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Fascinate  作者: 依田
プロローグ
1/10

惹かれた日

初めまして、初作品ですので大目に見てください。

キーンコーンカーンコーン。


「はい、ということで説明はここまでにして、自己紹介でもしてみましょうか。えっと……まずは私からですね。青柳香苗(あおやなぎさなえ)と言います。新入生の担任を任されるのは初めてなので、よろしくお願いします」


そう言いながら、先生は黒板に名前を書き、教室を一度見回してから手を叩いた。


「じゃあ、申し訳ないんだけど、出席番号1番の天羽くんからでいいかな?」


俺からかよ。

内心でそう思いながらも返事をして、立ち上がる。


「大三中から来ました、天羽桔梗あもう ききょうです。中学ではバスケをしていました。高校でも続けようと思ってます。以上です」


そんな当たり障りのないことを言って、席に座る。


そのあとも自己紹介は続いた。出身中学、趣味、入りたい部活。似たような内容が、ただ流れていく。正直、あまり頭に入ってこない。


(長いな……)


ぼんやりと教室を見渡したとき、ふと気づいた。


一つだけ、空いている席がある。


窓側の後ろ。机も椅子もちゃんとあるのに、そこだけ人がいない。


(初日から休みか?)


そんなことを考えているうちに、自己紹介は最後まで進んでいた。


「はい、全員終わったかな。今日は一人、お休みなので、その子はまた今度にしましょう」


やっぱり、か。


入学式から休む。そんな人の空席が、やけに気になった。



自己紹介が終わり、教室が少しざわつき始めたころ。


「よっ、お疲れ!」


後ろから肩を叩かれて振り返ると、そこには中学からの友人──佐藤雅さとう みやびが立っていた。


「相変わらず、つまんねえ自己紹介だったな」


「うるせえ。お前こそ適当だっただろ?」


「まあな。で、放課後どうする?」


「バスケ部の見学だろ? 約束してたし」


「だよなー。見学だけでも行こうぜ」


そのあと簡単な連絡があり、それが終わるとクラスは一気に動き出した。


「おーい、桔梗。体育館いくぞ」


雅はそう言って教室を出ていく。俺もそれについて廊下を歩きながら、ふと中学の時のことを思い出す。


部活も、友達も、勉強も。少し努力すれば、たいていのことはそれなりにできた。

高校生活も、きっとそんな感じだろう。適当にやって、適当に頑張ればいい。



バスケ部の見学は人が多かった。活気はあるけど、胸が高鳴るほどでもない。


「まあ、悪くないな」


それだけだ。


雅が誰かと話し始めたので、俺は一人で帰ることにした。



帰り道、道沿いの公園で桜が咲いているのが目に入った。


満開だった。風が吹くたび、花びらが舞っている。


気づけば、足が向いていた。


公園の中は静かで、遊具も使われていない。その桜の木の下に、一人の女子生徒が立っていた。


うちの高校の制服。靴の色も同じだ。


(……同じ学年か?)


あんな子がいれば、入学式で覚えていないはずがない。


銀色の長い髪。吸い込まれるような青い瞳。


彼女は、少し悲しそうに桜を見つめていた。


すべてを見透かすような青い瞳が、ゆっくりと俺を捉える。


そして、ほんの少しだけ──目が合った気がした。

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