表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封じの花は目覚めに咲く  作者: Spring
第一章 封じられし、光
6/10

第六話

 食事が終わり、香也とともに食事の後片付けを行おうとしたら、二人に今日は疲れているはずだから、と私が過ごすことになる部屋へと連れていかれた。


 その部屋には、鏡台が一つ置かれているだけの部屋だが、こんなところで私が過ごしていいものなのか悩む。とりあえずは明日までのこの生活。明日からはまたいつもの生活に戻るだろう。


「少しいいかな」


 部屋の外で声がした。障子をあけて訪問者を見ると、桐生がお盆を片手に立っていた。


 「今日は月がきれいだからね。少し一緒に話さないかい?」


 部屋を出た私は、縁側に腰かけた桐生の横、少し離れたところに腰かけた。

 少しの間、沈黙が場を制している。風の音、虫の声、木々のざわめき。こんなに心に余裕をもって音に耳を傾けることができたのは、初めてかもしれない。


 「今日の話の続きをしようか。」


 今日の話の続きというと、神通のことだろうか。私はこの世界のことをあまり知らないらしい。いつも一日一日を過ごすことで精いっぱいだったから。


 「そうだな。まずは、神通は政府によって管理されているということは知っているかい?」


 この質問に対して私は首を横に振る。

 その反応を見て、少し考えた後、また口を開いた。


 「神通庁というところがあってね。この国の人がどのような神通を持っているのか把握し、国に反旗を翻すような不安要素を監視しているんだ。」


 桐生は、その後も話を続ける。


 神通庁は国民の神通の内容を知っているだけでなく、その神通が危険な場合には封印したり、誰がいつ覚醒したかの記録でさえも持っているという。でもこの国の人は、そんな申請をしなくてはいけないという話は聞いたことがない。


 それもそうだと。一人の神通により、覚醒しそうな神通、危険な神通、覚醒した神通が分かるという。最も、危険と判断するのは国家の上層部であるが。そして、その危険な神通を封印できるのもまた一人。この国の神通はこの二人の神通により管理されているらしい。


 神通がすべてで、家柄や職種にも関係することは違いはないが、あまりの神通主義を危惧した上層部は、現在都市部を中心に、神通差別をなくそうと活動しているらしい。


 ここは田舎なのであまりその考えが来ていないみたいだ。

 神通差別をしているものにはそれなりの罰があるということ、たとえ神通を持っていなくても不当に扱われることはあってはならないことを教えてもらった。


 「じ、じゃあ、私が今まで受けてきた行為って…。」

 「そうだよ。犯罪だ。」

 

 今まで、無能だからって仕方ないと思っていたんだ。なのに、その仕方ないと思っていたこともそんなことなかったなんて。これから私は、どう、過ごしていけばいいんだろう。


 「そして、ここからが本題だ。」


 あまりの衝撃に固まっていると、桐生は私の方に体を向けて座りなおした。


 「すまない。もう一度、見せてもらってもいいだろうか。」

 

 そう言って私が頑なに合わせていなかった目を合わせようと顔を固定される。


 「え、あ、あの…。」


 やっぱりきれいな金色の瞳。その金色がさらに輝いたと思ったら。すっと体を離された。


 「間違いないみたいだ。」

 「この前私が言ったことを覚えているかい?」


この前桐生が言ったことというと。


『封印されているね。神通』


このことだろうか。


 桐生はそのことだとでもいうように頷き、どう話そうかと悩んでいるようであった。


 「そうだな。まずはね、私の神通なんだが、簡単に言うと、人と目を合わせることでその人がどんな神通を持つのかを見ることができるものなんだ。」


 だから、この前も、今も目を合わせられたのね。あの不思議な目に見られるとそわそわして落ち着かなくなってしまう。金色のきれいな瞳。またもう一度見たいと思うのはさすがに、わがままだろうか。


 「だから、私の神通を知っている人は私と目を合わせたがらないんだよ。」


 その一言にハッとして彼の目を見てしまう。彼は困ったように笑いながらも、あきらめにも似た表情で。


 「無理して目を見なくても大丈夫だよ。」


 君の状況は分かっているから。私の過ごしていた屋敷で無能がどのような立場だったか、きっと調べがついているのだろう。でも…。


 「目を見て話すのは、あまり、慣れないんですけど。目を見て話してもいいんでしょうか…?」


 私が発した言葉に驚いたような反応を見せた桐生は、もちろん。君が嫌でさえなければ。と私のことを第一に考えてくれる。


 そんな状況がくすぐったくもうれしくもあった。


 「君の神通は何かしらの理由があって、た多分神通庁に封印されたんだと思う。君は神通を使いたいか?」


 今までないことが当たり前だったから、使いたいかどうか聞かれてもあまりピンとは来ない。桐生の話を聞く限り、世間は無能でも生きていける世の中になってきているらしいし。


 「わ、かりません。」

 「神通が封印されているっていうこともあまり信じられないんです。」


 でも、もし、あの屋敷から出ることができるなら。神通を持つことであの屋敷から出ることができるなら、持ってみたいと思う。


 「私が見るに、その封印は間もなく解けるだろう。」

 「その時までに、神通を使いたいか、封印されたままでいいのか、しっかり考えておく必要があるよ。」


それだけ言って、もう遅いから今日のところはお休みと、私を部屋へ入れて、戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ