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現代文学集

平凡な大学生二人の善行(なろうラジオ大賞6 応募用短編テーマ:ルームメイト、お弁当、寝言)

 身に覚えのない荷物にタクムは戸惑っていた。きっとルームメイトが注文したのだろうと急いで呼びつける。


「おいセイヤ! いったいこれはなに!?」


「騒がしいなあ、まだ眠いよ」


「なんでこんな高級弁当を注文したわけ?」


 タクムが指さしたケースには『高級宅配弁当専門』と金の縁取り文字が躍っている。


「俺は弁当なんて知らねえぞ?」


 ケースの中には弁当が十食、そして二つ積んであるということは全部で二十食だ。写真入りの説明には『海苔から弁当』宮崎県産地鶏使用、『ハンバーグ弁当』黒毛和牛100%などと書いてある。


「こりゃ確かに高級だ。随分と景気がいいみたいだけどまさか闇バイト!?」


「バカ言うなよ、こんなの全然覚えが無いぜ。でもタクムでもないと?」


「そういやセイヤが酔って帰って来た時、寝言で弁当がなんだかって言ってたな……」


「おいおい、俺が酔っぱらって注文したって? アリエナイ!」


 二人は顔を見あわせ謎解きをしようとするが、平凡な大学生では迷宮入り間違いないだろう。だがここでタクムが完璧な答えを出した。


「なぁ、これって誤配達だろ? ってことは食べちゃっても……」


「善意の第三者!? だけどこんな高級弁当拝む機会は二度とないかも…… 俺は伊勢海老天重が気になってんだ」


「なら僕は和牛ステーキ御膳かな。念のためだけど高級弁当も普通のレンジで温めていいよな?」


 タクムは動揺を隠せずおかしなことを言い、セイヤも手が震えている。そんな二人が弁当を手にした瞬間――


『ピンポピンポッピンポーン』


 インターホンを激しく鳴らす音がした。どうやら宅配業者が戻って来たらしい。


『申し訳ございません! 先ほど誤って配達した弁当を引き取らせていただきたいのですが……』


「もし開けてたら? 食べちゃったりなんてしてたら……」


『その時はべんsy、いや、仕方ないので残っている分だけ引き上げさせていただきたく――』



 数分後、二人はまだ高級弁当が回収された玄関にいた。


「年の瀬にこんな馬鹿なことあるかよ……」


「でも食べてたらあの人が弁償だよ? なら今年はいい事をして終えられて良かったじゃない。でもお腹減ったね」


「んじゃ、年越し用のカップそばでも食うか……」


「うんうん、高級カップそばをね!」


 二人は明らかにホッとしたいい笑顔だった。

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