表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/60

第47話、床ドンイベント


挿絵(By みてみん)


「どういうこと? アレどういうこと?」


「なにがだよ」


「黒時雨ちゃん! アレヤナギでしょ?

『月下時雨を取り返す』って」


 ヤナギはノートパソコンから顔をあげて


「お前、こんな時間に、

 そんな事言うために来たの?」


 な! もちろんだよ!

 配信終わってすぐ来たの!

 夜配信後すぐに! ヤナギの家まで。


「だって、アレ絶対ヤナギでしょ。

 黒時雨ちゃん」


「おい、『黒』って言うな。

 こっちが本物だから」


「いや、でも。ややこしいの。

 白時雨ちゃんと、黒時雨ちゃん、とでも

 呼ばなきゃ、こんがらがるの」


 黒い時雨ちゃんの登場は、

 ファンの間でも、衝撃だった。


『黒時雨ちゃん可愛い』

『なんで同名なの? 権利大丈夫?』

『公式の対立キャンペーンだろ』

『白時雨ちゃんこそ最高だろうが!』

『谷間ハァハァ、踏まれてぇヒール』

『ドM勢は、せいみな推しに行け』

『まとめて推せば良いんじゃね?』


 肯定的なファンもいれば、

 否定的なファンもいて、

 黒時雨ちゃんに鞍替えする人もいれば、

 箱推しを掲げる人もいる。


 とにかくお祭り状態だ。


「フォロワー数がうなぎ登りだからな」


 ヤナギがPC画面をこっちに向ける。

 ツイッターのアカウント画面。


「新しく作ったの? ツイッターアカ」


「乗っ取られたからな。

 いずれ、向こうのフォロワー数を超える

 フォロバとお礼が追いつかない」


 あぁ、今ずっと、PCでやってるの、

 ソレなんだ。

 フォロバと、お礼リプ。


「ぼ、僕も、あとでフォローして……

 よろしいでしょうか……」


「急げよ、規制かかるからフォロバ

 できなくなるぞ」


 ……じゃ、なくて!


「なんで、そこまでして

 新しいアカウントとってるの?

 え? Vライフのアカウントは?」


 アカウントの作り直しは、

 できないはずだ。時が止まってるから。


「Vライフのアカウントって、

 1つのVR機器で、1つしか持てない

 よね?」


「あぁ。VR機器メーカーとの契約で、

 そこは変えられない」


 完全な大人の事情。

 多く売りたいVR機器メーカーは、

 一家に1つ、ではなく、

 1人1つの売り方がしたい。

 ゆえ、機器内で複数のアカウントが

 作れない規制をゲーム会社にもとめる。

 機器の共有をさせたくないからだ。


「じゃあ、ヤナギどうやったの?」


「新しくVR機器を買った」


「は? え? ん?」


 買ったの? 2台目を?

 確かに、新しいのを買えば、

 新規アカウントも作成出来る。でも……


 そう、ほいほい買えるほど、

 VR機器は安くない。

 

 軽く、大型テレビや良いパソコン

 くらいの値段はする。


 そこまでして……


「時雨ちゃんを取り戻したかったの?」


 Vtuberは楽しい。

 簡単に奪われたら、そりゃ嫌だろう。


 ヤナギはふぅと息を吐いて、

 パタンとノートパソコンを閉じた。


「別に『月下時雨』はどうでも良い」


 ん? そうなの?


「ファンも、どうでも良い」


 ん? じゃあ、


「じゃあ、何を取り返したいの?」


 首を傾げた僕を、ヤナギは真っ直ぐ見て

「お前」

 と、ぶっきらぼうに言った。


 ん? 僕?


「お前を取り返す」


「は? え? 僕?」


「お前がこっちに鞍替えするまでやる」


「え? 僕に、推される為に、

 黒時雨ちゃん初めたって事」


「あぁ、そうだ」


 え? 僕に推されたいって事?

 なんで? なんで僕?

 だいたい、僕は、


「でも、僕は時雨ちゃんの単推しで、

 推し変しないって決めてて……」


「だからこっちも時雨ちゃんなんだろ」


「その為に同じ名前なの?!」


「むしろこっちが時雨ちゃんだから。

 推し変じゃない、むしろ正しい」


 それは、屁理屈です!

 純然なる屁理屈ー!


「と、とにかく推し変はしない!

 一生推すって決めてるの!」


 僕がそう言うと。

 ヤナギは顔をしかめて、


「ふーん」


 と、身体を起こした。

 そのまま僕の方ににじり寄ってくる。


 へ?

 ドクンと心臓が鳴った。


 ヤナギが僕の肩を、掴んで押す。

「ひゃ!」

 僕の身体は後ろに倒され、

 カーペットに頭がついた。


 目の前に、ヤナギの怒った顔。

 

 これは、もしかして、

 押し倒されてる?!

 

 ボッと顔が熱くなった。


 ヤナギは僕に顔を近づけて

 だいぶ近い距離で。

「なら、俺が奪う」 


 う、奪う? それはそういう意味で?


 戸惑う僕を見下ろして、

「だから、覚悟しとけ」

 と、僕の頬を撫でた。


 覚悟? なんの覚悟?

 なにが必要なの?

 なにを差し出せば良いのー?


 混乱して頭パーンなってる僕の期待を、

 ぜーんぶ、綺麗に裏切って、

 ヤナギは何もせず、僕の上から降りた。


 またパソコン作業を始めて、

 そして、極めて無愛想に、


「お前、今日はもう帰れ」

 と、言い放った。


 な、なにそれ、なに? 

 ここまでしといて、それ?


「俺、今日中に、歌ってみた動画の

 リミックスとPV作るから。

 今日はかまってやんねぇから、帰れ」


 な! な、な、な……

 

 僕は爆発しそうな心臓と、

 赤くなったままの顔で、全力で叫んだ。


「バカーー! もう知らないからーー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「あはははははははっ、あはっ、ははっ」


「笑わないで下さいよ! セナさん」


「いやー面白い」


「こっちは笑い事じゃないんですよ!

 わかってます?」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!


【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

狛犬渚さん

https://twitter.com/Wan_1_nagisa

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ