第五話 兄の願い
「で、お願いとはなんですか?」
僕は男の人に向かって言う。
「妹が帰ってこないんです。
依頼をするために出たのですが中々帰ってこなくて。
街の近くの場所なんですが、俺はそこまで強くないから貴方を見て貴方ならきっとなんとかしてくれるだろうって・・・・他人事のようですけどお願いします」
男は頭を下げる。
「・・・分かりました、ですけど僕の力をあまり話さないでもらいたいです。
この強さを他の人達には知ってほしくないので」
僕はそう答える。
「分かりました」
男は言う。
そして男に場所の事を話した。
すると案外近場なんだなと思った。
「恵梨香さん、行きますよ」
僕は壁を直した恵梨香さんに声をかける。
「これは貴方一人でやってもらうわ。
貴方が帰る頃にいいものを買っておくから」
恵梨香さんはそう答える。
「わ、分かりました。
酒癖が悪い人には注意してくださいね」
僕はそう答え外に出て目的の場所まで向かった。
その頃
「くっ!糸が絡んで」
?!
「きゃあー!!!」
一人の女冒険者が襲われていた。
「うぐっ、もう・・・無理・・・逃げ道も無いし・・・ポーションも尽きて・・・兄さん」
キシャー!!!
誰か・・・助け・・・。
「ファイア!!!」
?!
ギャシャ!
突然蜘蛛の魔物が苦しむ。
火魔法?
女の人は振り向く。
「あ、君が酒場のお兄さんの妹だね。
大丈夫?」
僕は妹さんに声をかける。
「あ、貴方は誰?どうしてお兄さんの事を?」
妹さんが聞いてきた。
「お兄さんにお願いされたんだ、助けてきてくれだっけ?
あ~なんとかしてくれるだった。
まぁ、君を助けに来たってことには変わりないから」
僕はそう答え
手を構え、
蜘蛛は火魔法に弱いなら、少し火力を上げよう。
「メガファイア!!!」
?!
ギシャアアアー!!!
蜘蛛の魔物は悶え苦しみながら灰となる。
「・・・・」
「うん?どうしたんだ?」
僕は妹さんに聞く。
「あの、私が戦った魔物。
ランク帯が上の魔物なんですけどそれに今のメガファイア・・・・もしかして貴方」
「いやいや!僕は底辺冒険者だよ・・・あ、冒険者じゃないわ。
明日、冒険者登録しようって思っていたんだ。
今の強さはたまたまだから」
僕は妹さんに向かって言う。
「そ、そうよね。
まだ冒険者じゃない人が魔物をあっさり倒せるわけ無いもんね。
偶然か〜・・・・・って言うとでも思いました?」
妹さんがこちらに近づいてきた。
「え、何かな?偶然だって、ねっ、冒険者でも無いやつがそんなヤバそうな魔物倒せるわけないでしょ?
だから本当にたまたまだから」
僕は妹さんに向かって言う。
じ~。
妹さんが怪しそうに僕を見つめる。
いや〜女の人の勘って怖いね。
「まぁでも貴方の言う通り冒険者じゃない人が倒せるわけ無いし偶然って思っておくわ。
でも、私は貴方が・・・いや何でも無いわ。
帰りましょう」
妹さんに言われ僕達は街へと帰るのだった。
ヤバい、バレなかった〜。
セーフ・・・セーフだよね?
街へと着くと入口付近で恵梨香さんと妹の兄が待っていた。
「ユキ!無事だったか!」
兄が妹に抱きつく。
「兄さん心配し過ぎ、私は全然平気よ。
・・・・まぁ、後で話したいことあるし」
妹はそう答える。
「・・・・」
僕は妹さんの方を見る。
「嘘よ、何でも無いわ。
・・・・後、心配してくれて・・・その・・・・・・ありがと・・お兄ちゃん」
妹は少し頬を赤くしている。
任務完了ね、洋平くん。
まぁ、このくらいなら朝飯前ですよ。
僕は小さな声で言う。