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第7話 視察

1932年5月12日


~横須賀特務地区 特務工廠~


この日、刹那は小夜を連れて漸く完成した特務工廠に来ていた。この特務工廠では、独立連合艦隊の要であるミサイルや砲弾の生産などが行われる事になっている為、日本軍では此処を最重要国家機密指定工廠にしていた。


「母さん、状況は如何?」


工廠に入ると、機材設置の指示を出している小百合に声を掛けた。


「あら、刹那に小夜ちゃん」


「お久しぶりです。小百合さん」


小百合の言葉に、小夜も頭を下げた。


「で、もう一度聞くけど、状況は如何なっているの?」


刹那が尋ねると、


「機材搬入は、大半が終了しているわ。後は、今やっているけどその機材の設置だけね。機材が設置し終わっても、工員の教育がまだ掛かっているから、生産に入れるのは半年後くらいかな?」


小百合そう答え、


「そう。ねぇ、母さん、この機材は如何したの?野戦工廠艦から降ろした?」


刹那が、運び込まれているのが自分達の時代で使われている機材と一緒なのに気付いて小百合に尋ねた。


「いいえ、この機材は全て、野戦工廠艦で制作した物よ。野戦工廠艦では今、一般の工場に提供する最新型の精密機械や、農業用のトラクターを生産しているわ」


小百合の言葉に、


「の、農業用のトラクターまで・・・」


「凄いですね小百合さん・・・」


刹那と小夜の2人は、小百合の行動に驚き呆れていた。


「それにしても、稼働までに半年か・・・少し長いね小夜」


刹那と、小夜にそう言うと、


「確かに長いですね・・・小百合さん、もう少し、教育期間を短縮することは出来ませんか?」


と、小夜がそう尋ねた。


「ん~、やろうと思えばやれるけど、その分精度が落ちるわね。私達の時代なら少し位省いても分かるかもしれないけど、この時代では、私達の技術は未来の技術だからね。1から10まで説明しないと、ミサイルとかの精度も悪くなってしまうわ」


「そうですか・・・」


小百合の言葉に、小夜も納得する。


「まぁ、出来るだけ頑張ってみるわよ。この時代の人達も勉強熱心で、普通1ケ月掛かる講座の所を、2週間で終了しちゃうんだもの」


小百合がそう笑いながら言うと、


「じゃあ、予定よりも早く稼働できるかもしれないの?」


刹那が尋ねると、


「今の調子でいけば可能かもしれないわね、そしたら、4ヶ月後には稼働できるかな」


小百合の言葉に、


「分かった。じゃあ、工員の教育は任せます。それで、視察に来る前の連絡で新型戦車の設計が出来たと聞いたけど?」


刹那が小百合に尋ねると、


「そうそう!やっと、新型戦車の設計図が出来上がったのよ。こっちに来て、設計図見せるから」


小百合はそういうと、2人を近くに置いてあるテーブルの前に連れて来た。


「ご覧あれ!これが、大日本帝国軍の新型戦車の設計図よ!」


小百合は声高だかにそう言うと、机の上に設計図を広げた。


「九三式中戦車・・・最大装甲厚が、70mmで75口径50mm砲装備・・・」


「これ、凄い戦車ですね・・・んっ?あの、小百合さん、この戦車、見た目が、90式に似ている様な気がするんですが・・・」


設計図を見て、小夜がその形に気付き、小百合に尋ねると、


「当り前よ。だって、九三式戦車は、90式を基に設計しているんだから」


小百合はそう答え、


「この戦車も、この工廠で、稼働し始めてから直ぐに生産するつもりよ。この戦車なら、ノモンハンや太平洋戦争初期までは使用できるわ」


「凄すぎでしょ母さん。最高速度が70km/hって・・・」


「そりゃあ、私達の戦車が使っているエンジンを積んでいるんだから」


小百合が自信満々にそう言い、付け加えるように、


「それと、M4シャーマンやT34/85にも対抗いえ、圧倒できる戦車も今設計中だから」


と、言った。


「「・・・・・・」」


小百合の発言に、刹那と小夜は絶句するしかなかった。



「じゃあ、母さん、私たち改装中の艦艇も見に行かないといけないから」


暫く小百合と談笑して、刹那が工廠から出てそう言うと、


「あら、そう?なら、岸田さんに連絡入れておくわね。じゃあ、頑張ってね、刹那、小夜ちゃん」


「うん。母さんもね」


「今日は、有難うございました」


刹那と小夜は礼を言うと、自走浮きドックが停泊している区域へと向かった。





~自走浮きドック停泊区域~


独立連合艦隊が保有している大型、小型自走浮きドックは、工廠と同様に最重要国家機密に指定され、一般の人からは目に見えない所に停泊されていた。


「如月長官、更級参謀長、良く御出でなさいました。ようこそ斑葉へ」


そう言って、自走浮きドックの主任の岸田は刹那達に挨拶した。


「岸田さん。今日は、少しの間ですがお世話になります」


「宜しくお願いします岸田主任。」


刹那と小夜も岸田に挨拶を済ませると、自走浮きドック斑葉の艦内に案内された。




~自走浮きドック斑葉艦内~


斑葉の艦内では、艦艇を溶接する音や整備している音、工員の声等が入り乱れていた。


「今、改造している艦は、金剛ですか?」


刹那が艦影を見て尋ねると、


「はい。その通りです。すでに、長門、陸奥、山城の3隻は機関等の改造が終了したので、金剛、榛名、比叡の改造に移っています。本艦では、後、1ケ月で改造を終える予定です」


刹那の問い掛けに岸田は答えていく。


「質問ですが、岸田主任、改造したのは機関だけですか?」


岸田の言葉を聞いていた小夜が尋ねると、


「主に機関だけを取り替えましたが、一部の艦は、船体の延長も行っております。武装類の改装は,工廠が稼働してからになりますね」


「そうですか、有難うございます」


小夜が礼を言い、他にも岸田が説明している間、刹那は、改造されている金剛を見つめていた。


この後、他の艦の改造状況も視察し、一通り見終わると、刹那と小夜は岸田に向かって礼を言い、自分達の艦である瑞樹に戻った。


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