第15話、スイーツツイート
「クランベリークリームプラペチーノを
トールで」
「あ……俺も同じの……下さい」
2人並んで受け取って、
窓際にカウンター席に並んで座って。
「お前って、そんな甘いの好きだっけ?」
「プラペチーノ新作をツイートすると、
時雨ちゃんが、いいね! くれる」
なるほど、とヤナギが返す。
「ヤナギも、そんな甘いの好きだっけ?」
「こういうスイーツ系のツイートすると
ファンが喜んでくれる」
なるほど、と僕も返す。
並んで、プラペチーノの写真を撮って。
「あ、お前は明日投稿しろよ、
ちゃんと、リプするから」
「えー、なんでー」
「同時間に、同じ商品ツイートしたら、
匂わせだと思われるだろ、もしくは、
お前ストーカーだと疑われるぞ」
むぅ、確かに。
時雨ちゃん激推しを公言している
ファンアカウントで、そんな事したら
関係性を疑われてしまう。
「俺が先にツイートするから、
お前明日な」
「じゃあ、あれ『昨日の時雨ちゃんの
ツイートにあった新作飲んでみたー
これで時雨ちゃんと1つになれるー』
みたいな感じでツイートする」
「なんでわざわざ
そっちに振りたがるかね、お前は」
プラペチーノ飲みながら、
ヤナギがツイートしたり、
その文面にツッコミいれたり、
そのツイートに、いいね! したり
リツイートしたりしてたら、
「あ、ちょっと、着信」
ヤナギのスマホに電話があった。
「はい、お疲れ様です」
お疲れ様です、って事は上司だ。
まぁ、セナさんかな。
「あ、投稿みたんすか。
はい。そうです、本社の近くの
スタバァです。よく分かりましたね。
え? なんですか? シカク?」
ん?
ヤナギは、ちらっと僕を見て。
「隣に居ますけど……」
あぁ、やっぱりセナさんか。
「いや、違いますよ。断じて違います。
そんなんじゃ無いです」
おい、今、何を否定してるんですか、
この男は。
「ん? あー……はい、分かりました」
そして、通話を切ったヤナギが、
「セナさんが、本社の近くに来てるなら
お前を連れて来い、って」
「へ?」
◇◆◇◆
「おぉーでっかいビルー、さすが本社!」
着いた所には、確かに運営会社の看板。
「違うからな、全部じゃないからな。
フロアで入ってるだけだからな。
入り口こっちだから」
さっさと行ってしまうヤナギを
慌てて追いかける。
9階ワンフロアが、全部会社らしい。
「今日、休日だから、受付とか
いないからな」
と言う言葉どおり、エレベーターから
降りた受付には、誰もいなくて
素通りで、奥まで入る。
長い廊下を歩いて、突き当りのドアを
ヤナギがカードキーで開ける。
「セナさん、お疲れ様でーす」
ヤナギの後ろに入って、中に入ると、
机がならんだオフィスに、
間に物がゴッチャゴチャ置いてあった。
おぉ、ゲーム運営会社っぽい。
そう思って、眺めていると、
「ダイヤちゃん、いらっしゃい」
声がする方を見ると、セナさんがいて、
「え?」
隣に、時雨ちゃんも居た。
「時雨ちゃんだぁあああああああああ!」
テンションあがって叫ぶと、
隣でヤナギが、うるせぇ叫ぶな、
とかなんとか呟く。
「あぁ、これ? 今朝届いた、販促用の
等身大パネルの、サンプル」
「お店にあったやつ! 雑誌売り場に
あったヤツ」
「え? 売り場見てきたの? ヤナギ君」
「まぁ、雑誌も買って来ました」
「それで、2人で買いに行ったんだ」
ふーん。と、セナさんが意味ありげに
笑う。
「ほんとにデートじゃないの?」
「違いますからね」
ヤナギとセナさんが言い合っているが、
そんな事は、どうでも良い!
「セナさん、コレ下さい!」
僕は、等身大パネルを前に叫ぶ。
「え? このパネル?」
「そう、これ、時雨ちゃん!
欲しいんです、すごく」
すごく欲しい、3万円くらい出しても
欲しい。オークションに出てれば、
5万くらいは覚悟する。
欲しい、欲しいよおおおおおおお!
「あぁ、今日やることやってくれたら、
お礼にあげてもいいけど」
「本当ですか!」
「休日に足を運んでもらったし」
「なんでもやります!」
それはよかったわー。と
セナさんはニコニコ笑って、
ドサッ、と書類の束を取り出した。
「じゃ、早速だけど、事務手続きから」
「……へ?」
「今まで、なぁなぁで協力して
もらってきたけど、さすがにちゃんと
契約して書類作んないと、マズくて」
え? 契約書類?
「とりあえず、コレに目を通して、
署名してね」
「え? コレ、全部ですか?」
「うん、全部。
一応ゲームの運営部に関わる訳だから
守秘義務の制約と、協力契約の内示ね
あ、情報書き込む所も10ヶ所くらい
二段階認証もあるからね」
「な、すごい大変……すごい量……
ヤナギ、コレ知ってて連れてきた?」
「まぁ、大体は」
「ヒドい! あんまりだ!」
「等身大パネルもらうんだろ?」
「うわあああん、がんばるううううう」
泣きながら記入してると、
セナさんが、クスクス笑いながら
「あ、それだけじゃないからね。
それ終わったらー」
え? まだあるの?
「開発部で、やってほしい事あるから」
なんか、スゴーク、嫌な予感がした。
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【次回予告】
「ダイヤちゃん、聞こえる?」
「今は、シカクって呼んで下さい」
「OK、シカク君。VRの調子どう?」
「問題ないです。
それで、何をするんですか?」
「そりゃあ、強化アイテム、よ」
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久不シカクさん
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