幽体離脱17
本日2回目の投稿です。ペース早くてごめんなさい。
彩は、静かに寝ていた。
普通の人の目にはそう見えたかもしれない。
「馬上、彩ちゃんはいないのか?」
隣に座った清水が俺の制服の裾を引っ張った。
「いない。ヒントもなし。」
彩から伝わって来るのは、底知れない安堵と寂しさ。
「なぁ、彩ちゃんの両親は?娘が倒れたっていうのに来た痕跡がない。」
運ばれた時の制服のままで、着替えなども用意されていない。
「俺らさぁ、幼馴染みなんだ。」
「知ってる。」
清水は、なんなんだと言いたげな顔をしたが、なにも言わないので俺はそのまま続ける。
「俺は、この目のせいで家族との間に距離があったんだ。その頃に、彩と出会った。彩も同じような問題抱えててさぁ。すぐ仲良くなった。でも、俺の幸せと反比例するように家族内がゴタゴタしてさ。結局、両親は離婚。俺と姉は母に引き取られたんだけど、経済面が厳しくてすぐに祖母の家に預けられたんだ。
向こうの学校では友達できたよ。目のことは言わなかったから。でも、彩のことは忘れなかった。
そいで、小6の時かな姉が、死んだんだ。事故だった。一人になった俺はこっちに帰って来たんだ。」
「泣いただろ。」
「うん。だから、もう誰も失いたくない。」
夕焼けが悲しそうに色づいた。
その夜、柳瀬先生から彩が退院したと電話があった。