうとします。なので、ここで両者の間に認識を巡る隔たりが出来る訳ですが、これを解消しないまま実際の行動に移すと相手に効果的な打撃を与えられずに被害が増加したり、戦火を必要以上に拡大させてしまったりする最悪の結果を招きます。
それを避けるには普段から両者が内容に関する議論を尽くし、現状に即した最適解を導き出し続けるしかないのでしょうね。