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第41話、タイムゲートサーバー

挿絵(By みてみん)

「話は、ついたから」


 翌日の朝、本社で

 セナさんが言ってくれた。


「ダイヤちゃん、

 お兄さんが警察に捕まる、みたいには

 ならないから、安心して」


「あ……ありがとうございます」


 ホッとして息を吐き出す。

 兄貴、掴まっちゃうかと心配してた。


「通報すれば良かったのに」

 後ろでボソリとヤナギが言って、


「そういう事、軽々しく言わない。

 ダイヤちゃんのお兄さんだから」

 セナさんがなだめる。


「通報しない代わりに、

 ダイヤちゃんが協力する事と、

 あの家を使う事を、黙認させたから」


 その交渉が、どんな感じで行われたのか

 想像するのも、怖い。

 つまりは、大人の会話、だったのだ。


 でも……良かった。


「セナさん兄貴は? 今」


「朝の飛行機で海外、戻ってたわ」


 え?


「元々、それだけしか、

 日本には居ない予定だったんですって。

 鍵は預かってきたから。

 もう、うちに戻れるわよ」


 昨日『いつまで居てくれるのか?』

 と、聞いた時、兄貴は答えなかった。

 明日には立つ、と、

 なんで教えてくれなかったのか。


「あと、伝言も預かってる」


「伝言?」


「『悪かった、やりすぎた』って」


 兄貴……


「あと『俺を殴ったのは許さない』って」


 は? とヤナギが顔をあげた。


 ふふっとセナさんが笑って、

 僕も釣られて笑った。


 兄貴には、あとで連絡しとこう。


「で、もう一つの方、なんだけど」


 もう一つ?


「VRの話」


 そうだ、兄貴が僕のアバター使って、

 キツネの出した黒いのに包まれて

 接続が切れた。

 つまり、僕のVRの身体は

 キツネの手の中にあるはずだ。


「月下時雨のVRアカウントに

 相手から、DMが届いた」


 時雨ちゃんに?


「なんて、来たんですか?」


「『久不シカク』を返すから、

 タイムゲートサーバーに来い、って」


 え? ソレって……


「絶対、罠ですよね! 相手の目的は

 時雨ちゃんだし」


 僕が声を荒げると、

 うーん、と困ったように、

 セナさんが首を動かした。


「罠でも、行くしかねぇだろ」

 ヤナギが、呟くように言う。

 

 いや、でも……

 と、躊躇する僕に、

 それに、とセナさんが続ける。


「タイムゲートサーバーってのはね、

 Vライフの時間を担ってる

 サーバーなのよ」


 それは、

 止められたサーバーだったはず。


「気になるでしょ?」


 僕は頷く。

 そうか、罠でも良いから、

 敵の出方が見たい、情報が欲しい、

 と、そういう事なのだ。

 状況を、打破するために。


「でも、時刻書いてませんでしたけど」

 と、ヤナギが言って、


「ずっと居るって事でしょ」

 セナさんがそう言って、


「こっちの都合の良い時間に

 行けば良いのよ」

 そう吐き捨てて、ふうと息を吐いた。



  ◇◆◇◆


 タイムゲートサーバーは、本来、

 VRを目的に作られた訳じゃない。


 だから、その空間は薄暗く、黒い壁に

 0と1の文字がびっしり浮かんでいた。

 そしてその全てが、止まっている。


 Vライフの全ての時間を司るサーバー。

 停止させられた、サーバー。


「やぁ、来てくれたんだ、時雨ちゃん」


 真ん中に、キツネはいた。

 白い着物と、白いキツネの面で、

 その面に1ヶ所、ヒビが入っていた。


「シカクたん☆ を返してもらいに

 来たんだけど?」


 時雨ちゃんが、キツネに言う。

 僕はその様子を、ディスプレイでみてる


「もちろん、シカク君は返すよ、

 そこに居る」


 と、キツネは指す。

 ブンッと、効果音をだして、

 僕のアバターが現れる。


「ログイン、出来るよ、ってシカク君に

 伝えて。いるんでしょ、そっちに」


 と、明後日の方向を眺めて、

 キツネは言う。


「だ、そうだ。お前、ログインしてみろ」


 ヤナギがVRゴーグル外して、

 僕に言う。


 僕は、自分の部屋に行って、

 VRゴーグルを付ける。


 ログイン手続きをして、

 Vライフに入る。僕の目の前にも、

 タイムゲートサーバーが読み込まれる。


「お……」


 黒い壁と、数字が並ぶ、薄暗い空間。

 キツネと、時雨の姿が見えす。


 僕は身体を動かす。

 外から見たら、動かなかった身体に、

 急に魂入った、みたいに見えるはずだ。


「戻った? シカク君、良かった」


 シカク君? その呼び方!引っかる。


「あ、ありがと。

 でも、なんで助けてくれたの?」


 白いキツネの彼は、

 時雨ちゃんを襲う敵のはずだった。


「君がいないと、僕の意味は無いし、

 なにより、僕の行動理念が」


 行動理念が?


「『乗っ取りは許さない』だからだよ」


 と、キツネは言う。

 たぶん、にっこりと笑って。


 僕がいないと、意味はない?

 なんの事だかわからない。


「ねぇ、」


 時雨ちゃんが、口を開く。


「私は、一度聞いたファンの声は

 絶対に忘れないの」

 

 え? ん? なんの話?


「私は、あなたの声を聞いた事ある。

 私は、あなたが誰だか知ってる」


 ハッキリと時雨ちゃんが言い放つ。


「あぁ」

 と、キツネは多分笑った声で、


「なんだ、バレたの」

 明るくそう言って、

「じゃあ、コレはもう意味ないね」

 そう言って、ヒビの入ったキツネ面に

 手をかけた。


 僕は、彼の頭から生えてる白い耳が、

 キツネ耳だと思って疑わなかった。


 でも、違ったのだ。


 あれは、白い犬耳で、

 面を取った彼の顔は、


「え?」


 僕には、見覚えがあった。


「渚クン?」


 そこに、白い犬耳で、白い服の、

 見慣れた友達の姿があった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「渚クン、だよね

 ログイン、出来たんだね!」


「近づいちゃダメ! シカクたん☆」


「え? なんで……」


「ブロックノイズに

 感染したのに、ココにいるってことは」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!



【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

狛犬渚さん

https://twitter.com/Wan_1_nagisa

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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