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第33話、鎮火とキツネ

挿絵(By みてみん)


「シカク君の配信の様子、どう?」

 セナが、配信画面を見るヤナギに聞く。


「上出来、ですよ」


 スマブラ対決が始まって、

 結構盛り上がってる。


「せいみなさんが、上手く回してます」


 初配信は、このままこなせるだろう。


「それは、良かった。反響も良い感じ」


 と、セナは、もう一つのパソコンで、

 データやコメントを見ながら言う。

 

『シカク〈@shikaku_◆◆◆〉って人

 ほんとにデビューしてるんだけどー』


『炎上対策の嘘って言ってたヤツどこー』


『ほんとにVだったんじゃん。

 一週間で龍神様とコラボデビューは

 思いつきじゃ、無理だって』


『準備中VならVR入れるわな』


『シカク君、ごめーーーん!

 ハイパー土下座タイム!』


 他にも色んな情報が、

 炎上の鎮火傾向を示してる。


「これで、炎上は大丈夫。

 炎上を消せるのは、圧倒的行動力」


「セナさん、ありがとうございます」


「お礼なら、あの子に言うのね。

 ほんと、よくやってる」


 チラ、と配信画面でスマブラ対決してる

 久不キューブシカクを眺める。

 まるでリスナー感、丸出しだしだけど、

 それで良い、それが良い。


「それに、ダイヤちゃん、

 ボイスチェンジャー使ってないから」


 機械を通さない生の声を、

 配信用の良いマイクで拾うと、

 リスナーは大体、わかる。


 中の人が、男か女か。


『てか、中の人、女性だよね。 

 しかも、だいぶ若い』


『時雨ちゃんの彼氏、ってデマ流した奴

 許さん! 女の子じゃん』


『彼氏じゃない、って時雨ちゃん

 言ってたけど、そりゃ違うわ』


『僕っ娘ハァハァ。ドジっ娘ペロペロ』


『クランベリープラペチーノは、

 ただの女子会だったのか……』


『時雨ちゃんはやっぱり、

 僕らの時雨ちゃんだった!』


『時雨ちゃん、疑ってゴメン!』


 恋人説はこれで立ち消えるだろう。

 月下時雨の炎上も収まるし、

 ガチ恋勢も戻ってきてくれるはずだ。


「戻ってくるっていうか、

 何人かは、ダイヤちゃんに

 持っていかれそうね。そのうち、

 ダイヤちゃんにもガチ恋メール届くわ」


「は?」


「なに怒ってるの、ヤナギ君」


「いや……別に」


 ふふっ。

 とセナは笑って、また画面を眺めた。



  ◆◇◆◇



「信者のみな、今日は

 来てくれて感謝じゃ!」


 配信の終わり際

 せいみなちゃんが観客に両手をふる。


「ほら、お主も挨拶せぇ」


「あ、あの。拙い僕で、正直いろんな事

 やらかしましたが……」


「ほんとじゃ」


「でも、暖かく見てくれて、

 ありがとうございました!」


 声を張り上げて頭を下げる。

 観客コメントがポポポポと湧き上がる。


『ほんと爆笑だったww』


『可愛いな、おい』


『大丈夫、次は出来るよ!』


 みんな優しい。

 そうだ、ずっと炎上の中にいたから、

 忘れてたけど、みんな優しいんだ。

 すごく、いい人なんだ。みんな……


「シカク、今日はよいコラボじゃった。

 またコラボしてくれたもれ」


「はい、はい! もちろんですっ!」


「さぁ、じゃあ閉めるぞ!

 今日は龍神の神域に足を運んでくれて

 感謝する。皆の幸せをわらわは願う。

 また皆に会える日を待っておるぞ!」


「今日は、ありがとうございましたぁ!」


「それじゃ、さらばじゃー」


「ほんとにありがとうございました!」


 コメントが吹き荒れる中。

 僕の視界の中に何か引っかかる。

 

 あれ? あれは……


 観客席の端っこに、

 白いキツネ面をかぶった人影があった。

 

 それが誰か、考えるより早く、

 ブツンと接続は切れ

 僕の初配信は、終わった。



  ◆◇◆◇



 ログアウトして、VRゴーグルを外す。

 終わった、初配信。


 正直、最後の方とか全然覚えてない。

 スマブラ勝ったか負けたかも覚えてない

 ずっと、必死だったから。


 僕は急いで、リビングへの扉を開ける。


「おぉ、お疲れ」


 ヤナギがノートパソコンから

 視線をあげて言ってくれる。


 あれヤナギだけ?


「セナさんは?」


「まだ、仕事あるからって、帰った」


 そっか、聞きたかったのに。

 どうだったか、聞きたかったのに。


「ねっ、ど、ど、ど、どうだった!

 配信、どうだった?」


 とりま、ヤナギに聞く。

 ちゃんと出来た? 話せた?

 失敗しなかった?


 ヤナギはそれに答えずに

「コメント、来てるぞ、見るか?」

 画面を指した。


 コメント?

 ヤナギの隣まで行って、

 ノートパソコンを覗き込む。


「お前、自分のチャンネルの配信コメ

 見る余裕なかったろ」


 そうだ。どうせ無いと思ってたし。

 僕の配信画面には、ポツポツと

 コメントが並んでいて、そして、


「ほら」

 ヤナギが1番最後のコメントを指す。


『面白かったよー。また見たい』


 そんな文字が、飛び込んできた。

 面白かった? また見たい?

 胸の中からジワとほどけていく緊張。


「こ、この人、『面白かった』って

 僕の配信、面白かったって……」


「そうだ、お前の配信を見てくれて

 お前に『面白かった』って言ってる」


 そんな人が、いたんだ。

 失敗ばっかりで、緊張しぱっしで、

 そんな僕の初配信なのに。


「他にも見てくれた人はいるからな。

 同接7、コメ数12。コメくれた人2人」

 ヤナギが読み上げる。


 え、それって……


 顔を見上げると、ヤナギは笑って

「上出来だ。よく頑張った」

 そう言って、僕の頭を撫でた。


「セナさんも褒めてた、いい出来だって」


 ジワと涙が滲んだ。


「炎上も収まる。もう心配しなくて良い」

  

 グリグリと頭を撫でられる。

 涙が溢れてくるのに、前に流した時より

 ずっと暖かくて、気持ち良い。


「僕はっ、頑張ったと思う」

 涙声で、僕は言う。


「あぁ、頑張った。すごい」


「もっと、褒められて良いと思う」


「そうだな。エライエライ」

 笑って頭を撫でられる。

 

 もっと……もっと! もっと褒めて。

 頑張った。僕、頑張った!


「よーしよし、泣くな。お前はすごい」


「あと、なんか食べたい」


「え? 夕飯は食ったろ」


「緊張で全然食べられなかった」


「そうか。じゃ、なんか作ってやるから」


「味噌煮込みうどん、とか食べたい」

 

「おい、無理言うな」


「ケバブとかでも良い」


「とかってレベルじゃねぇ」


「もしくはピザ」


「お前、俺をウーバーイーツだと

 思ってるだろ」


「とにかく、なんか食べるー」


「わかったから、作るから離せって」


「じゃなきゃ、ヤナギ食べる」


「おい、やめろ。あー、ちょ!

 噛むな、バカ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「あー……唐突に死にたい」


「おい、どうした?」

 

「あー、どうしよ、僕……」


「なんだよ」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!


【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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