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第1話、激推しアイドルはマジ天使


挿絵(By みてみん)


 Vライフへ、ようこそ!

 夢と希望のVR世界をお楽しみください。


 空色の扉が開く。

 ダイブゲートに飛び込むと、

 すぐにVR空間が読み込まれていく。


 チカチカする照明。

 ミラーボール、レーザービーム、

 音響、ライト、そして、ステージ。

 豪華で、大きな音楽ステージ!


 ライブ会場のバーチャルリアリティ。

 本物と変わらない、音と光のステージ。

 沢山の観客が立ってる。僕もその1人。


 そう間に合ったのだ!

 バーチャルアイドル、時雨ちゃんの、

 VRライブ!


 ライブ前の高揚感!

 バーチャルなのに、この臨場感。

 あぁ、ドキドキするぅうううう。

 ワクワクがドンドンだ。

 バーチャルなのに。

 今だって、VRゴーグルを外せば、

 1人暮らしの寂しい部屋なのに。

 VR機器を身につけるだけで、

 もうライブ空間にフルダイブ!

 沢山の仲間と、大好きな推しのライブを

 全力で楽しめる。なんて素晴らしい。


 照明が消え、スポットライトがついた。

 歓声コメが聞こえてくる。


 ステージに現れたのは──


「時雨ちゃああああああああん!」

 僕の声はコメントになって飛んでいく。

 周りから沢山の吹き出しがコメ欄に

 吸い上げられてく。


 いつ見ても超絶可愛い! 無敵!

 青いツインテール! 優しい視線と、

 緑と紫の瞳! 今日、新衣装じゃん!

 白くてスカートひらひらで可愛い!


 そう、この天使こそが、

 僕の激推しVtuber、月下時雨ちゃん。

 ちなみに『げっかしぐれ』と読むよ。

 推してくれ! さぁ、推してくれ!


「待っててくれて、ありがとー!」


 もう、声もマジ天使!


「ママが新しい服、書いてくれたよ。

 みんなー、どーう?」


 かーわーいーいー!!!!!


「ふふっ☆ ありがとー!

 時雨の笑顔は、神秘のパワー!

 今日もヒーリングしちゃうぞ☆」


 ウインクと舞い上がるハートアイコン。

 グハッ! 心臓に刺さる可愛さ。


「今日は時雨の『歌ってみた』ライブ!

 さぁ、今いる人は、だれかな?」


 時雨ちゃんが、ライブ開場を見回す。

 僕らの顔を1人1人見回す。

 まぁ、顔と言っても個別設定された

 アバターなんだけど。


「クルにゃん、来てくれてありがとー、

 そこにいるの、渚クンだよね、嬉しい。

 まっつん、また来てくれたんだー」


 時雨ちゃんは来たユーザー全員を、

 愛称で呼んでくれる。

 僕の番! もうすぐ僕の番!


「シカクたん、今日もありがと☆」


 僕の顔を見て、にっこり笑顔で。

 推しが顔を見て、名前を呼んでくれる。

 マジパラダイス!


 みんな頭の上にはネームが表示される。

 フルアカウントを省略した簡易ネーム。

 僕は『シカク』。

 でも時雨ちゃんは愛称で呼んでくれる。

 こんな天使は他にいない。


 全員の名前を呼んで、にっこりと笑って 

「じゃあ、歌みたライブ始めるよー!

 みんな、ツイートよろしくー☆」


 時雨ちゃんの声に促されて、

 観客から青い鳥が飛ぶ。

 沢山のツイバトが飛び立つ中で、

 一曲目の曲が流れ出した。


 これがVRライブ! これがVライバー

 いつでも推しのライブや配信が、

 バーチャル空間で楽しめる、

 VRプラットホーム、Vライフ。 

 

 そしてこれが、課金アイテム!

 ペンライト!


 VRの良い所は、どんなに踊っても、

 振り回しても、迷惑をかけない所!

 このステージ、接触判定ないから、

 人に当たらない、すり抜ける。

 うざければ非表示すれば良いだけ。


 だから、めいいっぱいオタ芸できる。

 周りの観客も、ペンライト装備してる。

 みんな同士! 仲間! 1人じゃない。

 一緒に時雨ちゃんを応援しよう!

 時雨ちゃああああん!!!!

 マジラブ! マジらぶうううううう!

 僕らがペンライトをふり続ける中、

 時雨ちゃんの天使の歌声が

 ステージに響き渡った。

 


  ◆◇◆◇



「みんなー! ありがとうー。

 30分休憩したら、雑談枠だからね。

 待ってるからね☆」


 拍手アイコンと数字の『8』が飛ぶ中、

 時雨ちゃんのVRライブは終わった。


「いやぁ、最高だったぁ」


 バーチャルのライブ空間で、僕は呟く。

 僕の声は周囲のユーザーにだけ届く。


「今日も幸せそうだねー、シカク君」


 話しかけられて振り返る。

 仲の良いユーザーが笑っていた。


「渚クン、お疲れ様。そりゃ幸せだよー」


 僕は、白い服のアバターに近づいて、

 テンションそのままに彼の肩を叩く。

 接触判定は無いから、

 僕の手は彼をすり抜ける。

 

 白い髪で、白い犬耳が生えてて、

『nagisa』と表示された友達は、

 僕にバシバシ叩かれながら、笑う。


「シカク君、今リアルで、

 ニヤケた顔してるでしょー」


「え? わかるの? 渚クン」


「フェイストラッキングが、すごい」

 と、彼はクスクス笑う。


 リアルの表情を読み取って、

 アバターの表情に反映させるのが、

 フェイストラッキング。

 つまりこの友人の渚クンも、

 僕の顔見て、リアルで笑ってるんだ。

 僕、今、どんな顔に表示されてんだろ。


「シカク君、今日、来ないかと思った」


「あー、仕事が、なかなか終わらなくて」

 ログインしたのがギリギリだった。


「在宅プログラマーだっけ? お疲れ様」


「疲れた。ぱたり」


「代わりに待機してあげたのに」


「そんな大学の代返みたいな無いっしょ」

 僕がそう返すと、

 渚の周りに『笑い』アイコンが飛ぶ。


 そんなの無くても、君が爆笑してるの

 大体わかりますよー。


「そんな事より、そろそろ移動しよ」


 時雨ちゃんの雑談枠が始まってしまう。


 僕はウィンドウを立ち上げる。

 ウィンドウは、手を腰に当てて

 上に振り上げる動作で出てくる。


 半透明のアプリの並ぶホーム画面。

 ウィンドウさえだしてしまえば、

 あとはスマートデバイスと同じく、

 アプリが使える。


「あ、2段階認証居るんだって」


 渚が配信枠をチェックしながら、

 教えてくれる。

 

「えー、最近、セキュリティ硬くない?」


「スパム騒動が解決してないからねー」


 スパムねぇ……と、

 二段階認証のメールを開きながら呟く。


「ブロックノイズ、スパム、だっけ?」


「そうそう。感染すると回線IDが

 書き換えられるウイルス」


 回線IDが書き換えられると、

 強制的に接続が切れる。

 そして、二度とログイン出来なくなる。


「そんなの生きていけないわ、

 時雨ちゃんに会えないと死んじゃう」


「完全にVライフ廃人の発言だねぇ」


 時雨ちゃんは、生きる糧。僕の全部。


「早く掴まって欲しい、ピンクドット」

 認証手続きをしながら、僕は呟く。


 スパムを使ってるのはBOTではない

 『ピンクドット』と呼ばれるユーザー。


 ブロックノイズスパムは、

 無差別の迷惑行為ではなく、

 悪質ユーザーの襲撃事件だ。


「認証終わったよ、シカク君飛べる?」


「僕も出来たよー、行こう。

 時雨ちゃんが待ってる」


 ステージを選択して、

 移動先のリンクを入力すると、

 目の前に文字が浮かんだ。


  〜入室が許可されました〜


 ブツンと視界が消えた。


  ◇……… ◆…… ◇… ◆


 新しいステージが読み込まれるのに、

 そう時間はかからなかった。


 ホテルのラウンジみたいな空間。

 高い天井、シャンデリア、ソファー、

 そして真ん中にいるのが、


「時雨ちゃああああああああん!」


 配信開始前なのに、もう居てくれてる!

 何人かのユーザーに囲まれて話してる。


 僕もその中に走り出す。と言っても、

 リアルでは一歩踏み出すだけだけど。

 移動は、予め引いたバーチャルラインに

 身体が触れる事で入力される。


「時雨ちゃん、歌みたライブお疲れ様!

 サイコーだったよ!」


「シカクたん、ありがとー☆ 嬉しいっ」


 あぁ、にっこり笑顔でマジ天使!


「時雨ちゃん、またDM送るからねー。

 あ、新曲のコメント欄も埋めるからね」


「わぁい☆ 楽しみにしてるねっ」


 超絶可愛いその笑顔! いやもう天使!


「だから、顔すごいって、シカク君」

 渚クンの声がしますが、気にしません。


「ねぇ、シカク君? 後ろ、それなに?」


 続けて、なんか震えた声が聞こえた。

 え? なに? 後ろ?


 後ろ──振り返る。

 くるりと回る視界に、誰かの姿が映る。


 誰か? 誰かだ。

 それは確かにアバターサイズの人型で、

 でも真っ黒に塗りつぶされていて、


 左頬に、ピンクのダイヤが2つ、

 縦に並んでいた。

 あれ? これどこかで見たなぁ……


 真っ黒の人影が、右手を振りかぶった。

 攻撃するみたいに。

 なんで? バトルフィールドでも

 ないのに──


 「危ない!」


 ──え? 

 緊迫した音量に、思わず体制を崩す。

 真横に横切る腕、空を切る黒い手に、

 紫の正方形のノイズが走っていた。


 これは……

 ブロックノイズスパム!


 腰に激痛が走った。

 リアルで、尻もちをついたのだ。


「痛っ! いったぁ……」


 おかげで避けられたけど、でも……

 目の前の人型が、

 また攻撃モーションに入った。


 ひっ!


「シカク君! 下がって!」


 声に反応して、手を伸ばす。

 バーチャルラインに手が触れ、

 移動入力される。視界が急速に下って、

 攻撃してくる人型から離れる。

 倒れていても、移動出来るのが

 バーチャルの良い所。

 でも、今、僕、どんな格好で逃げてる?


「シカク君、大丈夫?」


 渚クンが駆けつけてくれてる。

 避けられたのは、渚クンのおかげだ

「あ、ありがと、助かった」

 急いで立ち上がるけど、まだ腰が痛い。


「それより……」

 渚が辺りを見回して声をつまらせた。


 VR空間に何人も、真っ黒な人影が出現してきていた。


「……嘘だろ?」


 これが……ブロックノイズスパム?

 僕のリアル頬に、汗が流れた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 お読み下さりありがとうございます!

 この注意書きはココにしかありません。


 本日は、あと3話投稿いたします。

 お気に召しましたら、

 ブックマークをしてお読みください。


 作中に出てくるVtuberさんは現実の

 Vtuberさんをモデルにしています。

 毎回、出演回のあとがきに

 ツイッターのリンクを張りますので、

 気になったVさんを見てみて下さい。


 この場をお借りしまして、

 ご協力下さったVtuberさんに

 感謝申し上げます。


 なおこの話には、次回予告があります。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【次回予告】


「シカク君、なにやってるの?」


「チート」


「は? え?」


「システムいじられて出られないなら、

 チートでこじ開ける!

 ソースコードぶち破る!」


「最高だよ! シカク君!」


 いつも応援ありがと☆毎日更新するよ!

【出演Vtuber】感謝御礼!

久不シカクさん

https://twitter.com/cube_connect_

狛犬渚さん

https://twitter.com/Wan_1_nagisa

月下時雨さん

https://twitter.com/Gekka_Shigure

(時雨さんは実際は男Vさんです)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 登場人物が実際のVtuberさんがモデルになっているところ! [気になる点] 毎日更新される!?続きが気になっても毎日更新ならすぐ読めて安心♪ [一言] 応援してます!
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