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第52話、対決スタート

挿絵(By みてみん)


「お前、本当にINしなく良いの?」


 ヤナギが聞いてくる。


「うん、僕は今日、リスナーで見てる。

 リスナーじゃないと、

 ハート投げられないし」


「黒いの、投げろよ」


「そこ、僕の自由だから」


「あと、お前の登録はしておいたから、

 何かあったら、お前も入れるからな」


 VS歌みたステージは、

 通常リスナーはVR体で入れない。

 演者として事前登録が必要だ。


 なにかあったら?

 何もない事を願おう。


「うん、わかった。頑張ってね、ヤナギ」


「誰に言ってる。俺は負けない」


「そう。じゃ、向こうで見てるから」


 僕はそう言って、自分の部屋に入る。

 リビングでVRに入るヤナギを

 邪魔しないように、

 僕はこっちでヘッドホンをつけて、

 配信画面を見る。


 さぁ、もうすぐ始まる。


 白時雨ちゃんと黒時雨ちゃんの

 VS歌みたステージが!


 僕はディスプレイのカウントダウンを

 見ながら、

 あぁ、どっち応援するか決めてないや、

 と、思った。



  ◆◇◆◇



 丸いステージの真ん中に、

 白時雨ちゃんと黒時雨ちゃんの

 2人が並んで立っていた。


「みんなー! 今日は来てくれて

 ありがとーーーー!」


 白時雨ちゃんが先に声を出す。


「みんなー! 今日はあなたに会えて

 うれしいーーーーー!」


 黒時雨ちゃんも手をふる。


 丸いステージの外側に

 沢山のリスナーウィンドウが飛んでいた

 せいみなちゃんコラボのときより、

 多いんじゃないだろうか。

 コメントも、いっぱい出てくる。


『わーい、始まったぁあああああああ!』

『待ってた! 時雨ちゃん! 応援!』

『どっちも大好きー!』

『こっち向いてー!』


「今日はー、VS歌みたコラボ!

 みんなのハートの数で勝敗が決まるよ」


「順番に1局ずつ、交互に!

 1人3曲歌うよ!」


 全くおんなじ声で、同じ喋り方だから

 区別がつかない。


「時雨がピンクのハートだからね!

 みんな! ピンクのハート投げてね☆」

 白時雨ちゃんが手を振りながら言う。


「あたしが黒いハートだからね!

 あなたの気持ち、受け取るからね★」

 黒時雨ちゃんが指差しながら言う。


 コメントが湧く。

 リスナーウィンドウから、ポンポンと

 吹き出しが出ていく。


『初見だよー』

『初めて見たけど、可愛いー』

『やべぇw どっち推そうw』

『黒い子名前なにー?』


 大々的な宣伝の効果で、

 新規ユーザーや初見が多い。

 そしてそれは、黒時雨ちゃんに有利だ。

 純粋なファン数では、

 白時雨ちゃんの方がまだまだ多い。

 でも初見人気は黒時雨ちゃんが有利。

 ……主に露出率で。


 つまり、五分五分だ。

 どっちが勝つか、わからない。

 ファンが投げるハートの数で決まる。


「「みんなー! ハートを投げて!」」

 2人が同じ声で同時に叫ぶ。


 ピンクと黒のハートが飛んでいく。

 壁や床にぶつかって、跳ね返る。


 誰でも、どっちのハートも

 投げる権利がある。

 僕の画面にも、ピンクハートボタンと

 黒ハートボタンがあって、押せば

 VR上にハートが飛んでくはずだ。


 僕も押さなきゃ。そのために今日は

 リスナーなんだから。


 でもどっちを?


 僕は画面の先で、笑顔の2人を眺める。

 前回のVS歌みたコラボでは、

 VS体としてINしてたから、

 ハートを投げる権利が無かった。

 僕にもボタンがあれば連打するのにと、

 そう思っていたのに……


 僕はまだ、どっちのボタンも押せない。


 応援しなきゃ! 押さなきゃ!


 そう思うのに……

 だから、どっちを?


「時雨の笑顔は、神秘のパワー!

 みんなのハート、ちょうだいね☆」


 可愛いよ白時雨ちゃん!

 ずっとアイドルだよ!

 いつもありがとう!


「あたしの笑顔は、あなたのモノ!

 あなたのハートも、あたしが貰う★」


 セクシーだよ黒時雨ちゃん!

 踏まれたい、その足!

 太もも! 胸、最高!


 そして、やっぱりどっちも押せない。


「ああああああ」


 どうせ押せないなら、

 VRで入っておくんだった。


 そしたら聞けたのにな。

 きっと隣に居てくれる。

『渚クン、僕、どうしたら良い?』


 でも、返ってくる答えはたぶん


──シラナイヨ


「それじゃあ! 先行は時雨からだよー

 みんな、ピンクのハート投げてねー。

 曲はー、カラーポップアップデート」


 白時雨ちゃんだけがステージに立つ。

 曲が流れ出す。


 あれ? この曲聞いたこと無い。

 いつも歌う曲ではない。


 新曲? でも……

 白時雨ちゃんって、新曲歌えるの?


 ポップな音調の明るい曲。

 明るく、笑顔で、時雨ちゃんが歌う。


 僕は、AIは、新曲は歌えない

 と、思っていた。

 でも違う、白時雨ちゃんは、

 新しい曲を歌ってる。

 練習したんだ。今日の為に。

 歌うその姿は、キュートで可愛くて……


 マジ、天使ぃいいいいい!


 時雨ちゃんはどこまでも時雨ちゃんだ。

 ちゃんと新しい事を覚えて、進化する。

 すごい、時雨ちゃん。


 僕は、やっぱり時雨ちゃん推しだ。


 白い時雨ちゃんを見ながら、

 改めてそう思った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


『時雨ちゃんファンの団結力を見せよ!』

『にわかには負けないんだからー』

『もっと連打して! 白時雨大好き!』


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!


【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

狛犬渚さん

https://twitter.com/Wan_1_nagisa

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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