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第37話、ヤンデレお兄ちゃん

挿絵(By みてみん)


 久しぶりの兄貴の朝食だった。


「美味しいか?」


「うん、美味しい」


 そうかそうか、と兄は上機嫌に笑う。


「俺、冷蔵庫何も入って無いと思って、

 食材買って帰ってきたんだよ」


 そうなんだ。海外から帰ってきて、

 荷物も多くて疲れてるのに。


「そしたら、冷蔵庫パンパンだったな」


 はっはっはっ、と兄は笑う。


「あの男、料理するんだな」


「僕が作ったとは、思わないんだ」


「お前はしないだろー。

 どうせカップ麺とレトルトで

 食いつないでたんだろ?」


 その通りですよ、兄貴。


「俺の料理と、アイツの料理、

 どっちの方が美味しい?」


 聞かれて、僕は答える。


「兄貴の方が美味しい」

 正直に、そう思う。


「そうかそうか」


 兄貴はすごく嬉しそうで、


「じゃあ、朝食を食べ終わったら、

 その男がもう来なくて良いように、

 お兄ちゃんがバグを直してやろうな」


 と、言った。


 ん? 僕は意味が分からなくて

 首をかしげた。



  ◇◆◇◆



「ねぇ、兄貴アレってどういう意味?」


 朝食、食べ終わって、兄に聞く。


「意味もなにも、そのままだ。

 兄ちゃんが、バグ直してやるからなー」


 片付けを終わらした兄は、


「あ、ダイヤの部屋ちょっと入るからな」


 と、僕の部屋に向かう。

 ん? 部屋、僕の部屋?


「ちょ! ちょっと待って! 

 今はダメ!」


 慌てて止めようと駆けつけたんだけど


「なんで、いつも入ってだろー?

 散らかってても、下着干してても

 兄ちゃんは平気だぞ」


 そういう事じゃない、

 今はダメ! 出しっぱなしだから!


 部屋に入った兄は、

 ん? と、机の上の物を見て固まった。


「ダイヤ……これ、なんだ?」


 僕の机の上のソレを掴みあげて。


「そ、れは……手錠です……」


 僕は顔を真っ赤にして、答える。


「ほーぅ? お兄ちゃん、お前に

 そんな趣味があるとは聞いてないぞー」


「ち、違うから! 趣味とかじゃないし

 もし、あっても兄貴には言わない!」


「あ、あの男、そういう」


「それも違う! それはシチュボ用なの」


「ん? あぁ、Vtuberやってるって

 言ってたヤツ?」


「今度、シチュエーションボイスの

 動画とろうと思って……ASMRで。

 その効果音用」


「おぉ、いいなぁ! 俺も聞きたい。

 ヤンデレ妹はお兄ちゃんを独占したい」


「勝手にタイトル決めないで。

 僕、一応、男Vだから」


「お兄ちゃん大好きな妹が毎晩甘えてくる

 でもいいぞー」


「なにも良くないからー。

 それお兄ちゃんが聞きたいだけだよね」


「だいたい、こんな手錠なんて、

 どこで買ってきたのかね」


「お、大人のお店に、行きました」


「お兄ちゃん、妹の急成長に

 驚きを隠せないよ」


「一応、おもちゃだからセーフ」


「手錠ビジュアルの時点でアウトだから」


「いいから、返して」


 取り返そうと手を伸ばすと、

「おっと」


 兄が手錠を持ち上げる。


「あっ、ちょっと」


 取ろうと伸ばした僕の手首を、

 兄が掴む。その手に、

 ガチャリと手錠をはめられた。


「え? なに? 何するの兄貴」


「いやーお前は分かってなさそうだから」


 グイと、僕の片手にはまった、

 手錠を引っ張って、兄貴が笑う。


「コレ、が、どういうものか、さ。

 教えようと思って」


「なにが、外してよー」

 反対の手を伸ばすより早く、

 兄貴が手を引いて、

 体制を崩した僕の腕を

 後ろ手にネジ上げる。


「ぎゃ! ちょっ!」


「はい、反対も出してー」


「やめてって、兄貴!」


 ガチャンと音をたてて、反対の手に

 手錠をはめられる。

 わずか数秒で、

 僕の両手は、後ろ手で拘束されたのだ。


「ちょ、なにこれ、外れないんだけど」


「そうだろー、

 オモチャでも外れないもんだろ」


「外してよ、お兄ちゃん。

 ぜんぜん、ぬけな……」


「無理に外そうと暴れると、コケるぞ」


「ぎゃ!」


 ほんとに僕は体制を崩して

 尻もちをついた。

 両手が後ろにあるってのは、

 バランスがとれない。


「いったぁ……」


「お尻、大丈夫だったか?

 ちょっと手錠、後ろに引っ張るからな」


「ひゃ! やめてって兄貴、

 何やってるの? なんで引っ張るの?

 見えない! うしろ見えない」


「んー、手錠の部分をな、ベッドの足と

 繋いでる」


「なっ! なんで!」


「お前のベルトでだ。そこに落ちてた。

 脱いだ服はちゃんと片付けろよー」


「方法を聞いてるんじゃない!

 なんでそんな事するのかー!」


「だから、言っただろ。

 お前、分かってないって。

 コレがどんなに危険な物か、

 なにをするためのものか」


 できた。と呟いて、兄貴は立ち上げる。

 見えないけど、両手が動かない。

 後ろ手で拘束されたまま、

 ベッドの足に縛られたから?


 座り込んだ状態で、兄貴を見上げる。

 兄貴がにっこり笑ってる。


「なー、動けないだろ?

 こんな物、持ってると、簡単に

 こんな事、されちゃうんだぞ」


 兄貴が手を伸ばしてきて、

 僕の顎をもって、クッと上に上げる。

 ゾクと背筋に嫌なものが走る。


「どんな気分だ? ダイヤ」


「あ……最悪。早く外して、お兄ちゃん」


「んー、どうしようかな」


 ニヤニヤしながら、僕の顔を眺める。


 ちょっと、なにすんの、兄貴!


「どうしようかな、じゃない!

 早く外して!」


「暴れるなって、何もしないよ。

 お前には」


 お前には? なにそれ、どういう意味?


「言ったろ?

 お兄ちゃんが、バグ直してやるからな」


 え? 


 兄は、僕をその格好で放置したまま、

 立ち上がり、

 机の上のVRゴーグルを手に取った。


「ちょっと、なにするの?」


「何って、バグ処理とスパム対策だ

 お前がやってるんだろ?」


 え? 僕の代わりに? Vライフで?

 それは……


「や、やめて! 僕のVRに触らないで」


「あぁ、そうだ。お前にも見せてやろう」


 配信用ディスプレイが、

 拘束されてる僕の前に置かれる。

 VRには、プレイヤーがどんな状態か

 第三者視点から見られる機能がある。


「それで、兄ちゃんが何するか、

 良くみておくんだぞー」


「やめてって! バカ兄!

 お願いだから、やめて!」


「やっぱり邪魔しようとするんだな。

 拘束して正解だ」


 は? 兄貴、そのために……


「じゃあ、デバッグを始めようか」


 兄はVRゴーグルを入れて

 スイッチを押した。


 僕の目の前のディスプレイに、

 見慣れた僕のアバターが、

 プラットフォームに降り立つのが映る。


 拘束された僕は、それを見る事しか、

 出来なかった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「兄貴、やめてって

 お願い、これ外して!」


「ん? なんか混じってる」


「テト!」


「おぉ、消し忘れバグだ」


「兄貴、それは違う! バグじゃない」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!



【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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