7,夏期研修
もぅ好きかもわからない自分に必死に好きだと言い聞かせる。
自分を偽る事は…ほら、こんなにも虚しい。
Just a friend.
〜夏期研修〜
「えっ!じゃあ、薫は夏期研修参加しないの?」
夏期研修―うちの学校で行われる1年生を対象にした夏休みのリゾートホテル研修で、参加は自由だが給料が貰える事からも参加率は高い。
「うん。別に今続けてるバイトだけで充分だよ。」
「そんな…薫と同じ研修先にしようと思ってたのに…。あっ、じゃあ秀司は?一緒に行こうよ♪」
「ってか、俺も夏期研修は参加しないでこっちのホテルでバイトする予定。」
シラっと答える薫と秀司に余計に腹が立つ。
「だって、秋になったら半年の研修だよ!お金だっているしさぁ…行こうよ。ね?」
夏期研修が終われば、いよいよ次は半年間のシティホテル研修。
無給の所が多く、ホテルの寮で生活になる…。
たぶん半年は薫とも秀司とも会えないんだろう。
「私は研修に向けてコツコツ貯めてるから、夏期研修は必要ないの。」
「俺は…なんだかんだ言って結子がいるしなぁ。」
2人とも人の気持ちも知らないで…!
「もぉいい!」
ってわけで、あっと言う間に夏になり夏期研修が始まりました。
「1ヶ月半よろしくね。」
「こちらこそ。優音と同室って不思議な感じだけど。」
ホテルの寮で1ヶ月半の生活をともにするのは福田 真貴。
同じクラスで普段から割りと喋りはするが、2人で行動するのは初めての体験だった。
「で、優音の彼氏さんは年上だっけ?」
「あぁ…、うん。一応。」
夜になると女の子が話す内容なんて恋の話ばっかりだ。
今の私には…痛い話題。
もう一馬と3日も連絡がつかない。
「一応って…。」
真貴は私のどんな話だってニコニコと聞いてくれる。まぁ、自分の事は一切話題にしないけど…。
『♪〜♪〜〜』
不意になった自分のケータイに驚きながら手を伸ばす。
なんで…?
もう3日聞いてない一馬専用の着信音。
「彼氏さん?」
「あっ…うん。あの…ちょっと…。」
「いいよ。行っておいで!これから6週間も一緒に過ごすのに、そんな遠慮いらないって。」
「ありがとう。」
真貴を気にしながらも、廊下に出て通話ボタンを押す。
「もしもし…一馬?」
『………』
リゾート地は電波が悪くて困る…なんて思いながら、寮の入口まで出る。
「一馬?もしもーし。」
『あぁ、やっと繋がった。もうホテル着いたの?どんな感じ?』
「うん。配属先はレストランになった!明日の朝から仕事だよ。一馬こそ…3日も連絡くれないなんて…何してたの?」
『ん?秘密。』
「どうせ女の子と遊んでたんでしょ?」
『まぁな。』
……ちょっとは否定してよ。
ケータイを握る手に力がこもる。
「そっか…。」
『あっ、俺さぁバイト休み取ってそっち遊びに行こうかなって!』
「えっ、来れるの?」
『考えとくよ。じゃあ、またな。』
プーップーッと無機質な機械音が響く。
電話が切れた後のこの音が嫌い。
一人ぼっちになったみたいで…。
私は切れたばかりのケータイをいじって、あいつの電話番号を呼び出した。
『上野秀司』
プップップッ…と短ぃ機械音に呼び出し音が続き
『もしもし優音?どーした?もぉ俺に会いたくなったか?』
すぐに秀司の明るい声が聞こえた。
「バーカ!夏休み入って死んでないかと思って、わざわざ電話してやったんでしょ?」
そんな秀司の声に無駄に安堵してしまう。
『わざわざ、どうも。でもまだまだ死ぬ気配も無いから仕事に集中しろよ。』
「仕事は明日からなの!」
『配属はもう決まったのか?』
「うん♪イタリアンレストランなんだ!」
『やけに嬉しそうじゃん。カッコイイ先輩でもいた?』
「へへっ…実はね。調理師さんの制服がかっこよくて♪」
『変態かよ…。何かあったら杉原一馬にチクるからな。』
「はいはい。アドレスも知らないくせに。」
『あっバレた?まぁ羽目を外すなよ。ってか、俺これからデートだから…また電話するな♪』
「あーはいはい。デート楽しんで来てね。」
プツッっと電話が切られる。
一馬との電話を切った時よりもっと切ない。
「でも…一馬が会いに来てくれるって言ってた♪」
独り言のノロケ。
バカだって分かってるけど…一馬の一番は私だって、まだ信じてる。




