第15話 フィリピン攻略戦2号作戦発動
皇紀2601年(1941年)12月12日
この日、刹那は小夜と共に銀嶺に乗り、連合艦隊の母港である呉に向かっていた。理由は、連合艦隊司令長官である山本五十六と次の作戦である2号作戦――フィリピン攻略戦の打ち合わせをする為である。
暫くすると、停泊地である柱島が見えて来た。そこには、アングルド・デッキ化された赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴を中心とする空母群、史実よりも巨大かつ強力になって史実では誕生しなかった4番艦を含む戦艦大和、武蔵、信濃、筑紫を筆頭とした戦艦群と巡洋艦、駆逐艦群が停泊していた。
~大日本帝国広島県呉市 連合艦隊地上司令部 長官室~
「失礼します山本さん」
そう言って、刹那と小夜は長官室の扉を開けると、中には、山本と、参謀長である宇垣が居た。
「おぉ、刹那君と小夜君か。待っていたよ。まぁ、まずはそこに掛けなさい」
山本は刹那と小夜にソファーを勧め、自分は机に備え付けの椅子に座った。
「今回訪れたのは2号作戦の打ち合わせで間違いないな?」
宇垣が刹那に尋ねると、
「はい。その通りです。陸軍と海軍海兵隊にも九三式戦車改が全部隊に配備されたので頃合いだと思います」
「九三式戦車改か、私もあの戦車は拝見したが凄いの一言に尽きる戦車だったな。刹那君のお母さんもいい仕事をしてくれる」
「ははははっ」
山本の言葉に刹那は苦笑する。
「話を戻すが、刹那君、敵の戦力は分かるかね?」
「はい。宇垣参謀長。小夜、資料を渡して」
「分かりました」
刹那に言われ、小夜が宇垣達に持って来た資料を手渡す。
「資料をご覧になって分かると思いますが、その資料には史実の戦力と現在の戦力を比較しています」
刹那が自分も資料を見ながら山本達に説明する。
「う~む・・・これを見ると、アメリカ軍が増強されているのが良く分かるな。フィリピン軍は史実通り12万、アメリカ陸軍が5万で海兵隊が2万か・・・」
山本が資料に目を通しながら言葉を漏らす。
「更級参謀長、戦車はどれ位居ると予想しているんだ?」
「執行部の予想だと、少なくて1,000両、多くて2000両と言う事です」
「此方の戦力は、陸軍は、機械化歩兵が4個師団、戦車師団が3個師団、海軍海兵隊が3個師団、独立連合艦隊海兵隊が3個連隊の合計12万1500人これに空母艦載機や航空隊等が加わるので戦力は我々が少し上回ると思います」
刹那の言葉に資料を見ていた山本達も頷く。
「刹那君、作戦としてはこの計画書に書いてある通りラモン湾とリンガエン湾からの上陸で間違いないのだな」
「はい、山本さん。リンガエン湾からは我々独立連合艦隊海兵隊と陸軍機械化歩兵2個師団と1個戦車師団が上陸します。ラモン湾からは山本さん率いる連合艦隊に護衛された2個機械化歩兵師団、2個戦車師団、海兵隊3個師団が上陸します」
刹那の答えに、
「ラモン湾方面の部隊の方が多いな・・・リンガエン湾方面はそれだけの戦力で大丈夫?」
宇垣が不安そうな声を上げると、
「安心して下さい参謀長。リンガエン湾方面には我々の主力部隊が全力で支援しますから大丈夫です」
「そうか」
刹那の言葉に宇垣も頷く。
「山本さん、ラモン湾方面部隊の指揮官は本間雅晴中将ですか?」
「あぁ、そうだ。そっちの指揮官は加藤詩織中将だったか?」
「はい。その通りです。私が最も信頼する指揮官ですよ」
山本の問いに刹那は答える。
「それでは、今日はこの位にしよう。如月長官武運を」
「はい。山本長官も」
そう言って2人は固く握手をし、刹那達は司令部を後にすると、再び銀嶺に乗り自分達の母港である横須賀に戻った。
皇紀2601年(1941年)12月13日
~横須賀特務軍港 独立連合艦隊旗艦瑞樹CIC~
「長官、全艦の出港準備整いました」
小夜の言葉に頷き、
「全艦出港!」
刹那がそう告げ、独立連合艦隊の野戦工廠艦と自走浮きドックを除く全艦が横須賀特務軍港を後にし、待機地点である台湾へ向かった。
~広島柱島停泊地 連合艦隊旗艦戦艦大和艦橋~
「長官、独立連合艦隊より入電!{ワレ、横須賀ヲ出港。予定通リ待機場所台湾ヘ向カウ}以上です」
「そうか。独立連合艦隊は動き始めたか・・・参謀長、準備は出来ているかね?」
「はっ!全艦準備は完了し、後は長官の命令を受けるだけであります!」
宇垣の言葉に山本は頷くと、
「そうか。ならば我々も出撃するとしよう。全艦出港!」
山本の言葉で、連合艦隊も旗艦である大和を筆頭に柱島を出港し、待機場所である沖縄に向かった。
皇紀2601年(1941年)12月16日
~台湾 第501海軍航空隊飛行場~
独立連合艦隊と連合艦隊がそれぞれの待機地点で待機している時、朝早くから台湾に駐屯している第501海軍航空隊は慌ただしく出撃の準備を行っていた。
「出撃準備は上々か?」
出撃準備をしている機体を見ながら隣にいる人物に尋ねたのはこの第501海軍航空隊司令である塚原二三四中将である。
「はい、司令。順調に準備は整っています。予定通り出撃できます」
塚原の言葉に答えたのは参謀長である大西瀧治郎少将だ。
「今回のこの爆撃作戦には、試験機も出撃するんだよな。確か・・・連山と言ったか?」
「はい、司令。あちらが17試陸上攻撃機連山です。本基地には20機が実地試験と言う事で派遣されています」
「ほう、4発機か・・・爆弾搭載量も一式陸攻(史実と性能は少し違う)や九六式陸攻より多く搭載出来ると言われたから爆撃能力も期待できるな」
塚原は連山を見ながら大西と話していた。
「司令訓示!」
出撃前、出撃するパイロット達が全員整列し、その前に塚原は立った。
「諸君。遂に、我々501空の初陣の時が来た。そんなに長く話すつもりは無いがこれだけは言っておく・・・絶対に命を無駄にするな。機体は直ぐに生産できるが、君達のような優秀なパイロットは一朝一夕で育てる事は出来ない。だから、君達は最後まで生きる事を考えて欲しい。以上だ!」
「全員出撃に掛かれ!」
参謀長である大西の言葉で、整列していたパイロット達は愛機に乗り込んで行く。
「帽振れー!」
基地整備員や待機パイロット達が出撃するパイロット達に向けて帽子を振る。
基地を飛び立ってから30分後、フィリピンクラーク飛行場に向けて零戦120機、一式陸攻90機、九六式陸攻80機、連山20機が飛び立った。
フィリピン上空
~クラーク飛行場攻撃隊護衛隊隊長機~
「そろそろクラーク飛行場上空だ!護衛隊はしっかりと見張れ!」
『『『『『了解』』』』』
零戦に乗る護衛隊指揮官は、無線でその様に告げると自分達でも辺りを警戒していた。
『敵機だ!2時の方向から敵機!数は・・・約60!』
爆撃隊を護衛している零戦120機のうち50機が敵戦闘機に向かって飛んで行く。敵よりも10機少ないので、不安があったが、零戦の機体の性能とパイロットの技量で数が多い敵機を次々と撃墜していく。
空戦空域を抜け、クラーク基地がやっと見えたと思ったら、
『正面からも敵機!数は、40機!』
再び戦闘を飛行している零戦から報告が入った。
「護衛隊行くぞ!」
指揮官が叫び、残った70機の零戦が敵機に襲い掛かる。
「逃さねえぞ・・・」
指揮官は、前で何とか振り切ろうとしている敵機に狙いを着けていた。
「もうちょい・・・もうちょい・・・此処だ!」
ドドドドドドドドドドドッ
ダダダダダダダダダダダッ
照準器の中心に敵機が入った瞬間、隊長は引き金を引き、20mm弾と12.7mm弾が敵機に突き刺さる。
ガン ガン ガン ガン・・・グワアァーーン
威力を上げた20mm弾と12.7mm弾を大量に喰らった敵機は空中で爆発し、残骸が火達磨になって地上に落ちて行く。
敵機を落とし、周りの状況を確認すると、味方が有利に戦闘を行い、火達磨になって墜ちて行く機は全てアメリカ機だった。
『隊長、攻撃隊も戻ってきました。爆撃は無事成功したようです』
相棒を組んでいるパイロットからの報告に、
「そうか。なら、さっさと帰還しよう」
そう言い、護衛隊も攻撃隊と合流し、台湾に戻って行った。
こうすけ「へぇ~そうなんだ~」
刹那「如何したんですか作者さん?」
こうすけ「今知ったんだけど、最初にアングルド・デッキを考案したのはフランスなんだって」
小夜「そうなの?アメリカだと思ってた」
刹那「私もです」
こうすけ「小説書き始めてから色々調べるから勉強になるね」
刹那「そうですね。それを、学校の勉強にも生かしてくれたら良いんですが・・・」
こうすけ「ぐっ!そ、それはそれ。これはこれ」
刹那「期末も近いんですから頑張らないと」
こうすけ「分かりましたよ・・・」
刹那「ご意見・ご感想お待ちしています」




