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第11話 ノモンハン事件 後編

皇紀2659年(1939年)8月20日


~ハルハ川東岸 日本軍防衛陣地~


「敵機が来た!敵弾来るぞー!急いで待避壕に避難しろー!」


1人の兵士の叫び声で防衛陣地にいた全員が慌てて待避壕に避難する。


ドドオォーーン ドオォーーン


待避壕の上から爆弾や砲弾が着弾する重々しい音が響いて来る。


「始まったわね・・・8月攻勢が・・・」


待避壕に入った詩織はそう呟いた。


「そうですね。あちらさんも漸く戦力が集まったんでしょう」


詩織の呟きに副官である橋島昂治(はしじまこうじ)少将が答える。


「橋島、全榴弾砲は予定通り待避壕に入れてある?」


「はい。囮陣地を用意して、全榴弾砲を待避壕に避難させています。この砲爆撃が終了と同時に、次は此方が倍にして撃ち返してやりますよ」


昂治の言葉に頷くと、


「航空隊にも連絡を入れて下さい。目標は、敵の集結地点及び、物資集積所」


「了解しました。直ぐに連絡しに行きます」


詩織から命令を受けた昂治は、待避壕を通って通信室に向かった。





~日本軍 ハイラル飛行場~


「全員聞け!前線の防衛陣地から、敵の大規模攻勢が始まったと連絡を受けた!」


基地司令の言葉にパイロット全員がざわめき始めた。


「静粛に!これより、我々航空隊は、前線部隊の要請を受け、敵部隊集結地点及び、敵物資集積所を爆撃する。敵集結地点は、九七式重爆撃機が行い、護衛は96式艦戦20機と97式戦闘機50機が引き受ける。物資集積所には96式陸攻が行い、護衛は12試艦戦12機、96式艦戦30機が引き受ける。作戦開始は本日の2030(フタマルサンマル)。以上、解散!」


基地司令がそう告げ解散となったが、各飛行隊はブリーフィングを行い始めた。




8月20日 20:30


「それでは、作戦の成功を祈る。全員掛かれー!」


基地司令がそう告げ、各員が自分の愛機に向かって走り出した。


「帽振れー!」


再び基地司令の言葉で、整備員や待機しているパイロット達が飛び立っていく仲間に向かって帽子を振る。


こうして、敵集結地点爆撃隊97式重爆50機、96式艦戦20機、97式戦闘機50機が向かい、物資集積所爆撃隊96式陸攻45機、12試艦戦12機、96式艦戦30機が飛び立った。





~物資集積所爆撃隊 隊長機~


「そろそろ目標地点か?」


爆撃隊を率いる隊長である河野錬治(かわのとうじ)少佐は、後ろに座っている航空士に尋ねた。


「はい。予定通り後、5分後には敵物資集積所に到着します」


「よし分かった。爆撃手、爆撃用意。機銃手は警戒を怠るなよ」


「「「「了解!」」」」


率いている各機にも連絡を入れ、物資集積所に順調に進んでいた。


「爆撃目標見えました!」


「よし、進路そのまま」


「ヨーソロ」


「爆撃手、準備は?」


河野が尋ねると、


「準備完了です。進路、高度共にそのまま・・・爆弾投下まで50秒・・・」


爆撃手が爆弾投下までのカウントを始めた。


「爆弾投下!全弾投下確認!」


96式陸攻には、250kg集束爆弾が全機8発ずつ積まれており、1発に弾子120発が内蔵されており、45機の43,200発の弾子が物資集積所に降り注いだ。


「目標に命中!作戦は概ね成功と思われる!」


爆撃手の報告に、


「よし、全機帰還する」


河野がそう告げ、96式陸攻とその護衛部隊は基地へと帰路に付いた。ほぼ同時刻、敵軍集結地点に爆撃を行った97式重爆部隊も無事爆撃に成功した。翌日には、再び夜間爆撃により、シベリア鉄道を破壊し、ソ連軍の兵站はボロボロになりつつあった。





~ハルハ川東岸 日本軍防衛陣地戦闘指揮所~


「敵軍接近!」


1人の兵士がソ連軍の接近を伝える。


「やはり、出てきましたか・・・大方、弾薬が少なくなったから数で押すつもりでしょうね」


指揮所で詩織は双眼鏡を覗きながらそう呟いた。


「橋島、全榴弾砲の準備は?」


「全て整っています」


「そうですか。砲兵隊に攻撃開始命令!陸海軍砲兵隊は敵侵攻軍に対して突撃破砕砲撃を、独立連合艦隊海兵隊は対砲兵砲撃を行いなさい!」


無線機にそう言うと、偽装陣地で息を潜めていた砲兵隊の榴弾砲が一斉に火を吹いた。





~ソ連軍砲兵陣地~


「おい、味方が進撃を開始したぞ。機甲部隊は大丈夫かな・・・」


双眼鏡を覗いていた1人の砲兵が同僚に話しかける。


「まぁ、あれだけ砲撃をしたんだ。粗方敵は吹き飛んでるよ」


話し掛けられた同僚は榴弾砲に身体を預けて煙草を吹かしていた。


この同僚の言う通り、ソ連軍は機甲部隊が進撃を開始する前にも、有りっ丈の砲弾を日本軍陣地に撃ち込んでいた。


「それもそうだな。おい、俺にも煙草一本くれ」


双眼鏡を覗いていた兵士も煙草を吹かそうとした時、


ヒュルルルル・・・


「!?この音は・・・ま、まさか!」


ドドオォーーン ドドオォーーン グワアァーーン グワアァーーン


大量の砲弾が砲兵陣地に降り注いだ。


「Зверь!な、何でだよ!?あれだけの砲弾撃ち込んだのに何で敵の砲が生き残っているんだよ!」


「俺が知るか!死にたくないなら走れ!」


先程話していた砲兵の2人も他の砲兵と一緒に走って、榴弾砲の配置されている所から走って逃げていた。


グワアァーーン グワアァーーン グシャアァーーン


砲兵が逃げてる間も、敵の榴弾は的確に榴弾砲を潰していた。





~日本軍防衛陣地~


「敵歩兵部隊接近!」


歩兵の声に、全員が92式小銃や93式機関銃(MINIMI機関銃)を構える。


「機甲部隊は榴弾砲が殆ど潰した様だな・・・いいなお前等、出来るだけ引き付けてから撃つんだぞ」


隊長の言葉に全隊員が頷く。


「慌てるな・・・まだ撃つなぁ・・・」


「「「「「ウラー!」」」」」


ソ連軍が叫び声を上げながら防衛陣地に突撃して来る。


「撃てぇー!」


隊長が叫び、並べられた銃口が一斉に火を吹き、大量の弾丸と迫撃砲弾がソ連軍に降り注いだ。


「隙間を開けるな!撃ち続けろ!」


隊長の言葉通りに、小銃を持つ兵が弾倉を入れ替える間は機関銃が撃ちまくり、弾幕を切らす事は無い。銃を撃ちまくる兵士達は、日露戦役の日本第三軍を迎え撃つロシア兵の様な気持ちだった。


隙のない射撃を受け続けるソ連兵は、頼みの綱である砲兵隊の陣地を見たが、其処には、先程まであった砲兵陣地では無く、黒煙を上げて全てが吹き飛ばされている砲兵陣地の姿があった。


この光景を見た瞬間、ソ連軍指揮官は撤退を命令し、兵士達は逃げるようにして防衛陣地から撤退した。





~ソ連軍基地本部~


「あれだけの兵力をぶつけたのに、防衛陣地を取れなかったのか!?」


ジューコフは、報告書に目を通しながら怒号を上げた。


「ぜ、前線の部隊も補給の弾薬も敵の空爆で届かず、弾薬が補給できないでいます。これ以上、攻撃を続行するのは不可能かと・・・」


怒号を上げるジューコフに怯えながら副官はそう進言する。


「もういい、下がれ!」


ジューコフは副官に一言そう言うと、副官を部屋から出て行かせ、一人で考え込んでいた。


「これ以上の戦力投入をしても無駄に被害を増やすだけだな・・・スターリン書記長が許すかどうかだが、進言するしかないか・・・」


ジューコフはそう言うと、翌日、輸送機に乗り込みモスクワへ向かった。




それから数カ月後、スターリンはジューコフから手渡された被害の大きさに驚き、停戦協定を結ぶことを決めた。


日本軍にその事を打診し、国境画定交渉が行われた。交渉は日本・満州国側が有利に進めたが、国力や戦力の事を考えて、史実と同じ国境線に設定した代わりに資源がある北樺太の譲渡を求めた。ソ連側は最初は渋ったが、スターリンが譲渡を許可し、国境画定交渉は終了した。


その後、日本軍と満州国軍は虎頭要塞と海拉爾要塞の拡張と強化を始め、起こるであろうソ連軍の満州侵攻に備える準備を開始した。


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