エピソード1 ふわふわ店主と小さなお助け人
都会の喧騒から一本入った路地裏。そこには、時代に取り残されたような静寂を纏った喫茶店「樹」がある。
カランカラン、と控えめなドアベルが鳴った。
「い、いらっしゃいませ……あ、あの、今はその……」
カウンターの奥で、淡いブルーの髪を揺らしながらおどおどとしているのが、この店の店主・シャロンだ。
彼女の前には、いかにも胡散臭いスーツを着た男が立っていた。
「店主さん、この『幸運を呼ぶ魔法のティーカップ』、今なら特別にセットでたったの十万円ですよ? これを置けば、この閑古鳥が鳴いている店も明日には大行列間違いなしです!」
「えぇっ、行列ですか……? それは凄いですけど、十万円はちょっと……でも、お店が良くなるなら……」
シャロンは困ったように眉を下げ、今にも財布を取り出しそうな様子で優柔不断に揺れている。
彼女の「頼まれると断れない、騙されやすい」という性格が、完全に裏目に出ていた。
その時。
「――ちょっと、店主さん! 何ボサッとしてるの!」
鋭くも澄んだ声が店内に響いた。
店の隅のテーブル席で、一杯の紅茶を大切そうに飲んでいた少女――翔子が立ち上がった。
艶やかな黒髪をなびかせ、制服のスカートを揺らしながら歩み寄る彼女は、身長148cmと非常に小柄だ。だが、その存在感は数値以上のものがあった。
「あんた、そのプラスチックに毛が生えたみたいなカップが十万? 詐欺もいい加減にしなさいよ。今すぐ出ていかないなら、お巡りさん呼んであげるけど?」
「な、なんだ子供か……チッ、今日はこれくらいにしておいてやる!」
翔子の毅然とした態度と、今にもスマホを取り出そうとする動きに怯み、男は逃げるように店を飛び出していった。
静寂が戻った店内。シャロンはほっと胸をなで下ろし、深々とお辞儀をした。
「あ、ありがとうございました……助かりました。ええと、よく来てくれてる…翔子ちゃん、だったよね?」
「そうだよ。もう、シャロンさんってば……私がいないと、この店一週間も持たないんじゃない?」
翔子は呆れたように溜息をつき、カウンター越しにシャロンを見上げた。21歳のシャロンよりも背が低い17歳の翔子だが、その眼差しはまるで妹を心配する姉のようだ。
「……ねえ、シャロンさん。ここでアルバイト募集してたよね?」
「えっ? あ、うん。一人じゃ手が回らなくなってきちゃって。でも、なかなか決まらなくて……」
シャロンが困り顔で笑うと、翔子はビシッと指を立てて宣言した。
「決まり。今日から私がここで働いてあげる。シャロンさんがこれ以上変な人に騙されないように、私がしっかり見張っててあげるから!」
「ええっ?!私ってそんなに騙されやすいのかな…」
「あはは…やっぱり自覚ないんですね…」
「え?う〜ん…」
「それより、先ずはお店の看板メニュー、至高のフワフワパンケーキを復活させましょう!」
シャロンが一人で回していた時は「手間がかかりすぎる」とメニューから外していた幻のメニュー…
「私が注文を取って片付けをするから、シャロンさんは焼きに専念して下さい!」
「わ、分かったわ、やってみるね!」
その後、翔子は学校帰りに制服姿で(!)チラシを配ったり、自身のSNSにパンケーキの動画をアップしたことで、少しずつ若い客層や「女子高生店員がいるらしい」という噂を聞きつけた客が増え始めました。
こうして、ふわふわした店主と、しっかり者の女子高生店員。
凸凹な二人の「樹」での日常が、幕を開けたのでした。
喫茶店「樹」の看板メニュー:至高のフワフワパンケーキ
店主シャロンが試行錯誤の末にたどり着いた自慢の一品です。
メレンゲを贅沢に使い、注文を受けてから低温でじっくり焼き上げます。口の中で溶けるような食感が特徴。
あとがきにかえて…
登場人物の紹介
シャロン
年齢: 21歳
職業: 喫茶店「樹」の店主
身長: 155cm
性格: 温厚で優しい。頼まれると断れないお人好しな一面があり、優柔不断で少し騙されやすいところがある。
外見的特徴: 淡いブルーのロングヘアに、特徴的な黒い「X型」の髪留めを付けています。お店では黒と白のメイドスタイルの制服を着用しています。
翔子
年齢: 17歳(現役女子高生)
身長: 148cm
外見的特徴: 黒髪のロングヘア。制服姿がよく似合う、小柄で可憐な外見。
役割: 喫茶店「樹」のアルバイト店員。シャロンをサポートするしっかり者。




