第19話、大手Vの覚悟
「今回のステージ、
スパムが入り込めないように、
セキュリティ強化してるの。
そしたら、ステージごと潰そうと、
外側から圧がかかってる」
「え？ ん？ ステージプログラムに
外からハックかかってるって事？
スパムが、入れないから？」
「そう、誰かが、その空間ごと、
乗っ取りにかかってる」
は？ いやいや、ステージごと？
「今、乗っ取り対抗してるけど、
持つか分からないの」
ステージ乗っ取られたら、
どうなるかわからない。
「これは、早めに配信を中止して……」
僕がセナさんと話していると、
「ダメじゃ」
隣で、せいみなちゃんが言った。
「配信を止める事は許さぬ」
「そんな事、言ってる場合じゃ……」
「逃げるなら、お主と時雨だけじゃ。
わらわは、オンステージになっても、
ここに残るぞ」
「でも、せいみなちゃんのアカウントが」
「アカウントなどどうでも良い！
お主、まだわからんのか！」
すごい迫力で怒鳴られたもんだから、
びっくりした。
「ここを今、何人がみておると思う！
その1人1人が、自分の生活があり、
家庭があり、仕事と事情がある。
その中で、時間を調整して、
仕事を終わらせ、家事を終わらせ、
子供を寝かしつけ、忙しい毎日の中、
必死に時間を作り、来ておる。
その気持ちを、時間を、想いを、
無下に出来るわけ、ないじゃろう！」
ドクンと、胸が詰まった。
僕も、そうだった。
『今日は時雨ちゃんの配信あるから
朝から幸せだぞー！』
『お仕事終わったら時雨ちゃんに会える、
だから、今日も頑張る！』
『配信あるから、早く終わらせなきゃ。
絶対に配信行くんだー！ 絶対！』
『時雨ちゃんに会えるから、生きていける
時雨ちゃんは僕の生きる意味』
そうだ、僕らはそうやって生きてる。
それが、中止になったら？
ファンは怒ったりはしない。
仕方ないよね、事情があるよね。
大丈夫だよ、また見に行くよ。
みんなそういうけど、
本当は悲しい。楽しみにしてたから、
その為に働いてたから、生きてたから。
本当は悲しい。
だから、せいみなちゃんは、
コラボを中止しなかった。
誰も、がっかりさせたくないから。
誰も、泣かしたくないから。
これが、大手人気Vの、覚悟。
すごい……でも、
「でも、このままじゃ、
いつ回線が、落ちるか、わからない」
「入れないから、潰されておるなら
入れてしまえば良い」
「へ？」
「門戸を開け。敵を招き入れよ」
「ちょ！ 正気ですか？」
「いったって正気じゃ、入れてしまえば
お主が守ってくれるのであろう？」
ふわと妖艶に笑って、言われれば、
「も、もちろんです」
「じゃあ、問題ないじゃろ。
迷うな！ 急げ！」
ちら、と時雨ちゃんに視線を向ける。
ステージの真ん中で歌ってる。
いっぱいのハートを受けながら。
歌ってる間は、連絡がつかない。
僕が、決めなきゃ。
「セナさん！」
「ダメって言ってもやるんでしょ？」
「もちろんです！」
「準備するから少し待ちなさい」
あぁ、ありがとうセナさん。
ちょうど、時雨ちゃんの曲が終わった。
「みんなー、パチパチありがとうー！
ハートもありがとうー、嬉しい！
ピンクのハートは、みんなの愛！」
ハートが飛び回る。
コメントもいっぱい表示されてる。
「さぁ、交代じゃ」
歩き出したせいみなちゃんは、
ステージに上がる前に振り返って。
「覚えておれ、わらわは、
お主を信じるからな」
そう言って、
ウインクしてくれるんですよ！！！！
ファンサが過ぎます！ マジ惚れる！
せいみなちゃんが、ステージに立つ。
「さぁ、こっからは龍神の神域じゃ、
心して、聞け、そして酔え。
わらわは、ここにいるすべての信者に
声を届けよう！」
曲が流れ出す。圧倒的声量の、
せいみなちゃんの声が聞こえてくる。
「シカクたん☆ 顔が崩れてるお！
なんかあった？」
配信外に戻ってきた時雨ちゃんに、
はっとする。
「あと、その肩のツイバトなに？」
なにかあった？ そうだ、あった！
「大変なんだ、時雨ちゃん！」
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【次回予告】
「って、これ本当に良いんですか！
なんか、MMOのハメ技狩り場みたい」
「安全に敵を倒せるから、
別にいいじゃない」
「地味だし、なんか卑怯ーーーー！」
「チートって、本来そういうもんだから」
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【出演Vtuber】感謝御礼！
久不シカクさん
https://twitter.com/cube_connect_
月下時雨さん
https://twitter.com/Gekka_Shigure
（時雨さんは実際は男Vさんです）
