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第42話、ゲートキーパー


挿絵(By みてみん)


 渚クンは、友達だった。

 時雨ちゃんを応援する仲間で、

 良く話しかけてくれて、


 ジャックボットの攻撃を受けて、

 ブロックノイズスパムに感染して

 ログイン出来なくなった──


 ──はずだった。


「渚クン、だよね」


 仮面を外したその顔は、

 確かに渚クンの顔で、


「ログイン、出来たんだね!」


 何も考えずにそう思って、

 かけよろうとした僕を


「近づいちゃダメ! シカクたん☆」


 時雨ちゃんが止めた。

 え? なんで……


「あなたの友達の渚クンは、

 ブロックノイズに感染したの。

 感染したのに、ココにいるってことは」


 ことは?


「ユーザーじゃないから!」


「ユーザーじゃ、ない? え?」


 じゃあ、


「君は、いったいなに?」


 ふふっ、と渚クンが笑う。

 いつも、僕に笑いかけてきたのと、

 同じ顔で、


「ボクは、ボクだよ」

 そう言って見せる。


 時雨ちゃんが、息を吐き出して、

「開発空間で、シカクたん☆ から

 出て来たんでしょ?

 つまり、彼はバグプログラムって事よ。

 たぶん、始めから、ね」


 え? 僕の頭が追い付かない。

 はじめから? 僕と会った時から?


「そう。僕は、君が意図せず

 改変しちゃったプログラム。

 ピンクドット襲撃事件の時に」


 チートは、時に

 周りのプログラムを巻き込む。

 偵察バトみたいに。


 僕は昔、ピンクドットと呼ばれる、

 襲撃事件をおこした。

 アカウント乗っ取りを計画する輩を、

 ブロックノイズでログイン停止にする

 という、襲撃事件。


 その時、渚クンを巻き込んだ。


「僕は、ゲートプログラム。

 時間と空間を司る光」


 ダイブゲートを開いた時、

 中から溢れてくる白い光だ。

 ユーザーの移動と接続をする為の

 プログラム。


 ユーザーのアカウント情報を

 無理矢理書き換えるというスパムは


 ユーザー情報を持たないプログラムを

 ユーザー情報に書き換えた。

 同時に、意思と行動理念を持つ。


「だから、君の行動理念が、

 乗っ取りを許さない……なんだね」

 

 襲撃してた時の僕の精神状態が

 そのままコピーされたんだ。


「君から教えてもらった事だよ」

 と、渚クンは僕に笑いかけた。


「おかしいと思ってたの」

 と、時雨ちゃんは言う。


「ブロックノイズスパムのデータを、

 あなたが、なんで持ってたのか」


 僕が作ったスパムを、

 敵が最初から使えたのは何故か。


「アバターを接触させて、

 データ抜くのは、古典的手口ね」


 え? 


 僕は息を飲みこんだ。


 渚クンは、友達だった。

 いつも話しかけてくれて、

 一緒に楽しんで。


 それって、もしかして──


「僕の、データを抜くために?

 僕に、接触するために、

 僕と仲良くしてたの?」


 白い服の彼は、ふぅと息を吐いて。


「そうだよ。僕はそうやって、

 君からいろんな事を学んだ。

 君はすごく、幸せそうで」


 やぁ、シカク君、今日も幸せそうだね!

 彼は、いつもそう話しかけてくれた。

 そして、いつも味方になってくれた。

 そうだ、あの時も、


「渚クンは、あの時、

 僕を助けてくれたじゃないか」


 初めてジャックボットに襲われた時、

 渚クンは、僕をかばって感染した。


「それは?」


「そう、しないと、

 君に混じれなかったから。

 そこが、良いタイミングだったんだ」


 チートをすると、時に混じる。

 僕自身のプログラムが不安定になるから


 渚クンはあの時、自分で攻撃を受けて

 僕に混じった。

 だから、僕が使ったチートは

 再現できたんだ。

 僕と繋がって、

 データを吸い取り続けたから。


「ずっと、一緒に、居たんだ」

 僕が呟いた声は、哀しく響く。


「君の中からみるVR世界は

 楽しかったよ。でも思うんだ。

 君は、やっぱり甘い。

 ブロックノイズの時と変わらない」


 甘い?


「だってあの時も、回線ID書き換えて、

 ログイン出来なくしても、

 新規登録で、データ引き継いだら、

 すぐに復帰できちゃう、って

 知らなかったんでしょ?」


 そうだ、僕はそれを、

 ヤナギに教えてもらうまで、

 知らなかった。


「ん? ちょっと待って?

 じゃあ、もしかして」


 もしかして、Vライフの時が

 止まってるのって。

 このサーバーを停止してるのって。


「そうだよ」

 と、渚クンは微笑んで言う。


「僕が、時間を止めたんだよ?

 君が襲撃した輩が

 ログイン出来ないように」


 僕の心臓が、ドクンと音を立てた。


「乗っ取り ハ 許さない」


 渚くんが止めたの?

 僕の、為に?


 あぁ、セナさんが、Vライフの時間は、

 僕なら動かせるかもしれない、

 そう言っていたのは、


 時間は、

 僕の為に、止まっているから!


 ……なんで知ってたのかは、

 後で聞かなきゃわかんないけど……

 今はそれより!


「渚クン、今すぐやめて、

 僕、そんなの望んでないから」


「ダメだよ。僕は君がいないと

 意味が無いけど、君に従う訳じゃない

 君は甘いし、

 僕が取り返す事を、きっと止める」


 取り返す? なにを?


「渚くんが取り返したい物って?」


 白い服着た彼は、まっすぐ、

「時雨ちゃん」

 時雨ちゃんを指した。


「え? 時雨ちゃん?」


「月下時雨、を、取り戻す」


 は? と、時雨ちゃんが首をかしげる。


「乗っ取り、は、許さない。

 その身体は、本当の彼女に、

 返してもらう」


 渚クンが両手を広げる。

 ブワッと渚クンから光が広がる。


 これは、ダイブゲートの光!


「時雨ちゃん!」


「ひゃ!」


 時雨ちゃんの真後ろに、ダイブゲートが

 出来る。そうだ、彼は、

 ダイブゲートを自由に出せる!


 僕は時雨ちゃんに向かって走ろうと、

 足を踏み出した。

 その足に、ずぶりと、

 プログラムコードが絡まった。


「は? え?」


「ここは、僕のタイムサーバー。

 時間と空間は、僕の自由だよ」


 あぁ、やっぱり、罠だったじゃないか!


「時雨ちゃん!」


 僕は数字に巻かれながら、手を伸ばす。


「シカクたん☆」


 ゲートに吸い込まれながら、

 時雨ちゃんが手を伸ばす。


 届くことのない空間、距離。

 時雨ちゃんの体は、白い光に包まれて

 バタンと音を立て、ゲートが閉じた。

 時雨ちゃんを飲み込んで。


 あ……


 そして、ゲートは開いた。


 へ?


 ペッと吐き出すように、時雨ちゃんが

 転がり出てくる。


 へ? え? なに? 早っ!

 出てくるの早っ! 

 悲しみにくれる暇も無かったんだけど!


 ゲートが消える。

 時雨ちゃんが座り込んで両手ついてる。


 渚クンが、ふふっと笑った。

 プログラムコードは、

 もう邪魔してこなかった。


「え? 時雨ちゃん、大丈夫?」


 僕は時雨ちゃんに駆け寄る。

 時雨ちゃんは顔をあげて、


「あ、シカクたん☆

 私は大丈夫、ありがと」


 にっこり、いつもの様に笑って、

 立ち上がった。


 良かった。なんともなさそう。

 僕がそう思った時、


 バタン、と扉が開く音がした。


 ん? 僕は首をかしげる。

 ゲート? でもそんな物は見えない。


「おい回線が切れた。ログイン出来ない」


 声がする。え?


「誰?」 


 僕は見えない相手に問いかける。


「は? 何言ってんだよ、俺だよ」


 俺って……え?

 僕は慌てて、VRゴーグルを外した。


「ヤナギ?」


 リアル世界、僕の部屋に、

 ヤナギが居た。


「え、VRは?」


「は? だから、回線切れて、

 ログインできないんだって」


「え? だって、今ココに」


 そうだ、ここに、時雨ちゃんはいるのに


「じゃあ、この時雨ちゃんは誰?」


 僕はまたVRゴーグルをつける。

 目の前にいる時雨ちゃんが笑う。


「時雨は、時雨だよ。シカクたん☆」


 いつもと変わらない声と笑顔で、

 時雨ちゃんは笑った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「みんな! 今日は時雨の歌みたライブに

 来てくれて、ありがとー!」


「時雨の笑顔は、神秘のパワー!

 今日もヒーリングしちゃうぞ☆」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!



【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

狛犬渚さん

https://twitter.com/Wan_1_nagisa

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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