軍種
軍種(軍隊の種類区分)についてです。
ただし、これも国や時代背景によって変化するので絶対のものでは無く、あくまでも一般的な解釈についての話をします。
①陸軍
地上(陸地)での活動を主眼においた組織で、国家が国土を持つ以上は基本とも言える存在だけに歴史も長いです。なので、正規軍を保有する国家であれば必ず組織されており、大抵の場合は軍隊の中でも最も多くの人員が配置されています。
地上が活動範囲という事で保有する装備も当然のように装甲車両を含む各種車両ですが、国によっては多数のヘリを配備している場合もあります。
②海軍
海上(海中も含む)での活動を主眼においた組織で、地球表面の約70%が海である事を考えれば世界規模で影響力を行使するのには必須です。ただし、内陸国では必要ありません。せいぜい、河川警備用の小型艇があれば事が足りるでしょう。
海が活動範囲という事で保有する装備は水上艦や潜水艦といったものになりますが、こちらも国によっては海軍航空隊という形で大規模な航空戦力を保有していたり、陸戦を担当する地上部隊まで保有していたりと国家戦略に応じて非常にバラエティに富んだ構成となっております。
ただ、大規模な海軍を整備するには莫大な予算が必要な為、海に面していても小型艇くらいしか保有していない国家は幾らでもあります。
③空軍
空での活動を主眼においた組織で、本格的に運用され始めたのが第2次世界大戦後という歴史の浅い存在です。ちなみに、空軍として独立するまでは陸軍航空隊として活動していたところが大半です。
空が活動範囲という事で保有する装備は各種の航空機やヘリコプターですが、活動拠点となる空軍基地(航空基地)の重要度が高いので基地警備に必要な最低限の陸戦部隊と防空部隊(こちらは広域防空を担当する部隊も含む)を保有しているところが多いのも特徴です。
当然、大規模な空軍を整備するには莫大な予算と高度な教育プログラムが必要な為、偵察や小競り合い程度の戦闘ぐらいにしか投入できない規模の空軍は幾らでもあります。
④統合軍
従来の軍種を廃して単一の指揮・運用体系に統合した組織です。現代の複雑化した紛争形態や総力戦に対し、縦割りの組織では柔軟性に欠ける事から誕生しました。ただし、国防軍全体を統合軍としている国家は極めて少ないです。
また、アメリカ軍における統合軍とは担当地域や限定された目的での統合運用を行う集団を意味し、ここで言うところの統合軍とは微妙に異なります。つまり、各部隊は従来の軍種に属したままで必要に応じて各統合軍へと派遣され、その指揮下で活動するという形を取っているのです。
⑤特殊事例
まず、海兵隊(この呼称も国によって違いますが)という単語を聞いて何を連想するでしょうか? 多分、日本人なら在日米軍の海兵隊を想像すると思いますが、あれは陸海空3軍のどれにも属さない第4の軍なのです。
つまり、アメリカ陸軍・アメリカ海軍・アメリカ空軍と同格の独立した存在としてのアメリカ海兵隊であり、その証拠にアメリカの省庁では国防総省の指揮下にこの4軍が配置されています。
記録の上では1798年7月11日に設立(再建)されたものの、本格的な戦闘集団としての地位を獲得して現代の海兵隊の原点となったのは第2次世界大戦で、以降も幾多の戦争に参加して非常に即応性の高い遠征打撃軍へと進化しました。
さらに驚くべきは保有する戦力で、かなり大雑把な例えですが陸上自衛隊と航空自衛隊を足した以上の人員と装備を持つ強大な組織と言えば別格だという事をイメージしやすいかと思います。
これに対して他国では、海軍指揮下で地上戦を担う部隊として扱われる場合がほとんどです。もちろん、探せば例外は幾つかありますが、アメリカ海兵隊のように大規模で独立した組織は極めて稀です。
ちなみに、海兵隊の任務は国や時代によっても変わりますが、現在では水陸両用作戦部隊・有事における緊急展開部隊・特殊部隊の3タイプのどれかに属すると考えていいです。
後は、アメリカの各州に存在している州兵も忘れてはなりません。一応、組織としては国防総省の管轄下にあるのですが、平時は各州の州知事が指揮権を持っていて連邦軍(俗に言うアメリカ軍)に編入された時にのみ連邦政府(いわゆるアメリカ政府)の指揮下に入ります。
州兵の本来の任務はアメリカ国内での治安維持活動、具体的には災害派遣・暴動鎮圧・海外展開などで連邦軍が不在の際の国土防衛といったものです。もっとも、近年では連邦軍の予備戦力として戦闘任務の比重が増して海外展開すら増えています。
そして、この州兵には陸軍州兵と空軍州兵があり、共に連邦軍と遜色ない装備を保有する戦闘集団だというのも他国では見られない大きな特徴です。その理由は多数の戦車や戦闘機まで保有し、傍目には正規軍と区別がつかない程だからです。
なお、他にも独立した組織(厳密には軍種とは違いますが、独立性の高い大規模組織という事で纏めて扱います)を保有しているケースはあり、その中でもわりと有名なのは中国人民解放軍(中国軍)ロケット軍でしょう。かつては第二砲兵の名称を使っていましたが、2015年12月31日をもって現在の名称に改称されました。
この部隊は、核弾頭を搭載した弾道ミサイルを含む各種の弾道ミサイルから長距離巡航ミサイルまでをも保有するミサイル専門部隊として知られています。
さすがに、世界中にある陸海空軍以外の軍種を全て紹介していてはきりが無い(把握しきれない)ので終わりにしますが、国家戦略や時代によって様々な軍種が組織されるのだという事は覚えておいて下さい。なので、将来的には宇宙軍やサイバー軍といった軍種が当たり前になるかもしれませんよ。
余談ですが、2015年8月1日に組織再編によってロシア航空宇宙軍が誕生しました。もっとも、中身は従来と同じで大気圏内担当(通常の空軍)・大気圏外担当(人工衛星や弾道ミサイルなど)・防空部隊を纏めて指揮下に置いている組織です。