第18話 ハ号作戦 前編
皇紀2602年(1942年)1月7日
マニラ湾
フィリピンを攻略し、連合艦隊はトラック島に帰還し、独立連合艦隊は次の作戦の為にマニラ湾で燃料や弾薬の補給を受けていた。
~独立連合艦隊旗艦瑞樹第1会議室~
「参謀長、始めて下さい」
刹那の言葉に小夜は頷き、
「それでは、フィリピン攻略戦であるハ号作戦の打ち合わせを始めたいと思います」
小夜がそう言うと、会議室の照明が落とされ正面に備え付けられたスクリーンにマレー半島の画像が映し出された。
「我々はマニラを出港後、シンゴラに海兵隊を上陸させます。また、この作戦には、20式戦車の他に試作戦車・・・24式戦車も出撃する事になります。加藤師団長良いですね?」
「はい。異論はありません」
小夜の言葉に詩織が頷く。
「尚、我々艦隊は、制空権の確保及び、シンガポール島に向けての艦砲射撃を行う事になります。作戦の概要はこうなりますが、何か質問はありますか?」
「参謀長、質問宜しいでしょうか?」
そう言って手を上げたのは第三独立戦隊司令の江崎菜緒だった。
「何でしょうか江崎中将?」
「史実では、シンガポールにイギリス戦艦のPOWと巡洋戦艦レパルスが居ますが、それに対しては如何すればいいのでしょうか?」
菜緒の質問に少し困ったように小夜は刹那の方を向くと、刹那が頷いたので、
「正直に言います。執行部の情報では、POW及びレパルスは停泊していません」
小夜の言葉に会議室にどよめきが起こった。
「い、いない?居ないとはどういう事ですか?」
菜緒が尋ねると、
「執行部の暗号解読隊が傍受した暗号によりますと、アメリカがイギリスに忠告して2隻をインド洋まで後退させたようです」
「そうですか・・・ならば、マレー半島に存在する戦力は、史実より少し強化されて、10万、戦車もチャーチルを筆頭にマチルダⅡ、クルセーダー・・・合計で500両に、戦闘機は、スピットファイアMk Vdが320機に、バッファローが220機、B-17が200機、A-20が120機と・・・大分イギリスも奮発しましたね・・・」
菜緒が報告書を見ながらそう言うと、
「そうなりますね。しかし、レシプロ機でも充分脅威になります。各航空戦隊のパイロット達にも注意するように言っといて下さい」
刹那の言葉に全戦隊司令が頷く、
「それでは、解散とします」
刹那がそう告げ、各戦隊司令は自分達の艦へ戻って行った。
1月10日
~戦艦瑞樹CIC~
「今のところ敵の姿は有りませんね・・・」
正面のモニターに映るレーダーの様子を見ながら刹那は小夜に話しかけた。
「そうですね・・・でも、そろそろ敵機の1機や2機、出て来てもいい頃だと思いますが・・・」
小夜がそう言った時、
「スクリュー音探知!このスクリュー音は・・・日本には存在しません!イギリス海軍のU級潜水艦だと思われます!」
ソナー員から報告が飛び込んできた。
「航空機では無く潜水艦が出てきましたか・・・対潜戦闘用意」
「了解。対潜戦闘用意!」
刹那の言葉に琴音が頷き、ミサイル員が対潜ミサイルの発射準備を進める。
「対潜ミサイル発射用意よし!」
「対潜ミサイル発射始め!」
ガコン・・・バシュウゥゥーー
ミサイル員が発射ボタンに触れ、VLSから1発の13式対潜ミサイルが発射され、暫くしてから弾頭が海中に潜った。
「対潜ミサイル命中まで10・・・9・・・8・・・7・・・6・・・5」
ソナー士が魚雷着弾までのカウントを始める。
「魚雷着弾します!」
ズシュウゥゥーーン
ソナー士の言葉と同時に、艦橋に設置されているカメラから水柱が上がる映像が送られてきた。
「魚雷は命中したようですね。通信士、敵潜から電波は?」
「少々お待ち下さい・・・長官、敵潜から対潜ミサイル命中前に電波が発進されているのを確認しました」
通信士の言葉に、
「見つかりましたね・・・作戦を開始しましょう。輸送隊は第6、第7駆逐隊を連れて上陸地点に向かって下さい。各空母に打電、{飛行場攻撃隊、艦隊防空隊ハ直チニ発艦セヨ}」
刹那が命令を下し、海兵隊を乗せた輸送隊は駆逐隊を連れて上陸地点に向かい、空母からは艦隊防空隊である蒼翼12機の合計96機艦隊の上空を旋回し、敵飛行場攻撃隊である護衛の蒼翼36機と爆弾や対地ミサイルを搭載した雪加30機と蒼穹から白虹4機の合計330機の大編隊はマレー半島のイギリス空軍飛行場を目指し飛んで行った。
「長官、蒼玉所属の白虹4番機から入電!{敵ノ攻撃隊ヲ捕捉セリ、数ハ重爆90機、軽爆50機、戦闘機120機}!」
「合計260機ですか・・・防空隊だけで如何にかなれば良いですが・・・参謀長、艦隊に対空戦闘用意を下令して下さい」
「了解しました。艦隊に対空戦闘用意を下令します」
小夜はそう言うと艦隊電話を手に取り、対空戦闘用意を各戦隊に告げた。
『対空戦闘用意!繰り返す、対空戦闘用意!』
瑞樹の艦内でも対空戦闘を知らせる放送と警報が鳴り響き、艦内の水兵達は訓練通り水密扉を閉める。
「全防空隊エンゲージに入りました」
「状況を正面のモニターに出して下さい」
電測員の言葉に刹那がそう告げ、電測員が言われた通り防空隊の戦闘状況を映したレーダーの画像を正面のモニターに出した。
~艦隊防空隊(第114制空航空隊)~
『蒼玉所属、白虹4番機より各機へ。全防空隊は敵と後3分後に接触する。敵数は260機。全部隊武運を祈る』
白虹からの報告を聞いていた防空隊総指揮官であり、空母蒼鷹所属第114制空航空隊隊長の河嶋亮太1佐は、愛機の武器システムのチェックを始めた。
「全機聞いたな?後3分で敵攻撃隊とぶつかる。俺達の目的は、艦隊まで行く敵機を1機でも多く墜とす事だ!気合入れて行くぞ!」
『『『『『『了解!』』』』』』
河嶋の言葉で全機が増速し、敵編隊に接近して行った。近づくに連れて、HMDに敵を現す赤いマーカーが増えていく。
「防空隊、全機エンゲージ」
白虹の報告に続き、河嶋はミサイル発射ボタンの上に指を置いた。
「敵機ロックオン・・・FOX3!」
カシュン・・・バシュウゥゥーー
河嶋がミサイル発射のボタンに触れ、ウェポンベイから中距離対空ミサイルである24式中距離空対空誘導弾が全防空隊96機から発射された96本の矢が火を吹いて敵に向かっていく。
『敵機にミサイル着弾。96機の撃墜を確認』
ミサイルの結果を白虹が告げる。
「全機行くぞ!我に続け!」
河嶋の言葉で全機はさらに増速し、敵にドックファイトを挑む。
ガアァァァァァァ
グワアァーーン
毎分4,000~6,000発を誇るJM61が火を吹き、敵機であるスピットファイアやバッファローに次々と弾丸が機体に突き刺さり、大量の20mm弾を受けた機体は蜂の巣になり爆散する。
しかし、いくら高性能な機体であろうと200機以上の機体を葬り去るには無理があり、100機近くの敵機は蒼翼の攻撃を掻い潜り、独立連合艦隊へと迫る。
~戦艦瑞樹CIC~
「防空隊の攻撃を潜り抜けた敵機120機接近。後1分で個艦防空ミサイルの射程距離に入ります」
電測員がレーダースクリーンに映る敵機の姿を見ながら刹那に報告する。
「全戦艦、巡洋戦艦は25式個艦防空ミサイル発射用意。各艦発射弾数5つ。射程距離に入ったら、発射します」
「了解。25式個艦防空ミサイル発射用意始め。発射弾数5つ」
刹那の言葉を小夜が復唱し、ミサイルの発射態勢を直ぐに整えて行く。
「発射用意よし」
「敵機、射程距離に入りました!」
各員の言葉に刹那は頷き、
「全艦撃ち方始め!」
ガコン・・・シュバアァァーー
刹那の言葉で、16隻の戦艦、巡洋戦艦から5本ずつ合計80本の矢が放たれ、接近する敵機に向かう。
「全弾命中まで5・・・4・・・3・・・2・・・マークインターセプト」
敵を表す赤い光点と、ミサイルを表す青い光点が重なり、次々とスクリーン上から消える。
「個艦防空ミサイル80発全弾敵機に命中。残存目標40機依然接近中!」
「主砲発射用意。弾種、三式対空散弾」
「了解。主砲射撃用意!弾種、三式対空散弾」
刹那が更なる命令を下し全艦の主砲が回頭し、砲身には対空砲弾である三式対空散弾が装填される。
「主砲回頭、砲弾装填完了しました」
「全艦も準備完了しています」
琴音と小夜が刹那に報告する。
「主砲、撃ち方始め」
「撃てぇぇーー!」
刹那の一言で、一真が砲術員に命令を下し、他の艦の主砲も一斉に三式対空散弾を撃ち上げる。
ババババババババババババッ
主砲から放たれた三式対空散弾は近接信管のお陰で、敵機の近くで炸裂した。
瑞樹型戦艦の主砲が発射する50.8cm三式対空散弾は弾子を350発内蔵し、羅刹級巡洋戦艦の38.5cm三式対空散弾は弾子を200発内蔵されており、16隻が発射した144発の主砲弾から39,600発の弾子が敵機に襲い掛かった。
「航空機の反応なし・・・敵機全滅しました」
「了解。対空用具納め。しかし、引き続き対空、対潜警戒を厳とせよ」
電測員からの報告を受け、刹那はそう告げる。
「今頃、敵航空基地は爆撃を受けている頃ですね」
「そうですね。まず、第1段階は成功と言う事でしょうか」
小夜とその様に話しながら独立連合艦隊の本隊はそのまま航行を続けた。
~シンガポール要塞飛行場~
「敵機だー!対空戦闘用意!対空{グワアァーーン}グワッ!」
イギリス軍は、日本軍のマレー半島侵攻に備え、戦車等の車輛だけではなく本国やドイツからボフォース社製40mm4連装機関砲、8.8cmFlak36(アハトアハト)を筆頭に優秀な多数の対空砲を持ち込み、設置していたが、突如襲来した敵機に慌てふためき統制のとれた対空戦闘が出来ずにいた。
「撃て、撃て!1機でも敵機を堕とすんだ!」
「チクショウ!弾!弾が無い!早く持ってきてくれ!」
「速すぎる!これじゃ当たらない!」
イギリス兵達は音速で飛行する蒼翼や雪加に砲弾を当てようとするが人力で動かす砲や機関砲で当てるのは至難の業である。
ドオォーーン
グワアァーーン
「あぁ・・・飛行場が・・・」
「飛行場の滑走路とエプロンには第2次攻撃隊が・・・」
イギリス兵達の言う通り、飛行場のエプロンには独立連合艦隊を空襲する為、爆弾や魚雷を抱いたB-17やA-20が並んでいたが、対地ミサイルや500ポンド爆弾が投下され、それらの航空機や隊舎等が次々と破壊され、燃料や弾薬に誘爆し被害が拡大する。
「敵機が引き揚げるそ!」
誰かがそう言い、イギリス軍兵士達は弾薬庫を破壊された為、手持ちの弾薬を撃ち尽くすと、悠々と飛び去る蒼翼や雪加を見送るしか出来なかった。
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