表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/60

第14話、時雨ちゃんパラダイス


挿絵(By みてみん)


「やってきました!

 アニメグッズ専門てーん!」


 いつ見てもおっきなビルを見上げて、

 両手をあげる。


「おい、デートって、言うから、

 どこ行くのかと思ったら、さぁ」


 隣でヤナギが呆れた声だしてる。


「だって、女1人じゃ、入りづらいじゃん」


 こういう店は、いつ来ても

 女性はアウェーだ。


「お前、デートとか言って、

 普通に出かける予定があって、

 1人じゃ来づらいだけだったんだな」


「ほかに何があるのさ。

 僕が出かけた家に、ヤナギ1人いるのも

 なんか嫌じゃん。

 ヤナギ、鍵も持ってないし」


 まぁ、それもそうか。と

 ヤナギは納得したらしい。


「それで、何買うんだ?

 お前、アニメとか見てたっけ?」


「なに言ってるの! 今日は

 Vtuber雑誌、『Vボックスオール』の

 発売日で、時雨ちゃん特集が組まれて

 表紙にも時雨ちゃんが乗るんじゃん」


「え? マジで? アレか!」


「こういうニッチな店しか置いてないから

 わざわざ来たんじゃん!

 早く行こう。早く! 早く早く!」


「ちょ、引っ張んなって、分かったから」


 いつ見ても縦に長いアニメショップに

 ウキウキと足を踏み入れた。



  ◆◇◆◇



 Vtuberコーナーは7階。

 その、1番目立つどまんなかに、


「あったー!『Vボックスオール』!」


 どでかく展開されていた。

 等身大パネル、ポップ、ポスターも!

 そして平積み雑誌、それが全部!


「時雨ちゃああああああん!

 めっちゃ表紙じゃん! 

 可愛いじゃん! ポスターも可愛い!」


「おぉ、すげぇ。だいぶスペースとって

 商品展開してくれてる」


「等身大パネル、時雨ちゃん!

 持ち帰りたい! 自分のものにしたい!

 ペロペロしたい! パクっていい?」


「ダメに決まってるだろ」


「ポスター全部時雨ちゃん!

 下がってるの全部時雨ちゃん!

 のれんにしたい、うちでもやろう!」


「おいやめろ」


「ポップ展開も、平積みも素適!

 マジ天使! ここ全部時雨ちゃん!

 どこ向いても時雨ちゃん!

 時雨ちゃんに溺れる。ヘブン!

 マジヘブン! もう、ここに住む!

 ここに骨を埋める!」 


「おい、帰る家なくなるからやめろ。

 雑誌、買うんじゃないのか?」


「なに言ってんの、

 まずは売り場の写真を取って、

 ツイートする所からでしょ」


「ん? なにそれ」


「時雨ちゃんファンとして、

 売ってるよ、買ったよ。という拡散は、

 重要! 認知度アップにも宣伝にもなる

 絶対本人から反応くるし」


「分かった。存分にやってくれ。

 他のお客に迷惑にならない範囲で。

 あと、俺も撮る」


「え? ヤナギも、なんで?」


「会社に活動報告として送る」


 一通り写真を撮って、ツイートもして。

 さぁ、雑誌を買おう!


「おい、お前、今何冊もってる?」


「三冊。読む用、保存用、布教用!」


「お前、ほんと……俺も一冊買う」


「え? 一緒に見ればよくない?」


「一緒に見たくないから買うんだよ!」


 レジまで行くと、びっくりした。


「すごい人……めっちゃ混んでる……」


 全部男の人だし、この中に並ぶとか、

 それだけで人酔いしそう……。

 ふだん家に引きこもってる人間には

 過酷な試練だ。

 でも、並ばないと、時雨ちゃん×3は

 手に入らない。

 でも、人多っ。


 躊躇していると、ヤナギが僕の手から、

 雑誌を抜き取った。


「え?」


「俺が一緒に買っといてやる。ついでだし

 お前、外で待ってろ」


 マジで? え?


 僕が何言うより早く、ヤナギは、

 さっさと並びに行ってしまった。


 いいのか? それ良いのか?

 あの雑誌、四冊もレジだしたら


『あー、この人、

 めっちゃ、時雨ちゃんファンじゃーん』


 って、レジのお兄さんに思われる。


『僕も好きなんですよー、良いですよね

 月下時雨ちゃん』


 みたいな事を言われたら、

 どうするんだろう。

 まさか本人だとは思うまい。

 言いたい、すごく言いたい。

『お兄さん、その人、時雨ちゃんの

 中の人です! お兄さんー!』


 そんな事を、

 店の外で待ちながら考えてると


「おい、お前、なに考えてる?」

 会計を終えたヤナギが戻ってきた。


「『僕も時雨ちゃん好きなんですよー』

 って、言われた?」


「言われてねぇよ。ねぇよ、そんな状況」

 

 なんだつまらん。


 雑誌三冊を受け取って、

「ありがと。これ、三冊ぶんのお金。

 ちょうどで用意したから」


「いや、いいわ。三冊も支払わせるの

 申し訳ないし」


 ん? なんだと?


「今日は出しとく。なんか、悪い」


 こいつ、なに言ってんの? それは、


「バカじゃないの!」

 さすがに許容出来なくて、叫んだ。


「おい、なんだよ……」


「推しに貢ぐ、至高の瞬間を、

 中の人が奪うんじゃない、バカか!」

 

「は? 俺はただ……」


「ファンが推しの為に、

 いやいや金だしてると、思ってんの?

 違うから! 推しに貢ぐのは最高の

 ファンとしては最高の瞬間なの

 その為に働いてるし生きてんの!

 申し訳なく思う必要も、理由も無い!

 出したくて出してる金を、

 拒否るんじゃない、バカー!」


 全力で叫んだもんだから、

 ヤナギはだいぶ動揺したようで、


「お前……お前な……」


「推しに貢ぐ金は、貢ぎたくて貢いでる

 勘違いすんな、バカ。

 だから、受け取って、お金」

 真っ直ぐ差し出すと、

 ヤナギは一息吐いてから。


「わかったよ。悪かったな」

 と、お金を受け取り、財布にしまった。


「あ、レジに並んでくれたのは、

 素直に助かった。ありがとう。

 あれ並んでたら、途中で倒れてたわ」


「お前、体幹弱すぎだからな。

 そもそも栄養バランスが……」


「あ、スタバ行こう! スタバァ!

 ちょっと休憩しよう」


「聞いてるか、こら」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】



「クランベリークリームプラペチーノを

 トールで」


「あ……俺も同じの……下さい」


「プラペチーノ新作をツイートすると、

 時雨ちゃんが、いいね! くれる」


「こういうスイーツ系のツイートすると

 ファンが喜んでくれる」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!




【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ