第3話 演習航海
2025年10月8日
~横須賀軍港 太平洋艦隊専用港~
「いよいよ練習航海か・・・」
刹那は戦艦瑞樹のCICに設置されている長官席に座りそう呟いた、
「艦が納入されてから数日経っていたからね、他の艦も練習、練習で大変みたいだけど」
刹那の横に立つ小夜が刹那の呟きに答える。
刹那が地下ドックを訪れてから2週間後、予定通り太平洋艦隊に艦艇と艦載機、海兵隊の装備品の納入が行われ、艦隊はスケジュール通り艦ごとに航海演習を行い、空母航空団は離発着訓練、海兵隊も上陸訓練などを行っており、そして今日が、旗艦である瑞樹の練習航海日となっていた。
「長官。出港準備完了しました」
出港準備を進めていた戦艦瑞樹艦長である琴音の言葉に刹那は頷き、
「出港用ー意!舫い放てー!」
「出港用ー意!舫い放てー!」
刹那の言葉を小夜が復唱していく。
「両舷前進微速」
「両舷前進微速」
刹那の言葉に合わせるように水兵達が素早く動き、瑞樹がゆっくりと横須賀港から外洋へと出て行く。
「電測員、対水上見張りを厳としなさい」
「了解。対水上見張りを厳とします!」
水上レーダーを見張っていた電測員が頷き、刹那の言葉を復唱する。
「それにしても凄いですね。この艦は・・・さすが、母さん達が建造しただけはあります・・・」
外洋へ無事に出て、一息ついた刹那は改めてCICを見渡した。
「どうですか、琴音この艦は?」
刹那が琴音に話しかけると、
「本当に凄いとしか言いようが無いよ刹那・・・こんなでっかい図体なのにこんなに速く動けるなんて・・・」
琴音の驚嘆の言葉に刹那は苦笑しつつ、
「一真の方は如何?新型の射撃管制装置は?」
「あぁ、国産だけあって扱いやすい。しかも、アメリカ製よりも高性能だしな」
一真がそう答えると、
「そう、ちょっと参謀長、艦長、砲術長は長官室に来て貰えるかしら?」
刹那がそう言い、
「了解しました。笠瀬3佐、留守中の指揮をお願い」
「了解。留守中の指揮を引き受けました」
戦艦瑞樹副長である笠瀬紫織3等海佐は琴音に敬礼し、刹那、小夜、琴音、一真は長官室へと向かった。
~戦艦瑞樹長官室~
「それで、如何したの刹那?」
小夜が長官室の椅子に座っている刹那に尋ねると、
「2日後に、戦闘訓練を行いたいと思いますが、みんな如何かなと思って」
刹那の言葉に、
「戦闘訓練か・・・射撃管制装置は何の問題も無いから賛成だ」
一真がそう言うと、
「そうですね。艦の調子も良いので、頃合いだと思います」
と、琴音も頷く。
「そう。小夜も異論は無い?」
刹那が小夜に尋ねると、
「えぇ、異論は無いわ」
3人の言葉を聞き、
「では、2日後の1400に戦闘訓練を開始します。以上解散」
「「「了解!」」」
そう言って、小夜達は長官室を後にした。
10月10日 14:00
~戦艦瑞樹CIC~
刹那が告げた通り、戦闘演習をする時刻になると、戦闘用意を告げるサイレンが艦内に鳴り響いていた。
「SPY-3Jに感ッ!本艦に高速目標が接近。方位270°!敵対艦ミサイルが発射された模様!数30」
電測員が目標を発見し告げる。
「了解。対空戦闘用意!電子戦用意!」
電測員の報告を受け刹那が冷静に告げる。
「ECM照射準備よし!」
「ECM照射始め!」
「ECM照射!敵ミサイル12発が逸れました。残り18発さらに接近!」
「SM-2発射用意!」
「了解。SM-2発射用意!」
刹那の命令を受け、小夜が復唱する。
「SM-2発射用意!VLS解放!」
「SM-2発射用意よし!」
「発射!」
砲術参謀である一真が叫び、射撃員が発射ディスプレイに触れ、甲板に設置されているVLSから18本のSM-2が発射された。
「命中まで5秒・・・4・・・3・・・2・・・マークインターセプト!」
電測員がミサイルの着弾を知らせる。
「敵ミサイル16本の命中を確認。2本さらに接近!真っ直ぐ突っ込んで来る!」
「127mm砲撃ち方用意!」
「撃ち方用意よし!」
「目標まで14,000・・・撃ちー方始め!」
再び一真の号令で、片舷に設置されている6基の64口径127mm連装砲が火を吹いた。
「敵ミサイル2発に命中!他に敵影無し!」
電測員がそう叫ぶと、
「演習終了!対空戦闘用具納め!皆さんご苦労でした」
刹那がそう告げ、戦艦瑞樹初の戦闘演習は終了し、3日に及ぶ演習航海は何の不備も無く横須賀港へと帰港した。
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