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第36話、朝が弱いお兄ちゃん

挿絵(By みてみん)


 朝、リビングに行った時、

 ソファーに誰もいないのを見て、


 あぁ、ヤナギいないんだっけ。

 と思い出す。


 起きたらソファーでヤナギが寝てて、

 叩き起こさないと、座れない、

 そんな毎日だったから。


 まぁでも……

 と、時計を見ながら考える。


 叩き起こすのは、変わらないか。


「兄貴ー、もう朝だけどー」


 兄貴の部屋の前まで行って、

 ノックする。


「兄貴? 聞いてる? 起きてる?」


 返事が無い。


「もう……入るよー、お兄ちゃん」


 ガチャと扉を開ける

 久しぶりに中に入る。


 モノトーンでまとめられた部屋。

 白黒市松模様のラグを踏み、中に入る。


 ベッドの上で兄は寝ていた。

 油断した顔をして、お腹を出して。


「もう、だらしない……」


 Tシャツの裾を引っ張ってから、

 その身体を揺する。


「兄貴、もう朝だから、起きて」


「んー? んー……」


「起こしてって、言ったの兄貴だよね。

 ちょっと起きてー」


 ムニャムニャいいながら、寝返りして

 起きようとしない。

 男ってどうしてこうも朝が弱いのか。


「ねぇ、お兄ちゃ……」


 身を乗り出して、揺すった時、

 グイとベッドに引き込まれた。


「ひゃ!」


 布団に倒れ込んだ僕を、

 兄がギウと抱きしめる。

 相変わらず、眠ったまま。


「ちょ! 兄貴、なにやってるの?」


「んー? もうちょっと、寝たいなーて」


「1人で寝れば良いじゃん」


「いつも使ってる抱き枕がなくて」


「僕を抱き枕にするのやめて」


「あー、この辺柔らかいなー」


「へんなトコ、

 スリスリするのヤメロ、バカ兄ぃ」


「ははっ、こういうの久しぶりだな」

 

 久しぶり? 

 そうだ、すごく……久しぶりだ。

 ずっと、兄貴は居なかったから。


 顔にあたる兄貴のシャツ、その香り。

 どう言い訳をしても、落ち着く、匂い。

 

 僕は、それを大きく吸い込んで、

 抵抗をやめた。

 兄の背中に手を回して、

 ギウとシャツを掴む。

 その胸に、顔を埋める。


「ん? どした?」


「ねぇ兄貴、いつまで、いてくれるの?」

 

 一時帰宅である事は、僕にも分かる。

 兄は、きっとすぐに、行ってしまう。

 そしてまた僕は、1人になる。


「気になるか?」


「うん……」


「俺がいなくなったら、またあの男を

 この家に呼べるからか?」


 言われて、バッと顔をあげる。

 すぐそこにある、兄の顔を見る。

 ふんわり笑った顔で僕を見る。


「違う……」

 そう答える僕の言葉は、

 本心ではあったのだけど、


「じゃあ、呼ばないのか?」


 呼ぶか? 呼ばないか? と言えば……


 来て欲しいと、願うと思う。

 もう、来てくれるか、わからないけど。


 答えられない僕をみて、

 兄貴はふふっと笑って、頭を撫でる。


「俺が居なくて寂しかったか?」


「うん」


「1人にして、ゴメンな」


 優しい声で頭を撫でられる。

 それを、全身で受け入れる。


「ほんとだよ……ほんと、

 僕がどんな気持ちでここに居たと……」


 ずっと、寂しかったんだ。1人で。

 ずっと、会いたかったんだ、兄貴に。


「だから男連れ込んだのか?」


「それは……ごめん、なさい」

 か細く口にする僕の頬を、

 兄貴が撫でる。

 ぷにぷにと、ほっぺを好き勝手触る。


「いいよ、いいよ。

 ダイヤだって、寂しいもんな。

 兄ちゃん、彼氏作るなとは言わないよ」


 別に、ヤナギは、

 そういうのじゃ、ないけど。


「でも、あんな男じゃなくて良いだろ」


「いや、なにが」


「あんな、感じの悪い、無愛想な

 男じゃなくたって良かっただろ。

 もっと良いの、居ただろー」


「そこ、僕の自由だし」


「あんな男に近づいちゃいけません。

 お兄ちゃんは認めません」


「なんで兄貴の許可がいるのさ」


「少なくとも、うちに入れるなら

 俺の許可がいるでしょ」


「じゃあ、外なら良いの?」


「いいワケないだろ。

 あんな男に可愛い妹はやらん」


「僕、兄貴の物じゃないから」


「うちで飼うのもダメ。

 元いた場所も返してきなさい」


「犬猫拾ってきたみたいに言わないで」

 

「あー、可愛かったダイヤが

 こんなに口ごたえするようになって……

 昔は『お兄ちゃんと結婚する』って」


「言った事ないからね」


「お風呂だって一緒に入ってたのに」


「子供の頃の話だから」


「せめて、お兄ちゃんに似た

 イケメンにしなさい」


「別に……似てないワケじゃ……」


「ん? なに?」


「なんでもない。

 そういうの、絶対、見つかんないから」


「お兄ちゃんよりカッコいい男はいない

 って? 可愛いなぁ、ダイヤ」


 否定も肯定も出来なくて、

 グリグリ頭を撫でられるのを、

 受け入れる。

 ギウと、抱きつく手に力をこめる。


「気分が良いから、今日の朝食は

 豪華なの、作ってあげような」


 起き上がろうとする兄貴を


「あ……、嫌」


 抱きしめて止める。


「ん? どした?」


「まだ……」


「まだ? なに?」


 僕は兄の顔を見上げて、口に出す。


「まだ、抱き枕……してたいの」


 懇願する僕の顔を眺めて、

 兄は、満足そうに笑った。


「そっか。もー、しょうがないなぁ」


 兄は笑って、僕をまた抱きしめて

 頭を撫でる。


「可愛いなぁ、ダイヤ」

 

 僕は頭を撫でられながら、

 めいいっぱい、その香りを吸い込んだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「美味しいか?」


「うん、美味しい」


「俺の料理と、アイツの料理、

 どっちの方が美味しい?」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ


【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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