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第4話、無愛想な男と金髪お姉さん

挿絵(By みてみん)

 VRゴーグルを外すと、

 とたんに静かになった。

 無駄に広い部屋。

 1人では寂しすぎる1人暮らしの部屋。


 どっと疲れが押し寄せてくる。

 重いゴーグルを机にのせて、

 目元を押さえる。

 VRは、身体の負担が大きい。

 ずっとは、入っていられない。


「あー……なんか今日、いろいろあったな」


 疲れた。

 仕事終わって、ずっとVRしてたから。


「うわぁ、もうこんな時間じゃん」


 とりあえず、なんか食べよう。

 カップ麺にお湯入れて、

 1人寂しく食べて、

 時雨ちゃんのツイッターとか眺めて。

 更新ないなーとか思ってたら

 

 家のチャイムが鳴った。


「ん? あれ、宅配の予定あったっけ?」


 考えていると、またチャイムがなる。

 なんだか、有無を言わさない鳴らし方。


「はいはーい」


 仕方なく玄関に行って、ドアを開けた。


 そこに立ってる2人組。

 背の高い男の人と、金髪のお姉さん。


 ん? 宅配じゃないし、

 公的機関って感じでもないし。


「不破大地さんの家はここ?」

 男の方が、威圧的な声で言う。


「あ、そうですけど……誰ですか?」


「Vライフ、ユーザーサポート」


 は? え? Vライフの……運営!


「ちょ! え?」


「悪いけど、入らせてもらうから」


 そう言うと、男は僕を押しのけて、

 勝手に中に上がり込んだ。


「ちょっ! ちょっと待って!

 やめて下さい!」


 待って、待って!

 確かに時雨ちゃんは、後で運営から

 連絡するって言ってたけど……


 ちょくで来るって思わないじゃん!


「ごめんねーあの子せっかちなのよねー」


 ニコニコしたお姉さんが笑ってるけど、

 分かってるなら止めてください!


 リビングまで入った男は、

 モデムルーターを見つけて、


「これだな。セナさん、お願いします」


「はいはーい、ちょっと見させてねー」


 セナさん、と呼ばれた金髪の女性は、

 ルーターのコード引っこ抜いて、

 ノートパソコンつなぎだした。


「ちょっと、あの、どういう事ですか?」


「おい、あんた、言っとくけど──」

 と、男がこっちを睨んで。


「もし警察を呼ぶなら、こっちだからな」

 と、愛想の欠片も無い声で言う。


 なにコイツめっちゃ感じ悪い!


 そうこうしてるうちに、お姉さんが、

 やった! と、嬉しそうに叫んだ。


「ログイン出来たわ。

 うん、この回線で間違い無い」


 え? 何が?


 男はそれを聞いて、僕を見下ろして、


「おい、不破大地って、お前の何?」

 と、聞いてくる。


「あ、兄ですけど……」


「今、どこ?」


「今は、居ません、ここには」


「隠すと、ろくな事にならないけど?」


「本当です。半年前から、仕事で海外で。 

 電話したら、海外にいると思います」


 正直にそう答えると、

 男が、は? みたいに顔をしかめた。


 少し考えて、僕の顔を見て。


「え? じゃあ……『シカク』って名前で、

 Vライフやってたのって──」


「僕、ですけど……」


 そう、答えると、男は、

 僕の顔とか、二つ結びの髪とか、

 Tシャツ着てても分かる胸の膨らみとか

 ホットパンツから伸びるナマ足とかを

 順に見下ろしてから、叫んだ。


「女じゃん!」


 な! なななななな!

 

「なにそれ、失礼! ひどっ!」


 僕が女だからなんだって、いうんだ。


「だってお前、男アバターで!」


「女が男アバター使っちゃいけない

 規約でもあるんですか、無いですよね!

 じゃ僕が、どんなアバター使おうが、

 僕の勝手でしょ!」


 パソコンいじってる金髪お姉さんが

「わぁお、僕っ娘ねー」

 と、笑いながら言ってる。


「お前の勝手だろうけど、

 お前、女のなのに女性V激推しして、

 DMで『大好き!』『結婚したい!』

 『惚れた』『ガチ恋!』って、

 送ってくんのかよ!」


「はぁ?! 女だって、時雨ちゃんは

 可愛いし、天使だし! マジ推しなの!

 女性Vに、女性ファンは珍しく無いし、

 大体、ひとのDMを第三者が見るのは

 いかに運営だって、規約違反だから!

 さすがに看過出来ないから!」


 そうだ、時雨ちゃんに送ったDMの中身

 なんで知ってんの! この男!


「人のDM見るとか、最低! 変態!」


「違う、それは──」

 男が何か言いかけて、押し黙る。


 なにが、違うんだ、変態。

 

 セナさんがクスクス笑いながら、

「早くバラしちゃいなさいよ。

 バラす前提で来てるし、

 用意もしてきたんでしょ?」

 と、嬉しそうに言ってる。


 え? なにが?


 男は、嫌そうにため息をついて、

 カバンから、何かを取り出す。

 ファンシーな色の、ちっちゃな拡声器?


「なにそれ?」


「弊社の新商品。ボイス、チェンジャー」


 ボイス、なんだって?


 男はスイッチをいれて、

 その、拡声器を、口にあてた。


『あー、あー……』

 その声が、

『これで分かったかにゃ、シカクたん☆』


 まるで時雨ちゃんだった。


「え? なに? なんで、あんたの声が

 時雨ちゃんになんの?」


 男は拡声器を外すと、心底嫌そうな顔で

「俺が、月下時雨、だから」

 と、吐き捨てた。 


 は? は、は、は、はぁ?!!!!

 今、なんて言いましたか、

 この感じ悪い男は何口走りましたか、

 ありえない、ぜんぜんありえない、

 時雨ちゃん? 時雨ちゃ……

 だって、時雨ちゃんはマジ天使で、

 超絶可愛くて、優しくて、

 僕の……生きる意味……


 男が顔をしかめて、もう一度、

 ボイスチェンジャーを口にあてた。


『時雨の笑顔は、神秘のパワー!

 今日も、ヒーリングしちゃうぞ☆』


 その声は確かに時雨ちゃんで、

 誰かにマネできるような物じゃなくて、

 言い方も、リズムも、ずっと聞き慣れた

 時雨ちゃんの……そうだ、その声は──


 本人以外は、ありえない。


 僕は男の顔を見上げる。

 背の高い、感じ悪くて、無愛想な──


「男じゃん!」


「お前が言うな」


「めっちゃ男じゃあああああああん!」


「ファンなら、中身がどんなだろうと、

 受け止めるもんだろ?」


「女性なら、中身がどんな人でもいいよ!

 感謝しかないよ! 時雨ちゃんを、

 いつもありがとおおお、って思うよ」


「そうかよ」


「太ったおじさんでも、別に良いよ。

 頑張って可愛くしてくれてるんだねって

 夢をありがとうって、感謝だよ」


「じゃあ良いだろ」


「でも、若い男なのは許せない!」


「なんでだよ」


「なんならちょっとイケメンなの1番嫌」


「おいこら」


「普通に顔出ししたら

 女性ファンつきそうなのが、なんで

 バーチャルで美少女やってんの!」


「人の事言えないだろ、ネカマが。

 あれ? ネナベ?」


「うるさい! バ美肉!」


 セナさんが向こうで吹き出した。

「あははははははっ」


「セナさん笑わないで!」

「お姉さん笑いすぎ」


「バ美肉と、僕っ娘」

 金髪お姉さんは、

 僕と男を交互に指さしてから、

 もう一度大きく、笑った。


 バ美肉、は、バーチャル美少女受肉

 の略で、元々美少女Vを指す言葉だけど

 今では成人男性が美少女Vを演じる事

 バ美肉おじさん、を指す事が多いよ☆


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「だから、ここに。住み込んで貰おうと

 思って来たんだけどねー」


 はぁ、住み込んで──住み込んで?


「え? うちに、住む? 住む?」


 この男が? 


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!

 【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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[良い点] 意外性がダブルでくる この流れ 私は大好きw ふたりともが性別逆転してるのおもしろいな( *´艸`) [気になる点] 今のところ特にはないかな? 場面も良く分かるし テンポもいいしね […
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