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第10話、肉体限界

おかげさまで、総合評価50ポイントを

突破いたしました!

皆様のおかげです、

ありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


 ドタン、と、大きな音を、

 時雨のマイクが拾った。


「は? 今の音なに? なに?」


 バタバタと足音がして、

 ガチャとドアが開く音がする。


「おい! シカク!」


 ヤナギの声。

 バーチャルでは、絶対無いはずの

 触感がする。抱き起こされる、感覚


「お前! なんで倒れてる!」


 VRゴーグルを取り払われて、

 ぼやける視界にヤナギの顔を見た。


「顔真っ青だ、汗もすごい、どうした?」


 粗い呼吸をしながらヤナギを見上げる。


「なんでこんな苦しそうなんだよ!」


 クラクラする頭で、なんとか口を開く。

 

「……この、チートプログラムは

 副作用、が、あって──」


「は? バーチャルのプログラムが

 なんでリアルに、影響するんだよ」


「このチートは……すごく──」


「すごく?」


「──酔う」


「……は?」


「だから、VR酔い。すっごい強烈な……」


 VR酔いは、つまり車酔いみたいな物。

 身体は動いて無いのに、視界が動く事で

 脳が混乱して目眩と吐き気を起こす。


 経験しないと、理解しにくいが

 その気持ち悪さは、車や船の比ではない

 画面の流れ方によって、

 ものの2、3秒で、急速で最大の

 酔いを引き起こし、

 頭痛、目眩、吐き気が強烈に襲う。

 数秒で、だ。


 酔うかどうかは、体質や個人差があるし

 慣れで克服も出来るけど完全じゃない。

 だからVRは、移動速度や移動方法に

 制限がある。

 それを強制解除するチートの速度50は

 安全基準を大幅に越えてる。

 身体の負担が、半端ない。


 だから鬼ごっこで、

 このチートを使うのは諦めたのだ。


「大丈夫か? まだ敵が……」


 敵? あぁ、そうだ。

 休んで、られないんだった。

 なんとか、倒さなきゃ。


「ヤナギ、そこ棚の上、薬あるから。

 取って」


「薬……コレか? コレって」


「酔い止め。酔ってからも飲めるヤツ」

 2粒、だして、僕の口に押し込んで」


「効くのか?」

 ドロップ状の錠剤を僕の口に入れながら

 ヤナギは効く。


「気休め、だね」


「は?」


「あと、冷えピタ、そこあるから、

 おでこ貼って」


「効くのか? これ本当に効くのか?」


「だから、気休めだって。全部」


 酔わない方法なんか無い。

 それでも、おでこの冷却シートは、

 一瞬だけ、ひどい頭痛を忘れさせる。


 ぐらつく身体で、なんとか立ち上がる。


「お前、大丈夫か? 本当に大丈夫か」


「大丈夫もクソも無い!」


 VRゴーグルを付けながら、叫ぶ!


「なにがあっても、敵は倒す!

 吐こうが倒れようが、倒す!」


 ガリ、と酔い止めドロップを噛む。


 フィールドには、まだユーザーがいる。

 常連も初見もいる。


「誰ひとり、アカウント停止には

 させない!」


 仲間がいなくなる。

 二度と会えなくなる。

 そんな想いは、もうごめんだ。みんな

 時雨ちゃんを応援する仲間なんだ。


「分かった。お前、ちょっと待て」


 結構近くから、ヤナギの声がする。

 ゴーグルを付けてるから見えないが、

 なんか両肩掴まれてる?


「ジャックボットは俺が集める。

 中央、お前の所に。だから

 それまで目をつぶってろ」


「……ん? え?」

 どゆこと? 僕、今なにされてる?


「お返事は? シカクたん☆」


 そう言われて、反射的に答える。


「わかったよ、時雨ちゃん」


「いい子だ」


 ん? え?

 なんか頭、撫でられたんですけど!


 バタンとドアが閉まる音がする。


 ただでさえ悲鳴を上げてる頭が

 混乱していく。

 何? 今のなに?


 いや、やめよう。考えるのやめよう。

 全然ヤナギの声なのに

 時雨ちゃんって、呼んじゃたのとか、

 なぜだか、頭なでられたのとか


 いや、訳わかんない!

 訳わかんないって!


「シカクたん! シカクたん聞いてる?」

 

 時雨ちゃんの声がする。

 目を開けると、バーチャルの広場に

 時雨ちゃんと、黒い人影が居た。


 全部で、6体。散らばってるけど、

 視認できるなら、なんとかなる。


「お願い! シカクたん☆

 あんたじゃなきゃ、倒せないの!」


 時雨ちゃんの叫び声。


 そうだ、こいつらは、

 僕が倒すしかないんだ。


 大きく息を吸い込む。

 長くは持たない。

 最短距離で、一発で。

 覚悟を、決めろ。

 

 〜 Redy? 〜


「来いよ」


 〜 GO!!! 〜


 移動入力と同時、視界が流線型に飛ぶ。

 目を見開いて、目標を定めて、

 思考をフル回転させる。


 強烈な目眩、吐き気がこみ上げる。

 ジャックボットのスレスレを通る。

 接触判定の当たらない、

 でもスパムは感染する間合い。

 すれ違いに、ジャックボットが

 スパムに飲まれるのが見える。

 確認する暇はない。


 前だけ見て、走るのは止めない。

 一度止まると、もう立ち上がれない。

 視界がチカチカする。頭が痺れて、

 思考が持たない。


 あと、2体、あと1体、あと……


 最後の1体に右手が触れると、

 効果音がして、弾かれた。

 視界が揺れる。


 ジャックボットがノイズに巻かれて、

 消えるのが見える。


 やった!


 グラと頭が揺れた。

 吐き気がこみ上げる。


「おい、シカク!」


 視界が回転するのが分かる。

 脳が限界を迎えて、機能を止めた。

 視界が消えた。


 あぁ、倒れる。


 そう覚悟した僕の身体は、

 ドサと、誰かに受け止められた。


「おい! しっかりしろ!」


 あぁ、いま抱きしめてくれてるのは……


 考えるより早く、

 強烈で否応ない吐き気がこみ上げて、

 全てを吐き出した。

 たぶん、ヤナギの胸に全部ぶちまけた。


「おい! おい……」


 声が小さくなってく。

 そのまま、僕の意識は消えた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「どう、ですか?」


「まぁ、安静にするしか無いわ」


「俺が……無理させたから、ですか……」


「させた自覚、あるんだ」


いつも応援ありがと☆ 毎日更新するよ!

 



【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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